# 曲がった時空と重力：アインシュタイン方程式から GPS の 38 マイクロ秒まで

> 重力を時空の曲率とみなすアインシュタイン方程式を弱場近似でニュートン重力に接続し、シュヴァルツシルト解・ブラックホール・重力波を導く。GPS 衛星の時計が 1 日 38.5 マイクロ秒進む理由を数値まで計算する。
> https://rikai.mugen-giken.com/physics/relativity/curved-spacetime

## 0. この記事の要点

- 一般相対論では重力は「力」ではありません。物体は何にも押されずに時空の**測地線**（まっすぐな道）を進んでおり、その道が曲がっていることを私たちは「落ちる」と呼んでいます。
- 時空の曲がり方を決めるのが**アインシュタイン方程式**です。弱い重力場・低速の極限では、ニュートン重力のポアソン方程式 $\nabla^2\Phi = 4\pi G\rho$ に正しく戻ります（<Ref to="thm-poisson-limit" />）。
- 球対称・真空の解は本質的に**シュヴァルツシルト解**ただ 1 つで、半径 $r_s = 2GM/c^2$ に事象の地平面が現れます。太陽なら 2.95 km、地球なら 8.9 mm です。
- 時空の歪みそのものが波として光速で伝わります（重力波）。偏極は 2 種類、放射の主役は質量分布の**四重極**の変化です。
- GPS 衛星の原子時計は、速度による遅れ $-7.2\ \mu\mathrm{s}$/日 と重力による進み $+45.7\ \mu\mathrm{s}$/日 の差し引きで、地表より 1 日あたり約 $38.5\ \mu\mathrm{s}$ 進みます。補正しなければ測位は 1 日で約 11 km ずれます（<Ref to="ex-gps-numbers" />）。

## 1. 動機：ニュートン重力はなぜ作り替えられたのか

ニュートンの万有引力の法則

$$
\boldsymbol{F} = -\frac{GMm}{r^2}\,\hat{\boldsymbol{r}}
$$

は 200 年以上にわたって天体の運行を説明してきました（[惑星の運動と中心力](/physics/mechanics/central-forces) の <Ref to="physics/mechanics/central-forces#thm-kepler-first" text="ケプラーの第一法則" />）。それでもこの法則には、特殊相対論を知ってしまうと看過できない欠陥があります。

**第一に、力が瞬時に伝わってしまいます。** 右辺には「いまの距離 $r$」しか現れません。仮に太陽が突然消えれば、地球は同じ瞬間に軌道を離れることになります。しかし特殊相対論によれば、どんな情報も光速を超えて伝わりません（[特殊相対性理論の原理](/physics/relativity/principles-of-special-relativity)、<Ref to="physics/relativity/lorentz-transformations#prop-causality" text="因果構造の絶対性" />）。

**第二に、「いまの距離」という言い方自体が意味をもちません。** 同時刻の定義は観測者ごとに違うからです（[ローレンツ変換](/physics/relativity/lorentz-transformations)、<Ref to="physics/relativity/lorentz-transformations#thm-simultaneity" text="同時刻の相対性" />）。太陽と地球の「現在の距離」は、誰が測るかによって変わってしまいます。

**第三に、観測が合いません。** 水星の近日点は、他の惑星の摂動をすべて差し引いてもなお 100 年あたり約 43 秒角だけ余分に前進します。19 世紀の天文学者はこれを未知の惑星のせいにしようとしましたが、そんな惑星は見つかりませんでした。

ここで効いてくるのが、前章で扱った**等価原理**です（[一般相対性理論への招待（等価原理）](/physics/relativity/equivalence-principle)、<Ref to="physics/relativity/equivalence-principle#def-eep" text="アインシュタインの等価原理" />）。自由落下するエレベーターの中では重力が消えます。つまり重力は、適当な座標を選べば**局所的には必ず消せる**という、他の力にはない奇妙な性質をもっています。電磁気力にこんな芸当はできません（<Ref to="physics/relativity/equivalence-principle#rem-em-contrast" text="電磁気力との決定的な違い" />）。荷電粒子と一緒に落ちても電場は消えないからです。

局所的に消せるが、大域的には消せない量。これは物理学ではなく幾何学の言葉です。地球儀の表面は、どの一点のまわりでも十分小さく見れば平面と区別がつきません。しかし地球儀全体を平面に伸ばすことはできません。この「局所的には平ら、大域的には曲がっている」という構造を数学は**曲率**と呼びます。アインシュタインの主張はこうです。

> 重力とは時空の曲率であり、自由落下とは曲がった時空を「まっすぐ」進むことである。

そして曲がり方を決めるのが物質とエネルギーの分布です。ジョン・ホイーラーの有名な言い換えを借りれば、「物質は時空にどう曲がるかを教え、時空は物質にどう動くかを教える」となります。

<Figure caption="一般相対論の論理的な循環。物質が時空を曲げ、曲がった時空が物質を動かし、動いた物質がまた時空の曲がり方を変える。この循環が方程式を非線形にする。">

<Mermaid code={`flowchart LR
  T["物質・エネルギーの分布"] -->|"アインシュタイン方程式"| G["時空の計量と曲率"]
  G -->|"測地線方程式"| M["自由落下する物体の運動"]
  M -->|"物質が動く"| T`} />

</Figure>

<div data-gated data-pagefind-ignore>

## 2. 準備：時空を測る道具立て

曲がった時空を扱うには、「2 点間の隔たり」を測る道具が要ります。それが計量です。

<Definition id="def-metric" title="計量と線素">
時空の各点で座標 $x^\mu = (x^0, x^1, x^2, x^3)$（$x^0 = ct$）をとる。近接した 2 事象の座標差 $dx^\mu$ に対して、その隔たりの 2 乗を

$$
ds^2 = \sum_{\mu,\nu=0}^{3} g_{\mu\nu}(x)\,dx^\mu dx^\nu
$$

で与える対称テンソル場 $g_{\mu\nu} = g_{\nu\mu}$ を**計量**、$ds^2$ を**線素**という。以下、和の記号は省略する（同じ添字が上下に現れたら $0$ から $3$ まで和をとる）。符号は $(-,+,+,+)$ を採用し、$g_{\mu\nu}$ は各点で固有値の符号が $(-,+,+,+)$ となる正則行列とする。
</Definition>

計量が「重力ポテンシャルの一般相対論版」です。ニュートン重力ではスカラー関数 $\Phi$ 一つが場でしたが、一般相対論では対称 $4\times4$ 行列、すなわち独立成分 10 個の $g_{\mu\nu}$ が場になります。

<Definition id="def-proper-time" title="固有時">
時空内の曲線 $x^\mu(\lambda)$ に沿って $ds^2 < 0$（時間的）であるとき、その曲線に沿って運ばれた時計が刻む時間 $\tau$ を**固有時**といい、

$$
c^2\,d\tau^2 = -ds^2 = -g_{\mu\nu}\,dx^\mu dx^\nu
$$

で定める。
</Definition>

これは平坦な時空で定義した固有時（<Ref to="physics/relativity/lorentz-transformations#def-proper-time" text="固有時" />）を、そのまま曲がった時空に持ち込んだものです。固有時は座標の取り方によらない量です。「時計が実際に何秒進んだか」は座標系の選び方の問題ではないので、これは当然要求されるべき性質です。この記事で計算する「時計のずれ」は、すべてこの $\tau$ の比較です。

<Definition id="def-geodesic" title="測地線">
2 つの事象を結ぶ時間的曲線のうち、固有時 $\displaystyle\int d\tau$ を停留にするものを**測地線**という。オイラー–ラグランジュ方程式を書き下すと、固有時 $\tau$ をパラメータとして

$$
\frac{d^2 x^\mu}{d\tau^2} + \Gamma^{\mu}{}_{\alpha\beta}\frac{dx^\alpha}{d\tau}\frac{dx^\beta}{d\tau} = 0,
\qquad
\Gamma^{\mu}{}_{\alpha\beta} = \frac{1}{2}g^{\mu\nu}\bigl(\partial_\alpha g_{\nu\beta} + \partial_\beta g_{\nu\alpha} - \partial_\nu g_{\alpha\beta}\bigr)
$$

となる。ここで $g^{\mu\nu}$ は $g_{\mu\nu}$ の逆行列、$\partial_\alpha = \partial/\partial x^\alpha$ である。$\Gamma^{\mu}{}_{\alpha\beta}$ を**クリストッフェル記号**という。
</Definition>

