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Gupta–Bleuler 形式の数学的構造:Krein–Fock 空間上の自由電磁場・物理的部分空間の商・Strocchi の定理

対象読者: 本テーマ第 1〜2 章の Krein 空間と J 自己共役作用素、ボソン Fock 空間、場の量子論での自由電磁場の量子化の初歩を学んだ人。Strocchi の定理は仮定しません。

前提となる記事:Krein 空間上の作用素:J 自己共役性・Pontryagin の定理・definitizable 作用素と J ユニタリな時間発展

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光子には本来 2 通りの偏り(偏光)しかありませんが、相対性理論に合う形で電磁場を書こうとすると、4 つの成分が現れます。余分な成分は、確率として読めない「長さが負(または 0)」の状態を持ち込みます。この記事は、増えてしまった状態の中から本物の光子だけを取り出す手順(条件で状態を絞り、区別のつかない状態を同じものとみなす)が、連続な運動量のままで厳密な数学として成り立つことを示します。読み終えると、「4 成分で書いても、物理的には 2 通りの偏りの光子の理論と同じになる」という主張の中身と、相互作用がある場合にこの構成が避けられない理由を説明できます。

  • ファインマンゲージの自由電磁場は、1 粒子空間 h=L2(R3,dμ0;C4)\mathfrak h=L^2(\mathbb{R}^3,d\mu_0;\mathbb{C}^4) に不定内積 [v,w]1=−∫vμ‾gμνwν dμ0[v,w]_1=-\int\overline{v^\mu}g_{\mu\nu}w^\nu\,d\mu_0 を入れた Krein 空間の上の Fock 空間で、作用素値超関数(場を試験関数で均すと作用素になるもの)A(f)A(f) として構成できます。4 成分の消滅作用素は [aμ(h),aν(h′)†]=−gμν⟨h,h′⟩[a_\mu(h),a_\nu(h')^\dagger]=-g_{\mu\nu}\langle h,h'\rangle を満たし、場は J 対称・局所的で、2 点関数は −gμνD+(x−y)-g_{\mu\nu}D^+(x-y) です。
  • Gupta–Bleuler 条件(状態を絞る補助条件)(∂⋅A)(+)(φ)Ψ=0(\partial\cdot A)^{(+)}(\varphi)\Psi=0 を満たす有限粒子ベクトルの全体 Vphys\mathcal V_{\mathrm{phys}} は、各粒子数で 1 粒子条件に分解し、Vphys=F0∩Fb(hphys)\mathcal V_{\mathrm{phys}}=\mathcal F_0\cap\mathcal F_{\mathrm b}(\mathfrak h_{\mathrm{phys}}) になります。ここで hphys={v:kμvμ=0}\mathfrak h_{\mathrm{phys}}=\{v:k_\mu v^\mu=0\} です。
  • hphys\mathfrak h_{\mathrm{phys}} 上では不定内積が横成分への直交射影 Π\Pi を通した正定値内積 ⟨Πv,Πw⟩\langle\Pi v,\Pi w\rangle に一致し、これを第二量子化すると [Ψ,Φ]=⟨Γ(Π)Ψ,Γ(Π)Φ⟩[\Psi,\Phi]=\langle\Gamma(\Pi)\Psi,\Gamma(\Pi)\Phi\rangle を得ます。ここから、Vphys\mathcal V_{\mathrm{phys}} が半正定値であること、零ノルム部分空間(長さが 0 の状態の集まり)V0\mathcal V_0 による商(それらを 0 とみなして同一視した空間)が横光子の Fock 空間 Fb(t)\mathcal F_{\mathrm b}(\mathfrak t) と等長同型であること(閉包で考えれば完備化も不要であること)が従います。
  • V0\mathcal V_0 方向へのずれは、場の期待値を □Λ=0\Box\Lambda=0 を満たすゲージ変換 Aμ↦Aμ−∂μΛA_\mu\mapsto A_\mu-\partial_\mu\Lambda だけ動かします。発散が 00 の試験関数で均した場(とくに FμνF_{\mu\nu})は Vphys\mathcal V_{\mathrm{phys}} と V0\mathcal V_0 を保ち、商空間の上の横光子の場に降ります。A0A_0 のような量は降りません。
  • Maxwell 方程式 ∂μFμν=0\partial^\mu F_{\mu\nu}=0 は作用素としては成り立たず、物理的状態の間の行列要素としてだけ成り立ちます。これは偶然ではなく、Strocchi の定理(Gauss 法則が作用素として成り立てば、局所的な荷電場は電荷をもてない)と、正定値計量では局所的で共変なベクトルポテンシャルが光子を記述できないという定理の裏返しです。
全体の空間:ボソン Fock 空間(不定内積。ノルムが負の状態もある)物理的部分空間(ノルムは 0 以上)零ノルム部分(ノルム 0。ゲージ光子を含む)横光子の Fock 空間(正定値。本物の光子)零ノルム部分を 0 とみなして同一視した商の空間は、横光子の Fock 空間と等長同型(零ノルム部分と横光子の空間の直和が物理的部分空間)
本記事の全体像。不定内積をもつ全体の空間の中に、ノルムが 0 以上の物理的部分空間があり、これは横光子の空間と零ノルム部分の直和に分かれる。零ノルム部分を 0 とみなす商が、横光子の Fock 空間になる

電磁場の量子化とゲージ固定では、空間を箱に入れて運動量を離散化し、生成作用素の多項式で書ける状態に限って Gupta–Bleuler 形式の中心定理(定理 5.4[電磁場の量子化とゲージ固定])を代数的に証明しました。また Krein 空間と J 内積 の 命題 6.3[Krein 空間と J 内積] では、1 粒子空間の非負部分空間から作った Fock 空間の商を一般に調べました。ただしそこでは、Gupta–Bleuler 条件を満たす状態全体が各粒子数で 1 粒子条件に分解すること自体は示さずに残しました。

本章の目的は、この 2 つをつなぎ、連続運動量のままで Gupta–Bleuler 形式を Krein 空間の定理として完結させることです。具体的には次の 4 点を扱います。

  1. 場の作用素を Lorentz 共変な作用素値超関数として Krein–Fock 空間上に構成し、2 点関数が −gμνD+-g_{\mu\nu}D^+ になること、そしてこの 2 点関数は正定値の空間では実現できないことを確かめます。
  2. Gupta–Bleuler 条件の解空間を完全に決定し、その商が横光子の Fock 空間であることを、完備化の問題まで含めて証明します。
  3. 「零ノルム状態の付加はゲージ変換である」(例 5.6[電磁場の量子化とゲージ固定])を一般の物理的状態について定式化し、どの作用素が商空間の上で意味をもつかを決めます。
  4. 相互作用がある場合になぜ同じことが簡単にいかないのかを、Strocchi の定理として述べます。これは次章の BRST 形式への動機にもなります。

記法は前 2 章に従います。Hilbert 空間の内積 ⟨⋅,⋅⟩\langle\cdot,\cdot\rangle と不定内積 [⋅,⋅][\cdot,\cdot] はいずれも第 1 変数について共役線形です。Minkowski 計量は g=diag(1,−1,−1,−1)g=\mathrm{diag}(1,-1,-1,-1)、k⋅x=k0x0−k⋅xk\cdot x=k^0x^0-\boldsymbol k\cdot\boldsymbol x です。

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執筆: Claude Code(Opus 5.5)、Claude Code(Sonnet 5.5)・監査 2 回(Claude Code)・最終 2026-10-12

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