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検定と区間推定:Neyman–Pearson の補題、一様最強力検定、尤度比検定と Wilks の定理

対象読者: 本テーマ第 1〜2 章の推定量・尤度・漸近正規性を学び、中心極限定理と特性関数、カイ二乗分布の基本を知っている学部生。検定の知識は仮定しません。

前提となる記事:点推定と漸近理論:最尤推定、Cramér–Rao の下界、漸近正規性、delta 法、ベイズ推定、大数の法則と中心極限定理:標本平均はどこへ、どれだけ速く近づくか、特性関数と Gauss ベクトル:反転公式・Lévy の連続性定理・Wick の公式・Mills 比

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新しい薬が本当に効くのか、それとも偶然よく見えただけなのか。データを見て「効く」と言い切ってよいかを、間違える確率を決めたうえで判断するのが仮説検定です。この記事では、判断の間違いをどう数えるか、与えられた条件の下でいちばん鋭い判定のしかたは何か、そして標本が大きいときに使える万能の判定法は何かを順に見ます。最後に、同じ考え方から「母数のありうる範囲」を示す区間が得られることを説明します。

  • 検定は、データから「帰無仮説 H0H_0 を棄却するか」を決める規則です。第 1 種の誤り(H0H_0 が真なのに棄却)の確率を水準 α\alpha 以下に抑えたうえで、第 2 種の誤りを最小にする(検出力を最大にする)のが最適な検定です。
  • Neyman–Pearson の補題:単純仮説どうしの検定では、尤度比 f1/f0f_1/f_0 (2 つの仮説のもとでデータの出やすさを比べた比)が大きいところを棄却域とする検定が最強力です。証明は 1 本の積分不等式で、一意性も出ます。
  • 尤度比が検定統計量について単調な族(単調尤度比)では、片側仮説に対する一様最強力検定が存在します(Karlin–Rubin)。両側仮説にはそのようなものは存在しません。
  • 尤度比検定の統計量 2log⁡Λn2\log\Lambda_n は、正則条件のもとで、帰無仮説が真のとき自由度 rr(母数の制約の数)のカイ二乗分布に近づきます(Wilks の定理)。
  • 検定を反転すると信頼区間が得られます。Wald 型、尤度比型、スコア型(Wilson)の区間は、nn が大きければ同じですが、小標本では大きく異なります。

新薬を 100 人に投与して 62 人が改善した。従来の治療法の改善率は 50% として、この薬は本当に効くのか。62 は 50 より大きいが、偶然だけで 62 人が改善することもあるかもしれない。この「偶然か、本物の差か」を、誤判断の確率を制御しながら決める手続きが仮説検定です。

統計モデルと十分統計量では点推定量の最適性(UMVUE)を、点推定と漸近理論ではその大標本での振る舞いを扱いました。この章では、同じ道具(尤度、スコア、漸近正規性)が検定でも中心的な役割を果たすことを見ます。流れは、最適性の理論(Neyman–Pearson、1933)と、一般の問題に使える万能の検定(尤度比検定)の漸近理論(Wilks、1938)です。最後に、検定と区間推定が同じ論理の裏表であることを示します。

定義 2.1(検定問題・検定関数・水準・検出力)↗

母数空間を互いに素な Θ0\Theta_0 と Θ1\Theta_1 に分け、帰無仮説 H0:θ∈Θ0H_0:\theta\in\Theta_0 と対立仮説 H1:θ∈Θ1H_1:\theta\in\Theta_1 を立てる。Θi\Theta_i が 1 点のとき単純仮説、そうでなければ複合仮説という。検定関数は φ:X→[0,1]\varphi:\mathcal X\to[0,1] で、φ(x)\varphi(x) は観測 xx のときに H0H_0 を棄却する確率を表す(φ\varphi が {0,1}\{0,1\} 値のとき非確率的な検定で、{φ=1}\{\varphi=1\} が棄却域)。検出力関数を βφ(θ)=Eθφ(X)\beta_\varphi(\theta)=E_\theta\varphi(X) とする。

  • 第 1 種の誤り:H0H_0 が真なのに棄却する。確率は θ∈Θ0\theta\in\Theta_0 での βφ(θ)\beta_\varphi(\theta)。水準 α\alpha の検定とは sup⁡θ∈Θ0βφ(θ)≤α\sup_{\theta\in\Theta_0}\beta_\varphi(\theta)\le\alpha のこと。sup⁡Θ0βφ\sup_{\Theta_0}\beta_\varphi をサイズという。
  • 第 2 種の誤り:H1H_1 が真なのに棄却しない。確率は 1−βφ(θ)1-\beta_\varphi(\theta)(θ∈Θ1\theta\in\Theta_1)。βφ(θ)\beta_\varphi(\theta) (θ∈Θ1\theta\in\Theta_1)を検出力という。

確率化(0<φ<10<\varphi<1 となる検定)が必要になるのは、離散分布でサイズをちょうど α\alpha にしたいときです。実用上は使いませんが、最適性の理論を滑らかに述べるのに役立ちます。

水準を決めてから棄却するかを判断する代わりに、データから「どの水準まで棄却できるか」を報告する量が pp 値です。

命題 2.2(pp 値の一様性)✓

単純帰無仮説 H0:θ=θ0H_0:\theta=\theta_0 のもとで、検定統計量 TT の分布が連続で、大きな TT が H0H_0 に反する証拠とする。pp 値を p=Pθ0(T′≥Tobs)p=P_{\theta_0}(T'\ge T_{\mathrm{obs}}) (T′T' は TT の独立コピー) とすると、pp は H0H_0 のもとで U(0,1)U(0,1) に従う。したがって「p≤αp\le\alpha のとき棄却」は水準 α\alpha の検定である。

証明(命題 2.2)