<Aside type="note">
測地線方程式が変分原理から出てくることは、解析力学を知っていれば見通しがよくなります。ラグランジアンを $L = g_{\mu\nu}\dot{x}^\mu\dot{x}^\nu$ として <Ref to="def-geodesic" /> を導く手順は、[ラグランジュ形式の力学](/physics/mechanics/lagrangian-mechanics) の <Ref to="physics/mechanics/lagrangian-mechanics#thm-euler-lagrange" text="オイラー・ラグランジュ方程式" /> そのままです。
</Aside>

<Example id="ex-minkowski" title="平坦な時空では測地線は等速直線運動">
重力がないミンコフスキー時空では、直交座標で $g_{\mu\nu} = \eta_{\mu\nu} = \mathrm{diag}(-1,1,1,1)$ です。$\eta_{\mu\nu}$ は定数なので $\partial_\alpha g_{\nu\beta} = 0$ となり、<Ref to="def-geodesic" /> のクリストッフェル記号はすべて $0$ です。したがって測地線方程式は

$$
\frac{d^2 x^\mu}{d\tau^2} = 0
$$

すなわち $x^\mu = a^\mu \tau + b^\mu$、時空の直線になります。空間成分と時間成分の比をとれば $dx^i/dt$ は定数となり、つまり等速直線運動です。慣性の法則が「測地線を進む」という形に翻訳されました。
</Example>

<Remark id="rem-tidal" title="曲率は潮汐力として観測される">
等価原理により、1 点のまわりでは適当な座標変換で $\Gamma^{\mu}{}_{\alpha\beta} = 0$ にできます（<Ref to="physics/relativity/equivalence-principle#def-lif" text="局所慣性系" />）。しかし $\Gamma$ の**微分**まで消すことは一般にはできません。この消せない部分がリーマン曲率テンソル $R^{\mu}{}_{\nu\alpha\beta}$ です。物理的には、隣り合う 2 つの自由落下する粒子の相対加速度、すなわち**潮汐力**（<Ref to="physics/relativity/equivalence-principle#prop-tidal" text="潮汐加速度" />）として現れます。落下するエレベーターの中で重力は消えますが、エレベーターが巨大なら、床の近くと天井の近くで落下方向がわずかに違うので、中の物体は引き伸ばされます。この引き伸ばしこそが「消せない重力」＝曲率です。
</Remark>

## 3. 弱い重力場とニュートン重力への橋

地球や太陽のまわりでは重力はきわめて弱いので、計量はミンコフスキー計量からわずかにずれるだけです。静的な弱い重力場では、ニュートンポテンシャル $\Phi$（$|\Phi|/c^2 \ll 1$）を使って計量が

$$
ds^2 = -\Bigl(1 + \frac{2\Phi}{c^2}\Bigr)c^2 dt^2 + \Bigl(1 - \frac{2\Phi}{c^2}\Bigr)\bigl(dx^2 + dy^2 + dz^2\bigr)
$$

と書けることが知られています。以下ではこれを**弱場計量**と呼びます。この形が本当にニュートン重力を含んでいることを 2 つの命題で確認します。

<Proposition id="prop-newton-limit" title="測地線方程式のニュートン極限">
弱場計量において場が静的（$\partial_t g_{\mu\nu} = 0$）であり、粒子の速度が光速に比べて十分小さい（$|dx^i/dt| \ll c$）とする。このとき測地線方程式は、$\Phi/c^2$ および $(v/c)^2$ の 1 次までの近似で

$$
\frac{d^2 x^i}{dt^2} = -\frac{\partial \Phi}{\partial x^i} \qquad (i = 1,2,3)
$$

となる。これはニュートンの運動方程式そのものである。
</Proposition>

<Proof of="prop-newton-limit">
低速の仮定 $|dx^i/d\tau| \ll c\,|dt/d\tau|$ より、<Ref to="def-geodesic" /> の第 2 項で生き残るのは $\alpha = \beta = 0$ の項だけです。したがって

$$
\frac{d^2x^i}{d\tau^2} \simeq -\Gamma^{i}{}_{00}\Bigl(c\frac{dt}{d\tau}\Bigr)^2 .
$$

次に $\Gamma^{i}{}_{00}$ を計算します。定義より

$$
\Gamma^{i}{}_{00} = \frac{1}{2}g^{i\nu}\bigl(2\,\partial_0 g_{\nu 0} - \partial_\nu g_{00}\bigr).
$$

静的の仮定から $\partial_0 g_{\nu 0} = 0$。また弱場計量は非対角成分をもたないので $g^{i0} = 0$、$g^{ij} \simeq \delta^{ij}$（$\Phi/c^2$ の 1 次を落とした）。よって

$$
\Gamma^{i}{}_{00} = -\frac{1}{2}\delta^{ij}\,\partial_j g_{00}
= -\frac{1}{2}\,\partial_i\Bigl[-\Bigl(1 + \frac{2\Phi}{c^2}\Bigr)\Bigr]
= \frac{1}{c^2}\frac{\partial\Phi}{\partial x^i}.
$$

これを代入すると

$$
\frac{d^2x^i}{d\tau^2} \simeq -\frac{1}{c^2}\frac{\partial\Phi}{\partial x^i}\cdot c^2\Bigl(\frac{dt}{d\tau}\Bigr)^2
= -\frac{\partial\Phi}{\partial x^i}\Bigl(\frac{dt}{d\tau}\Bigr)^2 .
$$

最後に $dt/d\tau$ を評価します。弱場計量に $dx^i = v^i dt$ を代入すると

$$
c^2 d\tau^2 = \Bigl(1 + \frac{2\Phi}{c^2}\Bigr)c^2 dt^2 - \Bigl(1-\frac{2\Phi}{c^2}\Bigr)v^2 dt^2
$$

なので、$\Phi/c^2$ と $(v/c)^2$ をともに 1 次まで残せば $d\tau/dt = 1 + \Phi/c^2 - v^2/(2c^2) + \cdots$、すなわち $dt/d\tau = 1 + O(\Phi/c^2, v^2/c^2)$ です。求める式は 1 次までの近似なので $(dt/d\tau)^2 \to 1$ と置いてよく、同じ理由で $d^2x^i/d\tau^2 \to d^2x^i/dt^2$ と置き換えられます。以上で結論を得ます。
</Proof>

つまり「弱場計量の $g_{00}$ 成分」がニュートンポテンシャルそのものです。$g_{00} = -(1 + 2\Phi/c^2)$ という一行が、リンゴが落ちる理由をすべて含んでいます。

<Proposition id="prop-static-clock" title="静止した時計の進み方">
弱場計量において、空間座標を固定した点（$dx^i = 0$）に置かれた時計の固有時 $\tau$ と座標時 $t$ の関係は

$$
\frac{d\tau}{dt} = \sqrt{1 + \frac{2\Phi}{c^2}} \simeq 1 + \frac{\Phi}{c^2}.
$$

したがってポテンシャル $\Phi_A,\ \Phi_B$ の 2 点に静止した時計の進む速さの比は、$|\Phi|/c^2 \ll 1$ の 1 次で

$$
\frac{d\tau_A}{d\tau_B} \simeq 1 + \frac{\Phi_A - \Phi_B}{c^2}
$$

である。すなわち**ポテンシャルの高い（重力の弱い）場所の時計ほど速く進む**。
</Proposition>

<Proof of="prop-static-clock">
$dx^i = 0$ を弱場計量に代入すると $ds^2 = -(1 + 2\Phi/c^2)c^2dt^2$。<Ref to="def-proper-time" /> より $c^2 d\tau^2 = -ds^2 = (1+2\Phi/c^2)c^2dt^2$ なので、平方根をとって第 1 式を得ます。$\sqrt{1+x} \simeq 1 + x/2$（$|x|\ll1$）を $x = 2\Phi/c^2$ に適用すれば $d\tau/dt \simeq 1 + \Phi/c^2$ です。

2 点の比は、同じ座標時 $dt$ に対する $d\tau_A$ と $d\tau_B$ の比なので

$$
\frac{d\tau_A}{d\tau_B} = \frac{1 + \Phi_A/c^2}{1 + \Phi_B/c^2}
= \Bigl(1 + \frac{\Phi_A}{c^2}\Bigr)\Bigl(1 - \frac{\Phi_B}{c^2} + \cdots\Bigr)
\simeq 1 + \frac{\Phi_A - \Phi_B}{c^2}
$$

となります（2 次の項 $\Phi_A\Phi_B/c^4$ を落としました）。
</Proof>

<Example id="ex-pound-rebka" title="パウンド–レブカ実験（1960 年）">
地表付近では $\Phi = gz$（$g = 9.81\ \mathrm{m/s^2}$、$z$ は高さ）と近似できます。ハーバード大学のジェファーソン塔の高さ $h = 22.5$ m の上下に置いた線源と吸収体の間で、<Ref to="prop-static-clock" /> は振動数のずれ

$$
\frac{\Delta\nu}{\nu} = -\frac{gh}{c^2}
= -\frac{9.81 \times 22.5}{8.9876\times10^{16}}
= -\frac{220.7}{8.9876\times10^{16}}
= -2.46\times10^{-15}
$$

