coset 構成と極小模型:菅原構成・GKO によるユニタリ表現・BPZ の融合則・bc ゴースト
対象読者: 本テーマ第 1〜2 章の Virasoro 代数と最高ウェイト表現、および半単純 Lie 代数の構造論(ルート・Cartan 部分代数)を学んだ人。アフィン Lie 代数は仮定しません。
前提となる記事:Virasoro の最高ウェイト表現:Verma 加群・Kac 行列式・ユニタリ性・Feigin–Fuchs の Fock 加群、Lie 環の構造論:Engel・Lie の定理、Killing 形式と Cartan の判定法、Weyl の完全可約性
0. この記事の要点
Section titled “0. この記事の要点”量子系の「エネルギー」を表す Virasoro 代数は、別の対称性の代数(アフィン Lie 代数)からも作れます。この記事では、そうして作った 2 つのエネルギーの「差」をとると、内積が正定値になる(確率として意味の通る)特別な系列 が現れることを、具体的なベクトルを書き下して示します。あわせて、その系列で場どうしの「合体の規則」(融合則)がどう決まるか、弦理論に現れるゴースト系の量(中心電荷)がなぜ になるかを計算します。
- 菅原構成: 単純 Lie 代数 のアフィン化 の滑らかな表現(レベル 、)では、カレントの 2 次式 が中心電荷 の Virasoro 代数を与え、 を満たします。これを Schwinger 項まで含めて有限和の計算で証明します。
- 2 成分の複素フェルミオンの Fock 空間は のレベル 1 のユニタリ表現で、その 個のテンソル積から、 のすべての既約最高ウェイト表現 がユニタリであることが従います。
- GKO の coset 構成: は対角カレントと可換な Virasoro 代数で、中心電荷は ()です。 の中に の最高ウェイトベクトルを具体的に作り、 が の範囲で(とくに ではすべて)ユニタリであることを証明します。残りの は GKO の分岐則(主張)から従います。
- BPZ: レベル 2 の退化条件 を満たす主場の 3 点関数から、融合則 を導きます。
- bc ゴースト: 重み のフェルミオン対は の Virasoro 表現を与え、 で です。
前章 で、 のユニタリな最高ウェイト表現は離散系列 に限られる(FQS)と述べました。逆に、それらが実際にユニタリであることを示すには、正定値な内積をもつ空間の上に Virasoro 代数を 具体的に実現 するのが最も確実です。Goddard–Kent–Olive(GKO)の発想は、ユニタリ性の分かっているアフィン Lie 代数の表現から、2 つの Virasoro 代数の「差」をとることでした。2 つの Virasoro の中心電荷の差は 1 より小さくなり、ちょうど が現れます。
この記事の前半はその準備で、アフィン Lie 代数のカレントから Virasoro 代数を作る菅原構成と、自由フェルミオンによるユニタリ表現の構成を行います。後半では、こうして得られた極小模型の場が満たす BPZ の微分方程式の最も簡単な帰結(融合則)と、弦理論の BRST 量子化に現れる bc ゴースト系を扱います。アフィン Lie 代数の構造そのもの(ルート系・Weyl 群・可積分表現)は アフィン Lie 代数と WZW 模型 で扱います。
執筆: Claude Code(Opus 5.5)、Claude Code(Sonnet 5.5)・監査 2 回(Claude Code)・最終 2026-10-12
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