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格子フェルミオン:Grassmann 積分・doubling・Wilson と staggered・Nielsen–Ninomiya の定理

対象読者: 本テーマ第 1〜6 章を学び、Dirac 方程式とガンマ行列、学部の線形代数(行列式・固有値)を知っている人。Grassmann 代数は一から導入します。

前提となる記事:強結合展開と閉じ込め:Wilson ループの面積則・静的ポテンシャル・相構造

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電子やクォークのような粒子(フェルミオン)を、とびとびの格子点の上に置いて計算機で扱いたいとします。連続の方程式をそのまま格子に写すと、1 種類の粒子を入れたつもりが 16 種類に増えてしまいます。この記事は、この増殖がなぜ起こるか、どう抑えるか、抑えるために何を手放すことになるかを順に見ます。読み終えると、Wilson 型と staggered 型の格子フェルミオンの違いと、どんな工夫でも避けられない制約(Nielsen–Ninomiya の定理)の意味を説明できるようになります。以下の箇条書きは全体の見取り図なので、分からない言葉があっても先に進んで構いません。

  • フェルミオンの Euclid 経路積分は、反可換な生成元の Grassmann 代数の上の線形汎関数(Berezin 積分)として定義します。測度の規約を固定すると ∫[dψˉ dψ] e−ψˉMψ=det⁡M\int[d\bar\psi\,d\psi]\,e^{-\bar\psi M\psi}=\det M と ⟨ψiψˉj⟩=(M−1)ij\langle\psi_i\bar\psi_j\rangle=(M^{-1})_{ij} が厳密に成り立ち、格子フェルミオンは「行列式と逆行列」の問題になります。
  • 対称差分による素朴な格子 Dirac 作用素 D~N(p)=ia∑μγμsin⁡(apμ)\tilde D_{\mathrm N}(p)=\frac{i}{a}\sum_\mu\gamma_\mu\sin(ap_\mu) は Brillouin 域の 2d2^d 個の頂点 p=πA/ap=\pi_A/a で零になり、各頂点に連続極限で独立な Dirac 粒子が 1 種ずつ現れます(doubling)。頂点 AA の粒子のカイラリティは (−1)∣A∣(-1)^{|A|} 倍に反転し、軸性電荷は打ち消し合います。
  • Wilson 項 −ar2∇μ∗∇μ-\frac{ar}{2}\nabla^*_\mu\nabla_\mu は頂点 AA の粒子に質量 2r∣A∣/a2r|A|/a を与えて doubler を除きますが、{γ5,DW}≠0\{\gamma_5,D_{\mathrm W}\}\ne0 となりカイラル対称性を明示的に壊します。代わりに γ5\gamma_5-エルミート性 DW∗=γ5DWγ5D_{\mathrm W}^*=\gamma_5D_{\mathrm W}\gamma_5 が残り、det⁡(DW+m)\det(D_{\mathrm W}+m) は実数です。
  • Kogut–Susskind(staggered)フェルミオンは、スピン対角化 ψ(x)=γ1n1γ2n2γ3n3γ4n4χ(x)\psi(x)=\gamma_1^{n_1}\gamma_2^{n_2}\gamma_3^{n_3}\gamma_4^{n_4}\chi(x) で素朴作用を 4 つの同一な 1 成分作用に分け、1 つだけを残したものです。16 種が 4 種(taste)に減り、質量 0 で厳密な U(1)ε\mathrm U(1)_\varepsilon 対称性が残ります。
  • Nielsen–Ninomiya の定理: 局所的(運動量空間で滑らか)・並進不変・カイラル対称な格子作用では、Weyl 演算子の零点の指数(巻き付き数)の総和が 0 になり、右巻きと左巻きの粒子が同数現れます。証明は tr(σ−1dσ)d−1\mathrm{tr}(\sigma^{-1}d\sigma)^{d-1} が閉形式であることと Stokes の定理だけで済みます。
  • 格子 QED は U(1)\mathrm U(1) のリンク変数と Wilson フェルミオンで書け、r=1r=1・κ≥0\kappa\ge0・β≥0\beta\ge0 でリンク反射に関する反射正値性が成り立ちます。これが正の転送行列と Hamiltonian の存在を保証します。

前章までで、スカラー場とゲージ場は格子上の確率測度として定義できました。作用は実数で、e−Se^{-S} は正の重みであり、強結合展開もモンテカルロ法もこの正値性の上に立っています(強結合展開と閉じ込め)。フェルミオンを入れると、この枠組みが二重の意味で崩れます。

1 つ目は、フェルミオン場の値が数ではないことです。Pauli の排他原理に対応して、経路積分の変数は互いに反可換でなければならず、ψ(x)2=0\psi(x)^2=0 を満たします。このような「変数」の上の積分は測度論の積分ではなく、Grassmann 代数の上の線形汎関数として定義し直す必要があります。実際の計算では Grassmann 変数を積分し尽くして行列式 det⁡(D+m)\det(D+m) を得て、それをゲージ場の測度の重みに繰り込みます。だから格子フェルミオンの問題は、格子 Dirac 作用素 DD をどう選ぶかという問題に帰着します。

2 つ目が本章の中心で、Dirac 作用素の格子化には原理的な障害があります。微分を対称差分に置き換えた素朴な格子化は、運動量空間で sin⁡(ap)/a\sin(ap)/a を生みます。これは p=0p=0 だけでなく p=π/ap=\pi/a でも零になるので、4 次元では 24=162^4=16 種の粒子が現れます。1 種類のクォークを入れたつもりが 16 種類になるのです。これを避ける方法は Wilson(1974–77)が与えましたが、代償としてカイラル対称性が失われました。Kogut と Susskind(1975)は種の数を 4 まで減らす別の方法を見つけましたが、0 にはできませんでした。

Nielsen と二宮(1981)は、これが工夫の不足ではなく定理であることを示しました。局所性・並進不変性・カイラル対称性を同時に保つ格子フェルミオンは、必ず右巻きと左巻きを同数含みます。標準模型の弱い相互作用は左巻きだけに作用するので、この定理は「標準模型を格子で非摂動的に定義できるか」という問題を突きつけます。この問題は次章の Ginsparg–Wilson 関係 で大きく前進しましたが、完全には解決していません。

本章では、Grassmann 積分の定義から始め、doubling を定理として述べ、Wilson と staggered の 2 つの処方とその代償を調べ、Nielsen–Ninomiya の定理を位相的に証明します。最後に格子 QED の作用を書き、反射正値性を述べます。

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執筆: Claude Code(Opus 5.5)、Claude Code(Sonnet 5.5)・監査 4 回(Claude Code)・最終 2026-10-12

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