を予言します（上向きに進む光は赤方偏移する）。パウンドとレブカは鉄 57 のメスバウアー効果を使ってこの $10^{-15}$ という微小なずれを検出し、予言と一致することを示しました。等価原理の記事で述べた <Ref to="physics/relativity/equivalence-principle#thm-redshift" text="重力赤方偏移" /> が、ここでは計量の $g_{00}$ 成分から導かれています。
</Example>

## 4. アインシュタイン方程式

<Ref to="prop-newton-limit" /> と <Ref to="prop-static-clock" /> は、計量が与えられたときに物体や時計がどう振る舞うかを教えてくれます。残る問題は「計量はどう決まるのか」です。答えがアインシュタインの重力場方程式です。

$$
R_{\mu\nu} - \frac{1}{2}R\,g_{\mu\nu} + \Lambda g_{\mu\nu} = \frac{8\pi G}{c^4}\,T_{\mu\nu}
$$

各記号の意味は次のとおりです。

| 記号 | 名前 | 中身 |
|---|---|---|
| $R_{\mu\nu}$ | リッチテンソル | リーマン曲率テンソルの縮約 $R^{\alpha}{}_{\mu\alpha\nu}$。$g_{\mu\nu}$ の 2 階微分までを含む |
| $R$ | スカラー曲率 | $R = g^{\mu\nu}R_{\mu\nu}$ |
| $G_{\mu\nu} = R_{\mu\nu} - \frac{1}{2}Rg_{\mu\nu}$ | アインシュタインテンソル | 曲率を表す左辺の主役 |
| $\Lambda$ | 宇宙定数 | 真空自身がもつエネルギー密度に対応する定数 |
| $T_{\mu\nu}$ | エネルギー・運動量テンソル | $T_{00}$ がエネルギー密度、$T_{0i}$ が運動量密度、$T_{ij}$ が応力 |

**左辺は幾何、右辺は物質**です。左辺は計量とその 1 階・2 階微分だけでできており、右辺は物質側の情報だけでできています。両辺とも対称テンソルなので、方程式は 10 本の連立偏微分方程式です。

この方程式の際立った特徴を 3 つ挙げます。

**(1) 保存則が自動的に組み込まれています。** 幾何学の恒等式（ビアンキ恒等式）から $\nabla^\mu G_{\mu\nu} = 0$ が計量によらず成り立ちます。したがって方程式は $\nabla^\mu T_{\mu\nu} = 0$、すなわちエネルギー・運動量の局所保存を要求します。保存則を仮定として付け加える必要がなく、幾何が勝手に保証してくれるのです（対称性と保存則の一般論は [対称性と保存則（ネーターの定理）](/physics/mechanics/noethers-theorem) の <Ref to="physics/mechanics/noethers-theorem#thm-noether" text="ネーターの定理" /> を参照してください）。

**(2) 非線形です。** 曲率は計量の 2 階微分に加えて 1 階微分の積を含みます。重力場そのものがエネルギーをもち、そのエネルギーがまた重力を生む、という自己相互作用があるためです。電磁場の方程式（マクスウェル方程式）が線形なのと対照的で、これが厳密解を得ることを非常に難しくしています。

**(3) 結合定数が桁外れに小さいのです。** $\displaystyle \frac{8\pi G}{c^4} = 2.08\times10^{-43}\ \mathrm{m^{-2}\,J^{-1}\,m^{3}}$。曲率半径 1 m 程度に時空を曲げるには、右辺が $10^{43}$ J/m$^3$ 級である必要があります。地球全体の質量エネルギー $M_\oplus c^2 \approx 5.4\times10^{41}$ J を 1 m$^3$ に詰め込んでもまだ足りません。時空は途方もなく硬いのです。だからこそ日常では重力が「弱い力」に見えます。

<Theorem id="thm-poisson-limit" title="アインシュタイン方程式のニュートン極限">
$\Lambda = 0$ とし、時空が静的な弱い重力場（<Ref to="prop-newton-limit" /> と同じ弱場計量）で、物質が静止した非相対論的な塵（$T_{00} = \rho c^2$、他の成分は $\rho c^2$ に比べて無視できる）であるとする。このとき $\Phi/c^2$ の 1 次までの近似で、アインシュタイン方程式の $00$ 成分は

$$
\nabla^2 \Phi = 4\pi G\rho
$$

に帰着する。これはニュートン重力のポアソン方程式である。
</Theorem>

<Proof of="thm-poisson-limit">
まず方程式を扱いやすい形に直します。$\Lambda = 0$ の場合、両辺の $g^{\mu\nu}$ による縮約をとると、$g^{\mu\nu}g_{\mu\nu} = 4$（4 次元）より

$$
R - \frac{1}{2}R\cdot 4 = \frac{8\pi G}{c^4}T
\quad\Longrightarrow\quad
-R = \frac{8\pi G}{c^4}T,
\qquad T = g^{\mu\nu}T_{\mu\nu}.
$$

これを元の式に戻すと、等価な形（トレース反転形）

$$
R_{\mu\nu} = \frac{8\pi G}{c^4}\Bigl(T_{\mu\nu} - \frac{1}{2}T g_{\mu\nu}\Bigr)
$$

が得られます。

**右辺の評価。** 静止した塵では $T_{00} = \rho c^2$ で他は無視できます。$g^{00} \simeq -1$ なので $T = g^{00}T_{00} = -\rho c^2$。また $g_{00} \simeq -1$ より

$$
T_{00} - \frac{1}{2}Tg_{00} = \rho c^2 - \frac{1}{2}(-\rho c^2)(-1) = \rho c^2 - \frac{1}{2}\rho c^2 = \frac{1}{2}\rho c^2 .
$$

よって右辺の $00$ 成分は $\dfrac{8\pi G}{c^4}\cdot\dfrac{1}{2}\rho c^2 = \dfrac{4\pi G\rho}{c^2}$ です。

**左辺の評価。** リッチテンソルの定義 $R_{\mu\nu} = \partial_\alpha\Gamma^{\alpha}{}_{\mu\nu} - \partial_\nu\Gamma^{\alpha}{}_{\mu\alpha} + \Gamma\Gamma - \Gamma\Gamma$ において、$\Gamma$ は $\Phi/c^2$ の 1 次の量なので $\Gamma\Gamma$ の項は 2 次であり落とせます。さらに静的なので $\partial_0$ を含む項は消えます。残るのは

$$
R_{00} \simeq \partial_i \Gamma^{i}{}_{00}
$$

だけです。<Ref to="prop-newton-limit" /> の証明で計算したとおり $\Gamma^{i}{}_{00} = \partial_i\Phi/c^2$ なので、

$$
R_{00} \simeq \partial_i\Bigl(\frac{1}{c^2}\partial_i\Phi\Bigr) = \frac{1}{c^2}\nabla^2\Phi .
$$

**両辺を等置。** $\dfrac{1}{c^2}\nabla^2\Phi = \dfrac{4\pi G\rho}{c^2}$、すなわち $\nabla^2\Phi = 4\pi G\rho$ を得ます。
</Proof>

<Remark id="rem-lambda" title="宇宙定数について">
$\Lambda$ はアインシュタインが静的宇宙を得るために 1917 年に導入し、宇宙膨張の発見後に取り下げた項です。しかし 1998 年の Ia 型超新星の観測で宇宙の加速膨張が見つかり、$\Lambda$（あるいはそれに相当するダークエネルギー）は現在の標準宇宙モデルに不可欠な要素として復活しました。観測値は $\Lambda \sim 10^{-52}\ \mathrm{m^{-2}}$ 程度で、太陽系スケールの現象にはまったく効きません。以下の議論では $\Lambda = 0$ とします。
</Remark>

## 5. シュヴァルツシルト解とブラックホール

アインシュタイン方程式は非線形ですが、対称性が高ければ厳密に解けます。もっとも重要なのが球対称の真空解です。

<Theorem id="thm-schwarzschild" title="シュヴァルツシルト解とバーコフの定理">
$\Lambda = 0$ とする。球対称であり、ある半径の外側で真空（$T_{\mu\nu} = 0$）であるようなアインシュタイン方程式の解は、その真空領域において必ず静的であり、適当な座標 $(t, r, \theta, \varphi)$ を選べば

$$
ds^2 = -\Bigl(1 - \frac{r_s}{r}\Bigr)c^2dt^2 + \Bigl(1 - \frac{r_s}{r}\Bigr)^{-1}dr^2 + r^2\bigl(d\theta^2 + \sin^2\theta\,d\varphi^2\bigr)
$$