FF を TT の分布関数(連続)とすると p=1−F(T)p=1-F(T)。U=F(T)U=F(T) とおくと、u∈(0,1)u\in(0,1) に対し P(U≤u)=P(T≤F−1(u))=F(F−1(u))=uP(U\le u)=P(T\le F^{-1}(u))=F(F^{-1}(u))=u(FF の連続性から、F−1(u)=sup⁡{t:F(t)≤u}F^{-1}(u)=\sup\{t:F(t)\le u\} で F(F−1(u))=uF(F^{-1}(u))=u)。ゆえに U∼U(0,1)U\sim U(0,1)、p=1−U∼U(0,1)p=1-U\sim U(0,1) で、P(p≤α)=αP(p\le\alpha)=\alpha。

単純仮説どうしの検定 H0:θ=θ0H_0:\theta=\theta_0 対 H1:θ=θ1H_1:\theta=\theta_1 を考えます。密度を f0,f1f_0,f_1(共通の測度 μ\mu に関して)とします。

定義 3.1(尤度比検定(Neyman–Pearson 型))↗

定数 k≥0k\ge0 と γ∈[0,1]\gamma\in[0,1] に対し、

φk,γ(x)={1f1(x)>k f0(x)γf1(x)=k f0(x)0f1(x)<k f0(x)\varphi_{k,\gamma}(x)=\begin{cases}1&f_1(x)>k\,f_0(x)\\\gamma&f_1(x)=k\,f_0(x)\\0&f_1(x)<k\,f_0(x)\end{cases}

を尤度比検定という(f0=0f_0=0、f1>0f_1>0 の点では f1>kf0f_1>kf_0 として棄却する)。

定理 3.2(Neyman–Pearson の補題)✓

0<α<10<\alpha<1 とする。

  1. 存在:E0φk,γ=αE_0\varphi_{k,\gamma}=\alpha をみたす k,γk,\gamma が存在する。
  2. 最適性:E0φ=αE_0\varphi=\alpha をみたす尤度比検定 φ=φk,γ\varphi=\varphi_{k,\gamma} は、水準 α\alpha の(すなわち E0ψ≤αE_0\psi\le\alpha の)任意の検定 ψ\psi に対し E1ψ≤E1φE_1\psi\le E_1\varphi 、すなわち最強力検定(MP 検定)である。
  3. 一意性:水準 α\alpha の任意の MP 検定 ψ\psi は、{f1≠kf0}\{f_1\ne kf_0\} 上で μ\mu-a.e. ψ=φ\psi=\varphi をみたす。

証明の流れは次のとおりです。1 は、棄却の閾値 kk をうまく選べば、第 1 種の誤りの確率をちょうど α\alpha にできる、という調整の話です。kk を小さくするほど棄却域が広がって確率が増えるので、α\alpha を超えない最小の kk を取ります。確率が途中で飛ぶ場合は、境界の点で確率 γ\gamma だけ棄却して埋め合わせます。2 と 3 は、尤度比検定と他の検定との差を 1 本の積分で比べる部分です。

証明(定理 3.2)

1. 存在。 G(k)=P0(f1>kf0)G(k)=P_0(f_1>kf_0) とおく。GG は kk について単調非増加で右連続、k→∞k\to\infty で G→P0(f0=0 かつ f1>0)=0G\to P_0(f_0=0\ \text{かつ}\ f_1>0)=0(P0(f0=0)=0P_0(f_0=0)=0 なので)。k0=inf⁡{k≥0:G(k)≤α}k_0=\inf\{k\ge0:G(k)\le\alpha\} とおくと、右連続性から G(k0)≤αG(k_0)\le\alpha、また k<k0k<k_0 では G(k)>αG(k)>\alpha だから P0(f1≥k0f0)=lim⁡k↑k0G(k)≥αP_0(f_1\ge k_0f_0)=\lim_{k\uparrow k_0}G(k)\ge\alpha(k0=0k_0=0 のときは P0(f1≥0)=1>αP_0(f_1\ge0)=1>\alpha)。γ=α−G(k0)P0(f1=k0f0)\gamma=\dfrac{\alpha-G(k_0)}{P_0(f_1=k_0f_0)}(分母が 00 のときは G(k0)=αG(k_0)=\alpha で γ=0\gamma=0)と定めれば γ∈[0,1]\gamma\in[0,1] で、E0φk0,γ=G(k0)+γP0(f1=k0f0)=αE_0\varphi_{k_0,\gamma}=G(k_0)+\gamma P_0(f_1=k_0f_0)=\alpha。

2. 最適性。 φ=φk,γ\varphi=\varphi_{k,\gamma} で E0φ=αE_0\varphi=\alpha とし、ψ\psi を E0ψ≤αE_0\psi\le\alpha の検定とする。すべての xx で (φ(x)−ψ(x))(f1(x)−kf0(x))≥0(\varphi(x)-\psi(x))\bigl(f_1(x)-kf_0(x)\bigr)\ge0 が成り立つ:f1>kf0f_1>kf_0 なら φ=1≥ψ\varphi=1\ge\psi、f1<kf0f_1<kf_0 なら φ=0≤ψ\varphi=0\le\psi、f1=kf0f_1=kf_0 なら積は 00。μ\mu で積分して

0≤∫(φ−ψ)(f1−kf0) dμ=(E1φ−E1ψ)−k(E0φ−E0ψ).0\le\int(\varphi-\psi)(f_1-kf_0)\,d\mu=\bigl(E_1\varphi-E_1\psi\bigr)-k\bigl(E_0\varphi-E_0\psi\bigr).

