# coset 構成と極小模型：菅原構成・GKO によるユニタリ表現・BPZ の融合則・bc ゴースト

> アフィン Lie 代数の菅原構成を任意の滑らかな加群で証明し、自由フェルミオンで sl(2) のユニタリ表現を作る。GKO の coset から離散系列 c_m のユニタリ表現を構成し、BPZ の退化条件から融合則を導き、bc ゴースト系の中心電荷を計算する。
> https://rikai.mugen-giken.com/mathematics/vertex-algebras/coset-minimal-models

## 0. この記事の要点

量子系の「エネルギー」を表す Virasoro 代数は、別の対称性の代数（アフィン Lie 代数）からも作れます。この記事では、そうして作った 2 つのエネルギーの「差」をとると、内積が正定値になる（確率として意味の通る）特別な系列 $c_m$ が現れることを、具体的なベクトルを書き下して示します。あわせて、その系列で場どうしの「合体の規則」（融合則）がどう決まるか、弦理論に現れるゴースト系の量（中心電荷）がなぜ $-26$ になるかを計算します。

- **菅原構成**: 単純 Lie 代数 $\mathfrak{g}$ のアフィン化 $\hat{\mathfrak{g}}$ の滑らかな表現（レベル $k$、$k+h^\vee\ne0$）では、カレントの 2 次式 $L_n=\frac1{2(k+h^\vee)}\sum_a\sum_j:J^a_jJ^a_{n-j}:$ が中心電荷 $c=\frac{k\dim\mathfrak{g}}{k+h^\vee}$ の Virasoro 代数を与え、$[L_n,x_m]=-m\,x_{m+n}$ を満たします。これを Schwinger 項まで含めて有限和の計算で証明します。
- 2 成分の複素フェルミオンの Fock 空間は $\widehat{\mathfrak{sl}}(2)$ のレベル 1 のユニタリ表現で、その $k$ 個のテンソル積から、$0\le2j\le k$ のすべての既約最高ウェイト表現 $L(j,k)$ がユニタリであることが従います。
- **GKO の coset 構成**: $K_n=L^{(k)}_n+L^{(1)}_n-L^{(k+1)}_n$ は対角カレントと可換な Virasoro 代数で、中心電荷は $c_m=1-\frac6{m(m+1)}$（$m=k+2$）です。$L(j,k)\otimes L(\varepsilon,1)$ の中に $K_n$ の最高ウェイトベクトルを具体的に作り、$L(c_m,h_{r,s})$ が $-2\le s-r\le3$ の範囲で（とくに $m=3,4$ ではすべて）ユニタリであることを証明します。残りの $(r,s)$ は GKO の分岐則（主張）から従います。
- **BPZ**: レベル 2 の退化条件 $(L_{-2}-\frac{3}{2(2\Delta+1)}L_{-1}^2)\varphi=0$ を満たす主場の 3 点関数から、融合則 $\varphi_{(2,1)}\times\varphi_{(r,s)}\subset\varphi_{(r-1,s)}+\varphi_{(r+1,s)}$ を導きます。
- **bc ゴースト**: 重み $(\lambda,1-\lambda)$ のフェルミオン対は $c=-2(6\lambda^2-6\lambda+1)$ の Virasoro 表現を与え、$\lambda=2$ で $c=-26$ です。

<Aside type="tip" title="この記事で使う事前知識">

- **Virasoro 代数**: Witt 代数に中心元を足した無限次元 Lie 代数で、2 次元共形場理論のエネルギーを表す。→ [Virasoro 代数](/mathematics/vertex-algebras/virasoro-algebra#def-virasoro)
- **Verma 加群**: 最高ウェイトベクトルに降下作用素を自由に掛けてできる加群。→ [Verma 加群](/mathematics/lie-theory/highest-weight-theory#def-verma)
- **ユニタリな最高ウェイト表現**: 正定値の内積をもち、各作用素の随伴が対応する逆向きの作用素になる最高ウェイト表現。→ [ユニタリな最高ウェイト表現](/mathematics/vertex-algebras/virasoro-representations#def-unitary-vir)
- **Killing 形式**: 単純 Lie 代数上の不変で非退化な対称双線形形式。→ [Killing 形式](/mathematics/lie-theory/structure-of-lie-algebras#def-killing-form)
- **テンソル積**: 2 つのベクトル空間から、双線形な組を線形な対象として扱うために作る空間。→ [テンソル積](/mathematics/linear-algebra/tensor-products#def-tensor-product)
- **Clebsch–Gordan 分解**: スピン $j\ge\frac12$ とスピン $\frac12$ の表現のテンソル積が、スピン $j\pm\frac12$ の表現の直和に分かれること。→ [Clebsch–Gordan 分解](/mathematics/compact-groups/characters-su2#thm-clebsch-gordan)

</Aside>

## 1. 動機

[前章](/mathematics/vertex-algebras/virasoro-representations) で、$c\lt1$ のユニタリな最高ウェイト表現は離散系列 $(c_m,h_{r,s})$ に限られる（FQS）と述べました。逆に、それらが実際にユニタリであることを示すには、正定値な内積をもつ空間の上に Virasoro 代数を **具体的に実現** するのが最も確実です。Goddard–Kent–Olive（GKO）の発想は、ユニタリ性の分かっているアフィン Lie 代数の表現から、2 つの Virasoro 代数の「差」をとることでした。2 つの Virasoro の中心電荷の差は 1 より小さくなり、ちょうど $c_m$ が現れます。

この記事の前半はその準備で、アフィン Lie 代数のカレントから Virasoro 代数を作る菅原構成と、自由フェルミオンによるユニタリ表現の構成を行います。後半では、こうして得られた極小模型の場が満たす BPZ の微分方程式の最も簡単な帰結（融合則）と、弦理論の BRST 量子化に現れる bc ゴースト系を扱います。アフィン Lie 代数の構造そのもの（ルート系・Weyl 群・可積分表現）は [アフィン Lie 代数と WZW 模型](/mathematics/vertex-algebras/affine-sugawara-wzw) で扱います。

（この章の続きは購入者向けです。）
