# ゲージ理論と自発的対称性の破れ：ヒッグス機構はなぜ質量を生むのか

> 局所 U(1) 対称性から電磁場を導くゲージ原理を出発点に、自発的対称性の破れとゴールドストーンの定理を証明し、アーベリアン・ヒッグス模型と標準模型で W・Z ボソンが質量を得る仕組みを計算で追う。
> https://rikai.mugen-giken.com/physics/qft/gauge-theory-and-symmetry-breaking

## 0. この記事の要点

- 場の位相を時空の各点で独立に選び直す自由（局所対称性）を要請すると、それを補償する場としてゲージ場 $A_\mu$ が必然的に現れます。電磁場はこの要請の帰結として導かれ、同じ要請が光子の質量項 $\frac{1}{2}m^2A_\mu A^\mu$ を禁じます。
- ラグランジアンが対称でも、最低エネルギー状態（真空）がその対称性を保つとは限りません。これが自発的対称性の破れで、メキシカンハット型ポテンシャルがその典型です。
- 連続的な**大域**対称性が自発的に破れると、破れた生成子の数だけ質量ゼロの粒子（南部・ゴールドストーン粒子）が現れます。この記事ではこれを、ポテンシャルの質量行列の零固有ベクトルとして証明します。
- 破れる対称性が**ゲージ**対称性の場合、ゴールドストーン粒子は独立な粒子として現れず、ゲージ場の縦波自由度として吸収され、ゲージ場が質量を得ます（ヒッグス機構）。自由度の総数は前後で変わりません。
- 標準模型では $SU(2)_L \times U(1)_Y \to U(1)_{\mathrm{em}}$ の破れにより $W^\pm, Z$ が質量を得、光子は質量ゼロのまま残ります。$M_W = gv/2$ と $M_Z = v\sqrt{g^2+g'^2}/2$ から、実験でよく検証された関係 $M_W = M_Z\cos\theta_W$ が従います。

## 1. 動機：位相の自由度と、質量が書けないという困難

量子力学では、波動関数の全体位相は観測できません。$\psi \to e^{i\alpha}\psi$ としても $|\psi|^2$ は変わらず、期待値も変わりません。ところがこの $\alpha$ は時空全体で共通の**一つの定数**です。ここで位相の基準を決めると、アンドロメダ銀河での基準も同時に決まってしまう。ヘルマン・ワイルは 1918 年に長さの基準（Eichung、ゲージ）を各点で自由に選べるとする理論を提案し、1929 年にそれを位相の自由度として読み替えました。位相の基準は各点で勝手に選べるはずだ、という要請です。

この要請には代償があります。位相を各点で別々に回すと、微分 $\partial_\mu\psi$ は $e^{i\alpha(x)}\partial_\mu\psi$ にはならず、余分な項 $i(\partial_\mu\alpha)\psi$ が出ます。ラグランジアンの微分項がこわれるのです。これを打ち消すには、同じ変換のもとで $\partial_\mu\alpha$ だけずれる補償場を導入するしかありません。それが $A_\mu$ であり、その正体は電磁ポテンシャルです。相互作用が「対称性の要請から導かれた」——これがゲージ原理で、1954 年のヤンとミルズによる非可換版を経て、現代の素粒子論の設計図になりました。

しかしこの美しい原理は、そのままでは自然を説明できません。弱い相互作用は到達距離がきわめて短く、その媒介粒子は重いはずです。実際 $M_W \simeq 80.4\ \mathrm{GeV}$ から到達距離を見積もると

$$
R \sim \frac{\hbar}{M_W c} = \frac{197.3\ \mathrm{MeV\cdot fm}}{8.04\times 10^{4}\ \mathrm{MeV}} \simeq 2.5\times 10^{-3}\ \mathrm{fm}
$$

となり、陽子の半径（約 $0.84\ \mathrm{fm}$）の 300 分の 1 以下です。ところが後で示すとおり、ゲージ不変性はゲージ場の質量項を禁じます。さらに悪いことに、弱い相互作用は左巻きフェルミオンだけに働くので、ディラック質量項 $m\bar\psi\psi = m(\bar\psi_L\psi_R + \bar\psi_R\psi_L)$ すらゲージ不変になりません。ゲージ原理を採用する限り、**ゲージ場もフェルミオンも、ラグランジアンに質量を書き込めない**のです。

出口は 1960 年前後に、素粒子論ではなく物性論から来ました。超伝導体の BCS 理論を眺めていた南部陽一郎は、「法則の対称性」と「状態の対称性」は別物だと気づきます。強磁性体のハミルトニアンは回転対称ですが、基底状態は特定の向きに磁化している。同じことが場の理論の真空でも起きるなら、ラグランジアンを対称に保ったまま真空だけが対称性を破れます。1964 年、アンダーソン、エングレール・ブラウト、ヒッグス、グラルニク・ヘーゲン・キッブルらは、この機構をゲージ理論と組み合わせるとゲージ場が質量を獲得することを見出しました。1967 年のワインバーグ「A Model of Leptons」がそれを弱い相互作用に適用し、2012 年のヒッグス粒子発見で話は閉じます。

以下ではこの筋道を、計算を省かずにたどります。

<div data-gated data-pagefind-ignore>

## 2. 準備：記法とくりかえしの確認

自然単位系 $\hbar = c = 1$ を使い、計量は $\eta_{\mu\nu} = \mathrm{diag}(+1,-1,-1,-1)$ とします。ギリシャ添字は $0,1,2,3$ を走り、繰り返す添字は和を取ります。$\partial_\mu = \partial/\partial x^\mu$、$\Box = \partial_\mu\partial^\mu$ です。

場の理論の作用は $S = \int d^4x\, \mathcal{L}(\phi, \partial_\mu\phi)$ で、停留条件からオイラー・ラグランジュ方程式

$$
\partial_\mu\!\left(\frac{\partial\mathcal{L}}{\partial(\partial_\mu\phi)}\right) - \frac{\partial\mathcal{L}}{\partial\phi} = 0
$$

が出ます。この枠組みは [古典場の理論とラグランジアン](/physics/qft/classical-field-theory) の <Ref to="physics/qft/classical-field-theory#thm-euler-lagrange" text="場のオイラー・ラグランジュ方程式" /> で扱いました。作用が連続的な大域対称性をもつとき保存カレントが対応する、という事実は [対称性と保存則（ネーターの定理）](/physics/mechanics/noethers-theorem) の <Ref to="physics/mechanics/noethers-theorem#thm-noether" text="ネーターの定理" /> を前提とします。

以後くりかえし使うのが複素スカラー場です。

$$
\mathcal{L}_0 = \partial_\mu\phi^{*}\partial^\mu\phi - m^2\phi^{*}\phi
$$

は、定数 $\alpha$ による大域的 U(1) 変換 $\phi \to e^{i\alpha}\phi$ で不変です。無限小変換 $\delta\phi = i\alpha\phi,\ \delta\phi^{*} = -i\alpha\phi^{*}$ に対応するネーターカレント（<Ref to="physics/qft/classical-field-theory#ex-u1-current" text="大域的 U(1) 対称性と保存カレント" />）は

$$
j^\mu = i\left(\phi^{*}\partial^\mu\phi - \phi\,\partial^\mu\phi^{*}\right)
$$

で（全体の符号は規約により、電荷の符号の取り方に対応します）、運動方程式のもとで $\partial_\mu j^\mu = 0$ が成り立ちます。実際 $\partial_\mu j^\mu = i(\phi^{*}\Box\phi - \phi\Box\phi^{*}) = i(\phi^{*}(-m^2\phi) - \phi(-m^2\phi^{*})) = 0$ です。

最後に「質量項」の意味を確認します。ベクトル場の $\frac{1}{2}m^2A_\mu A^\mu$ は運動方程式を $(\Box + m^2)A^\nu = \cdots$ の形にし、静的な源のまわりのポテンシャルを湯川型 $e^{-mr}/r$ にします（<Ref to="physics/qft/classical-field-theory#ex-yukawa" text="点源が作る場と核力の到達距離" />）。$m = 0$ なら $1/r$ のクーロン型で無限遠まで届き、$m \ne 0$ なら距離 $1/m$ で指数関数的に切れる。「質量」と「力の到達距離」は同じことの言い換えです。

## 3. U(1) ゲージ理論：局所対称性から電磁場を導く

**大域から局所へ。** $\mathcal{L}_0$ の対称性 $\phi \to e^{i\alpha}\phi$ で、$\alpha$ を時空の関数 $\alpha(x)$ に置き換えてみます。ポテンシャル項 $\phi^{*}\phi$ は $|e^{i\alpha(x)}|=1$ なので何も変わりません。壊れるのは微分項だけです。

$$
\partial_\mu\left(e^{iq\alpha(x)}\phi\right) = e^{iq\alpha(x)}\left(\partial_\mu\phi + iq(\partial_\mu\alpha)\phi\right)
$$

ここで場の U(1) 電荷を $q$ と書きました。第 2 項が邪魔者です。これを打ち消すため、変換のもとでちょうど $\partial_\mu\alpha$ だけずれる場を用意します。

<Definition id="def-gauge-transformation" title="局所 U(1) 変換と共変微分">

$\alpha : \mathbb{R}^{1,3} \to \mathbb{R}$ を任意の滑らかな関数、$q$ を実定数（場 $\phi$ の電荷）とする。複素スカラー場 $\phi$ とベクトル場 $A_\mu$ に対する**局所 U(1)（ゲージ）変換**を

$$
\phi(x) \longmapsto \phi'(x) = e^{iq\alpha(x)}\phi(x), \qquad
A_\mu(x) \longmapsto A'_\mu(x) = A_\mu(x) + \partial_\mu\alpha(x)
$$

で定める。また $\phi$ に対する**共変微分**を

$$
D_\mu\phi \equiv \left(\partial_\mu - iqA_\mu\right)\phi
$$

で定める。
</Definition>

<Lemma id="lem-covariant-derivative" title="共変微分の共変性">

<Ref to="def-gauge-transformation" /> の変換のもとで

$$
D'_\mu\phi' \equiv (\partial_\mu - iqA'_\mu)\phi' = e^{iq\alpha(x)}\,D_\mu\phi
$$

が成り立つ。すなわち $D_\mu\phi$ は $\phi$ とまったく同じように変換する。したがって $(D_\mu\phi)^{*}(D^\mu\phi)$ は局所 U(1) 変換で不変である。逆に、$A_\mu \mapsto A_\mu + \Lambda_\mu$（$\Lambda_\mu$ は $A_\mu$ に依らない）という形のずれで共変性が成り立つのは $\Lambda_\mu = \partial_\mu\alpha$ のときに限る。
</Lemma>