E0φ−E0ψ≥α−α=0E_0\varphi-E_0\psi\ge\alpha-\alpha=0 と k≥0k\ge0 から k(E0φ−E0ψ)≥0k(E_0\varphi-E_0\psi)\ge0 なので、E1φ−E1ψ≥k(E0φ−E0ψ)≥0E_1\varphi-E_1\psi\ge k(E_0\varphi-E_0\psi)\ge0。

3. 一意性。 ψ\psi が水準 α\alpha の MP 検定なら E1ψ=E1φE_1\psi=E_1\varphi で、上の不等式の連鎖から ∫(φ−ψ)(f1−kf0) dμ≤(E1φ−E1ψ)=0\int(\varphi-\psi)(f_1-kf_0)\,d\mu\le (E_1\varphi - E_1\psi) = 0 (k(E0φ−E0ψ)≥0k(E_0\varphi-E_0\psi)\ge0 より)。非負関数の積分が 00 だから (φ−ψ)(f1−kf0)=0(\varphi-\psi)(f_1-kf_0)=0 a.e.。すなわち {f1≠kf0}\{f_1\ne kf_0\} 上で ψ=φ\psi=\varphi a.e.。

直観は「費用対効果」です。棄却域に xx を加えると、第 1 種の誤りの確率が f0(x) dμf_0(x)\,d\mu だけ増え、検出力が f1(x) dμf_1(x)\,d\mu だけ増えます。比 f1/f0f_1/f_0 が大きい点から順に棄却域に入れていくのが、水準 α\alpha の予算の最良の使い方です。

02.5棄却域の境界 cαβH₀H₁
Neyman–Pearson の棄却域。帰無仮説 N(0,1)(細線)と対立仮説 N(2.5,1)(太線)。棄却域は x > c(c = 1.645)で、薄い網掛けは第 1 種の誤り α = 0.05、濃い網掛けは第 2 種の誤り β。

例 3.3(正規分布の平均の検定(分散既知))

Xi∼N(μ,σ2)X_i\sim N(\mu,\sigma^2)(σ2\sigma^2 既知)、H0:μ=0H_0:\mu=0 対 H1:μ=μ1>0H_1:\mu=\mu_1>0。尤度比は f1f0=exp⁡(μ1σ2∑xi−nμ122σ2)\dfrac{f_1}{f_0}=\exp\Bigl(\dfrac{\mu_1}{\sigma^2}\sum x_i-\dfrac{n\mu_1^2}{2\sigma^2}\Bigr) で、xˉ\bar x の増加関数。したがって最強力検定は「xˉ>c\bar x>c で棄却」。水準 α\alpha から c=zασ/nc=z_\alpha\sigma/\sqrt n(zαz_\alpha は標準正規分布の上側 α\alpha 点;α=0.05\alpha=0.05 で 1.6451.645)。検出力は β(μ1)=Pμ1(Xˉ>c)=1−Φ(zα−nμ1/σ)\beta(\mu_1)=P_{\mu_1}(\bar X>c)=1-\Phi\bigl(z_\alpha-\sqrt n\mu_1/\sigma\bigr)。検出力を 1−β01-\beta_0 以上にするのに必要な標本数は n≥((zα+zβ0)σ/μ1)2n\ge\bigl((z_\alpha+z_{\beta_0})\sigma/\mu_1\bigr)^2。α=0.05\alpha=0.05、検出力 0.80.8(z0.2=0.842z_{0.2}=0.842)、効果量 μ1/σ=0.5\mu_1/\sigma=0.5 なら n≥((1.645+0.842)/0.5)2=24.7n\ge\bigl((1.645+0.842)/0.5\bigr)^2=24.7 、すなわち 25 個必要です。

例 3.4(離散分布と確率化)

X∼Bin(10,p)X\sim\mathrm{Bin}(10,p)、H0:p=12H_0:p=\tfrac12 対 H1:p=34H_1:p=\tfrac34。尤度比 ∝3x\propto3^x は xx の増加関数で、棄却域は x≥cx\ge c の形。P0(X≥8)=0.0547P_0(X\ge8)=0.0547、P0(X≥9)=0.0107P_0(X\ge9)=0.0107 で、α=0.05\alpha=0.05 ちょうどには届かない。φ=1{x≥9}+γ1{x=8}\varphi=\mathbf 1\{x\ge9\}+\gamma\mathbf 1\{x=8\} とし、γ=0.05−0.01070.0439=0.893\gamma=\dfrac{0.05-0.0107}{0.0439}=0.893 とすれば E0φ=0.05E_0\varphi=0.05 で、これが MP 検定。非確率的な検定にすると水準は 0.01070.0107 に下がり、検出力が失われる。

対立仮説が複合のとき、すべての対立仮説の母数で同時に最強力な検定を**一様最強力検定(UMP)**といいます。

定義 4.1(UMP 検定)↗

水準 α\alpha の検定 φ\varphi が UMP であるとは、水準 α\alpha の任意の検定 ψ\psi と任意の θ∈Θ1\theta\in\Theta_1 に対し βφ(θ)≥βψ(θ)\beta_\varphi(\theta)\ge\beta_\psi(\theta) が成り立つことである。

UMP 検定が存在するための十分条件が、尤度比の単調性です。

定義 4.2(単調尤度比)↗

実母数 θ\theta の密度の族 {fθ}\{f_\theta\} が統計量 TT について**単調尤度比(MLR)**をもつとは、θ<θ′\theta<\theta' ならば尤度比 fθ′(x)/fθ(x)f_{\theta'}(x)/f_\theta(x) が T(x)T(x) の非減少関数として書けることである。

指数型分布族 fθ=h eη(θ)T−A(θ)f_\theta=h\,e^{\eta(\theta)T-A(\theta)} で η(θ)\eta(\theta) が θ\theta の増加関数なら、fθ′/fθ=exp⁡((η(θ′)−η(θ))T−⋯ )f_{\theta'}/f_\theta=\exp\bigl((\eta(\theta')-\eta(\theta))T-\cdots\bigr) は TT の増加関数なので、MLR です。ベルヌーイ・ポアソン・正規(平均)・指数分布などがこれに当たります。

補題 4.3(MLR のもとでの検出力の単調性)✓

{fθ}\{f_\theta\} が TT について MLR をもち、ψ\psi が非減少関数ならば、θ↦Eθψ(T)\theta\mapsto E_\theta\psi(T) は非減少である。

この補題は、検出力が母数とともに増えることを保証するもので、次の Karlin–Rubin の定理で「θ0\theta_0 以下のどの母数でも第 1 種の誤りが α\alpha 以下」を言うのに使います。証明の方針は、尤度比 Λ\Lambda の平均が 11 であることから、Λ\Lambda が 11 を下回る側と上回る側に TT の値が分かれることを使い、ψ\psi の増加性と合わせて比べる、というものです。

