# 日常の中の物理：スマホ・GPS・MRI を動かしている量子力学と相対論

> スマホの半導体、GPS の相対論補正、MRI の核磁気共鳴を、実際の数値を最後まで計算して読み解く。バンドギャップと発光色、1 日 38 マイクロ秒の時刻ずれ、5 ppm の核スピン偏極が、身のまわりの機器を動かしています。
> https://rikai.mugen-giken.com/physics/physics-columns/physics-in-everyday-life

## 0. この記事の要点

- スマホの半導体は、結晶中の電子が飛び飛びのエネルギー帯しか取れないという量子力学の帰結の上に成り立っています。バンドギャップ $E_g$ を決めれば、その材料が光る色も、熱で勝手に流れる電流の量も、指数関数で一意に決まります。
- 微細化が止まったのはトンネル効果のせいです。ゲート絶縁膜を $1\ \mathrm{nm}$ 薄くするごとに漏れ電流はおよそ $7 \times 10^{7}$ 倍になります。この数字は指数関数から手計算で出せます。
- GPS 衛星の時計は、地上の時計に対して 1 日あたり約 $38\ \mu\mathrm{s}$ 進みます。特殊相対論による遅れ $-7.2\ \mu\mathrm{s}$ と一般相対論による進み $+45.7\ \mu\mathrm{s}$ の差です。補正しなければ測位誤差は 1 日で約 $11\ \mathrm{km}$ 積み上がります。
- MRI が見ているのは、あなたの体の水素原子核のうち **100 万個に 5 個** という、ごくわずかな「向きの偏り」です。それでも $1\ \mathrm{mm}^3$ に $3 \times 10^{14}$ 個あるので、十分な信号になります。
- 三つに共通するのは $E = hf$ という 1 本の式です。バンドギャップは光の色に、原子核のゼーマン分裂は電波の周波数に、セシウム原子の超微細構造は「秒」そのものになっています。

## 1. 動機：ポケットに 20 世紀物理学が入っている

1900 年の物理学者に「あなたたちが今から作る理論は、100 年後には手のひらサイズの板になって全人類が持ち歩きます」と言っても、たぶん信じてもらえません。量子力学も相対性理論も、当時は「黒体放射のスペクトルが合わない」「エーテルが見つからない」といった、実験室の隅の小さな不一致から始まった話でした。

ところが現在、あなたがスマートフォンで地図を開いて現在地を確かめる、その数秒間に、次のことが起きています。

1. 指がガラスに触れると、透明電極の**静電容量**の変化が読み取られ、シリコンの集積回路がそれを数値に変える。この回路の中では、電子が**バンド**という飛び飛びのエネルギー帯を動いている。
2. 高度およそ $2\times 10^{4}\ \mathrm{km}$ の GPS 衛星から届く電波の到達時刻の差が計算される。このとき衛星の原子時計には、**特殊相対論と一般相対論**による補正が最初からかけられている。
3. （体調が悪ければ）病院で MRI に入る。あなたの体内の水素原子核が、**核磁気共鳴**によって電波を出す。

本記事では、この三つを順に取り上げ、**数値を最後まで計算します**。「相対論が使われています」と言うだけなら誰でもできますが、「1 日に何マイクロ秒ずれるのか」を自分で出せると、話は途端に具体的になります。使う数学は、指数関数と平方根と、$(1+x)^{1/2} \approx 1 + x/2$ という近似だけです。

## 2. 準備：三つの機器を貫く 1 本の式

三つの技術はまったく別の分野に見えますが、根っこには同じ関係式があります。

<Definition id="def-planck" title="プランクの関係式">
振動数 $f$（角振動数 $\omega = 2\pi f$）の電磁波の 1 個の光子が運ぶエネルギー $E$ は
$$
E = hf = \hbar \omega
$$
で与えられる。ここで $h = 6.62607\times 10^{-34}\ \mathrm{J\,s}$ をプランク定数、$\hbar = h/(2\pi)$ を換算プランク定数という。

逆に、二つのエネルギー準位の差が $\Delta E$ である系は、$f = \Delta E / h$ の電磁波を吸収・放出する。
</Definition>

この式は「エネルギー差」と「周波数」を翻訳する辞書です。以下で見るように、半導体では $\Delta E$ がバンドギャップ（可視光〜赤外）、MRI では核スピンのゼーマン分裂（電波）、原子時計ではセシウム原子の超微細構造（マイクロ波）に対応します。

計算に使う定数をまとめておきます。有効数字は 4〜5 桁で、CODATA 2018 の推奨値に基づきます。

| 記号 | 値 | 意味 |
|---|---|---|
| $c$ | $2.99792\times 10^{8}\ \mathrm{m/s}$ | 真空中の光速 |
| $h$ | $6.62607\times 10^{-34}\ \mathrm{J\,s}$ | プランク定数 |
| $hc$ | $1239.84\ \mathrm{eV\,nm}$ | 波長とエネルギーの換算 |
| $k_B$ | $1.38065\times 10^{-23}\ \mathrm{J/K}$ | ボルツマン定数 |
| $k_B T$ ($T = 300\ \mathrm{K}$) | $0.02585\ \mathrm{eV}$ | 室温の熱エネルギー |
| $m_e$ | $9.109\times 10^{-31}\ \mathrm{kg}$ | 電子の質量 |
| $GM_\oplus$ | $3.986\times 10^{14}\ \mathrm{m^3/s^2}$ | 地球の重力定数 |
| $R_\oplus$ | $6.371\times 10^{6}\ \mathrm{m}$ | 地球の平均半径 |

<Aside type="tip">
$hc = 1239.84\ \mathrm{eV\,nm}$ はぜひ覚えてください。「$1240$ をエネルギー（eV）で割れば波長（nm）」という形で、可視光の話をするときに毎回使います。
</Aside>

## 3. スマートフォン：飛び飛びのエネルギーが電子回路になる

### 3.1. なぜ「半分だけ導体」なのか

金属はよく電気を通し、ガラスはまったく通しません。半導体はその中間ですが、面白いのは「中途半端に通す」ことではなく、**通すか通さないかを外から切り替えられる**ことです。この切り替えがトランジスタであり、トランジスタが 100 億個集まったものがスマホの心臓部です。

なぜ切り替えられるのか。答えは、結晶中の電子が取れるエネルギーが連続ではなく、**帯（バンド）**になっているからです。

<Definition id="def-band-gap" title="バンドギャップ">
結晶中の電子が取り得るエネルギーは、いくつかの連続領域（**エネルギーバンド**）に分かれ、その間に電子が存在できない領域（**禁制帯**）ができる。絶対零度で電子が完全に詰まっている最上のバンドを**価電子帯**、その上の空のバンドを**伝導帯**と呼び、両者のエネルギー差
$$
E_g = E_{\text{伝導帯の底}} - E_{\text{価電子帯の頂上}}
$$
を**バンドギャップ**という。$E_g = 0$ の物質を金属、$E_g$ が $k_B T$ より十分大きく数 eV 程度の物質を半導体、それよりはるかに大きい物質を絶縁体と呼ぶ。
</Definition>