<Proof of="lem-covariant-derivative">

まず前半を示します。定義に代入して

$$
\begin{aligned}
(\partial_\mu - iqA'_\mu)\phi'
&= \partial_\mu\!\left(e^{iq\alpha}\phi\right) - iq\left(A_\mu + \partial_\mu\alpha\right)e^{iq\alpha}\phi \\
&= e^{iq\alpha}\Big(\partial_\mu\phi + iq(\partial_\mu\alpha)\phi\Big) - iq e^{iq\alpha}\left(A_\mu + \partial_\mu\alpha\right)\phi \\
&= e^{iq\alpha}\Big(\partial_\mu\phi + iq(\partial_\mu\alpha)\phi - iqA_\mu\phi - iq(\partial_\mu\alpha)\phi\Big) \\
&= e^{iq\alpha}\left(\partial_\mu - iqA_\mu\right)\phi .
\end{aligned}
$$

第 2 行では積の微分則を使い、第 3 行で $e^{iq\alpha}$ をくくり出しました。第 4 行で $iq(\partial_\mu\alpha)\phi$ が符号違いで相殺します。これがまさに補償場を導入した目的です。

不変性は $\left|D'_\mu\phi'\right|^2 = \left|e^{iq\alpha}\right|^2\left|D_\mu\phi\right|^2 = \left|D_\mu\phi\right|^2$ から従います（$\alpha$ が実数だから $|e^{iq\alpha}|=1$）。

後半（必要性）を示します。$(\partial_\mu - iq(A_\mu+\Lambda_\mu))(e^{iq\alpha}\phi) = e^{iq\alpha}(\partial_\mu - iqA_\mu)\phi$ を要求します。左辺は上と同じ計算で

$$
e^{iq\alpha}\Big(\partial_\mu\phi + iq(\partial_\mu\alpha)\phi - iqA_\mu\phi - iq\Lambda_\mu\phi\Big)
$$

となるので、両辺を比べると任意の $\phi$ に対して $iq(\partial_\mu\alpha)\phi - iq\Lambda_\mu\phi = 0$、すなわち $q \ne 0$ より $\Lambda_\mu = \partial_\mu\alpha$ です。
</Proof>

補償場 $A_\mu$ を導入したからには、それ自身の運動項が要ります。ゲージ不変な量を作るには、次の組み合わせが鍵になります。

<Definition id="def-field-strength" title="場の強さテンソル">

ゲージ場 $A_\mu$ に対し

$$
F_{\mu\nu} \equiv \partial_\mu A_\nu - \partial_\nu A_\mu
$$

を**場の強さテンソル**という。これは共変微分の交換子としても書ける：任意の $\phi$ に対し $[D_\mu, D_\nu]\phi = -iq\,F_{\mu\nu}\,\phi$。
</Definition>

$F_{\mu\nu}$ がゲージ不変であることはすぐ確かめられます。

$$
F'_{\mu\nu} = \partial_\mu(A_\nu + \partial_\nu\alpha) - \partial_\nu(A_\mu + \partial_\mu\alpha)
= F_{\mu\nu} + (\partial_\mu\partial_\nu - \partial_\nu\partial_\mu)\alpha = F_{\mu\nu}
$$

最後の等号は $\alpha$ が $C^2$ 級なら偏微分が可換（シュワルツの定理）だからです。成分を書けば $F_{0i} = E_i$、$F_{ij} = -\epsilon_{ijk}B_k$ で、$F_{\mu\nu}$ は電場と磁場をまとめたものにほかなりません。

以上を合わせると、局所 U(1) 対称性をもつ最も簡単な理論が決まります。

$$
\mathcal{L}_{\mathrm{sQED}} = -\frac{1}{4}F_{\mu\nu}F^{\mu\nu} + (D_\mu\phi)^{*}(D^\mu\phi) - V(\phi^{*}\phi)
$$

ディラック場なら $\mathcal{L}_{\mathrm{QED}} = \bar\psi(i\gamma^\mu D_\mu - m)\psi - \frac{1}{4}F_{\mu\nu}F^{\mu\nu}$、すなわち量子電磁力学です。相互作用の形（最小結合）を我々が選んだのではなく局所対称性が選んだ、という点が重要です。

<Figure caption="ゲージ原理の論理の流れ。位相の局所化という要請が、ゲージ場・共変微分・質量ゼロの光子を順に強制します。">
<Mermaid code={`flowchart TD
  A["大域的 U(1) 対称性<br/>位相 α は時空全体で共通"] --> B["位相を各点で独立に選びたい<br/>局所化 α → α(x)"]
  B --> C["微分 ∂μφ が余分な項 iq(∂μα)φ を生み<br/>ラグランジアンが不変でなくなる"]
  C --> D["補償場 Aμ を導入<br/>Aμ → Aμ + ∂μα"]
  D --> E["共変微分 Dμ = ∂μ − iqAμ<br/>Dμφ は φ と同じ変換をする"]
  E --> F["Aμ 自身の運動項に許されるのは<br/>ゲージ不変な −FμνF^μν/4"]
  F --> G["質量項 m²AμA^μ は不変でない<br/>⇒ 光子の質量はゼロ"]`} />
</Figure>

<Example id="ex-maxwell-from-gauge" title="マクスウェル方程式が運動方程式として出てくる">

$\mathcal{L}_{\mathrm{sQED}}$ を $A_\nu$ について変分します。運動項からは

$$
\frac{\partial}{\partial(\partial_\mu A_\nu)}\left(-\frac{1}{4}F_{\alpha\beta}F^{\alpha\beta}\right) = -F^{\mu\nu}
$$

が出ます。一方 $A_\nu$ そのものへの依存は共変微分から来ます。$\partial (D^\mu\phi)/\partial A_\nu = -iq\eta^{\mu\nu}\phi$、$\partial (D_\mu\phi)^{*}/\partial A_\nu = +iq\delta^\nu_\mu\phi^{*}$ なので

$$
\frac{\partial}{\partial A_\nu}\Big[(D_\mu\phi)^{*}(D^\mu\phi)\Big]
= iq\phi^{*}D^\nu\phi - iq\,\phi\,(D^\nu\phi)^{*} .
$$

オイラー・ラグランジュ方程式 $\partial_\mu\big[\partial\mathcal{L}/\partial(\partial_\mu A_\nu)\big] - \partial\mathcal{L}/\partial A_\nu = 0$ に入れると

$$
\partial_\mu F^{\mu\nu} = J^\nu, \qquad
J^\nu \equiv -iq\Big(\phi^{*}D^\nu\phi - \phi\,(D^\nu\phi)^{*}\Big) = 2q\,\mathrm{Im}\!\left(\phi^{*}D^\nu\phi\right)
$$

を得ます。これはマクスウェル方程式（ガウスの法則とアンペール・マクスウェルの法則）そのものです。$J^\nu$ は $\mathcal{L}_0$ のネーターカレントの $\partial_\mu \to D_\mu$ 置き換え版で、実数値です。さらに $F^{\mu\nu}$ が反対称なので

$$
\partial_\nu J^\nu = \partial_\nu\partial_\mu F^{\mu\nu} = 0
$$

が**恒等的に**成り立ちます。電荷保存は運動方程式の副産物ではなく、ゲージ場を導入した時点で構造的に保証されているのです。残る 2 本のマクスウェル方程式（$\nabla\cdot\boldsymbol{B}=0$ とファラデーの法則）は $F = dA$ から自動的に従うビアンキ恒等式 $\partial_\lambda F_{\mu\nu} + \partial_\mu F_{\nu\lambda} + \partial_\nu F_{\lambda\mu} = 0$ です。
</Example>

<Proposition id="prop-photon-massless" title="ゲージ不変性はゲージ場の質量項を禁じる">

$m \ne 0$ とする。作用に項 $S_m = \int d^4x\,\tfrac{1}{2}m^2 A_\mu A^\mu$ を加えると、<Ref to="def-gauge-transformation" /> のゲージ変換で $S_m$ は不変にならない。より正確に、$A_\mu \equiv 0$ かつ $\alpha$ が $x^1$ だけに依存する定数でないコンパクト台の関数のとき、$S_m$ の変化量は厳密に負である。したがってゲージ不変な作用はゲージ場の質量項を含まない。
</Proposition>

<Proof of="prop-photon-massless">

$A_\mu \to A_\mu + \partial_\mu\alpha$ を代入すると

$$
\delta S_m = \int d^4x\left[m^2 A_\mu\partial^\mu\alpha + \frac{1}{2}m^2\,\partial_\mu\alpha\,\partial^\mu\alpha\right].
$$

第 1 項は部分積分（表面項は $\alpha$ のコンパクト台性から落ちる）で $-\int d^4x\, m^2(\partial_\mu A^\mu)\alpha$ となり、$\partial_\mu A^\mu = 0$ という**特別な配位**でしか消えません。これは恒等式ではないので、この時点ですでに不変性は破れています。

念のため反例を明示します。$A_\mu \equiv 0$ と取れば第 1 項は消え、$\alpha = \alpha(x^1)$（$C^\infty$、コンパクト台、定数でない）と取ると $\partial_\mu\alpha\,\partial^\mu\alpha = \eta^{11}(\partial_1\alpha)^2 = -(\partial_1\alpha)^2$ なので

$$
\delta S_m = -\frac{m^2}{2}\int d^4x\,\left(\partial_1\alpha\right)^2 \ne 0
$$

（$\alpha$ が定数でないので $\partial_1\alpha$ はどこかで $0$ でなく、被積分関数は非負で恒等的に $0$ ではない）。よって $\delta S_m \ne 0$ であり、$S_m$ はゲージ不変でありません。$\square$
</Proof>

この命題は <Ref to="ex-maxwell-from-gauge" /> の裏返しでもあります。質量項を入れた運動方程式 $\partial_\mu F^{\mu\nu} + m^2A^\nu = J^\nu$ の両辺に $\partial_\nu$ を作用させると $m^2\partial_\nu A^\nu = \partial_\nu J^\nu$ となり、$J^\nu$ が保存するなら $\partial_\nu A^\nu = 0$ が**運動方程式として強制**されます。これがプロカ理論で、4 成分から拘束 1 本を引いて自由度は 3。質量ゼロのゲージ場の自由度 2（4 成分 − ゲージ固定 1 − 残留ゲージ 1）とは食い違います。