証明(補題 4.3)

θ<θ′\theta<\theta' とし、Λ=fθ′/fθ\Lambda=f_{\theta'}/f_\theta(TT の非減少関数 λ(T)\lambda(T))とおく。EθΛ=1E_\theta\Lambda=1 なので Eθ′ψ(T)−Eθψ(T)=Eθ[(Λ−1)ψ(T)]E_{\theta'}\psi(T)-E_\theta\psi(T)=E_\theta[(\Lambda-1)\psi(T)]。λ\lambda は非減少で平均が 11 なので、ある t0t_0 があって T<t0T<t_0 なら λ(T)≤1\lambda(T)\le1、T>t0T>t_0 なら λ(T)≥1\lambda(T)\ge1 (λ≤1\lambda\le1 の集合と λ≥1\lambda\ge1 の集合が t0t_0 で分かれる)。ψ\psi も非減少なので、(Λ−1)(ψ(T)−ψ(t0))≥0(\Lambda-1)(\psi(T)-\psi(t_0))\ge0 がつねに成り立つ。期待値をとって Eθ[(Λ−1)ψ(T)]≥ψ(t0)Eθ[Λ−1]=0E_\theta[(\Lambda-1)\psi(T)]\ge\psi(t_0)E_\theta[\Lambda-1]=0。

定理 4.4(Karlin–Rubin の定理)✓

{fθ}\{f_\theta\} が TT について MLR をもつとし、片側仮説 H0:θ≤θ0H_0:\theta\le\theta_0 対 H1:θ>θ0H_1:\theta>\theta_0 を考える。Eθ0φ=αE_{\theta_0}\varphi=\alpha となる c,γc,\gamma を選び

φ(x)={1T(x)>cγT(x)=c0T(x)<c\varphi(x)=\begin{cases}1&T(x)>c\\\gamma&T(x)=c\\0&T(x)<c\end{cases}

とおくと、φ\varphi は水準 α\alpha の UMP 検定で、検出力関数 βφ(θ)\beta_\varphi(\theta) は θ\theta の非減少関数である。

証明(定理 4.4)

φ\varphi は TT の非減少関数なので、補題 4.3 より βφ\beta_\varphi は非減少。したがって sup⁡θ≤θ0βφ(θ)=βφ(θ0)=α\sup_{\theta\le\theta_0}\beta_\varphi(\theta)=\beta_\varphi(\theta_0)=\alpha で、φ\varphi は水準 α\alpha の検定である。 任意の θ1>θ0\theta_1>\theta_0 を固定し、単純仮説 H0′:θ=θ0H_0':\theta=\theta_0 対 H1′:θ=θ1H_1':\theta=\theta_1 を考える。尤度比 Λ=fθ1/fθ0=λ(T)\Lambda=f_{\theta_1}/f_{\theta_0}=\lambda(T) は TT の非減少関数。k=λ(c)k=\lambda(c) とおく(cc で TT が正の確率をもつとき。そうでなければ {T<c}\{T<c\} と {T>c}\{T>c\} の境界で適当に取る)。λ(T)>k\lambda(T)>k なら T>cT>c、λ(T)<k\lambda(T)<k なら T<cT<c なので、φ=1\varphi=1 on {Λ>k}\{\Lambda>k\}、φ=0\varphi=0 on {Λ<k}\{\Lambda<k\}。すなわち φ\varphi は 定義 3.1 の形で、Eθ0φ=αE_{\theta_0}\varphi=\alpha。定理 3.2 の 2(その証明は k≥0k\ge0 と点ごとの不等式のみを使う)により、Eθ0ψ≤αE_{\theta_0}\psi\le\alpha の任意の検定 ψ\psi に対し Eθ1ψ≤Eθ1φE_{\theta_1}\psi\le E_{\theta_1}\varphi。元の問題の水準 α\alpha の検定 ψ\psi は Eθ0ψ≤αE_{\theta_0}\psi\le\alpha をみたすので、すべての θ1>θ0\theta_1>\theta_0 で βψ(θ1)≤βφ(θ1)\beta_\psi(\theta_1)\le\beta_\varphi(\theta_1)。

したがって、正規分布の平均の片側 zz 検定(Xˉ>c\bar X>c)、二項分布の片側検定、ポアソン分布の片側検定はいずれも UMP です。

両側仮説には UMP 検定は存在しません。 正規分布の平均で H0:μ=0H_0:\mu=0 対 H1:μ≠0H_1:\mu\ne0 を考えます。μ1>0\mu_1>0 に対する MP 検定は、例 3.3 から {xˉ>c}\{\bar x>c\} (の上で {f1≠kf0}\{f_1\ne kf_0\} が全体なので、定理 3.2 の 3 により a.e. 一意)。μ1<0\mu_1<0 に対する MP 検定は {xˉ<−c}\{\bar x<-c\} で、2 つは a.e. に異なる。もし UMP 検定 φ\varphi があれば、μ1>0\mu_1>0 と μ1<0\mu_1<0 の両方で MP でなければならないから、一意性により φ=1{xˉ>c}\varphi=\mathbf 1\{\bar x>c\} a.e. かつ φ=1{xˉ<−c}\varphi=\mathbf 1\{\bar x<-c\} a.e. となり矛盾する。実際には、対称な両側検定 ∣xˉ∣>c′|\bar x|>c' が(不偏性、すなわち対立仮説のもとでの棄却確率が水準 α\alpha を下回らないという追加の条件のもとで)最良であることが示せますが、本記事では扱いません。

一般のモデルでは UMP 検定は存在しません。そこで、尤度比を使う汎用の検定を作ります。

定義 5.1(尤度比検定統計量)↗

H0:θ∈Θ0H_0:\theta\in\Theta_0 対 H1:θ∈Θ∖Θ0H_1:\theta\in\Theta\setminus\Theta_0 に対し、尤度比 Λn=sup⁡θ∈ΘLn(θ)sup⁡θ∈Θ0Ln(θ)≥1\Lambda_n=\dfrac{\sup_{\theta\in\Theta}L_n(\theta)}{\sup_{\theta\in\Theta_0}L_n(\theta)}\ge1 を定める。θ^n\hat\theta_n を全体の MLE、θ^n,0\hat\theta_{n,0} を Θ0\Theta_0 での最尤推定量とすると、検定統計量は

2log⁡Λn=2(ℓn(θ^n)−ℓn(θ^n,0)).2\log\Lambda_n=2\bigl(\ell_n(\hat\theta_n)-\ell_n(\hat\theta_{n,0})\bigr).

