# 格子フェルミオン：Grassmann 積分・doubling・Wilson と staggered・Nielsen–Ninomiya の定理

> Berezin 積分で格子フェルミオンの経路積分を定義し、素朴な格子化が 2^d 個の doubler を生むこと、Wilson 項と staggered 化による対処とその代償、Nielsen–Ninomiya の定理の位相的証明、格子 QED の作用と反射正値性までを扱う。
> https://rikai.mugen-giken.com/physics/lattice-field-theory/lattice-fermions

## 0. この記事の要点

電子やクォークのような粒子（フェルミオン）を、とびとびの格子点の上に置いて計算機で扱いたいとします。連続の方程式をそのまま格子に写すと、1 種類の粒子を入れたつもりが 16 種類に増えてしまいます。この記事は、この増殖がなぜ起こるか、どう抑えるか、抑えるために何を手放すことになるかを順に見ます。読み終えると、Wilson 型と staggered 型の格子フェルミオンの違いと、どんな工夫でも避けられない制約（Nielsen–Ninomiya の定理）の意味を説明できるようになります。以下の箇条書きは全体の見取り図なので、分からない言葉があっても先に進んで構いません。

- フェルミオンの Euclid 経路積分は、反可換な生成元の Grassmann 代数の上の線形汎関数（Berezin 積分）として定義します。測度の規約を固定すると $\int[d\bar\psi\,d\psi]\,e^{-\bar\psi M\psi}=\det M$ と $\langle\psi_i\bar\psi_j\rangle=(M^{-1})_{ij}$ が厳密に成り立ち、格子フェルミオンは「行列式と逆行列」の問題になります。
- 対称差分による素朴な格子 Dirac 作用素 $\tilde D_{\mathrm N}(p)=\frac{i}{a}\sum_\mu\gamma_\mu\sin(ap_\mu)$ は Brillouin 域の $2^d$ 個の頂点 $p=\pi_A/a$ で零になり、各頂点に連続極限で独立な Dirac 粒子が 1 種ずつ現れます（doubling）。頂点 $A$ の粒子のカイラリティは $(-1)^{|A|}$ 倍に反転し、軸性電荷は打ち消し合います。
- Wilson 項 $-\frac{ar}{2}\nabla^*_\mu\nabla_\mu$ は頂点 $A$ の粒子に質量 $2r|A|/a$ を与えて doubler を除きますが、$\{\gamma_5,D_{\mathrm W}\}\ne0$ となりカイラル対称性を明示的に壊します。代わりに $\gamma_5$-エルミート性 $D_{\mathrm W}^*=\gamma_5D_{\mathrm W}\gamma_5$ が残り、$\det(D_{\mathrm W}+m)$ は実数です。
- Kogut–Susskind（staggered）フェルミオンは、スピン対角化 $\psi(x)=\gamma_1^{n_1}\gamma_2^{n_2}\gamma_3^{n_3}\gamma_4^{n_4}\chi(x)$ で素朴作用を 4 つの同一な 1 成分作用に分け、1 つだけを残したものです。16 種が 4 種（taste）に減り、質量 0 で厳密な $\mathrm U(1)_\varepsilon$ 対称性が残ります。
- Nielsen–Ninomiya の定理: 局所的（運動量空間で滑らか）・並進不変・カイラル対称な格子作用では、Weyl 演算子の零点の指数（巻き付き数）の総和が 0 になり、右巻きと左巻きの粒子が同数現れます。証明は $\mathrm{tr}(\sigma^{-1}d\sigma)^{d-1}$ が閉形式であることと Stokes の定理だけで済みます。
- 格子 QED は $\mathrm U(1)$ のリンク変数と Wilson フェルミオンで書け、$r=1$・$\kappa\ge0$・$\beta\ge0$ でリンク反射に関する反射正値性が成り立ちます。これが正の転送行列と Hamiltonian の存在を保証します。

<Aside type="tip" title="この記事で使う事前知識">

- **Dirac 方程式とガンマ行列**: 相対論的な電子を記述する方程式と、それに現れる互いに反交換する行列。→ [Dirac 方程式](/physics/quantum-mechanics-2/relativistic-quantum-mechanics#def-dirac-equation)
- **分配関数**: 経路積分で、重み $e^{-S}$ をすべての配位にわたって足し合わせた量。
- **Wilson 作用**: リンク変数の積（プラケット）で書いた格子ゲージ場の作用。→ [Wilson 作用](/physics/lattice-field-theory/lattice-gauge-fields#def-wilson-action)
- **反射正値性**: 時間反転に関する正値性の条件で、格子の理論から Hilbert 空間を作るのに使う。→ [反射正値性](/physics/lattice-field-theory/reflection-positivity-lattice#def-reflection-positivity)
- **強結合展開**: 前章の主題。結合が強い（$\beta$ が小さい）領域で、Wilson 作用の重みを $\beta$ について展開して期待値を計算する方法。→ [強結合展開と閉じ込め](/physics/lattice-field-theory/strong-coupling-confinement)
- **行列式と固有値**: 学部の線形代数の範囲（特に、行列式が固有値の積であること）。

</Aside>

## 1. 動機

前章までで、スカラー場とゲージ場は格子上の確率測度として定義できました。作用は実数で、$e^{-S}$ は正の重みであり、強結合展開もモンテカルロ法もこの正値性の上に立っています（[強結合展開と閉じ込め](/physics/lattice-field-theory/strong-coupling-confinement)）。フェルミオンを入れると、この枠組みが二重の意味で崩れます。

1 つ目は、フェルミオン場の値が数ではないことです。Pauli の排他原理に対応して、経路積分の変数は互いに反可換でなければならず、$\psi(x)^2=0$ を満たします。このような「変数」の上の積分は測度論の積分ではなく、Grassmann 代数の上の線形汎関数として定義し直す必要があります。実際の計算では Grassmann 変数を積分し尽くして行列式 $\det(D+m)$ を得て、それをゲージ場の測度の重みに繰り込みます。だから格子フェルミオンの問題は、格子 Dirac 作用素 $D$ をどう選ぶかという問題に帰着します。

2 つ目が本章の中心で、Dirac 作用素の格子化には原理的な障害があります。微分を対称差分に置き換えた素朴な格子化は、運動量空間で $\sin(ap)/a$ を生みます。これは $p=0$ だけでなく $p=\pi/a$ でも零になるので、4 次元では $2^4=16$ 種の粒子が現れます。1 種類のクォークを入れたつもりが 16 種類になるのです。これを避ける方法は Wilson（1974–77）が与えましたが、代償としてカイラル対称性が失われました。Kogut と Susskind（1975）は種の数を 4 まで減らす別の方法を見つけましたが、0 にはできませんでした。

Nielsen と二宮（1981）は、これが工夫の不足ではなく定理であることを示しました。局所性・並進不変性・カイラル対称性を同時に保つ格子フェルミオンは、必ず右巻きと左巻きを同数含みます。標準模型の弱い相互作用は左巻きだけに作用するので、この定理は「標準模型を格子で非摂動的に定義できるか」という問題を突きつけます。この問題は次章の [Ginsparg–Wilson 関係](/physics/lattice-field-theory/ginsparg-wilson) で大きく前進しましたが、完全には解決していません。

本章では、Grassmann 積分の定義から始め、doubling を定理として述べ、Wilson と staggered の 2 つの処方とその代償を調べ、Nielsen–Ninomiya の定理を位相的に証明します。最後に格子 QED の作用を書き、反射正値性を述べます。

（この章の続きは購入者向けです。）