バンドができる理由は量子力学です。孤立した原子では電子のエネルギーは飛び飛びの準位を取りますが、原子を $10^{23}$ 個並べて結晶にすると、隣り合う原子の波動関数が重なって準位が分裂し、密集した「帯」になります。周期的な結晶では、ある波長の電子波がブラッグ反射されて進めなくなり、そこに隙間が空く——これが禁制帯です。

<Figure caption="真性半導体・n 型・p 型のバンド図。下の塗りつぶした帯が電子の詰まった価電子帯、上の枠だけの帯が伝導帯。">
<svg viewBox="0 0 660 300" width="100%" role="img" aria-label="真性半導体、n型半導体、p型半導体のバンド図">
  <g stroke="currentColor" fill="currentColor">
    <g fill-opacity="0.25" stroke="none">
      <rect x="30" y="215" width="150" height="45" />
      <rect x="255" y="215" width="150" height="45" />
      <rect x="480" y="215" width="150" height="45" />
    </g>
    <g fill="none" stroke-width="1.6">
      <rect x="30" y="60" width="150" height="45" />
      <rect x="255" y="60" width="150" height="45" />
      <rect x="480" y="60" width="150" height="45" />
    </g>
    <g stroke-width="1.2" stroke-dasharray="5 4">
      <line x1="30" y1="105" x2="180" y2="105" />
      <line x1="30" y1="215" x2="180" y2="215" />
    </g>
    <g stroke-width="1.6">
      <line x1="105" y1="212" x2="105" y2="110" />
      <path d="M 105 105 l -5 10 l 10 0 z" stroke="none" />
      <path d="M 105 215 l -5 -10 l 10 0 z" stroke="none" />
    </g>
    <g stroke="none" font-size="15" text-anchor="middle">
      <text x="105" y="32">真性半導体</text>
      <text x="330" y="32">n 型（ドナー添加）</text>
      <text x="555" y="32">p 型（アクセプタ添加）</text>
      <text x="132" y="170">Eg</text>
      <text x="105" y="285">熱励起はごく稀</text>
      <text x="330" y="285">電子が多数キャリア</text>
      <text x="555" y="285">正孔が多数キャリア</text>
    </g>
    <g stroke="none" font-size="13" text-anchor="start">
      <text x="192" y="88">伝導帯</text>
      <text x="192" y="243">価電子帯</text>
    </g>
    <g stroke-width="1.4">
      <line x1="285" y1="125" x2="315" y2="125" />
      <line x1="330" y1="125" x2="360" y2="125" />
      <circle cx="300" cy="90" r="5" fill="currentColor" stroke="none" />
      <circle cx="345" cy="90" r="5" fill="currentColor" stroke="none" />
      <circle cx="375" cy="90" r="5" fill="currentColor" stroke="none" />
    </g>
    <g stroke-width="1.4">
      <line x1="510" y1="195" x2="540" y2="195" />
      <line x1="555" y1="195" x2="585" y2="195" />
      <circle cx="525" cy="240" r="5" fill="none" />
      <circle cx="570" cy="240" r="5" fill="none" />
      <circle cx="600" cy="240" r="5" fill="none" />
    </g>
    <g stroke="none" font-size="12" text-anchor="middle">
      <text x="330" y="145">ドナー準位</text>
      <text x="555" y="185">アクセプタ準位</text>
    </g>
  </g>
</svg>
</Figure>

### 3.2. バンドギャップは何を決めるか（1）光の色

<Proposition id="prop-photon-wavelength" title="バンドギャップと発光波長">
バンドギャップ $E_g$ の直接遷移型半導体において、伝導帯の底にある電子が価電子帯の頂上の正孔と再結合して光子 1 個を放出するとき、その光子の真空中の波長 $\lambda$ は
$$
\lambda = \frac{hc}{E_g}, \qquad \text{数値的には}\quad \lambda\,[\mathrm{nm}] = \frac{1239.84}{E_g\,[\mathrm{eV}]}
$$
で与えられる。
</Proposition>

<Proof of="prop-photon-wavelength">
再結合で電子が失うエネルギーはちょうど $E_g$ です。エネルギー保存則より、放出される光子のエネルギーも $E_g$ です。<Ref to="def-planck" /> により光子のエネルギーは $E = hf$ であり、真空中では $f = c/\lambda$ なので
$$
E_g = \frac{hc}{\lambda} \iff \lambda = \frac{hc}{E_g}.
$$
最後に <Ref to="def-planck" /> の下の表にある $hc = 1239.84\ \mathrm{eV\,nm}$ を代入すれば、$E_g$ を eV、$\lambda$ を nm で測ったときの関係式が得られます。
</Proof>

<Example id="ex-led-colors" title="シリコンは光らない、窒化ガリウムは青く光る">
表の値を <Ref to="prop-photon-wavelength" /> に入れてみます。

| 材料 | $E_g$ | $\lambda = 1239.84/E_g$ | 見え方 |
|---|---|---|---|
| ゲルマニウム Ge | $0.66\ \mathrm{eV}$ | $1879\ \mathrm{nm}$ | 赤外 |
| シリコン Si | $1.12\ \mathrm{eV}$ | $1107\ \mathrm{nm}$ | 赤外 |
| ヒ化ガリウム GaAs | $1.42\ \mathrm{eV}$ | $873\ \mathrm{nm}$ | 近赤外（リモコン） |
| リン化ガリウム系 | $\approx 2.0\ \mathrm{eV}$ | $620\ \mathrm{nm}$ | 赤 |
| InGaN（青色 LED） | $\approx 2.76\ \mathrm{eV}$ | $449\ \mathrm{nm}$ | 青 |
| 窒化ガリウム GaN | $3.4\ \mathrm{eV}$ | $365\ \mathrm{nm}$ | 紫外 |

ここで大事な但し書きがあります。<Ref to="prop-photon-wavelength" /> は「直接遷移型」を仮定しています。Si と Ge は**間接遷移型**——伝導帯の底と価電子帯の頂上が運動量空間で別の場所にある——ため、光子だけでは運動量が保存せず、フォノン（格子振動）の助けが要ります。その結果、発光確率が桁違いに小さく、**シリコンは光りません**。だから LED やレーザーには GaAs や GaN が使われ、シリコンは「計算する係」に専念しているわけです。
</Example>

### 3.3. バンドギャップは何を決めるか（2）勝手に流れる電流

半導体は絶対零度では絶縁体ですが、室温では熱によって価電子帯の電子がギャップを跳び越えます。この「勝手に生じるキャリア」の数が、材料の性格を決めます。

<Proposition id="prop-intrinsic-carriers" title="真性キャリア密度">
バンドギャップ $E_g$ の真性（不純物を含まない）半導体において、温度 $T$ での伝導電子の密度 $n_i$ は、$E_g \gg k_B T$ のとき
$$
n_i = \sqrt{N_c N_v}\,\exp\!\left(-\frac{E_g}{2k_B T}\right)
$$
と表される。ここで $N_c,\ N_v$ はそれぞれ伝導帯・価電子帯の**有効状態密度**で、典型的な半導体では室温で $10^{19}\ \mathrm{cm^{-3}}$ 程度の値をとる。
</Proposition>