<Remark id="rem-proca-renormalizability">

質量項を手で入れる代償は自由度の数だけではありません。プロカ場の伝播関数は

$$
\frac{-i}{k^2-m^2}\left(\eta_{\mu\nu} - \frac{k_\mu k_\nu}{m^2}\right)
$$

で、$k \to \infty$ で第 2 項が定数に留まるため発散が悪化し、素朴にはくりこみ可能性が失われます（[くりこみ理論入門](/physics/qft/renormalization) の <Ref to="physics/qft/renormalization#def-renormalizability" text="くりこみ可能性の分類" /> を思い出してください）。カレントが保存していれば $k_\mu k_\nu$ の項は落ちますが、弱い相互作用のカレントはフェルミオン質量のせいで厳密には保存しません。この困難を解いたのがヒッグス機構で、質量を**真空の性質**として生成すればゲージ不変性もくりこみ可能性も保たれます（'t Hooft, 1971）。Appendix で確認します。
</Remark>

## 4. 自発的対称性の破れ：法則の対称性と状態の対称性

対称性の話をするとき、私たちは無意識に二つのものを混同しています。**法則（ラグランジアン）の対称性**と、**状態（真空）の対称性**です。鉛筆を先端で立ててみてください。重力と鉛筆の形が作る系は鉛直軸まわりの回転対称ですが、鉛筆が倒れた後の状態は特定の方向を向いています。法則は対称、状態は非対称。このずれが自発的対称性の破れです。

<Definition id="def-ssb" title="自発的対称性の破れ">

実スカラー場の組 $\phi = (\phi^1,\dots,\phi^N)$ と、その上に線形に作用する群 $G$ を考える。$G$ が作用 $S[\phi]$ を不変に保つとする。ポテンシャル $V$ の最小点 $v \in \mathbb{R}^N$ に対し

$$
H \equiv \{\,g \in G \;:\; R(g)v = v\,\}
$$

を $v$ の**固定部分群**（残留対称性）という。$H \subsetneq G$ のとき、すなわち $R(g)v \ne v$ となる $g \in G$ が存在するとき、対称性 $G$ は真空 $v$ において **$H$ へ自発的に破れている**という。

場の量子論では、これは「ある局所演算子 $\mathcal{O}$ が $G$ の非自明な表現に属しながら $\langle 0|\mathcal{O}|0\rangle \ne 0$ である」と言い換えられる。この $\langle 0|\mathcal{O}|0\rangle$ を**秩序変数**という。
</Definition>

「破れている」という語には注意してください。ハミルトニアンの対称性は破れていません。破れるのは、対称性が真空を**一つに**保つという性質です。対称な理論は同じエネルギーの真空を複数もち、系はそのうち一つを選びます。

<Definition id="def-vacuum-manifold" title="真空多様体">

<Ref to="def-ssb" /> の状況で、$V$ の最小点全体の集合 $\mathcal{M} = \{\phi : V(\phi) = \min V\}$ を**真空多様体**という。$G$ が $\mathcal{M}$ に推移的に作用するとき、軌道・固定部分群の対応により $\mathcal{M} \cong G/H$ である。
</Definition>

<Example id="ex-double-well" title="離散対称性の破れ：二重井戸">

実スカラー場 1 個で

$$
\mathcal{L} = \frac{1}{2}\partial_\mu\phi\,\partial^\mu\phi - \frac{\lambda}{4}\left(\phi^2 - v^2\right)^2,
\qquad \lambda > 0,\ v > 0
$$

を考えます。対称性は $G = \mathbb{Z}_2 = \{1, P\}$、$P:\phi \to -\phi$ です。$V'(\phi) = \lambda\phi(\phi^2-v^2)$ の零点は $\phi = 0, \pm v$。$V''(\phi) = \lambda(3\phi^2 - v^2)$ なので $V''(0) = -\lambda v^2 < 0$（極大）、$V''(\pm v) = 2\lambda v^2 > 0$（極小）です。真空は $\phi = \pm v$ の 2 点で、$P$ はこの 2 点を入れ替えます。$H = \{1\}$ で、$\mathbb{Z}_2$ は完全に破れています。

$\phi = v + h$ と展開すると

$$
V = \frac{\lambda}{4}\left((v+h)^2 - v^2\right)^2 = \frac{\lambda}{4}\left(2vh + h^2\right)^2
= \lambda v^2 h^2 + \lambda v h^3 + \frac{\lambda}{4}h^4
$$

なので、揺らぎ $h$ の質量は $\frac{1}{2}m_h^2 = \lambda v^2$、すなわち $m_h = \sqrt{2\lambda}\,v$ です。質量ゼロの粒子は現れません。$G$ が離散群だからです。

なぜ量子力学のようにトンネル効果で 2 つの真空が混ざり、対称な基底状態 $(|+v\rangle + |-v\rangle)/\sqrt{2}$ にならないのか。空間の体積を $\mathcal{V}$ とすると、$+v$ と $-v$ の領域を隔てる壁（ドメインウォール）の作用が $\mathcal{V}$ に比例するため、遷移振幅が $e^{-c\mathcal{V}}$ で抑えられるからです。無限体積極限で振幅は $0$ になり、2 つの真空は交わらない別世界（超選択則の部門）に分かれます。
</Example>

<Example id="ex-on-model" title="連続対称性の破れ：O(N) 模型の質量行列">

実スカラー場 $N$ 個を並べ、$\phi^a\phi^a \equiv \sum_{a=1}^N (\phi^a)^2$ と書いて

$$
\mathcal{L} = \frac{1}{2}\partial_\mu\phi^a\partial^\mu\phi^a - \frac{\lambda}{4}\left(\phi^a\phi^a - v^2\right)^2
$$

を考えます。$V$ は $\phi^a\phi^a$ にしか依らないので $G = O(N)$ で不変です。真空多様体は半径 $v$ の球面 $S^{N-1}$ で、$v \boldsymbol{e}_N = (0,\dots,0,v)$ を選ぶと、これを固定するのは残りの $N-1$ 成分を回す $H = O(N-1)$ です。

質量行列を最後まで計算します。$V = \frac{\lambda}{4}(\phi^2 - v^2)^2$（$\phi^2 \equiv \phi^c\phi^c$）に対し

$$
\frac{\partial V}{\partial\phi^a} = \lambda\left(\phi^2 - v^2\right)\phi^a,
\qquad
\frac{\partial^2 V}{\partial\phi^b\partial\phi^a} = 2\lambda\,\phi^a\phi^b + \lambda\left(\phi^2-v^2\right)\delta^{ab}.
$$

$\phi = v\boldsymbol{e}_N$ では $\phi^2 - v^2 = 0$、$\phi^a = v\delta^{aN}$ なので

$$
M^2_{ab} = \left.\frac{\partial^2V}{\partial\phi^a\partial\phi^b}\right|_{v\boldsymbol{e}_N} = 2\lambda v^2\,\delta^{aN}\delta^{bN}
= \mathrm{diag}\big(\underbrace{0,\dots,0}_{N-1},\,2\lambda v^2\big).
$$

$N-1$ 個の質量ゼロモード（球面に沿う方向）と、質量 $\sqrt{2\lambda}\,v$ の 1 個（半径方向）です。ここで $\dim O(N) - \dim O(N-1) = \frac{N(N-1)}{2} - \frac{(N-1)(N-2)}{2} = \frac{(N-1)\big(N-(N-2)\big)}{2} = N-1$ であり、質量ゼロモードの個数とぴったり一致しています。この一致は偶然ではありません。次節の定理がその理由です。
</Example>

<Figure caption="メキシカンハット型ポテンシャルの断面（左）と真空多様体（右）。真空多様体に沿って動いてもポテンシャルは変わらないので、その方向の揺らぎは質量をもちません。">
<svg viewBox="0 0 680 345" width="100%" role="img" aria-label="メキシカンハット型ポテンシャルの断面と真空多様体を示す図">
  <g stroke="currentColor" fill="none" stroke-width="1.5" stroke-opacity="0.35">
    <path d="M 150 40 L 150 245" />
    <path d="M 32 200 L 288 200" />
    <path d="M 405 150 L 615 150" />
    <path d="M 510 55 L 510 245" />
  </g>
  <path d="M 44 46 C 68 56, 80 200, 90 200 C 110 200, 130 140, 150 140 C 170 140, 190 200, 210 200 C 220 200, 232 56, 256 46" fill="none" stroke="var(--sl-color-accent)" stroke-width="2.5" />
  <circle cx="510" cy="150" r="55" fill="none" stroke="var(--sl-color-accent)" stroke-width="2.5" />
  <g stroke="currentColor" stroke-width="1.8" fill="none">
    <path d="M 565 150 L 598 150" />
    <path d="M 565 150 L 565 110" />
  </g>
  <g fill="currentColor" stroke="none">
    <circle cx="90" cy="200" r="4.5" />
    <circle cx="210" cy="200" r="4.5" />
    <circle cx="565" cy="150" r="5" />
    <path d="M 606 150 L 596 145 L 596 155 Z" />
    <path d="M 565 102 L 560 112 L 570 112 Z" />
  </g>
  <g fill="currentColor" stroke="none" font-size="14" text-anchor="middle">
    <text x="141" y="52" text-anchor="end">V</text>
    <text x="294" y="196" text-anchor="start">φ₁</text>
    <text x="90" y="222">−v</text>
    <text x="210" y="222">v</text>
    <text x="618" y="146" text-anchor="start">h</text>
    <text x="578" y="106" text-anchor="start">θ</text>
    <text x="160" y="276">V の断面</text>
    <text x="510" y="276">真空多様体 |φ| = v</text>
    <text x="340" y="310">動径方向 h：m² = 2λv²</text>
    <text x="340" y="334">角度方向 θ：m² = 0（南部・ゴールドストーン粒子）</text>
  </g>
</svg>
</Figure>

## 5. ゴールドストーンの定理

<Ref to="ex-on-model" /> で観察した「質量ゼロモードの個数 = 破れた生成子の個数」は一般に成り立ちます。まず古典場（=樹木レベル）の版を、線形代数だけで証明します。

<Theorem id="thm-goldstone" title="ゴールドストーンの定理（古典場の版）">

$\phi = (\phi^1,\dots,\phi^N)$ を実スカラー場の組とし、

$$
\mathcal{L} = \frac{1}{2}\partial_\mu\phi^a\partial^\mu\phi^a - V(\phi), \qquad V \in C^2(\mathbb{R}^N)
$$