の形に書ける。ここで $r_s$ は定数で、$r \to \infty$ でニュートン重力に一致するという要請から $r_s = 2GM/c^2$（$M$ は中心天体の質量）と定まる。
</Theorem>

<Remark id="rem-birkhoff" title="この定理の意味と証明の所在">
証明は球対称計量の一般形 $ds^2 = -A(t,r)c^2dt^2 + B(t,r)dr^2 + r^2d\Omega^2$ を仮定してアインシュタイン方程式を書き下す計算で、Hartle 『Gravity』第 23 章、Schutz 『A First Course in General Relativity』第 10 章に丁寧な導出があります。

主張の後半（**バーコフの定理**）は物理的に強い内容をもちます。球対称なら、中心の星が脈動していようと球対称に崩壊していようと、外側の時空はまったく変化しないのです。したがって**球対称な運動は重力波を出しません**。この事実は <Ref to="rem-quadrupole" /> で再登場します。

なお $r$ は「中心からの距離」ではありません。この座標では球面 $r = \text{const}$ の面積が $4\pi r^2$ になるように $r$ が定義されています（面積座標）。中心からの動径方向の固有距離は $\int dr/\sqrt{1 - r_s/r}$ であり、$r$ そのものより大きくなります。

$r_s = 2GM/c^2$ が正しいことは <Ref to="prop-static-clock" /> から確認できます。$r \gg r_s$ で $g_{00} = -(1 - r_s/r)$ を $-(1 + 2\Phi/c^2)$ と比べると $\Phi = -c^2 r_s/(2r)$。これがニュートンポテンシャル $-GM/r$ に一致するには $r_s = 2GM/c^2$ でなければなりません。
</Remark>

<Definition id="def-schwarzschild-radius" title="シュヴァルツシルト半径">
質量 $M$ に対して

$$
r_s = \frac{2GM}{c^2}
$$

を**シュヴァルツシルト半径**という。天体の半径が $r_s$ より小さいとき、$r = r_s$ の球面を**事象の地平面**といい、その内側を**ブラックホール**という。
</Definition>

<Proposition id="prop-redshift" title="シュヴァルツシルト時空の重力赤方偏移">
シュヴァルツシルト時空の $r = r_1$ および $r = r_2$（ともに $r_s$ より大）に静止した 2 つの時計を考える。両者の固有時の進む速さの比は厳密に

$$
\frac{d\tau_1}{d\tau_2} = \sqrt{\frac{1 - r_s/r_1}{1 - r_s/r_2}}
$$

である。とくに $r_1 < r_2$ なら $d\tau_1 < d\tau_2$、すなわち**内側の時計のほうが遅れる**。$r_1 \to r_s$ の極限で比は $0$ に近づき、遠方から見た地平面上の時計は止まって見える。
</Proposition>

<Proof of="prop-redshift">
静止しているので $dr = d\theta = d\varphi = 0$。これを <Ref to="thm-schwarzschild" /> の線素に代入すると $ds^2 = -(1 - r_s/r)c^2dt^2$ です。<Ref to="def-proper-time" /> より

$$
d\tau = \sqrt{1 - \frac{r_s}{r}}\;dt .
$$

計量は $t$ に依らない（静的）ので、両方の時計について同じ座標時 $dt$ を共通の物差しに使えます。よって

$$
\frac{d\tau_1}{d\tau_2} = \frac{\sqrt{1 - r_s/r_1}\,dt}{\sqrt{1 - r_s/r_2}\,dt} = \sqrt{\frac{1 - r_s/r_1}{1 - r_s/r_2}} .
$$

$r_1 < r_2$ なら $r_s/r_1 > r_s/r_2$ より分子のほうが小さく、比は $1$ 未満です。$r_1 \to r_s + 0$ では分子が $0$ に収束するので比も $0$ に収束します。
</Proof>

<Example id="ex-schwarzschild-radii" title="いろいろな天体のシュヴァルツシルト半径">
$r_s = 2GM/c^2$ に $2G/c^2 = 1.485\times10^{-27}\ \mathrm{m/kg}$ を掛けるだけです。

| 天体 | 質量 | $r_s$ | 実際の半径 |
|---|---|---|---|
| 地球 | $5.97\times10^{24}$ kg | 8.87 mm | 6371 km |
| 太陽 | $1.99\times10^{30}$ kg | 2.95 km | $6.96\times10^5$ km |
| いて座 A\*（銀河中心） | $4.3\times10^6\,M_\odot$ | $1.3\times10^7$ km（$\approx 0.085$ au） | — |
| M87\*（楕円銀河 M87 中心） | $6.5\times10^9\,M_\odot$ | $1.9\times10^{10}$ km（$\approx 128$ au） | — |

地球の計算だけ実行しておきます。$r_s = 1.485\times10^{-27} \times 5.97\times10^{24} = 8.87\times10^{-3}$ m。地球を直径 1.8 cm の球に圧縮すればブラックホールになる、ということです。実際の地球半径はその 7 億倍以上なので、地表の重力はきわめて弱い場（$r_s/R = 1.4\times10^{-9}$）の領域にあります。

いて座 A\* の地平面の見かけの大きさは、距離 8 kpc から見て約 $50\ \mu$ 秒角です。イベント・ホライズン・テレスコープが 2019 年に M87\*、2022 年にいて座 A\* の「影」を撮像したのは、この大きさを地球サイズの電波干渉計で分解した結果です。
</Example>

<Remark id="rem-horizon" title="事象の地平面は特異点ではない">
線素を見ると $r = r_s$ で $g_{rr}$ が発散し、$r = 0$ で $g_{00}$ が発散します。両者は性質がまったく違います。

曲率が本当に発散しているかは、座標に依らないスカラー量で判定します。シュヴァルツシルト時空ではクレッチマン・スカラーが

$$
R_{\mu\nu\rho\sigma}R^{\mu\nu\rho\sigma} = \frac{12\,r_s^2}{r^6}
$$

と計算されます。$r = r_s$ を代入すると $12/r_s^4$ という有限の値です。つまり地平面では時空は何も壊れておらず、そこを通過する観測者は特別なことを感じません。発散は座標の選び方が悪いだけで、エディントン–フィンケルシュタイン座標やクルスカル座標に移れば消えます。

一方 $r \to 0$ では $12r_s^2/r^6 \to \infty$ で、これは座標変換で消せない**真の特異点**です。

地平面が特別なのは因果的な意味においてです。$r < r_s$ では $1 - r_s/r < 0$ となり $g_{00}$ と $g_{rr}$ の符号が入れ替わります。$r$ が時間的な座標になるため、内側に入った物体にとって $r$ が減ることは「未来へ進むこと」と同じになり、引き返せません。
</Remark>

<Example id="ex-light-bending" title="太陽による光の曲がり">
太陽の縁をかすめる光線の曲がり角は、シュヴァルツシルト時空のヌル測地線を解くと、$r_s/b \ll 1$（$b$ は衝突径数）の 1 次で

$$
\Delta\varphi = \frac{4GM}{c^2 b} = \frac{2r_s}{b}
$$

となります（導出は Hartle 第 9 章、Schutz 第 11 章）。$b = R_\odot = 6.957\times10^8$ m、$r_s = 2953$ m を入れると

$$
\Delta\varphi = \frac{2\times 2953}{6.957\times10^8} = 8.49\times10^{-6}\ \mathrm{rad}.
$$

ラジアンを秒角に直すには $1\ \mathrm{rad} = 206265''$ を掛けて

$$
\Delta\varphi = 8.49\times10^{-6}\times 206265 = 1.75''.
$$

これがエディントンらが 1919 年の皆既日食で測定し、一般相対論を有名にした値です。ニュートン力学に光の粒子説を組み合わせた素朴な計算では、この半分の $0.87''$ しか出ません（<Ref to="physics/relativity/equivalence-principle#prop-deflection-ep" text="等価原理から見積もる光の曲がり角" />、<Ref to="physics/relativity/equivalence-principle#rem-factor-two" />）。差が生じるのは、光が高速なので $g_{00}$ の効果（時間の曲がり）だけでなく空間の曲がり $g_{ij}$ も同じくらい効くからです。

同じ計量から水星の近日点移動 $43''$/世紀 も、電波が太陽の近くを通るときの往復時間の遅れ（シャピロ遅延）も導かれます。シャピロ遅延はカッシーニ探査機によって $10^{-5}$ の精度で確認されています。
</Example>