<Remark id="rem-carrier-derivation">
この式はフェルミ分布 $f(E) = [\exp((E-E_F)/k_BT) + 1]^{-1}$ を各バンドの状態密度で積分し、$E - E_F \gg k_B T$ でマクスウェル・ボルツマン分布に近似したうえで、真性半導体の電気的中性条件 $n = p$ を課すと導かれます。導出は Sze–Ng『Physics of Semiconductor Devices』第 1 章にあります。ここでは結果だけを使い、**指数関数の肩に $E_g/2k_BT$ が乗る**という一点に注目します。
</Remark>

<Example id="ex-si-vs-ge" title="Si と Ge で自由電子の数が 3600 倍違う">
室温 $T = 300\ \mathrm{K}$ では $k_B T = 0.02585\ \mathrm{eV}$、したがって $2k_B T = 0.0517\ \mathrm{eV}$ です。

**シリコン**（$E_g = 1.12\ \mathrm{eV}$、$N_c = 2.8\times 10^{19}$、$N_v = 1.04\times 10^{19}\ \mathrm{cm^{-3}}$）:
$$
\begin{aligned}
\frac{E_g}{2k_BT} &= \frac{1.12}{0.0517} = 21.66, \qquad e^{-21.66} = 3.9\times 10^{-10},\\
\sqrt{N_cN_v} &= \sqrt{2.8\times 10^{19}\cdot 1.04\times 10^{19}} = 1.71\times 10^{19}\ \mathrm{cm^{-3}},\\
n_i &= 1.71\times 10^{19}\cdot 3.9\times 10^{-10} = 6.7\times 10^{9}\ \mathrm{cm^{-3}}.
\end{aligned}
$$
実測値は $1.0\times 10^{10}\ \mathrm{cm^{-3}}$ で、1.5 倍以内で一致します。

**ゲルマニウム**（$E_g = 0.66\ \mathrm{eV}$、$N_c = 1.04\times 10^{19}$、$N_v = 6.0\times 10^{18}\ \mathrm{cm^{-3}}$）:
$$
\begin{aligned}
\frac{E_g}{2k_BT} &= \frac{0.66}{0.0517} = 12.77, \qquad e^{-12.77} = 2.9\times 10^{-6},\\
\sqrt{N_cN_v} &= \sqrt{1.04\times 10^{19}\cdot 6.0\times 10^{18}} = 7.9\times 10^{18}\ \mathrm{cm^{-3}},\\
n_i &= 7.9\times 10^{18}\cdot 2.9\times 10^{-6} = 2.3\times 10^{13}\ \mathrm{cm^{-3}}.
\end{aligned}
$$
実測値は $2.4\times 10^{13}\ \mathrm{cm^{-3}}$ で、こちらはほぼ一致します。

$E_g$ が $0.46\ \mathrm{eV}$ 違うだけで、自由電子の数は約 $3500$ 倍違います。指数関数の威力です。そして、この差が「なぜ現代の集積回路は Ge ではなく Si なのか」の答えの一つになります。トランジスタを OFF にしたときに流れてしまう電流（オフリーク）が、Ge では 3 桁以上大きいのです。
</Example>

シリコン結晶の原子密度は $5.0\times 10^{22}\ \mathrm{cm^{-3}}$ です。$n_i = 10^{10}\ \mathrm{cm^{-3}}$ ということは、$5\times 10^{12}$ 個の原子につき 1 個しか自由電子がいない計算になります。ここにリンを $10^{16}\ \mathrm{cm^{-3}}$ ——シリコン原子 500 万個に 1 個——だけ混ぜると、自由電子は一気に $10^{6}$ 倍になります。これが**ドーピング**であり、半導体産業が「純度 11 個の 9（99.999999999 %）」にこだわる理由です。不純物が意図せず $10^{16}\ \mathrm{cm^{-3}}$ 入ってしまえば、設計はすべて台無しになります。

### 3.4. 微細化を止めたもの：トンネル効果

トランジスタは、ゲート電極と半導体の間に薄い絶縁膜（酸化シリコン $\mathrm{SiO_2}$ など）を挟み、ゲートに電圧をかけて下のチャネルを ON/OFF します。絶縁膜は薄いほど制御が効くので、半導体産業は 40 年にわたってこれを薄くしてきました。そして 2000 年代に壁にぶつかります。**電子が絶縁膜をすり抜ける**のです。

<Proposition id="prop-tunneling" title="矩形障壁のトンネル透過率">
質量 $m$、エネルギー $E$ の粒子が、高さ $V_0\ (> E)$、厚さ $d$ の矩形ポテンシャル障壁に入射するとき、透過確率 $T$ は
$$
\kappa = \frac{\sqrt{2m(V_0 - E)}}{\hbar}
$$
とおくと、$\kappa d \gg 1$ の場合
$$
T \approx 16\,\frac{E(V_0-E)}{V_0^{2}}\,e^{-2\kappa d} \sim e^{-2\kappa d}
$$
と近似される。すなわち透過率は厚さ $d$ に対して**指数関数的に**減少する。
</Proposition>

<Remark id="rem-tunneling-source">
この公式は 1 次元シュレーディンガー方程式を障壁の内外で解き、境界で波動関数とその微分を接続すれば得られます。障壁内部では波数が純虚数 $i\kappa$ となり、波動関数が $e^{-\kappa x}$ で減衰することが本質です。導出はファインマン物理学 V 巻や、標準的な量子力学の教科書のトンネル効果の節にあります。古典力学では $E < V_0$ なら透過確率は厳密に $0$ ですから、これは純粋に量子力学的な効果です。
</Remark>

<Example id="ex-gate-oxide" title="1 nm 薄くすると漏れが 7000 万倍">
$\mathrm{Si/SiO_2}$ 界面の電子に対する障壁高さは $V_0 - E \approx 3.1\ \mathrm{eV}$ です。まず $\kappa$ を求めます。
$$
\begin{aligned}
2m_e(V_0-E) &= 2 \cdot 9.109\times 10^{-31}\ \mathrm{kg} \cdot 3.1 \cdot 1.602\times 10^{-19}\ \mathrm{J} = 9.05\times 10^{-49},\\
\sqrt{2m_e(V_0-E)} &= 9.51\times 10^{-25}\ \mathrm{kg\,m/s},\\
\kappa &= \frac{9.51\times 10^{-25}}{1.0546\times 10^{-34}} = 9.02\times 10^{9}\ \mathrm{m^{-1}} = 9.02\ \mathrm{nm^{-1}}.
\end{aligned}
$$
よって $2\kappa = 18.0\ \mathrm{nm^{-1}}$ です。厚さごとの $e^{-2\kappa d}$ は

| 酸化膜厚 $d$ | $2\kappa d$ | $e^{-2\kappa d}$ |
|---|---|---|
| $3.0\ \mathrm{nm}$ | $54.1$ | $3\times 10^{-24}$ |
| $2.0\ \mathrm{nm}$ | $36.1$ | $2\times 10^{-16}$ |
| $1.5\ \mathrm{nm}$ | $27.1$ | $2\times 10^{-12}$ |
| $1.0\ \mathrm{nm}$ | $18.0$ | $1.5\times 10^{-8}$ |

$1\ \mathrm{nm}$ 薄くするごとに $e^{18.0} = 6.6\times 10^{7}$ 倍、すなわち約 7000 万倍の増加です。$3\ \mathrm{nm}$ から $1\ \mathrm{nm}$ にすると、漏れ電流は $10^{16}$ 倍になります。

