格子場の理論
Montvay–Münster『Quantum Fields on a Lattice』の範囲(Euclid 化・転送行列・反射正値性、スカラー場、ゲージ場、フェルミオン、QCD、Higgs・湯川、アルゴリズム)を中心に、
想定読者: 研究者・博士課程以上
前提テーマ:場の量子論、公理的場の量子論、確率論、関数解析と作用素論
目次
- 第 1 章Euclid 経路積分と転送行列本量子力学の Euclid 経路積分を Trotter 積公式で厳密に導き、時間格子の転送行列 T=e^{-aH} から分配関数・相関関数・質量ギャップと相関長 ξ=1/(am) の関係を示す。調和振動子を厳密に解き、連続極限が臨界点で取られる理由を説明する。
- 第 2 章反射正値性と格子からの Hilbert 空間の再構成本格子上の時間反射とサイト反射・リンク反射の反射正値性を定義し、最近接相互作用のスカラー場で証明する。そこから物理的 Hilbert 空間と自己共役な転送行列を再構成し、チェッカーボード評価と有効質量の単調性を導き、改良作用で反射正値性が壊れる例を示す。
- 第 3 章格子スカラー場:φ⁴ 理論・摂動論・hopping 展開本格子 φ⁴ 理論を hopping parameter κ と 4 次結合 λ で書き、連続理論の質量・結合との対応、自由場の伝播関数と分散関係、格子摂動論と超立方対称性からの O(4) 回復、κ についての高温展開と Ising 極限・相構造を導く。
- 第 4 章φ⁴ 理論の自明性・有限体積効果・O(N) 模型本格子 φ⁴ 理論のくりこまれた結合を感受率から定義し、4 次元の自明性を Lüscher–Weisz の解析と Aizenman・Aizenman–Duminil-Copin の厳密結果から論じる。Higgs 質量の上限、有限体積効果と零モード、O(N) 模型と大 N 展開も扱う。
- 第 5 章格子ゲージ場:Wilson 作用・Haar 測度・Elitzur の定理本リンク変数とプラケットで Wilson 作用を定義して古典連続極限で Yang–Mills 作用を回復し、Haar 測度による分配関数がゲージ固定なしで定まることと、局所ゲージ対称性は自発的に破れないという Elitzur の定理を証明する。
- 第 6 章強結合展開と閉じ込め:Wilson ループの面積則・静的ポテンシャル・相構造本Haar 積分の公式と中心による選択則から、強結合の Wilson ループが最小面積で決まる面積則 (β/2N²)^Area に従うことを証明し、静的ポテンシャル・グルーボール・Polyakov ループと中心対称性、コンパクト U(1) と SU(N) の相構造を論じる。
- 第 7 章格子フェルミオン:Grassmann 積分・doubling・Wilson と staggered・Nielsen–Ninomiya本Berezin 積分で格子フェルミオンの経路積分を定義し、素朴な格子化が 2^d 個の doubler を生むこと、Wilson 項と staggered 化による対処とその代償、Nielsen–Ninomiya の定理の位相的証明、格子 QED の作用と反射正値性までを扱う。
- 第 8 章格子上のカイラル対称性:Ginsparg–Wilson 関係・overlap・domain wall本Ginsparg–Wilson 関係と Lüscher の修正されたカイラル対称性を定式化し、Neuberger の overlap 演算子がそれを満たすこと、格子上の指数定理とアノマリー、domain wall フェルミオンの局在モード、カイラルゲージ理論の未解決問題までを証明つきで扱う。
- 第 9 章格子 QCD:連続極限・スケール設定・ハドロン質量・有限温度本Wilson ゲージ作用と Wilson・staggered・ドメインウォールのクォークで格子 QCD を定義し、2 ループの Λ パラメータ公式による連続極限、Sommer スケール、有効質量によるハドロン質量の読み取り、GMOR 関係、有限温度と符号問題を扱う。
- 第 10 章格子 Higgs 模型と湯川模型:Fradkin–Shenker の相補性本ゲージ–Higgs 模型の格子作用と相構造を定め、基本表現の Higgs では閉じ込め領域と Higgs 領域が解析的につながるという Osterwalder–Seiler・Fradkin–Shenker の定理をクラスター展開で証明し、ゲージ不変な Higgs 機構の記述と格子湯川模型のミラーフェルミオン問題を扱う。
- 第 11 章モンテカルロ法:Metropolis・熱浴・HMC・クラスター・誤差解析本詳細つり合いと Doeblin 条件から平衡分布への収束を証明し、Metropolis・SU(2) 熱浴・擬フェルミオンと HMC・Swendsen–Wang 法がいずれも正しい分布を生むことを示す。積分自己相関時間・ビニング・ジャックナイフの公式も導く。
- 第 12 章Symanzik 改良・gradient flow・Lüscher の有限体積公式本Symanzik の有効理論で格子アーティファクトを分類し、clover 項と Lüscher–Weisz ゲージ作用による改良を導く。Wilson flow とスケール t0、流れた場の有限性、Lüscher の質量補正と 2 粒子の位相差公式、Schrödinger 汎関数によるくりこみを述べる。
- 第 13 章ハミルトニアン格子ゲージ理論と量子シミュレーション本時間方向の格子間隔を 0 にする極限で転送行列から Kogut–Susskind ハミルトニアンを導き、リンク空間 L²(G)・色電場・Gauss の法則を定式化する。強結合の質量ギャップ、Schwinger 模型・量子リンク模型・トーリック符号、量子シミュレーションと Fock 空間の運動量切断との辞書をまとめる。
- 第 14 章Wilson・staggered フェルミオンの転送行列本Wilson フェルミオンを含む格子ゲージ理論の反射正値性を 0<r≤1 で証明し r>1 で破れることを示す。r=1 で Lüscher の自己共役かつ正の転送行列を構成し、r≠1 の時間方向の doubler と staggered の 2 段転送作用素を調べる。
- 第 15 章格子上の微分形式とゲージ固定本超立方格子のコチェインと離散外微分を定義し、格子 Hodge 分解・Poincaré 補題・非可換 Bianchi 恒等式を証明する。トーラス上の平坦な配位(トーロン)を分類し、Landau ゲージの Gribov コピーを具体的に構成する。
- 第 16 章格子 Dirac 作用素のスペクトル本γ5 エルミート性によるスペクトルの対称性から始め、格子 Dirac 作用素の 2 乗の Lichnerowicz 型公式と許容ゲージ場での Wilson 作用素のギャップ、ランダムな格子作用素の Wegner 評価、ベクトル的対称性の自発的破れを禁じる Vafa–Witten の定理を証明する。
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