とする。$G$ を次元 $n$ の**連結**リー群とし、実直交表現 $R : G \to O(N)$ によって $\phi \mapsto R(g)\phi$ と作用し、すべての $g \in G$、$\phi \in \mathbb{R}^N$ について $V(R(g)\phi) = V(\phi)$ が成り立つとする。リー環の基底 $\{T^A\}_{A=1}^{n}$ の表現行列（実反対称 $N\times N$ 行列）も同じ記号で書き、無限小変換を $\delta_A\phi^a = (T^A)^{ab}\phi^b$ とする。

$v \in \mathbb{R}^N$ を $V$ の（内点における）極小点とし、$H = \{g \in G : R(g)v = v\}$、$h = \dim H$ とおく。このとき、質量行列

$$
M^2_{ab} \equiv \left.\frac{\partial^2 V}{\partial\phi^a\partial\phi^b}\right|_{\phi=v}
$$

は実対称かつ半正定値で、その核は $\mathrm{span}\{\,T^A v \;:\; A = 1,\dots,n\,\}$ を含み、この部分空間の次元は $n - h$ である。したがって $v$ のまわりの微小振動の質量スペクトルには、**少なくとも $n-h$ 個の質量ゼロのモード**が含まれる。
</Theorem>

<Proof of="thm-goldstone">

**第 1 段：不変性の無限小形。** $G$ は連結なので、単位元の近傍は $\exp$ の像で覆われ、$G$ はその近傍で生成されます。よって $V(R(g)\phi) = V(\phi)$ は、すべての $A$ とすべての $\varepsilon \in \mathbb{R}$ について $V(e^{\varepsilon T^A}\phi) = V(\phi)$ と同値です。両辺を $\varepsilon$ で微分して $\varepsilon = 0$ とおくと、**任意の** $\phi$ について

$$
\frac{\partial V}{\partial\phi^a}(\phi)\,\left(T^A\phi\right)^a = 0 \qquad (\ast)
$$

を得ます（$(T^A\phi)^a = (T^A)^{ab}\phi^b$）。

**第 2 段：もう一度微分する。** $(\ast)$ は $\phi$ についての恒等式なので、$\phi^b$ で偏微分できます。積の微分則により

$$
\frac{\partial^2 V}{\partial\phi^b\partial\phi^a}(\phi)\left(T^A\phi\right)^a
+ \frac{\partial V}{\partial\phi^a}(\phi)\,(T^A)^{ab} = 0 .
$$

**第 3 段：極小点で評価する。** $v$ は内点での極小点なので $\partial V/\partial\phi^a|_v = 0$ です。よって第 2 項が落ち、

$$
M^2_{ba}\,\left(T^A v\right)^a = 0 \qquad (A = 1,\dots,n)
$$

が成り立ちます。つまり各ベクトル $T^Av$ は $M^2$ の核に属します。また $M^2$ は 2 階偏導関数の行列なので実対称（$V \in C^2$ よりシュワルツの定理）で、極小点では半正定値です。したがって $M^2$ は直交行列で対角化でき、固有値はすべて $\ge 0$、核の次元がゼロ固有値の重複度に等しくなります。

**第 4 段：核の次元を数える。** 線形写像

$$
\rho : \mathfrak{g} \longrightarrow \mathbb{R}^N, \qquad \rho(X) = Xv
$$

を考えます（$\mathfrak{g}$ は $G$ のリー環、$\dim\mathfrak{g} = n$）。$X \in \ker\rho$ とは $Xv = 0$ のことです。このとき $t \mapsto e^{tX}v$ は $\frac{d}{dt}e^{tX}v = X e^{tX}v$ を満たす解で、$Xv=0$ より定数解 $e^{tX}v = v$ が解の一意性から従います。逆に $e^{tX}v = v$ がすべての $t$ で成り立てば、$t$ で微分して $t=0$ とおくと $Xv = 0$ です。よって

$$
\ker\rho = \{X \in \mathfrak{g} : e^{tX}v = v \ (\forall t)\} = \mathfrak{h} = \mathrm{Lie}(H),
$$

すなわち $\dim\ker\rho = h$ です。次元定理（階数・退化次数の定理）より

$$
\dim\,\mathrm{span}\{T^Av\} = \dim\,\mathrm{im}\,\rho = n - h .
$$

**第 5 段：結論。** 第 3 段より $\mathrm{span}\{T^Av\} \subseteq \ker M^2$ で、第 4 段よりその次元は $n-h$。よって $M^2$ のゼロ固有値は重複度 $n-h$ 以上です。$\phi = v + \chi$ と展開したときの 2 次のラグランジアンは $\frac{1}{2}\partial_\mu\chi^a\partial^\mu\chi^a - \frac{1}{2}M^2_{ab}\chi^a\chi^b$ であり、$M^2$ を対角化する基底で固有値 $m_k^2$ のモードは $(\Box + m_k^2)\chi_k = 0$ に従います。$m_k^2 = 0$ のモードは質量ゼロの粒子です。$\square$
</Proof>

証明の第 4 段が語っているのは幾何です。$T^Av$ は真空 $v$ における真空多様体 $\mathcal{M} \cong G/H$ の接ベクトルです。$\mathcal{M}$ に沿って動いてもポテンシャルは一定なので、その方向の「復元力」はゼロ、つまり質量がゼロ。破れた生成子（$\mathfrak{g}$ のうち $\mathfrak{h}$ に入らないもの）と $\mathcal{M}$ の接方向が 1 対 1 に対応する、というのが定理の内容です。<Ref to="ex-double-well" /> で質量ゼロモードが出なかったのは、$\mathbb{Z}_2$ が離散群で $\dim G = 0$ だったからです。定理の「連結リー群」という仮定は落とせません。

樹木レベルを超えた主張も成り立ちます。仮定を明示して述べます。

<Theorem id="thm-goldstone-quantum" title="ゴールドストーンの定理（場の量子論版）">

次を仮定する。(i) 理論はローレンツ不変な局所場の理論で、状態空間の計量は正定値（負ノルム状態を含まない）である。(ii) 真空 $|0\rangle$ はポアンカレ変換で不変である。(iii) 局所的な保存カレント $j^\mu(x)$ が存在し、$\partial_\mu j^\mu = 0$ を満たす。$Q_R \equiv \int_{|\boldsymbol{x}| < R} d^3x\, j^0(0,\boldsymbol{x})$ とおく。(iv) ある局所演算子 $\mathcal{O}$ が存在して

$$
\lim_{R\to\infty}\langle 0|\left[Q_R,\ \mathcal{O}(0)\right]|0\rangle = \eta \ne 0
$$

（対称性が自発的に破れている、の意味）。

このとき理論のスペクトルには質量ゼロの 1 粒子状態 $|\pi(\boldsymbol{k})\rangle$ が存在し、

$$
\langle 0|\,j^\mu(0)\,|\pi(\boldsymbol{k})\rangle = i f\,k^\mu, \qquad f \ne 0,\quad k^2 = 0
$$

を満たす。この粒子を**南部・ゴールドストーン粒子**という。
</Theorem>

<Remark id="rem-goldstone-proof">

証明は $\langle 0|[j^\mu(x), \mathcal{O}(0)]|0\rangle$ のスペクトル表示（ケレン・レーマン表示）を用いるもので、ワインバーグ『The Quantum Theory of Fields, Vol. II』第 19 章、または Goldstone・Salam・Weinberg (1962) にあります。ここでは仮定の役割だけ注意します。

まず、電荷 $Q = \int d^3x\,j^0$ 自体は対称性が破れた真空上では**定義できません**。$\langle 0|Q^2|0\rangle = \int d^3x\,\langle 0|j^0(x)Q|0\rangle$ は並進不変性から被積分関数が定数となり、体積に比例して発散するからです（ファブリ・ピカソの議論）。仮定 (iv) が有限領域の $Q_R$ で書かれているのはそのためです。

次に、次節でヒッグス機構が「ゴールドストーン粒子を出さない」ことを見ますが、それは定理の反例ではありません。**ゲージ理論では仮定 (i) を満たせない**のです。クーロンゲージのように正定値計量を保つゲージでは明白なローレンツ共変性が失われ、$R_\xi$ ゲージのように共変的なゲージでは負ノルム状態（不定計量）が入ります。どちらのゲージでも定理の前提が崩れており、質量ゼロのスカラー粒子が物理的スペクトルに現れる必要はありません。
</Remark>

<Example id="ex-pion" title="実例：パイ中間子はほぼゴールドストーン粒子">

QCD で $u, d$ クォークの質量を $0$ とおくと、ラグランジアンは左巻き・右巻きを独立に回す $SU(2)_L \times SU(2)_R$ で不変です（カイラル対称性、$\dim G = 3+3 = 6$）。強い相互作用はクォーク凝縮 $\langle \bar{u}u\rangle = \langle\bar{d}d\rangle \ne 0$ を作り、これは左巻きと右巻きを結ぶので、対称性は同時に回す $SU(2)_V$（アイソスピン、$\dim H = 3$）へ破れます。<Ref to="thm-goldstone" /> の数え方で $6 - 3 = 3$ 個の質量ゼロ粒子が予言され、実際に $\pi^+, \pi^0, \pi^-$ の 3 個が対応します。

現実の $u, d$ クォークは小さいながら質量をもつので対称性は**明示的にも**破れており、パイ中間子の質量は厳密には $0$ になりません。この「擬ゴールドストーン粒子」の質量は Gell-Mann・Oakes・Renner の関係

$$
m_\pi^2 f_\pi^2 = -\left(m_u + m_d\right)\langle\bar{q}q\rangle + O(m_q^2)
$$

に従い、$m_q \to 0$ で $m_\pi^2 \to 0$ です。数値で確かめると、$m_{\pi^\pm} = 139.6\ \mathrm{MeV}$、$m_{\pi^0} = 135.0\ \mathrm{MeV}$ に対し、次に軽いハドロンである $\rho$ 中間子は $775\ \mathrm{MeV}$、核子は $939\ \mathrm{MeV}$ です。パイ中間子だけが他のハドロンより 5 倍以上軽い。この階層こそ、パイ中間子がゴールドストーン粒子である証拠です（$f_\pi \simeq 92\ \mathrm{MeV}$、規約により $\sqrt{2}$ 倍の値を使う文献もあります）。
</Example>

## 6. ヒッグス機構：ゴールドストーン粒子はどこへ行ったか

ここまでで二つの困難が向かい合っています。<Ref to="prop-photon-massless" /> によりゲージ場に質量を書き込めず、<Ref to="thm-goldstone" /> により連続対称性を破ると自然界に対応物のない質量ゼロ粒子が出てしまう。1964 年の発見は、この二つを**同時に**解消するものでした。破れる対称性がゲージ対称性なら、質量ゼロのスカラーが消え、代わりにゲージ場が質量を得るのです。