これは比喩ではなく、実際に起きたことです。$1.2\ \mathrm{nm}$（$\mathrm{SiO_2}$ の原子わずか 5 層分）で漏れ電流が消費電力を支配し始め、業界は「もっと薄く」を諦めました。代わりに採った手が、誘電率の高い材料（ハフニウム酸化物 $\mathrm{HfO_2}$、比誘電率 $\approx 25$、$\mathrm{SiO_2}$ の $3.9$ の 6 倍以上）に替えて、**物理的には厚いまま電気的には薄い**膜を作ることでした。インテルが 45 nm 世代（2007 年）でこれを量産に入れています。つまりあなたのスマホの中には、シュレーディンガー方程式が引いた締切りに対する回答が入っています。
</Example>

## 4. GPS：時計のずれをメートルに換算する

### 4.1. 測位とは時刻の引き算である

GPS 受信機は、衛星から届いた電波に埋め込まれた送信時刻と、受信時刻の差から距離を測ります。電波は光速で進むので、時刻の誤差 $\Delta t$ は距離の誤差 $c\,\Delta t$ になります。

$$
c \times 1\ \mathrm{ns} = 2.998\times 10^{8}\ \mathrm{m/s} \times 10^{-9}\ \mathrm{s} = 0.30\ \mathrm{m}.
$$

**1 ナノ秒が 30 センチ**です。数メートルの精度で測位したいなら、時計は 10 ナノ秒の精度で合っていなければなりません。ところが、衛星の時計と地上の時計は、根本的に同じ速さでは進みません。速度による遅れ（<Ref to="physics/physics-columns/famous-physicists#thm-time-dilation" text="時間の遅れ" />）と、重力ポテンシャルの差による進み（<Ref to="physics/physics-columns/famous-physicists#prop-gravitational-redshift" text="重力による時間の進みの差" />）が同時に効くからです。以下では、この二つを一つの式にまとめて扱います。

<Definition id="def-proper-time" title="固有時">
時空中を運動する時計が実際に刻む時間を**固有時** $\tau$ という。座標時 $t$ を用いた計量 $ds^2$ に対し、固有時は
$$
d\tau^2 = -\frac{ds^2}{c^2}
$$
で定義される（時間的な世界線に沿って $ds^2 < 0$ となる符号規約を用いた）。相対論において「時計が刻む時間」とは常に固有時であり、座標時ではない。
</Definition>

### 4.2. 1 日 38 マイクロ秒

<Theorem id="thm-gps-clock" title="軌道上の時計と地上の時計の進み方の差">
地球の重力場を質量 $M$ の Schwarzschild 計量で近似し、地球の自転・扁平性・軌道離心率、および他天体の影響を無視する。地心距離 $r$ の円軌道を回る時計の固有時を $\tau_{\mathrm{sat}}$、地心距離 $R$ に静止した地上の時計の固有時を $\tau_{\mathrm{gnd}}$ とする。このとき、$GM/(rc^2) \ll 1$ および $v^2/c^2 \ll 1$ の下で 1 次の精度で
$$
\frac{\tau_{\mathrm{sat}} - \tau_{\mathrm{gnd}}}{\tau_{\mathrm{gnd}}} \approx \frac{GM}{c^{2}}\left(\frac{1}{R} - \frac{3}{2r}\right)
$$
が成り立つ。特に右辺の符号は $r > \tfrac{3}{2}R$ のとき正（衛星の時計が進む）、$r < \tfrac{3}{2}R$ のとき負（遅れる）である。
</Theorem>

<Proof of="thm-gps-clock">
Schwarzschild 計量を球座標 $(t, r, \theta, \varphi)$ で書き、赤道面 $\theta = \pi/2$ に限ると
$$
ds^{2} = -\left(1 - \frac{2GM}{rc^{2}}\right)c^{2}dt^{2} + \left(1 - \frac{2GM}{rc^{2}}\right)^{-1}dr^{2} + r^{2}d\varphi^{2}
$$
です。

**衛星について。** 円軌道なので $dr = 0$ です。<Ref to="def-proper-time" /> により
$$
c^{2}d\tau_{\mathrm{sat}}^{2} = \left(1 - \frac{2GM}{rc^{2}}\right)c^{2}dt^{2} - r^{2}d\varphi^{2}.
$$
座標速度を $v = r\,d\varphi/dt$ とおいて $dt^2$ でくくると
$$
\frac{d\tau_{\mathrm{sat}}}{dt} = \sqrt{1 - \frac{2GM}{rc^{2}} - \frac{v^{2}}{c^{2}}}.
$$
仮定より根号内の補正項は $1$ に比べて十分小さいので、$\sqrt{1-x} \approx 1 - x/2$（$|x| \ll 1$）を使って
$$
\frac{d\tau_{\mathrm{sat}}}{dt} \approx 1 - \frac{GM}{rc^{2}} - \frac{v^{2}}{2c^{2}}.
$$

**地上について。** 静止しているので $dr = d\varphi = 0$、したがって
$$
\frac{d\tau_{\mathrm{gnd}}}{dt} = \sqrt{1 - \frac{2GM}{Rc^{2}}} \approx 1 - \frac{GM}{Rc^{2}}.
$$

**比を取る。** 二つの比は、分母の小さい量の 1 次までで
$$
\frac{d\tau_{\mathrm{sat}}}{d\tau_{\mathrm{gnd}}} \approx \left(1 - \frac{GM}{rc^{2}} - \frac{v^{2}}{2c^{2}}\right)\left(1 + \frac{GM}{Rc^{2}}\right) \approx 1 + \frac{GM}{c^{2}}\left(\frac{1}{R} - \frac{1}{r}\right) - \frac{v^{2}}{2c^{2}}.
$$
（2 次の項は $10^{-19}$ 程度なので落としました。）

**円軌道の条件を使う。** ニュートン近似での円軌道では、重力と向心加速度が釣り合って $GM/r^{2} = v^{2}/r$、すなわち $v^{2} = GM/r$ です。これを代入すると
$$
\frac{d\tau_{\mathrm{sat}}}{d\tau_{\mathrm{gnd}}} \approx 1 + \frac{GM}{c^{2}}\left(\frac{1}{R} - \frac{1}{r} - \frac{1}{2r}\right) = 1 + \frac{GM}{c^{2}}\left(\frac{1}{R} - \frac{3}{2r}\right).
$$
両辺から $1$ を引けば主張の式です。符号については、$1/R - 3/(2r) > 0 \iff r > \tfrac{3}{2}R$ から従います。
</Proof>

<Example id="ex-gps-drift" title="GPS 衛星：+38.5 μs/日、補正しなければ 1 日で 11 km">
GPS 衛星の軌道半径は $r = 2.656\times 10^{7}\ \mathrm{m}$（高度約 $20{,}200\ \mathrm{km}$）、地上を $R = R_\oplus = 6.371\times 10^{6}\ \mathrm{m}$ とします。まず軌道速度を確認します。
$$
v = \sqrt{\frac{GM}{r}} = \sqrt{\frac{3.986\times 10^{14}}{2.656\times 10^{7}}} = \sqrt{1.501\times 10^{7}} = 3874\ \mathrm{m/s}.
$$
時速に直すと約 $14{,}000\ \mathrm{km/h}$ です。

