# アインシュタインとファインマン：時空を曲げた男と、光を数え上げた男

> アインシュタインが時間と空間の常識をどう壊したかを光時計と E=mc² の計算で追い、ファインマンの量子電磁力学と、金庫破りやOリングの逸話に見る科学の作法を紹介する。
> https://rikai.mugen-giken.com/physics/physics-columns/famous-physicists

## 0. この記事の要点

- アインシュタインは「光の速さは誰から見ても同じ」というたった 1 行の要請から出発して、**時間の進み方が観測者ごとに違う**という結論を導きました。この記事では、その導出を中学校の三平方の定理だけで最後まで追いかけます。
- $E = mc^2$ は原子爆弾のための式ではありません。「箱の中で光を投げる」という思考実験だけで導ける、**エネルギーと質量が同じものだ**という主張です。
- 一般相対性理論は重力を「時空の曲がり」として書き直しました。この効果は空想ではなく、GPS 衛星の時計が 1 日に $38\ \mu\mathrm{s}$ ずれるという形で毎日測られています。
- ファインマンは量子電磁力学（QED）を、**すべての起こりうる道筋の「矢印」を足し算する**という計算法に整理しました。この理論の予言と実験は、電子の磁石の強さについて 12 桁一致します。物理学で最も精密に検証された理論です。
- ファインマンは金庫を破り、ボンゴを叩き、スペースシャトル事故の公聴会で氷水とゴム片を使って原因を実演しました。彼の逸話は面白いだけでなく、**「自分をだますな」という科学の作法**の見本になっています。

## 1. 動機：二人の「変な」天才

物理学者の名前を 2 人挙げてください、と言われたら、多くの人がアルベルト・アインシュタイン（1879–1955）とリチャード・P・ファインマン（1918–1988）を挙げるでしょう。舌を出した写真の老人と、ボンゴを叩くニューヨーク訛りの男。どちらも「天才」というより「変人」の顔で記憶されています。

しかし、この 2 人が有名なのは奇行のせいではありません。彼らは物理学の 2 つの土台、**相対性理論**と**量子電磁力学**を、それぞれほとんど一人で作り上げた人物です。しかも 2 人には共通点があります。どちらも「みんながそう言っているから」という理由を一度も受け入れなかったことです。

アインシュタインが疑ったのは、ニュートン以来 200 年間、誰も疑わなかった「時間は宇宙のどこでも同じ速さで進む」という前提でした。ファインマンが疑ったのは、当時の量子論の教科書に書かれていた「粒子は 1 本の道を通る」という前提でした。2 人とも、疑った前提を捨てた先に、はるかに単純で美しい世界を見つけました。

この記事では、逸話を楽しみながらも、**彼らが実際に何を計算したのか**を数式で追いかけます。式は出てきますが、使うのは三平方の定理と割り算だけです。

<Aside type="tip">
「天才は生まれつき違う」という話は、あまり役に立ちません。この記事で注目してほしいのは、2 人がどちらも「引っかかったところを、納得するまで放置しなかった」という一点です。アインシュタインは 16 歳のときの「光と同じ速さで走ったら光は止まって見えるのか」という疑問を、10 年間ほったらかしにしませんでした。
</Aside>

## 2. 準備：光の速さという奇妙な事実

議論の舞台を決めておきます。

<Definition id="def-inertial-frame" title="慣性系">
外から力を受けていない物体が、静止したままか、まっすぐ一定の速さで動き続けるように見える座標系を**慣性系**といいます。等速直線運動をしている電車の中、静止した地面の上（回転の効果を無視すれば）は、どちらも慣性系です。加速中の電車の中は慣性系ではありません。
</Definition>

日常の速度は足し算できます。時速 100 km の電車の中で、進行方向に時速 10 km でボールを投げれば、地上の人から見てボールは時速 110 km です。ところが、19 世紀末の実験（マイケルソンとモーリーの実験が有名です）は、光についてはこの足し算が成り立たないことを示しました。地球は太陽のまわりを秒速約 30 km で公転しているのに、進行方向に進む光と横向きに進む光の速さに違いが見つからなかったのです。

アインシュタインはこの実験結果を「説明」しようとせず、**そういうものだと認めて出発点に据える**という荒業に出ました。

<Axiom id="ax-relativity" title="特殊相対性理論の 2 つの原理">
1. **相対性原理**：すべての慣性系において、物理法則は同じ形をとる。どの慣性系が「本当に静止している」かを実験で決めることはできない。
2. **光速度不変の原理**：真空中の光の速さ $c$ は、光源の運動状態にも、観測者の運動状態にもよらず、すべての慣性系で同じ値 $c = 2.99792458 \times 10^8\ \mathrm{m/s}$ をとる。
</Axiom>