大きな値のとき H0H_0 を棄却する。

この統計量の分布は一般には計算できません。しかし、nn が大きいときに、モデルによらない普遍的な分布が現れます。自由度 rr のカイ二乗分布 χr2\chi^2_r は、Z1,…,ZrZ_1,\dots,Z_r を独立な N(0,1)N(0,1) 変数として Z12+⋯+Zr2Z_1^2+\cdots+Z_r^2 の分布と定義します(密度などの性質は線形モデルで扱います)。上側 5%5\% 点は χ12:3.841\chi^2_{1}:3.841、χ22:5.991\chi^2_2:5.991、χ32:7.815\chi^2_3:7.815 です。

多母数の場合に正則条件 (R) を拡張した条件を (Rk_k) とします:θ∈Θ⊂Rk\theta\in\Theta\subset\mathbb R^k(開集合)、log⁡f\log f は θ\theta について C3C^3 級、Fisher 情報行列 I(θ)=E[ssT]=−E[∇2log⁡f]I(\theta)=E[s s^{\mathsf T}]=-E[\nabla^2\log f] が正定値、第 3 微分が θ0\theta_0 の近傍で M(x)M(x) で抑えられ EM<∞E M<\infty、識別可能。このとき 一致する根の存在(定理 5.2)[点推定と漸近理論] と 漸近正規性(定理 6.1)[点推定と漸近理論] が多母数版でも同じ証明で成り立つ(中心極限定理を Cramér–Wold の方法(系 4.9)[特性関数と Gauss ベクトル] でベクトルに拡張する)ので、以下はそれを使います。

定理 5.2(Wilks の定理)✓

(Rk_k) のもとで、母数を θ=(ψ,λ)\theta=(\psi,\lambda)(ψ∈Rr\psi\in\mathbb R^r が検定の対象、λ∈Rk−r\lambda\in\mathbb R^{k-r} が局外母数)と分け、帰無仮説を H0:ψ=ψ0H_0:\psi=\psi_0 とする。H0H_0 が真の値 θ0=(ψ0,λ0)\theta_0=(\psi_0,\lambda_0) について成り立つとき、

2log⁡Λn→dχr2.2\log\Lambda_n\xrightarrow{d}\chi^2_r.

とくに r=kr=k(単純仮説)のときは 2(ℓn(θ^n)−ℓn(θ0))→χk22(\ell_n(\hat\theta_n)-\ell_n(\theta_0))\to\chi^2_k。

定理の中の局外母数とは、検定の対象ではないが、モデルには含まれていて推定が必要な母数のことです(正規分布の平均を調べるときの分散など)。証明の方針は、対数尤度を真の値のまわりで 2 次まで展開して、2log⁡Λn2\log\Lambda_n を正規分布に従うベクトルの長さの二乗に直すことです。全体の最尤推定量では kk 個の方向すべてが、制限付きの推定量では k−rk-r 個の方向が使われるので、差をとると rr 個の方向だけが残ります。この「方向を数える」部分を直交射影で書いたのが、一般の場合の後半です。

証明(定理 5.2)

まず r=k=1r=k=1 (スカラー、単純仮説)を示す。ℓn′(θ^)=0\ell_n'(\hat\theta)=0 で、θ0\theta_0 を θ^\hat\theta のまわりでテイラー展開(ラグランジュの剰余)すると、ある θ∗\theta^* について ℓn(θ0)=ℓn(θ^)+12ℓn′′(θ∗)(θ0−θ^)2\ell_n(\theta_0)=\ell_n(\hat\theta)+\tfrac12\ell_n''(\theta^*)(\theta_0-\hat\theta)^2。よって

2(ℓn(θ^)−ℓn(θ0))=[−ℓn′′(θ∗)n]⋅[n(θ^−θ0)]2.2\bigl(\ell_n(\hat\theta)-\ell_n(\theta_0)\bigr)=\Bigl[-\frac{\ell_n''(\theta^*)}n\Bigr]\cdot\bigl[\sqrt n(\hat\theta-\theta_0)\bigr]^2.

漸近正規性(定理 6.1)[点推定と漸近理論] の証明と同じく、θ∗→θ0\theta^*\to\theta_0 (θ^→θ0\hat\theta\to\theta_0 より)で、(R) の第 3 微分の評価から第 1 の括弧は I(θ0)I(\theta_0) に確率収束し、第 2 の括弧は N(0,1/I(θ0))2N(0,1/I(\theta_0))^2 へ分布収束する。スルツキーの定理(命題 6.1)[大数の法則と中心極限定理] により積は I(θ0)⋅Z2/I(θ0)=Z2∼χ12I(\theta_0)\cdot Z^2/I(\theta_0)=Z^2\sim\chi^2_1(Z∼N(0,1)Z\sim N(0,1))に収束する。

一般の場合。Rk\mathbb R^k のスコア Sn=∇ℓn(θ0)S_n=\nabla\ell_n(\theta_0) に対し、Wn=I−1/2Sn/nW_n=I^{-1/2}S_n/\sqrt n(I=I(θ0)I=I(\theta_0)、I1/2I^{1/2} は正定値な平方根)は、多次元の中心極限定理により Wn→dW∼N(0,1k)W_n\xrightarrow{d}W\sim N(0,\mathbb 1_k) (各スコアの共分散が II なので)。同様のテイラー展開(スカラー関数 t↦ℓn(θ^+t(θ0−θ^))t\mapsto\ell_n(\hat\theta+t(\theta_0-\hat\theta)) に適用)で、全体の MLE θ^\hat\theta について

n(θ^−θ0)=I−1Sn/n+oP(1)=I−1/2Wn+oP(1),2(ℓn(θ^)−ℓn(θ0))=∥Wn∥2+oP(1).\sqrt n(\hat\theta-\theta_0)=I^{-1}S_n/\sqrt n+o_P(1)=I^{-1/2}W_n+o_P(1),\qquad2\bigl(\ell_n(\hat\theta)-\ell_n(\theta_0)\bigr)=\|W_n\|^2+o_P(1).