**特殊相対論の寄与**（速度による遅れ）:
$$
-\frac{v^{2}}{2c^{2}} = -\frac{(3874)^{2}}{2(2.998\times 10^{8})^{2}} = -\frac{1.501\times 10^{7}}{1.798\times 10^{17}} = -8.35\times 10^{-11}.
$$
1 日 $= 86400\ \mathrm{s}$ を掛けて $-8.35\times 10^{-11} \times 86400 = -7.21\times 10^{-6}\ \mathrm{s}$、すなわち **1 日 $7.2\ \mu\mathrm{s}$ 遅れ**ます。

**一般相対論の寄与**（重力ポテンシャルが浅いことによる進み）: $GM/c^{2} = 3.986\times 10^{14}/8.988\times 10^{16} = 4.435\times 10^{-3}\ \mathrm{m}$ を使って
$$
\frac{GM}{c^{2}}\left(\frac{1}{R} - \frac{1}{r}\right) = 4.435\times 10^{-3}\left(1.5696\times 10^{-7} - 3.765\times 10^{-8}\right) = 5.29\times 10^{-10}.
$$
1 日で $5.29\times 10^{-10}\times 86400 = 4.57\times 10^{-5}\ \mathrm{s}$、すなわち **1 日 $45.7\ \mu\mathrm{s}$ 進み**ます。

**合計**（<Ref to="thm-gps-clock" /> をそのまま使っても同じです）:
$$
4.435\times 10^{-3}\left(1.5696\times 10^{-7} - \frac{1.5}{2.656\times 10^{7}}\right) = 4.435\times 10^{-3} \times 1.0049\times 10^{-7} = 4.457\times 10^{-10},
$$
$$
4.457\times 10^{-10}\times 86400\ \mathrm{s} = 3.85\times 10^{-5}\ \mathrm{s} = 38.5\ \mu\mathrm{s}\ \text{（1 日あたり、進む）}.
$$

**距離に直す。** $c \times 38.5\ \mu\mathrm{s} = 2.998\times 10^{8}\times 3.85\times 10^{-5} = 1.15\times 10^{4}\ \mathrm{m}$。補正を怠れば、測位誤差は **1 日あたり約 $11\ \mathrm{km}$** 積み上がります。カーナビが「隣の県にいます」と言い出すまで、半日もかかりません。
</Example>

実際の GPS では、この補正は打ち上げ前に済ませてあります。衛星に載せる原子時計の基準周波数を、地上での公称値 $10.23\ \mathrm{MHz}$ からわずかにずらし、$10.22999999543\ \mathrm{MHz}$ に設定してあるのです。相対的なずれは
$$
\frac{10.23 - 10.22999999543}{10.23} = 4.4647\times 10^{-10}
$$
で、$\times 86400\ \mathrm{s} = 38.6\ \mu\mathrm{s}$。上で手計算した $38.5\ \mu\mathrm{s}$ と 0.3 % 以内で一致します（差は地球の自転や扁平性を無視したことによります）。**軌道に上がったとき初めて正しい周波数になる時計**が、地上で作られて打ち上げられているわけです。なお、同じ $38\ \mu\mathrm{s}$ を、特殊相対論の効果と重力の効果を別々に立てて求めた計算が <Ref to="physics/physics-columns/famous-physicists#ex-gps" /> にあります。

<Figure caption="GPS 衛星の時計に生じる二つの効果と、その差し引き">
<Mermaid code={`flowchart TD
  A["衛星の原子時計（高度 20,200 km）"] --> B["特殊相対論：速度 3.87 km/s<br/>時計は 7.2 μs/日 遅れる"]
  A --> C["一般相対論：重力ポテンシャルが浅い<br/>時計は 45.7 μs/日 進む"]
  B --> D["差し引き +38.5 μs/日"]
  C --> D
  D --> E["未補正なら測位誤差 約 11 km/日"]
  D --> F["対策：基準周波数を打ち上げ前にずらす<br/>10.23 MHz → 10.22999999543 MHz"]`} />
</Figure>

<Remark id="rem-iss-slower">
<Ref to="thm-gps-clock" /> の符号の条件 $r = \tfrac{3}{2}R$ は、高度にすると $\tfrac{3}{2}\times 6371 - 6371 = 3186\ \mathrm{km}$ です。これより低い軌道では、速度の効果が重力の効果に勝ち、**時計は遅れます**。国際宇宙ステーション（高度約 $400\ \mathrm{km}$、$r = 6.771\times 10^{6}\ \mathrm{m}$）では
$$
4.435\times 10^{-3}\left(1.5696\times 10^{-7} - \frac{1.5}{6.771\times 10^{6}}\right) = -2.86\times 10^{-10},
$$
1 日あたり $-2.47\times 10^{-5}\ \mathrm{s} = -24.7\ \mu\mathrm{s}$、1 年で約 $0.009\ \mathrm{s}$ です。宇宙飛行士は地上の人よりわずかに若く帰ってきます——年に 100 分の 1 秒だけ。浦島太郎には遠く及びません。
</Remark>

## 5. MRI：原子核を歌わせて写真を撮る

### 5.1. 原子核はコマである

陽子（水素の原子核）はスピン $1/2$ を持ち、それに伴って磁気モーメントを持ちます。磁石を磁場の中に置くと向きが揃おうとしますが、量子力学的なスピンの場合、揃うのは「向き」ではなくエネルギー準位の分裂として現れます。

<Definition id="def-larmor" title="ゼーマン分裂とラーモア周波数">
磁気回転比 $\gamma$ を持つスピン $1/2$ の核を、静磁場 $B_0$ の中に置く。このとき核のエネルギー準位は二つに分裂し、その差は
$$
\Delta E = \gamma \hbar B_0
$$
となる（**ゼーマン分裂**）。<Ref to="def-planck" /> より、この 2 準位間の遷移を起こす電磁波の振動数は
$$
f_L = \frac{\Delta E}{h} = \frac{\gamma B_0}{2\pi}
$$
であり、これを**ラーモア周波数**という。陽子では $\gamma/2\pi = 42.577\ \mathrm{MHz/T}$ である。
</Definition>

<Proposition id="prop-larmor-values" title="臨床 MRI のラーモア周波数">
陽子の磁気回転比を $\gamma/2\pi = 42.577\ \mathrm{MHz/T}$ とすると、静磁場 $B_0 = 1.5\ \mathrm{T}$ および $3.0\ \mathrm{T}$ に対するラーモア周波数はそれぞれ
$$
f_L(1.5\ \mathrm{T}) = 63.87\ \mathrm{MHz}, \qquad f_L(3.0\ \mathrm{T}) = 127.7\ \mathrm{MHz}
$$
である。
</Proposition>

<Proof of="prop-larmor-values">
<Ref to="def-larmor" /> の式 $f_L = (\gamma/2\pi) B_0$ に代入するだけです。
$$
f_L(1.5\ \mathrm{T}) = 42.577\ \mathrm{MHz/T} \times 1.5\ \mathrm{T} = 63.866\ \mathrm{MHz},
$$
$$
f_L(3.0\ \mathrm{T}) = 42.577\ \mathrm{MHz/T} \times 3.0\ \mathrm{T} = 127.73\ \mathrm{MHz}.
$$
</Proof>