$\S3$ の $\mathcal{L}_{\mathrm{sQED}}$ に、$\S4$ のメキシカンハット型ポテンシャルを入れます。

<Theorem id="thm-higgs-mechanism" title="ヒッグス機構（アーベリアン・ヒッグス模型）">

$q \ne 0$、$\mu^2 > 0$、$\lambda > 0$ とし、複素スカラー場 $\phi$ とゲージ場 $A_\mu$ の理論

$$
\mathcal{L} = -\frac{1}{4}F_{\mu\nu}F^{\mu\nu} + (D_\mu\phi)^{*}(D^\mu\phi) - V(\phi),
\qquad
V(\phi) = -\mu^2\phi^{*}\phi + \lambda\left(\phi^{*}\phi\right)^2
$$

を考える（$D_\mu = \partial_\mu - iqA_\mu$）。$v \equiv \mu/\sqrt{\lambda}$ とおく。このとき次が成り立つ。

1. $V$ の最小点の集合は円 $|\phi| = v/\sqrt{2}$ であり、局所 U(1) 対称性は完全に破れる（$H = \{1\}$）。
2. $\phi(x) \ne 0$ なる任意の場の配位は、ゲージ変換によって $\phi = \big(v + h(x)\big)/\sqrt{2}$（$h$ は実場）の形に移せる（**ユニタリーゲージ**）。このゲージで、ゲージ場を $B_\mu$ と書くと

$$
\mathcal{L} = -\frac{1}{4}F_{\mu\nu}[B]F^{\mu\nu}[B] + \frac{1}{2}m_A^2\,B_\mu B^\mu
+ \frac{1}{2}\partial_\mu h\,\partial^\mu h - \frac{1}{2}m_h^2 h^2 + \mathcal{L}_{\mathrm{int}} + \mathrm{const.}
$$

となる。ここで

$$
m_A = |q|\,v, \qquad m_h = \sqrt{2\lambda}\,v = \sqrt{2}\,\mu,
$$

$$
\mathcal{L}_{\mathrm{int}} = q^2 v\,h\,B_\mu B^\mu + \frac{q^2}{2}h^2 B_\mu B^\mu - \lambda v h^3 - \frac{\lambda}{4}h^4 .
$$

3. 物理的自由度の総数は破れの前後で変わらない。破れる前は質量ゼロのゲージ場 2 と複素スカラー 2 で計 4、破れた後は質量をもつベクトル場 3 と実スカラー 1 で計 4 である。
4. 物理的スペクトルに質量ゼロのスカラー粒子は現れない。
</Theorem>

<Proof of="thm-higgs-mechanism">

**(1)** $V$ は $r \equiv |\phi| \ge 0$ にしか依らず $V = -\mu^2 r^2 + \lambda r^4$ です。$dV/dr = -2\mu^2 r + 4\lambda r^3 = 2r\left(2\lambda r^2 - \mu^2\right)$ の零点は $r = 0$ と $r_0 = \mu/\sqrt{2\lambda}$。$d^2V/dr^2 = -2\mu^2 + 12\lambda r^2$ より $r=0$ で $-2\mu^2 < 0$（極大）、$r = r_0$ で $-2\mu^2 + 6\mu^2 = 4\mu^2 > 0$（極小）です。$r_0 = \mu/\sqrt{2\lambda} = v/\sqrt{2}$ なので最小点は円 $|\phi| = v/\sqrt{2}$。$\phi_0$ をこの円上の 1 点とすると、$e^{iq\alpha}\phi_0 = \phi_0$ となるのは $q\alpha \in 2\pi\mathbb{Z}$ のときだけで、局所変換としては恒等変換のみです。よって $H$ は自明群です。

**(2)** $\phi \ne 0$ なので極形式 $\phi(x) = \frac{1}{\sqrt{2}}\rho(x)\,e^{i\chi(x)}$（$\rho > 0$）に書けます。<Ref to="def-gauge-transformation" /> のゲージ変換で $\alpha(x) = -\chi(x)/q$ を選ぶと

$$
\phi \to e^{iq\alpha}\phi = e^{-i\chi}\phi = \frac{\rho}{\sqrt{2}},
\qquad
A_\mu \to B_\mu \equiv A_\mu - \frac{1}{q}\partial_\mu\chi
$$

となり、位相場 $\chi$ が消えます。$F_{\mu\nu}[B] = F_{\mu\nu}[A] - \frac{1}{q}(\partial_\mu\partial_\nu - \partial_\nu\partial_\mu)\chi = F_{\mu\nu}[A]$ なので運動項は変わりません。$\rho = v + h$ とおくと

$$
D_\mu\phi = \left(\partial_\mu - iqB_\mu\right)\frac{v+h}{\sqrt{2}}
= \frac{1}{\sqrt{2}}\Big(\partial_\mu h - iq\,B_\mu (v+h)\Big),
$$

$$
\left|D_\mu\phi\right|^2 = \frac{1}{2}\partial_\mu h\,\partial^\mu h + \frac{q^2}{2}(v+h)^2 B_\mu B^\mu .
$$

（実部と虚部が直交するので交差項は出ません。）第 2 項を展開すると

$$
\frac{q^2}{2}(v+h)^2 B^2 = \underbrace{\frac{q^2v^2}{2}B_\mu B^\mu}_{\text{質量項}} + q^2 v\,h\,B_\mu B^\mu + \frac{q^2}{2}h^2 B_\mu B^\mu
$$

で、質量項の係数を $\frac{1}{2}m_A^2$ と読めば $m_A^2 = q^2v^2$、$m_A = |q|v$ です。

ポテンシャルは $\mu^2 = \lambda v^2$ を使って平方完成できます。$u \equiv v+h$ とすると

$$
V = -\frac{\lambda v^2}{2}u^2 + \frac{\lambda}{4}u^4 = \frac{\lambda}{4}\left(u^2 - v^2\right)^2 - \frac{\lambda v^4}{4}
$$

（$|\phi|^2 = u^2/2$ を代入しました）。$u^2 - v^2 = 2vh + h^2$ なので

$$
V + \frac{\lambda v^4}{4} = \frac{\lambda}{4}\left(2vh+h^2\right)^2 = \lambda v^2h^2 + \lambda v h^3 + \frac{\lambda}{4}h^4 .
$$

$\frac{1}{2}m_h^2 h^2 = \lambda v^2 h^2$ より $m_h^2 = 2\lambda v^2 = 2\mu^2$。以上を合わせると主張のラグランジアンになります。

**(3)** 質量ゼロのゲージ場は 4 成分から、ゲージ固定条件 1 本と残留ゲージ自由度 1 本を差し引いて 2 自由度（横波 2 偏極）。複素スカラーは実 2 成分。合計 4。一方、質量をもつベクトル場 $B_\mu$ の運動方程式 $\partial_\mu F^{\mu\nu}[B] + m_A^2 B^\nu = 0$ に $\partial_\nu$ を作用させると、$F$ の反対称性から第 1 項が消えて $m_A^2\,\partial_\nu B^\nu = 0$、$m_A \ne 0$ より $\partial_\nu B^\nu = 0$ が**運動方程式として**従います。4 成分 − 拘束 1 = 3 自由度。実スカラー $h$ が 1。合計 4。一致します。

**(4)** ユニタリーゲージのラグランジアンに現れるスカラー場は $h$ だけで、その質量は $m_h = \sqrt{2\lambda}v \ne 0$ です。位相場 $\chi$（本来なら <Ref to="thm-goldstone" /> の質量ゼロモード）はゲージ変換で消えました。消えた自由度は $B_\mu$ の縦波成分になっています。実際、自由度の勘定 (3) で $A_\mu$ の 2 が $B_\mu$ の 3 に増えた分が、ちょうど $\chi$ の 1 自由度です。$\square$
</Proof>

ひとことで言えば、**ゲージ場がゴールドストーン粒子を食べて太った**わけです。式の上では「$\chi$ をゲージ変換で消した」だけですが、自由度は消えておらず、ゲージ場の縦波偏極として保存されています。Appendix の $R_\xi$ ゲージでは $\chi$ が明示的に残り、この描像がはっきりします。

<Aside type="caution">
$m_A = |q|v$ という結果を、「ゲージ場が真空の中を進むとき、真空に詰まった凝縮体と相互作用して抵抗を受ける」と読むこともできます。ただし比喩は慎重に。ヒッグス場は摩擦のような散逸を与えるのではなく、分散関係 $\omega^2 = |\boldsymbol{k}|^2 + m_A^2$ にギャップを開けるだけです。エネルギーは失われません。
</Aside>

<Example id="ex-superconductor" title="超伝導体の中の光子は重い（マイスナー効果）">

ヒッグス機構は実験室にもあります。超伝導体をギンツブルグ・ランダウ理論で書くと、クーパー対の複素秩序変数 $\psi$（電荷 $q = -2e$）が

$$
\mathcal{F} = \frac{1}{2m^{*}}\left|\left(-i\hbar\nabla - q\boldsymbol{A}\right)\psi\right|^2 - a|\psi|^2 + \frac{b}{2}|\psi|^4 + \frac{|\boldsymbol{B}|^2}{2\mu_0}
$$

に従います。これは <Ref to="thm-higgs-mechanism" /> のアーベリアン・ヒッグス模型の非相対論版そのものです。$T < T_c$ で $a > 0$ となり $|\psi|^2 = a/b \equiv n_s/2 \ne 0$、U(1) が破れて「光子」が質量を得ます。得られた質量の逆数がロンドン侵入長

$$
\lambda_L = \sqrt{\frac{m^{*}}{\mu_0 n_s q^2}}, \qquad \nabla^2\boldsymbol{B} = \frac{1}{\lambda_L^2}\boldsymbol{B}
$$

で、磁場は表面から $e^{-x/\lambda_L}$ で減衰します。これがマイスナー効果です。

数値を入れてみます。金属超伝導体の $\lambda_L$ は数十 nm 程度（鉛でおよそ $37\ \mathrm{nm}$）なので、$\lambda_L = 40\ \mathrm{nm}$ とすると光子の実効質量は

$$
m_\gamma c^2 = \frac{\hbar c}{\lambda_L} = \frac{197.3\ \mathrm{eV\cdot nm}}{40\ \mathrm{nm}} \simeq 4.9\ \mathrm{eV}
$$

です。真空中では厳密にゼロの光子質量が、超伝導体という「別の真空」では 5 eV になる。アンダーソンが 1963 年にこの現象を相対論的な場の理論に翻訳したことが、ヒッグス機構の直接の前身でした。
</Example>