## 6. 重力波

時空が波打つことはあるでしょうか。方程式は非線形ですが、平坦な時空からのずれが小さい領域では線形化できます。

<Proposition id="prop-gw-equation" title="線形化された重力場の方程式">
計量を $g_{\mu\nu} = \eta_{\mu\nu} + h_{\mu\nu}$（$|h_{\mu\nu}| \ll 1$）と書き、$h = \eta^{\mu\nu}h_{\mu\nu}$ を用いて**トレース反転量**

$$
\bar{h}_{\mu\nu} = h_{\mu\nu} - \tfrac{1}{2}\eta_{\mu\nu}h
$$

を定める。座標条件（ローレンツゲージ）$\partial^\mu \bar{h}_{\mu\nu} = 0$ を課すと、$h$ の 1 次までのアインシュタイン方程式（$\Lambda = 0$）は

$$
\Box\,\bar{h}_{\mu\nu} = -\frac{16\pi G}{c^4}T_{\mu\nu},
\qquad
\Box = -\frac{1}{c^2}\frac{\partial^2}{\partial t^2} + \nabla^2
$$

となる。とくに真空 $T_{\mu\nu} = 0$ では $\Box\bar{h}_{\mu\nu} = 0$ であり、時空の歪みは**光速で伝わる波**として振る舞う。
</Proposition>

<Proof of="prop-gw-equation">
リッチテンソルを $h$ の 1 次まで展開すると

$$
R_{\mu\nu} = \frac{1}{2}\bigl(\partial^\alpha\partial_\mu h_{\alpha\nu} + \partial^\alpha\partial_\nu h_{\alpha\mu} - \Box h_{\mu\nu} - \partial_\mu\partial_\nu h\bigr)
$$

となります（クリストッフェル記号を 1 次まで書き下して定義に代入する計算で、Schutz 第 8 章に詳しくあります）。

4 次元では $\eta^{\mu\nu}\eta_{\mu\nu} = 4$ なので $\bar{h} = h - 2h = -h$、したがって $h_{\mu\nu} = \bar{h}_{\mu\nu} - \frac{1}{2}\eta_{\mu\nu}\bar{h}$ です。これを使ってゲージ条件を書き直すと

$$
\partial^\alpha h_{\alpha\nu} = \partial^\alpha\bar{h}_{\alpha\nu} - \frac{1}{2}\partial_\nu\bar{h} = -\frac{1}{2}\partial_\nu \bar{h} = \frac{1}{2}\partial_\nu h .
$$

これを上の $R_{\mu\nu}$ に代入します。第 1 項と第 2 項はそれぞれ $\frac{1}{2}\partial_\mu\partial_\nu h$ となるので、

$$
R_{\mu\nu} = \frac{1}{2}\Bigl(\frac{1}{2}\partial_\mu\partial_\nu h + \frac{1}{2}\partial_\nu\partial_\mu h - \Box h_{\mu\nu} - \partial_\mu\partial_\nu h\Bigr) = -\frac{1}{2}\Box h_{\mu\nu}.
$$

<Ref to="thm-poisson-limit" /> の証明で導いたトレース反転形 $R_{\mu\nu} = \frac{8\pi G}{c^4}(T_{\mu\nu} - \frac{1}{2}Tg_{\mu\nu})$ と等置すると（1 次なので $g_{\mu\nu} \to \eta_{\mu\nu}$）

$$
\Box h_{\mu\nu} = -\frac{16\pi G}{c^4}\Bigl(T_{\mu\nu} - \frac{1}{2}\eta_{\mu\nu}T\Bigr).
$$

両辺のトレースをとると $\Box h = -\frac{16\pi G}{c^4}(T - 2T) = \frac{16\pi G}{c^4}T$。よって

$$
\Box\bar{h}_{\mu\nu} = \Box h_{\mu\nu} - \frac{1}{2}\eta_{\mu\nu}\Box h
= -\frac{16\pi G}{c^4}T_{\mu\nu} + \frac{8\pi G}{c^4}\eta_{\mu\nu}T - \frac{8\pi G}{c^4}\eta_{\mu\nu}T
= -\frac{16\pi G}{c^4}T_{\mu\nu}
$$

を得ます。$\Box$ は波動演算子であり、真空では $\Box\bar{h}_{\mu\nu} = 0$ が伝播速度 $c$ の波動方程式そのものです。
</Proof>

真空解のうち物理的に意味のある自由度は 2 つだけです。10 個の成分から、ゲージ条件 4 本と残された座標の自由度 4 本を差し引くと 2 つが残ります。これを $h_+$ と $h_\times$ と書き、**プラス偏極**・**クロス偏極**と呼びます。$z$ 方向に進む波が通り過ぎると、$xy$ 平面に置かれた自由粒子の輪は、$h_+$ なら縦長と横長を交互に、$h_\times$ ならそれを $45^\circ$ 傾けた形で変形します。**重力波は伸び縮みの波であって、上下に揺れる波ではありません。**

<Remark id="rem-quadrupole" title="なぜ四重極なのか">
放射の強さは、電磁気学と同様に多重極展開で評価します。ただし重力の場合、低次の多重極が保存則で禁止されます。

- **単極子（モノポール）放射はありません。** 質量の単極子モーメントは全質量そのもので、保存量だから時間変化しません。
- **双極子放射もありません。** 質量双極子モーメント $\sum m_i \boldsymbol{r}_i$ の時間微分は全運動量であり、これも保存量です。

したがって最低次は四重極です。質量四重極モーメント $Q_{ij} = \int \rho\,(x_i x_j - \frac{1}{3}\delta_{ij}r^2)\,d^3x$ を用いると、放射される仕事率は

$$
P = \frac{G}{5c^5}\Bigl\langle \frac{d^3Q_{ij}}{dt^3}\frac{d^3Q_{ij}}{dt^3}\Bigr\rangle
$$

と表されます（四重極公式。導出は MTW 『Gravitation』第 36 章）。<Ref to="rem-birkhoff" /> のバーコフの定理と整合していることに注意してください。球対称な運動では $Q_{ij}$ が変化しないので、放射はゼロです。

前に付く係数 $G/c^5 = 2.76\times10^{-53}\ \mathrm{W^{-1}}$ の逆数 $c^5/G = 3.6\times10^{52}$ W が重力波光度の自然単位です。この巨大さのために、実験室規模の物体をどんなに振り回しても検出可能な重力波は作れません。
</Remark>

<Example id="ex-gw150914" title="GW150914：最初の直接検出">
2015 年 9 月 14 日、LIGO の 2 台の検出器が、$36\,M_\odot$ と $29\,M_\odot$ のブラックホール連星が合体する信号を捉えました。合体後の質量は $62\,M_\odot$ で、差し引き約 $3\,M_\odot$ 分のエネルギー

$$
E = 3 \times 1.99\times10^{30} \times 8.99\times10^{16} = 5.4\times10^{47}\ \mathrm{J}
$$

が 0.2 秒ほどの間に重力波として放出されました（$E = mc^2$ については [相対論的力学（E=mc²）](/physics/relativity/relativistic-mechanics) の <Ref to="physics/relativity/relativistic-mechanics#thm-energy-momentum-relation" text="エネルギー・運動量関係式" /> を参照してください）。ピーク光度は約 $3.6\times10^{49}$ W で、観測可能な宇宙にあるすべての星の光度の総和を上回ります。

連星から出る重力波の周波数の増え方（チャープ）は、2 つの質量の特定の組み合わせ

$$
\mathcal{M} = \frac{(m_1m_2)^{3/5}}{(m_1+m_2)^{1/5}}
$$

（**チャープ質量**）だけで決まります。GW150914 の値を計算してみます。$m_1m_2 = 36\times29 = 1044$、$m_1+m_2 = 65$（単位は $M_\odot$）なので

$$
\mathcal{M} = \frac{1044^{3/5}}{65^{1/5}}
= \frac{e^{0.6\ln 1044}}{e^{0.2\ln 65}}
= \frac{e^{0.6\times 6.951}}{e^{0.2\times 4.174}}
= \frac{e^{4.170}}{e^{0.8349}}
= \frac{64.8}{2.30}
= 28.1\ M_\odot .
$$

観測された波形からまず精度よく決まるのはこの $\mathcal{M}$ で、個々の質量 $m_1, m_2$ の分離にはより高次の効果が必要になります。

地球に届いた歪みの大きさは $h \approx 1.0\times10^{-21}$ でした。LIGO の腕の長さ 4 km に対する変化量は

$$
\Delta L = h\,L = 1.0\times10^{-21}\times 4000 = 4\times10^{-18}\ \mathrm{m}
$$

で、陽子 1 個の直径（約 $1.7\times10^{-15}$ m）の数百分の 1 です。この値を測るためにレーザー干渉計が必要でした。
</Example>