$63.9\ \mathrm{MHz}$ と $127.7\ \mathrm{MHz}$——日本の FM ラジオ放送は $76$〜$95\ \mathrm{MHz}$ ですから、MRI が扱っているのはまさに FM ラジオのすぐ隣の電波です。MRI 室が分厚い電波シールド（シールドルーム）に囲まれているのは、外のラジオ電波が画像にノイズとして写り込むのを防ぐためです。

### 5.2. 見えているのは 100 万分の 5

ここからが MRI の不思議なところです。ゼーマン分裂の大きさを室温の熱エネルギーと比べてみましょう。

<Proposition id="prop-polarization" title="核スピンの熱平衡偏極率">
磁場 $B_0$、温度 $T$ の熱平衡にあるスピン $1/2$ の核集団において、低エネルギー準位の数 $N_+$ と高エネルギー準位の数 $N_-$ の相対差（**偏極率**）は
$$
P = \frac{N_+ - N_-}{N_+ + N_-} = \tanh\!\left(\frac{\Delta E}{2k_B T}\right) \approx \frac{\Delta E}{2k_B T} = \frac{\gamma \hbar B_0}{2 k_B T} \qquad (\Delta E \ll k_B T)
$$
である。
</Proposition>

<Proof of="prop-polarization">
熱平衡ではボルツマン分布に従い、$N_-/N_+ = e^{-\Delta E/k_BT}$ です。$x = \Delta E/(2k_BT)$ とおくと $N_+ \propto e^{x}$、$N_- \propto e^{-x}$ と書けるので
$$
P = \frac{e^{x} - e^{-x}}{e^{x} + e^{-x}} = \tanh x.
$$
$|x| \ll 1$ では $\tanh x = x - x^3/3 + \cdots \approx x$ なので、$P \approx \Delta E/(2k_BT)$ となります。最後に <Ref to="def-larmor" /> の $\Delta E = \gamma\hbar B_0$ を代入すれば主張が得られます。
</Proof>

<Example id="ex-mri-spins" title="体温の 1.5 T で、偏りは 100 万個に 5 個">
$B_0 = 1.5\ \mathrm{T}$、体温 $T = 310\ \mathrm{K}$ とします。<Ref to="prop-larmor-values" /> の $f_L = 63.87\ \mathrm{MHz}$ を <Ref to="def-larmor" /> の $\Delta E = h f_L$ に入れると
$$
\Delta E = 6.626\times 10^{-34}\ \mathrm{J\,s} \times 6.387\times 10^{7}\ \mathrm{Hz} = 4.232\times 10^{-26}\ \mathrm{J}.
$$
一方、体温での熱エネルギーは
$$
k_B T = 1.3806\times 10^{-23} \times 310 = 4.280\times 10^{-21}\ \mathrm{J}.
$$
<Ref to="prop-polarization" /> より
$$
P \approx \frac{4.232\times 10^{-26}}{2\times 4.280\times 10^{-21}} = 4.94\times 10^{-6}.
$$
つまり **100 万個の陽子のうち、正味で偏っているのはたった約 5 個**です。残りの 99.9995 % は互いに打ち消し合っていて、信号には寄与しません。

それでも撮像できるのは、数が桁違いだからです。水 $1\ \mathrm{mm}^3$（質量 $1\ \mathrm{mg}$）に含まれる陽子の数は
$$
\frac{1\times 10^{-3}\ \mathrm{g}}{18\ \mathrm{g/mol}} \times 2 \times 6.022\times 10^{23} = 6.7\times 10^{19}\ \text{個}
$$
（$\mathrm{H_2O}$ 1 分子に水素が 2 個あるので $\times 2$ しました）。このうち正味で偏っているのは
$$
6.7\times 10^{19} \times 4.94\times 10^{-6} = 3.3\times 10^{14}\ \text{個}
$$
です。$1\ \mathrm{mm}^3$ あたり 330 兆個。これなら十分に強い信号になります。

なお、<Ref to="prop-polarization" /> の $P \propto B_0$ から、$3\ \mathrm{T}$ の装置は $1.5\ \mathrm{T}$ の 2 倍の偏極率を持ちます。高磁場化が進む理由がこれです（受信感度も周波数とともに上がるため、実際の信号対雑音比の改善はさらに大きくなります）。
</Example>

### 5.3. どこから来た信号かを、どうやって知るのか

ここまでで「体内の水素が電波を出す」ことは分かりました。しかし写真を撮るには、**どの位置から来た信号か**を区別しなければなりません。答えは、位置によってラーモア周波数を変えてしまうことです。

静磁場に、位置に比例して強さが変わる**傾斜磁場** $G$（単位 $\mathrm{T/m}$）を重ねます。すると位置 $x$ での共鳴周波数は <Ref to="def-larmor" /> より
$$
f(x) = \frac{\gamma}{2\pi}\left(B_0 + G x\right)
$$
となり、周波数と位置が 1 対 1 に対応します。受信した信号をフーリエ変換して周波数成分に分ければ、それがそのまま位置の分布になる——これが 1973 年に Lauterbur と Mansfield が独立に見出した MRI の中心的なアイデアで、2003 年のノーベル生理学・医学賞の対象になりました。

<Example id="ex-mri-encoding" title="傾斜磁場 10 mT/m のとき、1 mm は 426 Hz">
$G = 10\ \mathrm{mT/m} = 1.0\times 10^{-2}\ \mathrm{T/m}$ とします。位置が $\Delta x = 1\ \mathrm{mm} = 1.0\times 10^{-3}\ \mathrm{m}$ 違うと、共鳴周波数は
$$
\Delta f = \frac{\gamma}{2\pi} G \Delta x = 42.577\times 10^{6}\ \mathrm{Hz/T} \times 1.0\times 10^{-2}\ \mathrm{T/m} \times 1.0\times 10^{-3}\ \mathrm{m} = 425.8\ \mathrm{Hz}
$$
だけ違います。逆に言えば、$426\ \mathrm{Hz}$ の分解能で周波数を測れば $1\ \mathrm{mm}$ の分解能で位置が決まります。$63.87\ \mathrm{MHz}$ という搬送波に対する $426\ \mathrm{Hz}$ は相対値で $6.7\times 10^{-6}$——ここでも 100 万分の 1 の精度が要求されます。MRI 装置の静磁場の均一性が撮像領域全体で数 ppm に抑えられているのは、このためです。

ちなみに、受信帯域幅を $\pm 32\ \mathrm{kHz}$ とすると、視野の幅は
$$
\frac{2\times 32000\ \mathrm{Hz}}{42.577\times 10^{6}\times 1.0\times 10^{-2}\ \mathrm{Hz/m}} = \frac{64000}{4.258\times 10^{5}} = 0.150\ \mathrm{m} = 15\ \mathrm{cm}
$$
になります。頭部を撮るにはもう少し弱い傾斜磁場か広い帯域が要る、という具合に、装置の設定はすべてこの一つの式でつながっています。
</Example>

画像のコントラスト（脳の白質と灰白質が別の色に見えること）は、水素の数そのものよりも、励起されたスピンが元に戻る速さ——縦緩和時間 $T_1$ と横緩和時間 $T_2$——の組織による違いから来ています。これらは水分子の運動状態や周囲の巨大分子との相互作用で決まるため、MRI は「水素がどこにあるか」だけでなく「水素がどんな環境にいるか」を見ていることになります。