次に制限付き MLE θ^0=(ψ0,λ^0)\hat\theta_0=(\psi_0,\hat\lambda_0) を調べる。H0H_0 のもとでは、λ\lambda だけを母数とするモデル f(x;ψ0,λ)f(x;\psi_0,\lambda) にも (Rk−r_{k-r}) が成り立つので、一致する根 λ^0\hat\lambda_0 がある。λ^0\hat\lambda_0 は ∂λℓn(ψ0,λ)=0\partial_\lambda\ell_n(\psi_0,\lambda)=0 の一致する根で、スコアの λ\lambda 成分 Snλ=EλTSnS_n^\lambda=E_\lambda^{\mathsf T}S_n (EλE_\lambda は λ\lambda 成分を取り出す k×(k−r)k\times(k-r) の行列)をテイラー展開して

n(λ^0−λ0)=Iλλ−1Snλ/n+oP(1),Iλλ=EλTIEλ.\sqrt n(\hat\lambda_0-\lambda_0)=I_{\lambda\lambda}^{-1}S_n^\lambda/\sqrt n+o_P(1),\qquad I_{\lambda\lambda}=E_\lambda^{\mathsf T}IE_\lambda.

全体の場合と同様に 2(ℓn(θ^0)−ℓn(θ0))=(Snλ)TIλλ−1Snλ/n+oP(1)2(\ell_n(\hat\theta_0)-\ell_n(\theta_0))=(S_n^\lambda)^{\mathsf T}I_{\lambda\lambda}^{-1}S_n^\lambda/n+o_P(1)。B=I1/2EλB=I^{1/2}E_\lambda(k×(k−r)k\times(k-r))とおくと、BTB=IλλB^{\mathsf T}B=I_{\lambda\lambda} で、P=B(BTB)−1BTP=B(B^{\mathsf T}B)^{-1}B^{\mathsf T} は Rk\mathbb R^k の階数 k−rk-r の直交射影であり、この式は WnTPWnW_n^{\mathsf T}PW_n に等しい(Sn/n=I1/2WnS_n/\sqrt n=I^{1/2}W_n を代入)。したがって

2log⁡Λn=2(ℓn(θ^)−ℓn(θ0))−2(ℓn(θ^0)−ℓn(θ0))=∥Wn∥2−∥PWn∥2+oP(1)=∥(1−P)Wn∥2+oP(1).2\log\Lambda_n=2\bigl(\ell_n(\hat\theta)-\ell_n(\theta_0)\bigr)-2\bigl(\ell_n(\hat\theta_0)-\ell_n(\theta_0)\bigr)=\|W_n\|^2-\|PW_n\|^2+o_P(1)=\|(\mathbb 1-P)W_n\|^2+o_P(1).

x↦∥(1−P)x∥2x\mapsto\|(\mathbb 1-P)x\|^2 は連続なので、Wn→dWW_n\xrightarrow{d}W から ∥(1−P)Wn∥2→d∥(1−P)W∥2\|(\mathbb 1-P)W_n\|^2\xrightarrow{d}\|(\mathbb 1-P)W\|^2。1−P\mathbb 1-P は階数 rr の直交射影だから、適当な直交行列 OO で OT(1−P)O=diag(1r,0k−r)O^{\mathsf T}(\mathbb 1-P)O=\mathrm{diag}(1_r,0_{k-r}) と書け(スペクトル定理(定理 4.2)[スペクトル定理])、OW∼N(0,1k)OW\sim N(0,\mathbb 1_k) (Gauss ベクトルの構造(定理 5.2)[特性関数と Gauss ベクトル] の 4)なので、∥(1−P)W∥2\|(\mathbb 1-P)W\|^2 は OWOW の最初の rr 成分の二乗和 ∼χr2\sim\chi^2_r。最後に 命題 6.1[大数の法則と中心極限定理] で oP(1)o_P(1) の項を除く。

例 5.3(二項比率の 3 つの検定統計量)

X∼Bin(n,p)X\sim\mathrm{Bin}(n,p)、H0:p=p0H_0:p=p_0。(i) 尤度比:2log⁡Λ=2[tlog⁡p^p0+(n−t)log⁡1−p^1−p0]2\log\Lambda=2\bigl[t\log\frac{\hat p}{p_0}+(n-t)\log\frac{1-\hat p}{1-p_0}\bigr]。(ii) Wald:(p^−p0)2p^(1−p^)/n\dfrac{(\hat p-p_0)^2}{\hat p(1-\hat p)/n}(MLE の漸近分散 1/(nI(p^))1/(nI(\hat p)) で標準化)。(iii) スコア:(p^−p0)2p0(1−p0)/n\dfrac{(\hat p-p_0)^2}{p_0(1-p_0)/n}(帰無仮説のもとでの分散で標準化)。3 つとも H0H_0 のもとで χ12\chi^2_1 に分布収束する。n=100n=100、t=62t=62、p0=0.5p_0=0.5 では、尤度比 5.825.82、Wald 6.116.11、スコア 5.765.76 で、いずれも χ1,0.952=3.841\chi^2_{1,0.95}=3.841 を超え、H0H_0 を棄却する(近似 pp 値は約 0.0160.016)。冒頭の新薬の問いへの答えは、「改善率 50% という仮説は 5% 水準で棄却される」です。

注意 5.4(一般の入れ子仮説)