<Remark id="rem-hulse-taylor" title="間接的な証拠は 40 年前からあった">
1974 年にハルスとテイラーが発見した連星パルサー PSR B1913+16 は、周期 7.75 時間で互いを回る中性子星の連星です。重力波を放出してエネルギーを失えば軌道は縮み、周期が短くなるはずです。四重極公式の予言は年あたり約 $76\ \mu$s の周期短縮で、数十年にわたる観測はこれと $0.2\%$ 以内で一致しました。この業績には 1993 年のノーベル物理学賞が与えられています。重力波の存在は、直接検出の 40 年前から実質的に確立していたのです。
</Remark>

## 7. GPS：一般相対論が実務になる場所

ここまでの理論を、いま手元のスマートフォンが使っている装置に適用します。GPS 衛星は高度約 20,200 km（地心距離 $r = 26{,}561$ km）の円軌道を、周期 11 時間 58 分で回っています。各衛星はセシウムまたはルビジウムの原子時計を積み、「いま何時か」を電波で放送し続けます。受信機は 4 機以上の衛星からの信号の到着時刻の差から自分の位置を割り出します。時刻が 10 ns（ナノ秒）ずれると距離換算で約 3 m ずれるので、この装置の精度はまるごと時計の精度に乗っています。

衛星の時計には 2 つの効果が同時に働きます。**衛星は速く動いているので遅れ**（特殊相対論、<Ref to="physics/relativity/lorentz-transformations#thm-time-dilation" text="時間の遅れ" />）、**重力の弱い高いところにいるので進みます**（一般相対論、<Ref to="prop-static-clock" />）。両者は符号が逆なので、正味の値を求めるには両方を正しく足し合わせなければなりません。ありがたいことに、シュヴァルツシルト時空の円軌道ではこれを厳密に一つの式にまとめられます。

<Proposition id="prop-circular-orbit-rate" title="円軌道を回る時計の進み方">
シュヴァルツシルト時空において、赤道面内の半径 $r$（$r > 3r_s/2$）の円軌道を回る自由落下物体の固有時 $\tau$ と座標時 $t$ の関係は、厳密に

$$
\frac{d\tau}{dt} = \sqrt{1 - \frac{3GM}{rc^2}} = \sqrt{1 - \frac{3r_s}{2r}}
$$

である。無限遠に静止した時計に対する遅れが、静止した場合の $\sqrt{1 - 2GM/(rc^2)}$ ではなく、係数 $3$ になっている点が要点である。
</Proposition>

<Proof of="prop-circular-orbit-rate">
Appendix で示すとおり、シュヴァルツシルト座標での円軌道の角速度は厳密に

$$
\Bigl(\frac{d\varphi}{dt}\Bigr)^2 = \frac{GM}{r^3}
$$

を満たします（ケプラーの第 3 法則がそのままの形で成り立ちます）。

赤道面 $\theta = \pi/2$、$dr = 0$、$d\theta = 0$ を <Ref to="thm-schwarzschild" /> の線素に代入すると

$$
ds^2 = -\Bigl(1 - \frac{r_s}{r}\Bigr)c^2dt^2 + r^2 d\varphi^2 .
$$

<Ref to="def-proper-time" /> より $c^2d\tau^2 = -ds^2$ なので、両辺を $c^2dt^2$ で割って

$$
\Bigl(\frac{d\tau}{dt}\Bigr)^2 = \Bigl(1 - \frac{r_s}{r}\Bigr) - \frac{r^2}{c^2}\Bigl(\frac{d\varphi}{dt}\Bigr)^2
= \Bigl(1 - \frac{2GM}{rc^2}\Bigr) - \frac{r^2}{c^2}\cdot\frac{GM}{r^3}
= 1 - \frac{3GM}{rc^2}.
$$

$r_s = 2GM/c^2$ を使えば $3GM/(rc^2) = 3r_s/(2r)$ です。平方根をとって結論を得ます。$r > 3r_s/2$ は根号の中が正であるための条件です。
</Proof>

<Example id="ex-gps-numbers" title="GPS 衛星の時計は 1 日に何マイクロ秒進むか">
使う定数は次のとおりです。

$$
GM_\oplus = 3.9860\times10^{14}\ \mathrm{m^3/s^2},\quad
c^2 = 8.9876\times10^{16}\ \mathrm{m^2/s^2},\quad
\frac{GM_\oplus}{c^2} = 4.4350\times10^{-3}\ \mathrm{m}
$$

$$
R_\oplus = 6.371\times10^6\ \mathrm{m},\qquad r = 2.6561\times10^7\ \mathrm{m}
$$

以下、衛星の固有時を $\tau_{\mathrm{sat}}$、地表の固有時を $\tau_{\mathrm{gnd}}$ と書きます。**衛星の時計**は <Ref to="prop-circular-orbit-rate" /> より $d\tau_{\mathrm{sat}}/dt = \sqrt{1 - 3GM/(rc^2)}$。**地表の時計**は静止しているので <Ref to="prop-redshift" /> より $d\tau_{\mathrm{gnd}}/dt = \sqrt{1 - 2GM/(R_\oplus c^2)}$。どちらも根号の中身は $1$ に極めて近いので、$\sqrt{1-x}\simeq 1 - x/2$ を使って比をとります。

$$
\frac{d\tau_{\mathrm{sat}}}{d\tau_{\mathrm{gnd}}}
\simeq \frac{1 - \dfrac{3GM}{2rc^2}}{1 - \dfrac{GM}{R_\oplus c^2}}
\simeq 1 + \frac{GM}{c^2}\Bigl(\frac{1}{R_\oplus} - \frac{3}{2r}\Bigr).
$$

内訳がわかるように、右辺の第 2 項を 2 つに分けて書きます。

$$
\underbrace{\frac{GM}{c^2}\Bigl(\frac{1}{R_\oplus} - \frac{1}{r}\Bigr)}_{(\mathrm{a})}
\;\underbrace{-\;\frac{GM}{2rc^2}}_{(\mathrm{b})}
$$

(a) が重力による進み、(b) が速度による遅れです。(b) が速度の効果であることは、円軌道の速さが $v^2 = GM/r$ であり、特殊相対論の時間の遅れが $-v^2/(2c^2) = -GM/(2rc^2)$ となることから確認できます。

**数値を入れます。**

重力の効果：

$$
4.4350\times10^{-3}\times\Bigl(\frac{1}{6.371\times10^6} - \frac{1}{2.6561\times10^7}\Bigr)
= 4.4350\times10^{-3}\times\bigl(1.5696 - 0.3765\bigr)\times10^{-7}
= 5.2915\times10^{-10}
$$

1 日 $= 86400$ s を掛けて $+45.72\ \mu\mathrm{s}$/日 です。

速度の効果：

$$
-\frac{4.4350\times10^{-3}}{2\times 2.6561\times10^{7}} = -8.3487\times10^{-11}
$$

1 日を掛けて $-7.21\ \mu\mathrm{s}$/日 です。ちなみに軌道速度は $v = \sqrt{GM/r} = 3.87$ km/s です。

**正味：**

$$
(5.2915 - 0.8349)\times10^{-10} = 4.4566\times10^{-10}
$$

1 日を掛けて $+38.5\ \mu\mathrm{s}$/日。重力の効果が速度の効果の 6 倍以上あり、衛星の時計は差し引きで**進み**ます。
</Example>

<Figure caption="GPS 衛星の原子時計が地表の時計に対して 1 日にずれる量。重力による進みが速度による遅れを大きく上回る。">

<svg viewBox="0 0 660 272" width="100%" role="img" aria-label="GPS 衛星の時計のずれの内訳を示す横棒グラフ">
  <g fill="currentColor" font-family="system-ui, sans-serif">
    <text x="6" y="24" font-size="15">1 日あたりの時計のずれ（地表基準、マイクロ秒）</text>
    <line x1="245" y1="46" x2="245" y2="230" stroke="currentColor" stroke-width="1" stroke-dasharray="4 4" opacity="0.5" />
    <line x1="170" y1="222" x2="620" y2="222" stroke="currentColor" stroke-width="1.2" />
    <g font-size="12" text-anchor="middle" opacity="0.75">
      <text x="170" y="242">-10</text>
      <text x="245" y="242">0</text>
      <text x="320" y="242">10</text>
      <text x="395" y="242">20</text>
      <text x="470" y="242">30</text>
      <text x="545" y="242">40</text>
      <text x="620" y="242">50</text>
    </g>
    <g font-size="13" text-anchor="end">
      <text x="160" y="81">重力による進み</text>
      <text x="160" y="136">速度による遅れ</text>
      <text x="160" y="191">正味のずれ</text>
    </g>
    <rect x="245" y="60" width="343" height="32" fill="var(--sl-color-accent)" fill-opacity="0.30" stroke="var(--sl-color-accent)" stroke-width="1.5" />
    <rect x="191" y="115" width="54" height="32" fill="var(--sl-color-accent)" fill-opacity="0.30" stroke="var(--sl-color-accent)" stroke-width="1.5" />
    <rect x="245" y="170" width="289" height="32" fill="var(--sl-color-accent)" fill-opacity="0.55" stroke="var(--sl-color-accent)" stroke-width="2" />
    <g font-size="13">
      <text x="596" y="81">+45.7</text>
      <text x="185" y="136" text-anchor="end">-7.2</text>
      <text x="542" y="191">+38.5</text>
    </g>
  </g>
</svg>