<Remark id="rem-gauge-redundancy">

「ゲージ対称性が自発的に破れる」という言い方は、厳密には正しくありません。ゲージ変換は物理状態を変えない**冗長性**であり、格子ゲージ理論の枠組みで示されたエリツァーの定理（Elitzur, 1975）によれば、ゲージ不変でない局所演算子の期待値は必ずゼロになります。つまり $\langle\phi\rangle \ne 0$ という式はゲージを固定して初めて意味をもつ表現です。

では物理的内容は何か。ゲージ場のスペクトルにギャップ（質量）が開くこと、そしてマイスナー効果のように電磁応答が変わることです。これらはゲージ不変な言明で、ゲージ固定の仕方に依りません。実用上は、ユニタリーゲージで $\langle\phi\rangle = v/\sqrt{2}$ と書いて計算するのが最も手早く、その結果（質量、散乱断面積）はゲージ不変です。
</Remark>

## 7. 標準模型：ワインバーグ・サラム模型と質量の起源

**非可換ゲージ理論への拡張。** U(1) を非可換群 $G$ に置き換えるには、リー環の生成子 $T^a$（$[T^a,T^b] = if^{abc}T^c$）を使って

$$
D_\mu = \partial_\mu - i g\,W^a_\mu T^a, \qquad
F^a_{\mu\nu} = \partial_\mu W^a_\nu - \partial_\nu W^a_\mu + g f^{abc}W^b_\mu W^c_\nu
$$

とします。<Ref to="lem-covariant-derivative" /> に対応するのが $D_\mu \to U D_\mu U^{-1}$（$U = e^{i\alpha^a T^a}$）で、$W_\mu \equiv W^a_\mu T^a$ は $W_\mu \to U W_\mu U^{-1} - \frac{i}{g}(\partial_\mu U)U^{-1}$ と変換します（アーベリアンの場合 $U = e^{iq\alpha}$ で $A_\mu \to A_\mu + \partial_\mu\alpha$ に戻ります）。$F^a_{\mu\nu}$ の非線形項 $g f^{abc}W^bW^c$ が可換な場合との違いで、これがゲージ場どうしの自己相互作用を生みます。

**標準模型のゲージ群とヒッグス二重項。** 電弱理論のゲージ群は $SU(2)_L \times U(1)_Y$ で、生成子は $T^a = \tau^a/2$（$\tau^a$ は <Ref to="physics/quantum-mechanics/angular-momentum-and-spin#prop-pauli-algebra" text="パウリ行列" />）と超電荷 $Y$、結合定数はそれぞれ $g$ と $g'$ です。ここに $SU(2)_L$ の 2 重項で $Y = 1/2$ をもつ複素スカラー場（ヒッグス二重項）

$$
\Phi = \begin{pmatrix}\phi^{+}\\ \phi^{0}\end{pmatrix},
\qquad
D_\mu\Phi = \left(\partial_\mu - i g W^a_\mu\frac{\tau^a}{2} - i g' \frac{1}{2}B_\mu\right)\Phi
$$

を導入し、ポテンシャルを $V = -\mu^2\Phi^\dagger\Phi + \lambda(\Phi^\dagger\Phi)^2$（$\mu^2, \lambda > 0$）とします。$V$ は $\Phi^\dagger\Phi$ にしか依らないので、最小値は $\Phi^\dagger\Phi = \mu^2/(2\lambda) = v^2/2$、$v = \mu/\sqrt{\lambda}$ を満たす配位すべてで実現され、$SU(2)_L\times U(1)_Y$ 変換で真空多様体 $S^3$ 上を自由に動けます。そこで

$$
\langle\Phi\rangle = \frac{1}{\sqrt{2}}\begin{pmatrix}0\\ v\end{pmatrix}
$$

を選びます。**残留対称性**を調べましょう。生成子 $Q = T^3 + Y$ を $\langle\Phi\rangle$ に作用させると、下成分では $T^3 = -\tfrac{1}{2}$、$Y = +\tfrac{1}{2}$ なので

$$
Q\,\langle\Phi\rangle = \left(-\frac{1}{2}+\frac{1}{2}\right)\langle\Phi\rangle = 0
$$

となり、$e^{i\theta Q}\langle\Phi\rangle = \langle\Phi\rangle$。$Q$ が生成する U(1) は破れずに残ります。これが電磁気の $U(1)_{\mathrm{em}}$ で、$Q$ が電荷です（上成分では $T^3+Y = 1$ で電荷 $+1$、下成分では $0$。だから $\phi^{+}, \phi^{0}$ と書いたのです）。したがって

$$
SU(2)_L\times U(1)_Y \ \longrightarrow\ U(1)_{\mathrm{em}},
\qquad \dim G - \dim H = (3+1) - 1 = 3 .
$$

<Ref to="thm-goldstone" /> の数え方で 3 個の南部・ゴールドストーン粒子が現れるはずですが、これらはゲージ対称性の破れなので <Ref to="thm-higgs-mechanism" /> により 3 個のゲージ場に吸収されます。ヒッグス二重項の実自由度 4 から 3 が食われ、残る 1 個が物理的なヒッグス粒子 $h$ です。

**ゲージ場の質量。** ユニタリーゲージで $\Phi = \frac{1}{\sqrt{2}}\binom{0}{\,v+h\,}$ とおき、$|D_\mu\Phi|^2$ の $h = 0$ での値を計算します。行列を書き下すと

$$
g W^a_\mu\frac{\tau^a}{2} + \frac{g'}{2}B_\mu
= \frac{1}{2}\begin{pmatrix} gW^3_\mu + g'B_\mu & g\left(W^1_\mu - iW^2_\mu\right)\\[2pt]
g\left(W^1_\mu + iW^2_\mu\right) & -gW^3_\mu + g'B_\mu\end{pmatrix}
$$

なので、これを $\frac{v}{\sqrt{2}}\binom{0}{1}$ に掛けて

$$
D_\mu\Phi\Big|_{h=0} = -\frac{i}{2}\cdot\frac{v}{\sqrt{2}}
\begin{pmatrix} g\left(W^1_\mu - iW^2_\mu\right)\\[2pt] -gW^3_\mu + g'B_\mu\end{pmatrix},
$$

$$
\left|D_\mu\Phi\right|^2\Big|_{h=0}
= \frac{v^2}{8}\Big[\,g^2\big((W^1_\mu)^2 + (W^2_\mu)^2\big) + \big(gW^3_\mu - g'B_\mu\big)^2\,\Big].
$$

質量固有状態を作ります。$W^\pm_\mu \equiv \left(W^1_\mu \mp i W^2_\mu\right)/\sqrt{2}$ とすると $W^+_\mu W^{-\mu} = \frac{1}{2}\big((W^1)^2+(W^2)^2\big)$ なので第 1 項は $\frac{g^2v^2}{4}W^+_\mu W^{-\mu}$、つまり複素ベクトル場の質量項 $M_W^2 W^+W^-$ と比べて

$$
M_W = \frac{gv}{2}.
$$

第 2 項は $W^3$ と $B$ の混合です。ワインバーグ角 $\theta_W$ を $\cos\theta_W = g/\sqrt{g^2+g'^2}$、$\sin\theta_W = g'/\sqrt{g^2+g'^2}$（すなわち $\tan\theta_W = g'/g$）で定め、直交変換

$$
\begin{pmatrix}Z_\mu\\ A_\mu\end{pmatrix}
= \begin{pmatrix}\cos\theta_W & -\sin\theta_W\\ \sin\theta_W & \cos\theta_W\end{pmatrix}
\begin{pmatrix}W^3_\mu\\ B_\mu\end{pmatrix}
$$

を行うと $gW^3 - g'B = \sqrt{g^2+g'^2}\,Z$、そして $A_\mu$ は現れません。よって

$$
\frac{v^2}{8}\left(g^2+g'^2\right)Z_\mu Z^\mu = \frac{1}{2}M_Z^2 Z_\mu Z^\mu,
\qquad
M_Z = \frac{v}{2}\sqrt{g^2+g'^2},
\qquad M_A = 0 .
$$

光子 $A_\mu$ が質量ゼロで残るのは偶然ではなく、$Q\langle\Phi\rangle = 0$ の帰結です。<Ref to="thm-goldstone" /> の証明第 4 段と同じ理屈で、真空を固定する生成子に対応するゲージ場だけが質量を得ないのです。

<Corollary id="cor-weinberg-relation" title="ワインバーグ角の関係式">

上記の最小ヒッグス模型（$SU(2)_L$ 2 重項 1 個で破る）では、樹木レベルで

$$
\frac{M_W}{M_Z} = \cos\theta_W,
\qquad \text{すなわち}\qquad
\rho \equiv \frac{M_W^2}{M_Z^2\cos^2\theta_W} = 1
$$

が成り立つ。
</Corollary>

<Proof of="cor-weinberg-relation">

上で得た $M_W = gv/2$ と $M_Z = v\sqrt{g^2+g'^2}/2$ の比を取ると

$$
\frac{M_W}{M_Z} = \frac{gv/2}{v\sqrt{g^2+g'^2}/2} = \frac{g}{\sqrt{g^2+g'^2}} = \cos\theta_W
$$

で、これは $\cos\theta_W$ の定義そのものです。両辺を 2 乗して $M_Z^2\cos^2\theta_W$ で割れば $\rho = 1$。$\square$
</Proof>

$\rho = 1$ はヒッグス場が 2 重項であることに依存する予言で（<Ref to="exr-real-triplet" /> で確かめます）、実験値は輻射補正込みで $\rho = 1.000$ 近傍に精密に一致しています。

**フェルミオンの質量：湯川結合。** 左巻きフェルミオンは $SU(2)_L$ 2 重項、右巻きは 1 重項なので、$m\bar\psi\psi$ はゲージ不変になりません。しかしヒッグス二重項をはさんだ 3 点項なら不変にできます。

$$
\mathcal{L}_{\mathrm{Yukawa}} = -\,y_e\,\overline{L_L}\,\Phi\,e_R
- y_d\,\overline{Q_L}\,\Phi\,d_R
- y_u\,\overline{Q_L}\,\tilde\Phi\,u_R + \mathrm{h.c.},
\qquad \tilde\Phi \equiv i\tau^2\Phi^{*}
$$