定理 5.2 は局外母数を含む ψ=ψ0\psi=\psi_0 の形の仮説でしたが、Θ0\Theta_0 が一般の滑らかな部分多様体(制約が rr 個)のときも、適当な座標変換でこの形になるので、同じ結論 2log⁡Λn→χr22\log\Lambda_n\to\chi^2_r が成り立ちます。ただし Θ0\Theta_0 が境界を含む場合(分散成分の検定 σ2=0\sigma^2=0 など)や、識別が破れる場合(混合分布の成分数の検定)は成り立たず、極限が χ2\chi^2 分布の混合などになります。

定義 6.1(信頼集合)↗

観測から作る母数空間の部分集合 C(X)C(X) が信頼係数 1−α1-\alpha の信頼集合であるとは、すべての θ\theta で Pθ(θ∈C(X))≥1−αP_\theta(\theta\in C(X))\ge1-\alpha が成り立つことである。Θ⊂R\Theta\subset\mathbb R で CC が区間のとき信頼区間という。

信頼区間の 95% は、「この区間に真の値が入っている確率が 95%」ではなく、「この手続きを繰り返したとき、区間が真の値を覆う割合が 95%」という意味です。真の値は定数なので、データを得た後の区間について確率は 00 か 11 です。

定理 6.2(検定と信頼集合の双対性)✓

各 θ0∈Θ\theta_0\in\Theta に対し、H0:θ=θ0H_0:\theta=\theta_0 の水準 α\alpha の非確率的な検定の受容域を A(θ0)A(\theta_0) (H0H_0 を棄却しない xx の集合)とする。このとき C(x)={θ0:x∈A(θ0)}C(x)=\{\theta_0:x\in A(\theta_0)\} は信頼係数 1−α1-\alpha の信頼集合である。逆に、信頼集合 C(x)C(x) が与えられたとき、A(θ0)={x:θ0∈C(x)}A(\theta_0)=\{x:\theta_0\in C(x)\} は水準 α\alpha の検定の受容域である。

証明(定理 6.2)

x∈A(θ)  ⟺  θ∈C(x)x\in A(\theta)\iff\theta\in C(x) なので、Pθ(θ∈C(X))=Pθ(X∈A(θ))≥1−αP_\theta(\theta\in C(X))=P_\theta(X\in A(\theta))\ge1-\alpha(水準 α\alpha の検定は H0H_0 が真のとき棄却する確率が α\alpha 以下)。逆も同じ等式による。

したがって、良い検定は良い信頼区間を与えます。例 3.3 の zz 検定の受容域 ∣xˉ−μ0∣≤zα/2σ/n|\bar x-\mu_0|\le z_{\alpha/2}\sigma/\sqrt n を反転すると、σ2\sigma^2 既知の正規分布の平均の信頼区間 Xˉ±zα/2σ/n\bar X\pm z_{\alpha/2}\sigma/\sqrt n を得ます。

漸近的には、3 つの検定統計量がそれぞれ区間を与えます。

定理 6.3(漸近信頼区間)✓

(R) のもとで、θ^n\hat\theta_n を一致する根、zα/2z_{\alpha/2} を標準正規分布の上側 α/2\alpha/2 点、I(θ)I(\theta) は連続とする。

  1. Wald 区間 θ^n±zα/2/nI(θ^n)\hat\theta_n\pm z_{\alpha/2}/\sqrt{nI(\hat\theta_n)} の被覆確率は n→∞n\to\infty で 1−α1-\alpha に収束する。
  2. 尤度比区間 {θ:2(ℓn(θ^n)−ℓn(θ))≤χ1,1−α2}\{\theta:2(\ell_n(\hat\theta_n)-\ell_n(\theta))\le\chi^2_{1,1-\alpha}\} の被覆確率も 1−α1-\alpha に収束する。
証明(定理 6.3)
  1. θ0\theta_0 を真の値とする。定理 6.1[点推定と漸近理論] より nI(θ0)(θ^n−θ0)→dN(0,1)\sqrt{nI(\theta_0)}(\hat\theta_n-\theta_0)\xrightarrow{d}N(0,1)。θ^n→θ0\hat\theta_n\to\theta_0 と II の連続性から I(θ^n)/I(θ0)→P1\sqrt{I(\hat\theta_n)/I(\theta_0)}\xrightarrow{P}1 。スルツキーの定理で nI(θ^n)(θ^n−θ0)→dN(0,1)\sqrt{nI(\hat\theta_n)}(\hat\theta_n-\theta_0)\xrightarrow{d}N(0,1) 。被覆事象は ∣nI(θ^n)(θ^n−θ0)∣≤zα/2|\sqrt{nI(\hat\theta_n)}(\hat\theta_n-\theta_0)|\le z_{\alpha/2} で、極限の分布関数が連続なので確率は P(∣Z∣≤zα/2)=1−αP(|Z|\le z_{\alpha/2})=1-\alpha に収束する。2. 被覆事象は 2(ℓn(θ^n)−ℓn(θ0))≤χ1,1−α22(\ell_n(\hat\theta_n)-\ell_n(\theta_0))\le\chi^2_{1,1-\alpha} で、定理 5.2 により統計量は χ12\chi^2_1 に分布収束し、χ12\chi^2_1 の分布関数は連続なので確率は 1−α1-\alpha に収束する。

例 6.4(小標本での比率の信頼区間)

n=20n=20、t=2t=2(p^=0.1\hat p=0.1)、95%95\% の区間。Wald 区間:0.1±1.960.1⋅0.9/20=(−0.031, 0.231)0.1\pm1.96\sqrt{0.1\cdot0.9/20}=(-0.031,\ 0.231) で、下限が負という不合理な値になる。尤度比区間:2(ℓ(p^)−ℓ(p))≤3.8412(\ell(\hat p)-\ell(p))\le3.841 を数値的に解いて (0.017, 0.278)(0.017,\ 0.278)。スコア(Wilson)区間:スコア検定の受容域 ∣p^−p∣≤zp(1−p)/n|\hat p-p|\le z\sqrt{p(1-p)/n} を pp について解く。両辺を 2 乗して (p^−p)2≤z2p(1−p)/n(\hat p-p)^2\le z^2p(1-p)/n は pp の 2 次不等式で、解は

p^+z22n±zp^(1−p^)n+z24n21+z2n\frac{\hat p+\frac{z^2}{2n}\pm z\sqrt{\frac{\hat p(1-\hat p)}n+\frac{z^2}{4n^2}}}{1+\frac{z^2}n}