## 6. 三つに共通するもの

改めて並べてみます。

| | スマホ（半導体） | GPS | MRI |
|---|---|---|---|
| 中心となる理論 | 量子力学（バンド理論・トンネル効果） | 特殊・一般相対性理論 | 量子力学（核スピン）+ 統計力学 |
| エネルギー差 $\Delta E$ | バンドギャップ $\approx 1\ \mathrm{eV}$ | Cs-133 超微細構造 $\approx 4\times 10^{-5}\ \mathrm{eV}$ | ゼーマン分裂 $\approx 2.6\times 10^{-7}\ \mathrm{eV}$ |
| 対応する周波数 | $\approx 10^{14}\ \mathrm{Hz}$（赤外〜可視光） | $9.192631770\ \mathrm{GHz}$（マイクロ波） | $6.4\times 10^{7}\ \mathrm{Hz}$（VHF） |
| 決定的な数値 | $e^{-E_g/2k_BT}$、$e^{-2\kappa d}$ | $38.5\ \mu\mathrm{s}/$日 | 偏極率 $5\times 10^{-6}$ |
| 理論から実用まで | 1928 年（ブロッホ）→ 1947 年（トランジスタ） | 1915 年（一般相対論）→ 1978 年（GPS 初号機） | 1946 年（NMR）→ 1977 年（人体撮像） |

三つの列を貫いているのは、<Ref to="def-planck" /> の $E = hf$ です。半導体ではバンドギャップが光の色を決め、MRI では核スピンの分裂が電波の周波数を決め、そして GPS の原子時計では——ここが少し驚くところですが——**セシウム 133 原子の基底状態の超微細構造遷移の周波数が $9\,192\,631\,770\ \mathrm{Hz}$ である**ことが、1967 年以来「1 秒」の定義そのものになっています（2019 年の SI 改定後もこの定義は維持されています）。つまり私たちの時間の単位は、原子のエネルギー準位差を $E = hf$ で読み替えたものです。

もう一つの共通点は、**指数関数と桁の感覚**です。半導体の性能は $e^{-E_g/2k_BT}$ と $e^{-2\kappa d}$ という二つの指数関数のせめぎ合いで決まり、GPS は $10^{-10}$ の相対誤差を無視できず、MRI は $10^{-6}$ の偏りを拾い上げます。高校の教科書に出てくる「近似」や「桁の見積もり」は、こうした場面で毎日使われている実務の道具です。

<Aside type="note">
「量子力学は日常と無関係な世界の話」という説明をときどき見かけますが、正確ではありません。正しくは「量子力学の**帰結**は日常のあらゆるところにあるが、量子力学らしい**奇妙さ**（<Ref to="physics/physics-columns/schrodingers-cat#def-superposition" text="重ね合わせ" /> や測定の問題）は日常のスケールでは見えにくい」です。後者については [シュレーディンガーの猫](/physics/physics-columns/schrodingers-cat)（特に <Ref to="physics/physics-columns/schrodingers-cat#prop-decoherence" text="環境との相関が干渉を消す" />）を、決定論との関係については [ラプラスの悪魔](/physics/physics-columns/laplaces-demon)（<Ref to="physics/physics-columns/laplaces-demon#ex-pachinko" text="なぜ日常では量子効果が見えないのか" />）を参照してください。
</Aside>

なお、これだけ実用化が進んでいても、物理学が完成したわけではありません。半導体の性能限界、常温超伝導、量子コンピュータの誤り訂正、そして重力と量子論の統一（両者がともに効いてくるスケールについては <Ref to="physics/physics-columns/unsolved-problems-in-physics#def-planck-units" text="プランク単位" /> を見てください）——課題は [物理学の未解決問題](/physics/physics-columns/unsolved-problems-in-physics) にまとめてあります。今日のスマホが 1900 年の物理学者にとって驚異だったのと同じことが、2120 年にも起きているはずです。

## 7. 演習

<Exercise id="exr-green-led" difficulty="易">
緑色 LED の発光波長は約 $530\ \mathrm{nm}$ です。この LED の半導体のバンドギャップは何 eV ですか。また、そのバンドギャップを持つ材料に $1.5\ \mathrm{V}$ の乾電池 1 本を直接つないで光らせることはできますか。理由も述べてください。

<Solution>
<Ref to="prop-photon-wavelength" /> より $E_g = 1239.84/\lambda\,[\mathrm{nm}]$ なので
$$
E_g = \frac{1239.84}{530} = 2.34\ \mathrm{eV}.
$$

光らせられません。電子 1 個が電位差 $V$ を通過して得るエネルギーは $eV$ であり、$1.5\ \mathrm{V}$ の電池では $1.5\ \mathrm{eV}$ しか得られません。光子 1 個を出すには <Ref to="prop-photon-wavelength" /> の導出で使ったとおり $E_g = 2.34\ \mathrm{eV}$ が必要なので、$2.34\ \mathrm{V}$ 以上の順方向電圧が要ります。実際、緑色 LED の順方向電圧は $2.0$〜$3.0\ \mathrm{V}$ 程度で、赤色 LED（約 $1.8\ \mathrm{V}$）より高く、青色・白色 LED（約 $3.0$〜$3.4\ \mathrm{V}$）ではさらに高くなります。LED の順方向電圧が色によって違うのは、まさにバンドギャップが違うからです。
</Solution>
</Exercise>

<Exercise id="exr-geostationary" difficulty="標準">
静止衛星（軌道半径 $r = 4.2164\times 10^{7}\ \mathrm{m}$）に原子時計を載せたとき、地上の時計に対して 1 日あたり何マイクロ秒ずれますか。進むか遅れるかも答えてください。$GM/c^{2} = 4.435\times 10^{-3}\ \mathrm{m}$、$R_\oplus = 6.371\times 10^{6}\ \mathrm{m}$ を用いてください。

<Solution>
<Ref to="thm-gps-clock" /> をそのまま使います（静止衛星の軌道は円軌道で、離心率はほぼ $0$ なので仮定を満たします）。まず括弧の中を計算します。
$$
\frac{1}{R} = \frac{1}{6.371\times 10^{6}} = 1.5696\times 10^{-7}\ \mathrm{m^{-1}},
$$
$$
\frac{3}{2r} = \frac{1.5}{4.2164\times 10^{7}} = 3.5578\times 10^{-8}\ \mathrm{m^{-1}},
$$
$$
\frac{1}{R} - \frac{3}{2r} = 1.5696\times 10^{-7} - 3.5578\times 10^{-8} = 1.2138\times 10^{-7}\ \mathrm{m^{-1}}.
$$
これに $GM/c^{2}$ を掛けて
$$
\frac{GM}{c^{2}}\left(\frac{1}{R} - \frac{3}{2r}\right) = 4.435\times 10^{-3} \times 1.2138\times 10^{-7} = 5.384\times 10^{-10}.
$$
値が正なので**進み**ます（<Ref to="thm-gps-clock" /> の符号条件でも、$r = 4.2164\times 10^{7} > \tfrac{3}{2}R = 9.56\times 10^{6}$ なので正です）。1 日に直すと
$$
5.384\times 10^{-10}\times 86400\ \mathrm{s} = 4.65\times 10^{-5}\ \mathrm{s} = 46.5\ \mu\mathrm{s}.
$$
GPS 衛星の $38.5\ \mu\mathrm{s}$ より大きくなります。軌道が高いほど重力の効果（進み）が大きく、速度は遅くなるので特殊相対論の効果（遅れ）が小さくなるためです。
</Solution>
</Exercise>