</Figure>

### 7.1. 補正しないとどうなるか

$38.5\ \mu\mathrm{s}$/日、すなわち分数レートで $4.46\times10^{-10}$ という値がどれくらい深刻かを見ます。時刻誤差 $\Delta t$ は距離誤差 $c\,\Delta t$ になるので、

$$
c \times 38.5\times10^{-6}\ \mathrm{s} = 2.998\times10^{8}\times 3.85\times10^{-5} = 1.15\times10^{4}\ \mathrm{m}
$$

で、**1 日で約 11 km** です。測位に必要な 10 ns（約 3 m）に達するまでの時間は

$$
\frac{1\times10^{-8}}{4.46\times10^{-10}} = 22\ \mathrm{s}
$$

にすぎず、100 m の誤差なら約 12 分で溜まります。相対論補正は「精度を上げるための微調整」ではなく、**装置が成立するための必須条件**です。

### 7.2. どう補正しているか

対処は驚くほど素朴です。衛星の基準発振器の公称周波数は 10.23 MHz ですが、打ち上げ前の地上での調整段階で、あらかじめ

$$
\Delta f = -10.23\times10^{6}\times 4.4647\times10^{-10} = -4.57\times10^{-3}\ \mathrm{Hz}
$$

だけ低くしておきます。つまり地上では 10.22999999543 MHz で発振するように作り、軌道に上がると相対論効果でちょうど 10.23 MHz として働くわけです。

<Aside type="caution">
上の数値 $4.4647\times10^{-10}$（$38.6\ \mu\mathrm{s}$/日 に相当）は、<Ref to="ex-gps-numbers" /> で求めた $4.4566\times10^{-10}$ とわずかに違います。差の原因は、実際の GPS が地表の基準を「静止した球面上の点」ではなく**回転する地球のジオイド**（自転による遠心力ポテンシャルと地球の扁平を含む等ポテンシャル面）に取っている点にあります。自転による速度の効果と扁平の効果を含めると値が少し大きくなります。詳しくは Ashby の総説を参照してください。ジオイド面上ではどこでも時計の進み方が同じになるので、基準としてよくできた選び方です。
</Aside>

一定のずれは以上の周波数オフセットで吸収できますが、それだけでは足りません。

- **軌道の離心率による変動。** GPS 軌道はわずかに楕円なので、$r$ と $v$ が周期的に変わり、時計のずれも変動します。離心率 $e = 0.02$ 程度でも振幅は数十 ns に達するため、受信機側で $\Delta t = 2\sqrt{GMa}\,e\sin E/c^2$（$a$ は軌道長半径、$E$ は離心近点角）という補正項を毎回計算します。
- **サニャック効果。** 地球が自転しているため、電波が伝わる間に受信機が動きます。地球中心の慣性系で計算すればよいのですが、この補正は最大で 133 ns（距離にして約 40 m）に達します。

つまり GPS は、特殊相対論・一般相対論・回転系の運動学の 3 つを同時に使ってようやく動く装置です。アインシュタインが 1915 年に書いた方程式が、いま毎秒何十億回も評価されています。

## 8. 演習

<Exercise id="exr-skytree" difficulty="易">
東京スカイツリーの展望回廊（地上 450 m）と地表に、同じ光格子時計を置いたとします。<Ref to="prop-static-clock" /> を使って、両者の進む速さの比の差 $(\Delta\tau/\tau)$ を求め、1 年間でどれだけの時間差になるか計算してください。重力加速度は $g = 9.80\ \mathrm{m/s^2}$、1 年を $3.156\times10^7$ s とします。

<Solution>
地表付近では $\Phi = gz$ と近似できるので、<Ref to="prop-static-clock" /> より

$$
\frac{\Delta\tau}{\tau} = \frac{\Phi(h) - \Phi(0)}{c^2} = \frac{gh}{c^2}
= \frac{9.80\times450}{8.9876\times10^{16}}
= \frac{4410}{8.9876\times10^{16}}
= 4.91\times10^{-14}.
$$

1 年で

$$
4.91\times10^{-14}\times 3.156\times10^{7} = 1.55\times10^{-6}\ \mathrm{s} \approx 1.5\ \mu\mathrm{s}
$$

です。1 日あたりなら $4.91\times10^{-14}\times86400 = 4.2$ ns。上の時計のほうが速く進みます。

この実験は実際に行われました。香取秀俊のグループは可搬型の光格子時計 2 台をスカイツリーの地上階と 450 m の展望回廊に置き、$4.9\times10^{-14}$ という予言値を相対精度 $10^{-5}$ で検証しています（Takamoto et al., *Nature Photonics* **14** (2020), 411–415）。光格子時計はもはや高さ数センチの差を検出できる水準にあり、重力ポテンシャルを測る測地学の道具になりつつあります。
</Solution>
</Exercise>

<Exercise id="exr-geostationary" difficulty="標準">
静止衛星（地心距離 $r = 4.2164\times10^7$ m）の時計は、地表の時計に対して 1 日あたり何マイクロ秒ずれるでしょうか。<Ref to="ex-gps-numbers" /> と同じ定数を使い、重力の効果と速度の効果に分けて求めてください。GPS 衛星の場合（$+38.5\ \mu$s/日）と比べて、どちらが大きくなるか、その理由も述べてください。

<Solution>
<Ref to="ex-gps-numbers" /> と同じ式

$$
\frac{\Delta\tau}{\tau} = \frac{GM}{c^2}\Bigl(\frac{1}{R_\oplus} - \frac{1}{r}\Bigr) - \frac{GM}{2rc^2}
$$

に $r = 4.2164\times10^7$ m を代入します。$1/r = 2.3717\times10^{-8}$、$1/R_\oplus = 1.5696\times10^{-7}$ です。

重力の効果：

$$
4.4350\times10^{-3}\times(1.5696 - 0.23717)\times10^{-7}
= 4.4350\times10^{-3}\times 1.3324\times10^{-7}
= 5.9093\times10^{-10}
$$

$\times\,86400 = +51.06\ \mu\mathrm{s}$/日 です。

速度の効果：

$$
-\frac{4.4350\times10^{-3}}{2\times4.2164\times10^{7}} = -5.2593\times10^{-11}
$$

$\times\,86400 = -4.54\ \mu\mathrm{s}$/日 です。

正味は $51.06 - 4.54 = +46.5\ \mu\mathrm{s}$/日 で、GPS 衛星より大きくなります。

理由は 2 つあります。静止軌道のほうが高いので重力ポテンシャルの差が大きく（進みが増える）、同時に軌道速度が遅いので（$v = \sqrt{GM/r} = 3.07$ km/s）特殊相対論による遅れが小さくなります。両方が同じ向きに効くので差は開きます。一般に高度を上げていくと正味のずれは単調に増え、無限遠の極限では $GM/(R_\oplus c^2) \times 86400 = +60.1\ \mu$s/日 に近づきます。
</Solution>
</Exercise>

<Exercise id="exr-coordinate-light-speed" difficulty="標準">
シュヴァルツシルト時空において、動径方向に進む光の「座標速度」が

$$
\Bigl|\frac{dr}{dt}\Bigr| = c\Bigl(1 - \frac{r_s}{r}\Bigr)
$$

となることを示してください。また、これが「重力によって光が遅くなる」ことを意味しないのはなぜか、局所的に静止した観測者が測る速さを計算して説明してください。

<Solution>
光の世界線は $ds^2 = 0$（ヌル）を満たします。動径方向なので $d\theta = d\varphi = 0$。<Ref to="thm-schwarzschild" /> の線素に代入すると

$$
0 = -\Bigl(1 - \frac{r_s}{r}\Bigr)c^2dt^2 + \Bigl(1 - \frac{r_s}{r}\Bigr)^{-1}dr^2 .
$$

$f = 1 - r_s/r$ と置いて整理すると $dr^2 = f^2c^2dt^2$、すなわち $|dr/dt| = cf = c(1 - r_s/r)$ です。$r \to r_s$ でこれは $0$ に近づきます。