に等しく、n=20n=20、p^=0.1\hat p=0.1 で (0.028, 0.301)(0.028,\ 0.301)。真の被覆確率は Wald 区間が小標本・極端な pp で名目水準を大きく下回ることがよく知られており、Wilson 区間や尤度比区間のほうが推奨されます。3 つの区間は n→∞n\to\infty で一致します。

演習 7.1標準

X1,…,XnX_1,\dots,X_n を Exp(λ)\mathrm{Exp}(\lambda) の i.i.d. 標本とし、H0:λ=λ0H_0:\lambda=\lambda_0 対 H1:λ=λ1H_1:\lambda=\lambda_1(λ1<λ0\lambda_1<\lambda_0)の最強力検定の形を求めよ。さらに、これが H1:λ<λ0H_1:\lambda<\lambda_0 に対する UMP 検定であることを示せ。

解答

尤度比 f1f0=(λ1λ0)nexp⁡((λ0−λ1)∑xi)\dfrac{f_1}{f_0}=\Bigl(\dfrac{\lambda_1}{\lambda_0}\Bigr)^n\exp\bigl((\lambda_0-\lambda_1)\sum x_i\bigr) は λ0−λ1>0\lambda_0-\lambda_1>0 から T=∑xiT=\sum x_i の増加関数。したがって棄却域は T>cT>c 。T∼Gamma(n,λ0)T\sim\mathrm{Gamma}(n,\lambda_0) で cc を水準 α\alpha から決める。この形は λ1<λ0\lambda_1<\lambda_0 によらないので、λ=λ0\lambda=\lambda_0 対 λ<λ0\lambda<\lambda_0 の UMP 検定。MLR は λ\lambda について減少関数だが、θ=−λ\theta=-\lambda とすれば 定理 4.4 そのもの。

演習 7.2易

σ=2\sigma=2、H0:μ=0H_0:\mu=0 対 H1:μ=1H_1:\mu=1、α=0.05\alpha=0.05(片側)、検出力 0.90.9(z0.1=1.282z_{0.1}=1.282)となる最小の標本数 nn を求めよ。

解答

n≥((1.645+1.282)⋅2/1)2=34.3n\ge\bigl((1.645+1.282)\cdot2/1\bigr)^2=34.3。したがって n=35n=35。

演習 7.3標準

Xi∼N(0,σ2)X_i\sim N(0,\sigma^2) (平均 00 既知)、H0:σ2=σ02H_0:\sigma^2=\sigma_0^2 の尤度比検定統計量 2log⁡Λn2\log\Lambda_n を求め、S=∑Xi2/σ02S=\sum X_i^2/\sigma_0^2 の関数として表せ。nn が大きいときの分布を述べよ。

解答

σ^2=1n∑Xi2\hat\sigma^2=\frac1n\sum X_i^2、ℓ=−n2log⁡σ2−∑xi22σ2\ell=-\frac n2\log\sigma^2-\frac{\sum x_i^2}{2\sigma^2}。2log⁡Λn=2(ℓ(σ^2)−ℓ(σ02))=−nlog⁡σ^2σ02−n+∑xi2σ022\log\Lambda_n=2(\ell(\hat\sigma^2)-\ell(\sigma_0^2))=-n\log\frac{\hat\sigma^2}{\sigma_0^2}-n+\frac{\sum x_i^2}{\sigma_0^2}。S=nσ^2/σ02S=n\hat\sigma^2/\sigma_0^2 とすると 2log⁡Λn=S−n−nlog⁡(S/n)2\log\Lambda_n=S-n-n\log(S/n)。H0H_0 のもとで 定理 5.2 により χ12\chi^2_1 に分布収束する(S∼χn2S\sim\chi^2_n の正確な分布からも確かめられる)。

演習 7.4標準

連続な検定統計量で H0H_0 が真のとき、独立な 100 回の検定のうち、p≤0.05p\le0.05 となる回数の分布を述べ、少なくとも 1 回 p≤0.05p\le0.05 が出る確率を求めよ(多重比較問題)。

解答

命題 2.2 より各回 P(p≤0.05)=0.05P(p\le0.05)=0.05 で、回数は Bin(100,0.05)\mathrm{Bin}(100,0.05)(平均 55)。少なくとも 1 回の確率は 1−0.95100=0.9941-0.95^{100}=0.994。複数の検定を行うときは水準の補正(Bonferroni の補正:各検定を α/100\alpha/100 で行う)が必要。

  • E. L. Lehmann and Joseph P. Romano, Testing Statistical Hypotheses, 3rd ed., Springer, 2005 — 第 3 章(Neyman–Pearson と UMP)、第 12 章(漸近理論)。
  • J. Neyman and E. S. Pearson, “On the Problem of the Most Efficient Tests of Statistical Hypotheses”, Philosophical Transactions of the Royal Society A 231 (1933), 289–337。
  • S. S. Wilks, “The Large-Sample Distribution of the Likelihood Ratio for Testing Composite Hypotheses”, Annals of Mathematical Statistics 9 (1938), 60–62。
  • A. W. van der Vaart, Asymptotic Statistics, Cambridge University Press, 1998 — 第 16 章(尤度比検定)。
  • Lawrence D. Brown, T. Tony Cai and Anirban DasGupta, “Interval Estimation for a Binomial Proportion”, Statistical Science 16 (2001), 101–133。

このテーマの 100 本ノック(50 問)

執筆: Claude Code(Sonnet 5.5)・監査 2 回(Claude Code)・最終 2026-10-12

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