（$\tilde\Phi$ は $Y=-1/2$ の 2 重項として変換し、上型クォークに質量を与えるために必要です。）$\Phi \to \langle\Phi\rangle$ を代入すると $\overline{L_L}\langle\Phi\rangle e_R = \frac{v}{\sqrt{2}}\bar e_L e_R$ となるので

$$
m_f = \frac{y_f\,v}{\sqrt{2}} .
$$

質量は湯川結合定数 $y_f$ に比例しますが、$y_f$ 自体は理論が予言しない自由パラメータです。標準模型は「なぜ電子は軽くトップクォークは重いか」には答えません。答えるのは「質量とヒッグス粒子への結合が比例する」という検証可能な関係で、実際 $t, b, \tau$ への結合は確立しています。

<Example id="ex-sm-numbers" title="数値を入れてみる">

真空期待値はミューオン崩壊から測ったフェルミ定数 $G_F = 1.1664\times10^{-5}\ \mathrm{GeV}^{-2}$ で決まります。

$$
v = \left(\sqrt{2}\,G_F\right)^{-1/2}
= \left(1.6495\times10^{-5}\ \mathrm{GeV}^{-2}\right)^{-1/2}
= \sqrt{6.062\times10^{4}}\ \mathrm{GeV} = 246.2\ \mathrm{GeV}.
$$

ヒッグス粒子の質量 $m_h = 125.2\ \mathrm{GeV}$ を使うと、<Ref to="thm-higgs-mechanism" /> の $m_h^2 = 2\lambda v^2$ から

$$
\lambda = \frac{m_h^2}{2v^2} = \frac{(125.2)^2}{2(246.2)^2} = \frac{15675}{121240} = 0.129,
\qquad
\mu = \frac{m_h}{\sqrt{2}} = 88.5\ \mathrm{GeV}.
$$

逆に測定された $M_W = 80.37\ \mathrm{GeV}$、$M_Z = 91.19\ \mathrm{GeV}$ から結合定数を求めてみます。<Ref to="cor-weinberg-relation" /> より $\cos\theta_W = 80.37/91.19 = 0.8814$、$\sin^2\theta_W = 0.2231$、$\sin\theta_W = 0.4723$。また $M_W = gv/2$ から

$$
g = \frac{2M_W}{v} = \frac{160.74}{246.2} = 0.653,
\qquad
g' = g\tan\theta_W = 0.653\times\frac{0.4723}{0.8814} = 0.350 .
$$

電磁結合は $e = g\sin\theta_W$ なので $e = 0.653\times0.4723 = 0.3084$、微細構造定数は

$$
\alpha = \frac{e^2}{4\pi} = \frac{0.0951}{12.566} = 7.57\times10^{-3} = \frac{1}{132}.
$$

実測値は低エネルギーで $\alpha^{-1} = 137.04$、$Z$ 質量スケールで $\alpha^{-1}(M_Z) \simeq 128$ です。樹木レベルの見積もりはその中間に落ち、ずれは数 %。これが電弱輻射補正の大きさで、精密測定はこの補正まで含めて標準模型と合っています。

湯川結合も見ておきます。$y_f = \sqrt{2}m_f/v$ より

$$
y_t = \frac{\sqrt{2}\times 172.6}{246.2} = 0.99,
\qquad
y_e = \frac{\sqrt{2}\times 5.11\times10^{-4}}{246.2} = 2.9\times10^{-6}.
$$

トップクォークだけが $y_t \simeq 1$ という「自然な」値をもち、電子は $10^{-6}$ です。この 6 桁の開きに理由を与えることは、標準模型を超える理論の主要な課題の一つです。

最後に注意を一つ。ヒッグス機構が説明するのは**素粒子**の質量です。あなたの体重の大部分を占める陽子・中性子の質量 $939\ \mathrm{MeV}$ のうち、クォークの質量に由来するのは $2m_u + m_d \simeq 2\times2.2 + 4.7 = 9.1\ \mathrm{MeV}$、つまり約 1 % にすぎません。残り 99 % は QCD の場のエネルギー（クォークとグルーオンの束縛エネルギー）です。「ヒッグスが万物に質量を与える」という説明は、この意味で不正確です。
</Example>

## 8. 演習

<Exercise id="exr-commutator" difficulty="易">

<Ref to="def-gauge-transformation" /> の共変微分 $D_\mu = \partial_\mu - iqA_\mu$ について、任意の滑らかな場 $\phi$ に対し

$$
\left[D_\mu, D_\nu\right]\phi = -iq\,F_{\mu\nu}\,\phi,
\qquad F_{\mu\nu} = \partial_\mu A_\nu - \partial_\nu A_\mu
$$

を示せ。さらにこの関係と <Ref to="lem-covariant-derivative" /> を用いて、$F_{\mu\nu}$ がゲージ不変であることを（$\alpha$ の 2 階微分の可換性を使わずに）導け。

<Solution>

**前半。** 交換子を 4 つに分けます。

$$
\left[D_\mu, D_\nu\right] = \left[\partial_\mu, \partial_\nu\right]
+ \left[\partial_\mu, -iqA_\nu\right] + \left[-iqA_\mu, \partial_\nu\right] + \left[-iqA_\mu, -iqA_\nu\right].
$$

第 1 項は $\phi$ が $C^2$ 級なら $0$。第 4 項は $A_\mu, A_\nu$ が単なる掛け算演算子なので $0$。残る 2 項を $\phi$ に作用させます。

$$
\left[\partial_\mu, -iqA_\nu\right]\phi = \partial_\mu\!\left(-iqA_\nu\phi\right) - \left(-iqA_\nu\right)\partial_\mu\phi
= -iq\left(\partial_\mu A_\nu\right)\phi,
$$

$$
\left[-iqA_\mu, \partial_\nu\right]\phi = -iqA_\mu\partial_\nu\phi - \partial_\nu\!\left(-iqA_\mu\phi\right)
= +iq\left(\partial_\nu A_\mu\right)\phi .
$$

（どちらも積の微分則で $\phi$ に掛かる微分が相殺し、$A$ に掛かる微分だけが残ります。）足すと

$$
\left[D_\mu,D_\nu\right]\phi = -iq\left(\partial_\mu A_\nu - \partial_\nu A_\mu\right)\phi = -iqF_{\mu\nu}\phi .
$$

**後半。** <Ref to="lem-covariant-derivative" /> より $D'_\mu\phi' = e^{iq\alpha}D_\mu\phi$ です。これを 2 回使うと

$$
D'_\mu D'_\nu \phi' = D'_\mu\!\left(e^{iq\alpha}D_\nu\phi\right) = e^{iq\alpha}D_\mu D_\nu\phi
$$

（$D_\nu\phi$ も $\phi$ と同じ変換をするので、補題がそのまま適用できます）。添字を入れ替えて引くと $[D'_\mu,D'_\nu]\phi' = e^{iq\alpha}[D_\mu,D_\nu]\phi$。前半の結果を両辺に入れると

$$
-iq F'_{\mu\nu}\,e^{iq\alpha}\phi = e^{iq\alpha}\left(-iqF_{\mu\nu}\phi\right)
\ \Longrightarrow\ \left(F'_{\mu\nu} - F_{\mu\nu}\right)\phi = 0 .
$$

$q \ne 0$ で、$\phi$ は任意（少なくとも 1 点で $\phi \ne 0$ となる配位を取る）なので $F'_{\mu\nu} = F_{\mu\nu}$ です。ゲージ不変性が、共変微分の変換則だけから出ました。
</Solution>
</Exercise>

<Exercise id="exr-georgi-glashow" difficulty="標準">

$SU(2)$ の随伴表現に属する実スカラー場 $\phi = (\phi^1,\phi^2,\phi^3)$ に対し

$$
V(\phi) = \frac{\lambda}{4}\left(\phi^a\phi^a - v^2\right)^2, \qquad \lambda, v > 0
$$

を考える。生成子の随伴表現を $(T^A)^{bc} = \epsilon^{Abc}$（実反対称）とし、真空を $\langle\phi\rangle = (0,0,v)$ に取る。

(a) 残留対称性 $H$ を求めよ。
(b) <Ref to="thm-goldstone" /> により質量ゼロモードの個数を予言せよ。
(c) 質量行列 $M^2_{ab}$ を直接計算し、(b) と一致することを確かめよ。

<Solution>

**(a)** $R(g)\langle\phi\rangle = \langle\phi\rangle$ となる回転は、$\boldsymbol{e}_3$ 軸まわりの回転です。$T^3$ が生成する $H = U(1) \cong SO(2)$ で、$\dim H = 1$。（$SU(2)$ は随伴表現では $SO(3)$ として作用するので、$G$ の実効的な作用は $SO(3)$、$\dim G = 3$ です。）

**(b)** $\dim G - \dim H = 3 - 1 = 2$。質量ゼロモードは 2 個と予言されます。実際に破れた生成子の作用を見ると、$T^1\langle\phi\rangle$ の第 $b$ 成分は $\epsilon^{1b3}v$ なので $b=2$ のときだけ $\epsilon^{123}v = v$、つまり $T^1\langle\phi\rangle = (0,v,0)$。同様に $T^2\langle\phi\rangle$ は $\epsilon^{2b3}v$ で $b=1$ のとき $\epsilon^{213}v = -v$、つまり $(-v,0,0)$。そして $T^3\langle\phi\rangle$ は $\epsilon^{3b3} = 0$ よりゼロベクトルです。よって $\mathrm{span}\{T^A\langle\phi\rangle\} = \mathrm{span}\{\boldsymbol{e}_1,\boldsymbol{e}_2\}$ で 2 次元、$\ker\rho = \mathrm{span}\{T^3\}$ で 1 次元。次元定理 $3 = 2 + 1$ と整合します。

**(c)** <Ref to="ex-on-model" /> の計算を $N = 3$ で使えます。

$$
\frac{\partial V}{\partial\phi^a} = \lambda\left(\phi^2-v^2\right)\phi^a,
\qquad
\frac{\partial^2V}{\partial\phi^a\partial\phi^b} = 2\lambda\phi^a\phi^b + \lambda\left(\phi^2-v^2\right)\delta^{ab}.
$$

$\langle\phi\rangle = (0,0,v)$ では $\phi^2 - v^2 = 0$ かつ $\phi^a = v\delta^{a3}$ なので

$$
M^2 = 2\lambda v^2 \begin{pmatrix}0&0&0\\0&0&0\\0&0&1\end{pmatrix}
= \mathrm{diag}\left(0,\ 0,\ 2\lambda v^2\right).
$$

ゼロ固有値は 2 個で、固有ベクトルは $\boldsymbol{e}_1, \boldsymbol{e}_2$。(b) で求めた $\mathrm{span}\{T^A\langle\phi\rangle\}$ と完全に一致します。質量をもつ 1 個（動径方向 $\phi^3$）の質量は $\sqrt{2\lambda}\,v$ です。
</Solution>
</Exercise>