この 2 つは、素直に読むと矛盾しているように見えます。速さ $0.9c$ のロケットが前方に発射した光を、地上から見たら $1.9c$ になりそうなものです。<Ref to="ax-relativity" /> はそれを禁じます。矛盾を回避する道は 1 つしかありません。**速さ = 距離 ÷ 時間 の「時間」のほうを譲る**ことです。

## 3. アインシュタイン（1）：時間は伸びる

### 3.1. 光時計という道具

思考実験の道具を作ります。2 枚の鏡を距離 $L$ だけ離して向かい合わせに置き、その間で光を往復させます。光が 1 往復するたびに「カチッ」と 1 秒を刻む時計だと思ってください。これを**光時計**と呼びます。

<Figure caption="静止した光時計（左）と、右向きに速さ v で動く光時計（右）。動いている時計の中では、光は斜めの長い道を通らなければならない。">
<svg viewBox="0 0 660 250" width="100%" role="img" aria-label="静止した光時計と動く光時計の光路の比較">
  <g stroke="currentColor" strokeWidth="3" fill="none">
    <line x1="40" y1="40" x2="160" y2="40" />
    <line x1="40" y1="200" x2="160" y2="200" />
    <line x1="100" y1="200" x2="100" y2="40" strokeDasharray="6 6" stroke="var(--sl-color-accent)" />
  </g>
  <text x="100" y="228" textAnchor="middle" fontSize="15" fill="currentColor">静止：往復距離 2L</text>
  <text x="118" y="125" fontSize="15" fill="currentColor">L</text>
  <g stroke="currentColor" strokeWidth="3" fill="none">
    <line x1="300" y1="40" x2="400" y2="40" />
    <line x1="300" y1="200" x2="400" y2="200" />
    <line x1="420" y1="40" x2="520" y2="40" opacity="0.45" />
    <line x1="420" y1="200" x2="520" y2="200" opacity="0.45" />
    <line x1="540" y1="40" x2="640" y2="40" opacity="0.2" />
    <line x1="540" y1="200" x2="640" y2="200" opacity="0.2" />
  </g>
  <g stroke="var(--sl-color-accent)" strokeWidth="3" fill="none">
    <polyline points="350,200 470,40 590,200" />
  </g>
  <g fill="var(--sl-color-accent)">
    <polygon points="470,40 462,54 478,54" />
  </g>
  <text x="470" y="228" textAnchor="middle" fontSize="15" fill="currentColor">動く：往復距離は 2L より長い</text>
  <g stroke="currentColor" strokeWidth="2" fill="none">
    <line x1="350" y1="222" x2="586" y2="222" />
    <polygon points="590,222 578,217 578,227" fill="currentColor" stroke="none" />
  </g>
  <text x="470" y="20" textAnchor="middle" fontSize="15" fill="currentColor">速さ v で右へ</text>
</svg>
</Figure>

<Theorem id="thm-time-dilation" title="時間の遅れ">
慣性系 $S$ に対して速さ $v$（ただし $0 \le v < c$）で等速直線運動をしている時計を考える。その時計自身とともに動く慣性系で測った 2 つの事象の時間間隔を $\Delta \tau$（**固有時間**。<Ref to="physics/physics-columns/physics-in-everyday-life#def-proper-time" text="固有時" /> と同じ量である）とすると、$S$ で測った同じ 2 事象の時間間隔 $\Delta t$ は

$$
\Delta t = \gamma\, \Delta \tau, \qquad \gamma = \frac{1}{\sqrt{1 - v^2/c^2}}
$$

を満たす。$0 \le v < c$ のとき $\gamma \ge 1$ なので、$\Delta t \ge \Delta \tau$ である。すなわち、動いている時計は遅れて進むように見える。
</Theorem>

<Proof of="thm-time-dilation">
光時計を使って示します。鏡の間隔 $L$ は、運動方向（横向き）に垂直に取ります。

**（i）時計と一緒に動く立場。** この立場では光時計は静止しています。光は距離 $L$ を上り、$L$ を下るので、往復にかかる時間は
$$
\Delta \tau = \frac{2L}{c}
$$
です。ここで <Ref to="ax-relativity" /> の光速度不変の原理を使い、この慣性系でも光の速さが $c$ であることを認めています。