<Exercise id="exr-mri-3t" difficulty="標準">
$B_0 = 3.0\ \mathrm{T}$ の MRI 装置について、次を求めてください。

(1) 体温 $T = 310\ \mathrm{K}$ での陽子の偏極率 $P$。
(2) $1\ \mathrm{mm}^{3}$ の水に含まれる陽子のうち、正味で偏っている個数。
(3) この装置で $0.5\ \mathrm{mm}$ の分解能を得るのに、傾斜磁場 $G = 20\ \mathrm{mT/m}$ のもとで必要な周波数分解能。

<Solution>
**(1)** <Ref to="prop-larmor-values" /> より $f_L(3.0\ \mathrm{T}) = 127.73\ \mathrm{MHz}$ なので、<Ref to="def-larmor" /> の $\Delta E = h f_L$ から
$$
\Delta E = 6.626\times 10^{-34}\times 1.2773\times 10^{8} = 8.464\times 10^{-26}\ \mathrm{J}.
$$
体温の熱エネルギーは $k_BT = 1.3806\times 10^{-23}\times 310 = 4.280\times 10^{-21}\ \mathrm{J}$ です。$\Delta E \ll k_BT$（比は約 $2\times 10^{-5}$）なので <Ref to="prop-polarization" /> の近似式が使えて
$$
P \approx \frac{8.464\times 10^{-26}}{2\times 4.280\times 10^{-21}} = 9.89\times 10^{-6}.
$$
約 $10^{-5}$、100 万個に約 10 個です。<Ref to="ex-mri-spins" /> の $1.5\ \mathrm{T}$ の場合のちょうど 2 倍で、<Ref to="prop-polarization" /> の $P \propto B_0$ と整合します。

**(2)** <Ref to="ex-mri-spins" /> と同じく $1\ \mathrm{mm}^{3}$ の水には $6.7\times 10^{19}$ 個の陽子があるので
$$
6.7\times 10^{19}\times 9.89\times 10^{-6} = 6.6\times 10^{14}\ \text{個}.
$$

**(3)** <Ref to="ex-mri-encoding" /> と同じ計算です。
$$
\Delta f = \frac{\gamma}{2\pi}G\,\Delta x = 42.577\times 10^{6}\times 2.0\times 10^{-2}\times 0.5\times 10^{-3} = 425.8\ \mathrm{Hz}.
$$
傾斜磁場を 2 倍にしたので、半分の距離が同じ周波数差に対応します。傾斜磁場を強くすれば分解能を上げられる、というのが MRI の基本的な設計原理です（実際には、傾斜磁場の急激な切り替えが末梢神経を刺激するため、上げられる限度があります）。
</Solution>
</Exercise>

## 参考文献

- S. M. Sze and K. K. Ng, *Physics of Semiconductor Devices*, 3rd ed., Wiley, 2007 — 第 1 章（結晶構造とバンド理論）、第 4 章（MOS キャパシタ）。真性キャリア密度や有効状態密度の数値はこの本の表に基づく。
- C. キッテル『固体物理学入門』（第 8 版）丸善出版、2005 — 第 7 章・第 8 章（エネルギーバンドと半導体結晶）。
- R. P. ファインマン、R. B. レイトン、M. サンズ『ファインマン物理学 V 量子力学』岩波書店 — トンネル効果と 2 準位系の章。
- N. Ashby, "Relativity in the Global Positioning System", *Living Reviews in Relativity* **6** (2003), article 1. [doi:10.12942/lrr-2003-1](https://doi.org/10.12942/lrr-2003-1) — GPS における相対論効果の標準的な総説。基準周波数のオフセットの議論を含む。
- E. M. Haacke, R. W. Brown, M. R. Thompson, R. Venkatesan, *Magnetic Resonance Imaging: Physical Principles and Sequence Design*, Wiley, 1999 — 核磁気共鳴の基礎、傾斜磁場による位置エンコード、緩和時間。
- BIPM, *The International System of Units (SI)*, 9th edition, 2019 — [https://www.bipm.org/en/publications/si-brochure](https://www.bipm.org/en/publications/si-brochure) — 秒の定義（セシウム 133 の超微細構造遷移周波数 $9\,192\,631\,770\ \mathrm{Hz}$）。
- NIST, *CODATA Internationally Recommended Values of the Fundamental Physical Constants* — [https://physics.nist.gov/cuu/Constants/](https://physics.nist.gov/cuu/Constants/) — 本文で用いた $h$、$k_B$、$m_e$、陽子の磁気回転比の値の出典。

## Appendix: 数値の出どころと注意

**GPS の計算で無視したもの。** <Ref to="thm-gps-clock" /> では地球の自転を無視しました。赤道上の地表は約 $465\ \mathrm{m/s}$ で動いているので、地上の時計にも $-v^2/2c^2 = -1.2\times 10^{-12}$（1 日あたり $-0.10\ \mu\mathrm{s}$）の遅れがあります。これを入れると衛星の相対的な進みは $0.1\ \mu\mathrm{s}$ ほど増えます。さらに地球は完全な球ではないため、実際の運用では重力ポテンシャルを球面調和関数で展開し、回転する地球に固定された座標系（ジオイド上で時計が同じ速さで進むように定義された系）を使います。厳密な扱いは Ashby の総説にあります。また、軌道離心率（GPS では $e \approx 0.02$ 以下）による周期的な変動は、受信機側で $-2\sqrt{GMa}\,e\sin E/c^2$ の形の補正項として処理されます。

**半導体の数値について。** 有効状態密度 $N_c, N_v$ は状態密度有効質量から計算される量で、文献によって数 % の差があります。<Ref to="ex-si-vs-ge" /> の計算がシリコンで実測値と 1.5 倍ずれたのは、この量の不確かさと、バンドギャップ自体が温度とともにわずかに縮む効果（Si では $300\ \mathrm{K}$ 付近で約 $-2.7\times 10^{-4}\ \mathrm{eV/K}$）を無視したためです。桁を見積もる目的には十分な精度です。トンネル透過率についても、<Ref to="prop-tunneling" /> は矩形障壁の理想化であり、実際のゲート絶縁膜では電界による障壁の傾き（Fowler–Nordheim トンネリング）や界面準位を考慮する必要があります。それでも「厚さに対して指数関数的」という結論は変わりません。

**MRI の偏極率について。** <Ref to="prop-polarization" /> は熱平衡を仮定しています。近年は、あらかじめ核スピンを人工的に強く偏極させてから体内に入れる**過分極**（hyperpolarization）技術があり、$^{129}$Xe や $^{13}$C で偏極率を数 % ——熱平衡の 1 万倍以上——まで高められます。肺の気道を直接撮像する過分極キセノン MRI などが臨床応用に入りつつあります。$10^{-6}$ という数字は「熱平衡ならば」という条件付きのものだ、と理解してください。