<Exercise id="exr-real-triplet" difficulty="難">

標準模型のヒッグス 2 重項の代わりに、$SU(2)_L$ の随伴表現（実 3 重項）で超電荷 $Y = 0$ をもつスカラー場 $\Phi = (\Phi^1,\Phi^2,\Phi^3)$ を使って電弱対称性を破ることを考える。共変微分は

$$
D_\mu\Phi^a = \partial_\mu\Phi^a + g\,\epsilon^{abc}W^b_\mu\Phi^c
$$

であり（$Y=0$ なので $B_\mu$ は結合しない）、運動項は $\frac{1}{2}D_\mu\Phi^a D^\mu\Phi^a$、真空は $\langle\Phi\rangle = (0,0,u)$ とする。

(a) ゲージ場の質量項を計算し、$W^1, W^2$ の質量を求めよ。
(b) $W^3_\mu$ と $B_\mu$ の質量を求めよ。
(c) この模型が実験と矛盾する理由を、$\rho$ パラメータと光子の個数の観点から述べよ。

<Solution>

**(a)** $\langle\Phi\rangle = (0,0,u)$ を代入すると $\partial_\mu\Phi^a = 0$ なので

$$
D_\mu\Phi^a\Big|_{\langle\Phi\rangle} = g\,\epsilon^{ab3}W^b_\mu\,u .
$$

成分ごとに見ます。$a=1$：$\epsilon^{1b3}$ が非零になるのは $b=2$ で $\epsilon^{123}=+1$、よって $g u W^2_\mu$。$a=2$：$\epsilon^{2b3}$ が非零なのは $b=1$ で $\epsilon^{213}=-1$、よって $-g u W^1_\mu$。$a=3$：$\epsilon^{3b3}=0$ なのでゼロ。したがって

$$
\frac{1}{2}D_\mu\Phi^a D^\mu\Phi^a\Big|_{\langle\Phi\rangle}
= \frac{1}{2}g^2u^2\left[\left(W^2_\mu\right)^2 + \left(W^1_\mu\right)^2\right].
$$

実ベクトル場の質量項は $\frac{1}{2}M^2 W_\mu W^\mu$ の形なので、$M_{W^1}^2 = M_{W^2}^2 = g^2u^2$、すなわち $M_W = g u$。（2 重項の場合の $M_W = gv/2$ と係数が違うことに注意してください。表現が変われば係数も変わります。）

**(b)** (a) の計算で $a=3$ 成分がゼロだったので、$W^3_\mu$ は質量項をもちません。$B_\mu$ は $Y=0$ のため $\Phi$ とそもそも結合せず、やはり質量ゼロです。$W^3$–$B$ の混合も起こりません。破れは $SU(2)_L\times U(1)_Y \to U(1)_{T^3}\times U(1)_Y$ で、破れた生成子は 2 個、残留対称性は 2 次元です。

**(c)** 二つの理由で実験と矛盾します。

第一に、質量ゼロのゲージボソンが 2 個残ります。自然界に質量ゼロのゲージボソンは光子 1 個しかありません（もう 1 個あれば新しい長距離力として観測されているはずです）。特に $Z$ ボソンに相当する中性の重いボソンが存在せず、$M_Z = 91.19\ \mathrm{GeV}$ の測定と真っ向から食い違います。

第二に、<Ref to="cor-weinberg-relation" /> の $\rho$ パラメータが壊れます。$\rho = M_W^2/(M_Z^2\cos^2\theta_W)$ に (a)(b) を入れると $M_Z = 0$ なので $\rho$ は発散し、実験値 $\rho \simeq 1$（輻射補正を含めて 0.1 % 精度で 1）とは比べものになりません。一般に $\rho = 1$ が自動的に成り立つのはヒッグス場が $SU(2)_L$ 2 重項のときで、3 重項を主役にすると成立しません。$\rho$ の精密測定は、電弱対称性を破る主役が 2 重項であることを支持しています。
</Solution>
</Exercise>

## 参考文献

- M. E. Peskin, D. V. Schroeder, *An Introduction to Quantum Field Theory*, Addison-Wesley, 1995 — 第 20 章「Gauge Theories with Spontaneous Symmetry Breaking」。アーベリアン・ヒッグス模型から標準模型までを計算付きで扱っています。
- S. Weinberg, *The Quantum Theory of Fields, Volume II: Modern Applications*, Cambridge University Press, 1996 — 第 19 章（自発的に破れた大域対称性、ゴールドストーンの定理の厳密な証明）、第 21 章（自発的に破れたゲージ対称性、$R_\xi$ ゲージ）。
- 九後汰一郎『ゲージ場の量子論 I・II』培風館、1989 — ゲージ対称性と共変的量子化、BRST 対称性。
- P. W. Higgs, "Broken Symmetries and the Masses of Gauge Bosons", *Physical Review Letters* 13 (1964), 508–509. https://doi.org/10.1103/PhysRevLett.13.508
- F. Englert, R. Brout, "Broken Symmetry and the Mass of Gauge Vector Mesons", *Physical Review Letters* 13 (1964), 321–323. https://doi.org/10.1103/PhysRevLett.13.321
- Particle Data Group, *Review of Particle Physics* — https://pdg.lbl.gov/ （$v$、$M_W$、$M_Z$、$m_h$、湯川結合などの数値の出典）

## Appendix: $R_\xi$ ゲージとゴールドストーン粒子の行方

**ユニタリーゲージの長所と短所。** <Ref to="thm-higgs-mechanism" /> のユニタリーゲージは、物理的スペクトルが一目で読める点が長所です。短所は伝播関数で、<Ref to="rem-proca-renormalizability" /> のとおり $k_\mu k_\nu/m_A^2$ という高エネルギーで落ちない項があり、各ファインマン図が実際より激しく発散して見えます。物理量では相殺するのですが、くりこみ可能性を図ごとに示せません。

**混合項を消すゲージ固定。** そこで位相場を残したまま計算します。$\phi = \frac{1}{\sqrt{2}}\left(v + h + i\theta\right)$ と書くと（$h,\theta$ は実場）、実部・虚部に分けて

$$
\left|D_\mu\phi\right|^2 = \frac{1}{2}\left(\partial_\mu h + qA_\mu\theta\right)^2
+ \frac{1}{2}\left(\partial_\mu\theta - qA_\mu(v+h)\right)^2
$$

となり、2 次の部分は

$$
\frac{1}{2}\left(\partial h\right)^2 + \frac{1}{2}\left(\partial\theta\right)^2
+ \frac{q^2v^2}{2}A_\mu A^\mu - q v\,A^\mu\partial_\mu\theta
$$

です。最後の $A$–$\theta$ 混合項が邪魔で、このままでは伝播関数が対角化されません。部分積分すると $+qv\left(\partial_\mu A^\mu\right)\theta$ なので、これを打ち消すゲージ固定項

$$
\mathcal{L}_{\mathrm{gf}} = -\frac{1}{2\xi}\left(\partial_\mu A^\mu + \xi\, q v\,\theta\right)^2
= -\frac{1}{2\xi}\left(\partial\cdot A\right)^2 - qv\left(\partial\cdot A\right)\theta - \frac{\xi q^2v^2}{2}\theta^2
$$

を加えます（$\xi > 0$ は任意のパラメータ）。第 2 項が混合項をちょうど相殺します。これが $R_\xi$ ゲージです。

**その帰結。** 残った 2 次の項から読み取れるスペクトルは次のとおりです。ゲージ場の質量は $m_A = |q|v$ で変わりません。ヒッグス場 $h$ の質量も $m_h = \sqrt{2\lambda}\,v$ のままです。一方、ゴールドストーン場 $\theta$ は $\mathcal{L}_{\mathrm{gf}}$ の第 3 項から質量 $m_\theta^2 = \xi\,m_A^2$ を得ます。伝播関数は

$$
\Delta^{A}_{\mu\nu}(k) = \frac{-i}{k^2-m_A^2}\left[\eta_{\mu\nu} - (1-\xi)\frac{k_\mu k_\nu}{k^2 - \xi m_A^2}\right],
\qquad
\Delta^{\theta}(k) = \frac{i}{k^2-\xi m_A^2}
$$

です。$\xi \to \infty$ でユニタリーゲージ（$\theta$ が無限に重くなって落ち、ゲージ場の伝播関数がプロカ型に戻る）、$\xi = 1$ でトフーフト・ファインマンゲージ（$\Delta^A_{\mu\nu} = -i\eta_{\mu\nu}/(k^2-m_A^2)$）になります。$\xi = 1$ では伝播関数が $1/k^2$ で落ちるので、くりこみ可能性を通常のやり方で議論できます。これがトフーフトが 1971 年に示した「自発的に破れたゲージ理論はくりこみ可能」の技術的な核心で、[くりこみ理論入門](/physics/qft/renormalization) の <Ref to="physics/qft/renormalization#thm-bph" text="くりこみ可能性定理（BPHZ）" /> の枠組みがそのまま使えるようになります。

**自由度の勘定と非物理的な状態。** $\xi$ に依存する質量 $\sqrt{\xi}\,m_A$ をもつ粒子（$\theta$）が現れましたが、物理量は $\xi$ に依ってはいけません。実際、非可換の場合に現れるファデーエフ・ポポフ・ゴースト（<Ref to="physics/qft/path-integral-quantization#thm-faddeev-popov" text="ファデーエフ–ポポフの公式" />）も同じ $\xi m_A^2$ の質量をもち、$\theta$ の寄与とゴーストの寄与が物理的な散乱振幅で相殺します。自由度を数えると、$A_\mu$ が 4、$h$ が 1、$\theta$ が 1 で計 6、ここから負ノルムのゴースト 2 を引いて 4 となり、<Ref to="thm-higgs-mechanism" /> の (3) と一致します。負ノルム状態が入ることが、<Ref to="rem-goldstone-proof" /> で述べた「ゴールドストーンの定理の仮定 (i) が満たされない」の正体です。

**ゴールドストーン粒子は本当に消えたのか。** 消えていません。$E \gg m_A$ では、質量をもつゲージ場の縦波成分の散乱振幅が、対応する $\theta$ の散乱振幅に一致します（ゴールドストーン等価定理）。高エネルギーでの $W$ ボソンの縦波は、食われたゴールドストーン粒子そのものとして振る舞うのです。$WW$ 散乱の高エネルギー振る舞いからヒッグス粒子の存在が要請される、という有名な議論はこの定理に基づいています。


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