**（ii）$S$ の立場。** 同じ 1 往復にかかる時間を $\Delta t$ とします。この間に時計全体が横方向へ $v\,\Delta t$ だけ動くので、光は「行き」で横に $v\,\Delta t/2$、縦に $L$ 進む斜めの道を通ります。三平方の定理より、行きの道のりは
$$
\sqrt{L^2 + \left(\frac{v\,\Delta t}{2}\right)^2}
$$
です。帰りも同じ長さなので、往復の道のりはこの 2 倍です。ここで再び <Ref to="ax-relativity" /> を使います。$S$ でも光の速さは $c$ ですから、
$$
c\,\Delta t = 2\sqrt{L^2 + \left(\frac{v\,\Delta t}{2}\right)^2}.
$$

**（iii）解く。** 両辺を 2 乗すると $c^2 (\Delta t)^2 = 4L^2 + v^2 (\Delta t)^2$ となり、$\Delta t$ について整理して
$$
(\Delta t)^2 = \frac{4L^2}{c^2 - v^2}, \qquad
\Delta t = \frac{2L}{\sqrt{c^2 - v^2}} = \frac{2L}{c}\cdot\frac{1}{\sqrt{1 - v^2/c^2}}.
$$
（(iii) では $v < c$ より $c^2 - v^2 > 0$ であることを使い、正の平方根を取りました。）

(i) の $\Delta \tau = 2L/c$ を代入すれば $\Delta t = \gamma\, \Delta \tau$ が得られます。

**（iv）光時計以外でも同じか。** 同じことがゼンマイ時計でも心臓の鼓動でも成り立ちます。もし光時計だけが遅れて他の時計が遅れないなら、2 つの時計のずれを見るだけで「自分が本当に動いているか」を判定できてしまい、<Ref to="ax-relativity" /> の相対性原理に反するからです。遅れるのは時計という装置ではなく、時間そのものです。
</Proof>

$\gamma$ の値を見ておきましょう。新幹線の速さ $v = 300\ \mathrm{km/h} \approx 83\ \mathrm{m/s}$ では $v/c \approx 2.8 \times 10^{-7}$ で、$\gamma - 1 \approx 3.8 \times 10^{-14}$ です。1 年（$3.2\times 10^7$ 秒）乗り続けて、ようやく 1 マイクロ秒程度のずれ。日常で気づかないのは当然です。しかし $v = 0.99c$ なら $\gamma \approx 7.1$、$v = 0.999c$ なら $\gamma \approx 22.4$ と、$v$ が $c$ に近づくにつれて急激に大きくなります。

### 3.2. 空から降ってくる証拠

<Example id="ex-muon" title="ミュー粒子が地上まで届く理由">
宇宙線が大気の上層（高さ約 $15\ \mathrm{km}$）で作る**ミュー粒子**という素粒子は、静止した状態での平均寿命が $\tau_0 = 2.2\ \mu\mathrm{s} = 2.2\times 10^{-6}\ \mathrm{s}$ しかありません。

寿命の間に光速で進める距離は
$$
c\,\tau_0 = (3.0\times 10^8)\times(2.2\times 10^{-6}) \approx 6.6\times 10^{2}\ \mathrm{m} = 0.66\ \mathrm{km}
$$
です。$15\ \mathrm{km}$ の 4.4 % しか進めません。ニュートン力学なら、ミュー粒子は地上に到達できないはずです。

ところが実際には大量に地上で観測されます。<Ref to="thm-time-dilation" /> を使いましょう。$v = 0.995c$ のミュー粒子なら
$$
\gamma = \frac{1}{\sqrt{1 - 0.995^2}} = \frac{1}{\sqrt{1 - 0.990025}} = \frac{1}{\sqrt{0.009975}} = \frac{1}{0.09987} \approx 10.0
$$
です。地上の観測者から見た寿命は $\gamma\tau_0 \approx 22\ \mu\mathrm{s}$ になり、進める距離は
$$
0.995 \times (3.0\times 10^8) \times (22\times 10^{-6}) \approx 6.6\times 10^{3}\ \mathrm{m} = 6.6\ \mathrm{km}
$$
です。$\gamma$ 倍だけ伸びました。実際のミュー粒子は $\gamma$ が数十から数百のものも多く、それなら $15\ \mathrm{km}$ を余裕で通り抜けます。