しかしこれは光が遅くなったのではなく、$t$ と $r$ が遠方の観測者が使う便宜的な座標にすぎないためです。$r$ に静止した観測者が自分の物差しと時計で測ると、次のようになります。

- 動径方向の固有距離：$d\ell = dr/\sqrt{f}$（線素の $g_{rr}$ から）
- 固有時：$d\tau = \sqrt{f}\,dt$（<Ref to="prop-redshift" /> の証明より）

したがって局所的に測った速さは

$$
\frac{d\ell}{d\tau} = \frac{dr/\sqrt{f}}{\sqrt{f}\,dt} = \frac{1}{f}\Bigl|\frac{dr}{dt}\Bigr| = \frac{1}{f}\cdot cf = c
$$

でぴったり $c$ です。どの局所慣性系でも光速が $c$ であることは一般相対論でも保たれています。

なお座標速度が $c$ より小さいことには観測できる帰結があります。太陽の近くを通る電波は座標時間で見て余分に時間がかかり、往復時間が延びます。これが <Ref to="ex-light-bending" /> で触れたシャピロ遅延です。
</Solution>
</Exercise>

<Exercise id="exr-bh-density" difficulty="難">
シュヴァルツシルト・ブラックホールの「平均密度」を $\rho = M / \bigl(\frac{4}{3}\pi r_s^3\bigr)$ で定義します。これを $M$ の関数として表し、$M = 10^9 M_\odot$ の超大質量ブラックホールについて数値を求めてください。この結果は何を意味するでしょうか。

<Solution>
<Ref to="def-schwarzschild-radius" /> より $r_s = 2GM/c^2$ なので

$$
\rho = \frac{M}{\dfrac{4}{3}\pi\Bigl(\dfrac{2GM}{c^2}\Bigr)^3}
= \frac{3M c^6}{4\pi\cdot 8G^3M^3}
= \frac{3c^6}{32\pi G^3 M^2}.
$$

密度は質量の 2 乗に**反比例**します。大きいブラックホールほどスカスカということです。

数値を入れます。$c^6 = (c^2)^3 = (8.9876\times10^{16})^3 = 7.260\times10^{50}$、$G^3 = (6.674\times10^{-11})^3 = 2.973\times10^{-31}$、$M = 10^9\times1.989\times10^{30} = 1.989\times10^{39}$ kg より $M^2 = 3.956\times10^{78}$。

分子：$3\times7.260\times10^{50} = 2.178\times10^{51}$。

分母：$32\pi = 100.53$ なので $100.53\times2.973\times10^{-31}\times3.956\times10^{78} = 1.182\times10^{50}$。

$$
\rho = \frac{2.178\times10^{51}}{1.182\times10^{50}} = 18\ \mathrm{kg/m^3}.
$$

水（$1000\ \mathrm{kg/m^3}$）の 50 分の 1 ほど、地上の空気（$1.2\ \mathrm{kg/m^3}$）の 15 倍程度にすぎません。

意味するところは重要です。ブラックホールは「物質が極限まで圧縮されたもの」という描像は、恒星質量のものにしか当てはまりません（同じ式で $M = M_\odot$ とすると $\rho = 1.8\times10^{19}\ \mathrm{kg/m^3}$ で、原子核密度の 80 倍近くになります）。超大質量ブラックホールの場合、地平面を横切る瞬間の潮汐力も小さく（<Ref to="rem-horizon" /> のクレッチマン・スカラーは $12/r_s^4$ なので $M$ が大きいほど小さい）、落ちる観測者は境界を越えたことに気づきません。ブラックホールを特徴づけるのは密度でも力の強さでもなく、**因果構造**なのです。
</Solution>
</Exercise>

## 参考文献

- J. B. Hartle, *Gravity: An Introduction to Einstein's General Relativity*, Addison-Wesley, 2003 — 測地線と計量から入る構成で、第 6〜9 章がシュヴァルツシルト時空、第 16 章が重力波、第 22〜23 章が場の方程式とその解。
- B. F. Schutz, *A First Course in General Relativity*, 2nd ed., Cambridge University Press, 2009 — 第 8 章に線形化重力と重力波、第 10〜11 章に球対称解と古典的検証。
- C. W. Misner, K. S. Thorne, J. A. Wheeler, *Gravitation*, Princeton University Press, 2017（原著 1973）— 第 17 章が場の方程式、第 25 章がシュヴァルツシルト幾何、第 36 章が四重極公式。
- 内山龍雄『一般相対性理論』裳華房（物理学選書）、1978 — 日本語で読める古典的な教科書。
- N. Ashby, "Relativity in the Global Positioning System", *Living Reviews in Relativity* **6** (2003), 1. [https://doi.org/10.12942/lrr-2003-1](https://doi.org/10.12942/lrr-2003-1) — GPS の相対論補正について、ジオイド基準・離心率補正・サニャック効果まで扱った標準的な総説。
- B. P. Abbott et al. (LIGO Scientific Collaboration and Virgo Collaboration), "Observation of Gravitational Waves from a Binary Black Hole Merger", *Physical Review Letters* **116** (2016), 061102. [https://doi.org/10.1103/PhysRevLett.116.061102](https://doi.org/10.1103/PhysRevLett.116.061102) — GW150914 の発見論文。

## Appendix: シュヴァルツシルト時空の円軌道

<Ref to="prop-circular-orbit-rate" /> で使った関係式 $(d\varphi/dt)^2 = GM/r^3$ を導きます。

赤道面 $\theta = \pi/2$ に限ると、線素は

$$
ds^2 = -f\,c^2dt^2 + f^{-1}dr^2 + r^2d\varphi^2,
\qquad f = f(r) = 1 - \frac{r_s}{r}
$$

です。円軌道では $r$ が一定なので $dr/d\tau = 0$ かつ $d^2r/d\tau^2 = 0$。したがって <Ref to="def-geodesic" /> の $\mu = r$ 成分は

$$
0 + \Gamma^{r}{}_{00}\Bigl(\frac{dx^0}{d\tau}\Bigr)^2 + \Gamma^{r}{}_{\varphi\varphi}\Bigl(\frac{d\varphi}{d\tau}\Bigr)^2 = 0
$$

となります（$dr/d\tau = 0$ なので $\Gamma^r{}_{rr}$ などを含む項は消え、$\theta = \pi/2$ 一定なので $\theta$ を含む項も消えます）。

必要なクリストッフェル記号を計算します。計量が対角なので $g^{rr} = f$ です。座標 $x^0 = ct$ を使うと $g_{00} = -f$、$g_{\varphi\varphi} = r^2$ であり、計量は $t$ にも $\varphi$ にも依らないので、

$$
\Gamma^{r}{}_{00} = \frac{1}{2}g^{rr}\bigl(2\partial_0 g_{r0} - \partial_r g_{00}\bigr)
= -\frac{1}{2}f\,\partial_r(-f) = \frac{1}{2}f f',
$$

$$
\Gamma^{r}{}_{\varphi\varphi} = \frac{1}{2}g^{rr}\bigl(2\partial_\varphi g_{r\varphi} - \partial_r g_{\varphi\varphi}\bigr)
= -\frac{1}{2}f\,\partial_r(r^2) = -rf .
$$

ここで $f' = df/dr = r_s/r^2$ です。$x^0 = ct$ より $dx^0/d\tau = c\,dt/d\tau$ なので、測地線方程式は

$$
\frac{1}{2}ff'\,c^2\Bigl(\frac{dt}{d\tau}\Bigr)^2 - rf\Bigl(\frac{d\varphi}{d\tau}\Bigr)^2 = 0 .
$$

$f \neq 0$（$r > r_s$）で割り、$(d\varphi/d\tau)/(dt/d\tau) = d\varphi/dt$ を使うと

$$
\Bigl(\frac{d\varphi}{dt}\Bigr)^2 = \frac{c^2 f'}{2r} = \frac{c^2}{2r}\cdot\frac{r_s}{r^2} = \frac{c^2 r_s}{2r^3}.
$$

最後に $r_s = 2GM/c^2$ を代入すると

$$
\Bigl(\frac{d\varphi}{dt}\Bigr)^2 = \frac{c^2}{2r^3}\cdot\frac{2GM}{c^2} = \frac{GM}{r^3}
$$

を得ます。これはケプラーの第 3 法則 $T^2 \propto r^3$ と同じ形です（<Ref to="physics/mechanics/central-forces#thm-kepler-third" text="ケプラーの第三法則" />）。シュヴァルツシルト座標という特定の座標系ではニュートン重力と厳密に同じ関係が成り立つ、という少し意外な事実で、GPS の計算を見通しよくしてくれます。


</div>
