BRST コホモロジーと no-ghost 定理:bc ゴースト・Q²=0 ⇔ c=26・半無限コホモロジー・横波状態
対象読者: 本テーマ第 3 章の bc ゴーストと Virasoro 代数、および場の量子論の BRST コホモロジー(べき零電荷とゲージ固定)を学んだ人。半無限コホモロジーは仮定しません。
前提となる記事:coset 構成と極小模型:菅原構成・GKO によるユニタリ表現・BPZ の融合則・bc ゴースト、BRST コホモロジーと物理的状態:Krein 空間上のべき零電荷・Kugo–Ojima の四重項機構・閉じ込め判定条件
0. この記事の要点
Section titled “0. この記事の要点”弦を量子力学で扱うと、時間方向の振動のせいで「確率がマイナスになる状態」が紛れ込み、そのままでは物理に使えません。この記事は、ゴーストと呼ばれる補助の変数を足して余分な自由度を整理する BRST という仕組みを数学として組み立て、時空が 26 次元のときに限ってこの仕組みが矛盾なく働くこと、そのとき最後に残る状態はすべて正の確率をもつことを証明します。26 という数は、ゴーストが与える を物質の側が打ち消す条件として現れます。
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bc ゴースト系(重み の と重み の )の Fock 空間 は、 が生成する頂点超代数で、その Virasoro 場の中心電荷は です。
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中心電荷 の Virasoro 代数の加群 に対し、 上の BRST 電荷 を定めます。 が成り立ち、
を証明します。とくに です。 の内訳は、ゴーストの中心電荷 の半分と、無限和の順序づけから出る補正 です。同じ数は、OPE の 4 位の極の係数 と 3 位の極の係数 からも読めます。
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のとき を 半無限コホモロジー(Feigin)と呼びます。コホモロジーは の部分に集まり、 の部分複体から 相対コホモロジー が定まります。
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no-ghost 定理: 26 次元 Minkowski 空間の運動量 の Fock 加群 について、()で、 は正定値な内積をもち、24 方向の横波振動子の Fock 空間のレベル の部分と等長同型です。証明は光円錐分解 によります。主要部 は Kugo–Ojima の四重項(互いに打ち消し合う 4 種類の状態の組)の BRST 電荷で、そのコホモロジーは横波状態です。 と のコホモロジーの次元と符号数は、階数の半連続性(行列の階数は、パラメータを 0 にした極限では下がることはあっても上がらない、という性質)と Euler 標数(各次数の次元の交代和)で比べます。
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Goddard–Thorn の形: Virasoro 条件を満たす状態の空間 を零ノルムの部分 で割った は に等長的に埋め込まれ、したがって正定値です(負ノルム状態は物理的状態に現れない)。埋め込みが全射であること(DDF 演算子、すなわち物理的状態を作る特別な作用素の族による)は主張として述べ、依存関係を明記します。
ボソン弦を共形ゲージで量子化すると、状態空間は 26 個(一般には 個)の自由ボソンの Fock 空間で、Minkowski 計量のために時間方向の振動子 は負のノルムをもちます。ゲージ固定のあとに残る拘束は Virasoro 代数の正のモード ()と で、古い共変量子化では「物理的状態」をこれらに消される状態として定めます。Goddard–Thorn(1972)は、 ならこの物理的状態の空間に負ノルム状態が現れず、零ノルムの状態で割ると横波 24 方向の振動子だけが残ることを示しました。これが no-ghost 定理 です。
BRST 量子化では、ゲージ固定で現れる Faddeev–Popov ゴーストを陽に入れ、 ゴーストを「Virasoro 代数の双対」、 ゴーストを「Virasoro 代数そのもの」とみなした Lie 代数コホモロジーの微分 を作ります。Kato–Ogawa(1983)は、 となるのが のときに限ることと、 のコホモロジーが横波状態であることを示しました。数学の側では、Feigin(1984)が無限次元 Lie 代数の 半無限コホモロジー を導入し、Frenkel–Garland–Zuckerman(1986)が no-ghost 定理を半無限コホモロジーの消滅定理として定式化しました。BRST の枠組みでは、 という数は の条件(ゴーストの中心電荷 を物質が打ち消す)としてだけ現れ、コホモロジーの正定値性はそこから自動的に従います。古い共変量子化では、同じ が「物理的でしかも零ノルムの状態が余分に現れる条件」という別の形で現れます(演習 7.3)。
ゲージ理論での同じ構造は BRST コホモロジーと物理的状態 で扱いました。そこでは Krein 空間上の BRST 電荷について、Kugo–Ojima の四重項機構でコホモロジーを決め、有限次元では符号数の勘定で正定値性を判定しました。この記事の no-ghost 定理の証明は、その 2 つの道具を光円錐分解と組み合わせたものです。
この記事では、§2 で bc ゴースト系の基本事項を整理し、§3 で BRST 電荷を構成して を証明します。§4 で半無限コホモロジーと相対複体を定義し、§5 で 26 次元の Fock 空間に光円錐分解を入れ、§6 で no-ghost 定理を証明します。
執筆: Claude Code(Opus 5.5)、Claude Code(Sonnet 5.5)・監査 3 回(Claude Code)・最終 2026-10-12
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