これは 1940 年前後にロッシとホールが、ワシントン山（標高約 $1.9\ \mathrm{km}$）の山頂と麓でミュー粒子の数を数えて確かめました。山頂で数えた粒子のうち、麓まで届く割合が、時間の遅れを入れないと説明できないほど大きかったのです。
</Example>

<Remark id="rem-symmetry">
「動いている時計が遅れるなら、相手から見たらこちらが遅れる。矛盾ではないか」という疑問は正しい着眼点です。答えは「矛盾しない」です。<Ref to="thm-time-dilation" /> は「ある慣性系で測った 2 事象の時間差」を比べており、**どの事象を同時とみなすかが慣性系ごとに違う**ため、両者が互いに「相手が遅れている」と言っても食い違いは生じません。この「同時刻の相対性」については Appendix で扱います。
</Remark>

## 4. アインシュタイン（2）：$E = mc^2$ を箱の中で導く

1905 年、アインシュタインは特殊相対性理論の論文を出した数か月後に、わずか 3 ページの続報を書きました。そこに書かれていたのが、物理学で最も有名な式です。この式は原爆の設計図ではありません。**質量とエネルギーは別々のものではなく、同じ量を別の単位で測っただけだ**という主張です。

<Theorem id="thm-mass-energy" title="質量とエネルギーの等価性">
静止した物体がエネルギー $E$ を放出すると、その物体の質量は
$$
\Delta m = \frac{E}{c^2}
$$
だけ減少する。逆に、静止している質量 $m$ の物体は、その存在自体によって $E = mc^2$ のエネルギーを持つ。
</Theorem>

<Proof of="thm-mass-energy">
アインシュタインが 1906 年に与えた「箱と光」の議論を再現します。使う事実は次の 2 つだけです。

- 事実 A：エネルギー $E$ の光は、運動量 $p = E/c$ を運ぶ（マクスウェルの電磁気学から出る古典的な結果です）。
- 事実 B：外から力が働かない系では、重心は動かない（ニュートン力学の運動量保存と同じ内容です）。

**（i）設定。** 質量 $M$、長さ $L$ の閉じた箱が真空中に静止しています。時刻 0 に左の壁が右向きにエネルギー $E$ の光を放ち、それが右の壁に吸収されます。箱の外から力は働きません。

**（ii）箱の反跳。** 事実 A より光は右向きに運動量 $E/c$ を持ちます。全体の運動量は 0 のままでなければならないので、箱は左向きに運動量 $E/c$ を持ちます。箱の速さは
$$
v = \frac{E}{Mc}
$$
です（$v \ll c$ を仮定してニュートン力学の近似で書いています）。

**（iii）箱がずれる距離。** 光が箱を横切る時間は、$v$ が小さければおよそ $t = L/c$ です。この間に箱は左へ
$$
\Delta x = v t = \frac{E}{Mc}\cdot\frac{L}{c} = \frac{EL}{Mc^2}
$$
だけ動きます。光が右の壁に吸収されると運動量が打ち消されて箱は止まり、箱は最初より $\Delta x$ だけ左にずれた位置で静止します。

**（iv）矛盾を消す。** これは事実 B に反します。外力なしで箱全体（質量 $M$）が左へ $\Delta x$ 動いたのですから、重心が左へ動いてしまいました。重心を元の位置に保つ唯一の方法は、**光が質量 $m$ を左の壁から右の壁へ、つまり右へ距離 $L$ だけ運んだ**と考えることです。重心が動かない条件は
$$
m \cdot L = M \cdot \Delta x
$$
です。(iii) の $\Delta x$ を代入すると
$$
m L = M \cdot \frac{EL}{Mc^2} = \frac{EL}{c^2}, \qquad\text{よって}\qquad m = \frac{E}{c^2}.
$$

左の壁はエネルギー $E$ を失って質量 $E/c^2$ を失い、右の壁はそれを受け取りました。物体からエネルギーを取り出せば、その分だけ質量が減ります。
</Proof>

<Example id="ex-sun-mass-loss" title="太陽は 1 秒で何トン痩せるか">
太陽が放つ光の仕事率（光度）は $L_\odot = 3.85 \times 10^{26}\ \mathrm{W}$ です。<Ref to="thm-mass-energy" /> より、太陽が 1 秒あたりに失う質量は
$$
\frac{L_\odot}{c^2} = \frac{3.85\times10^{26}\ \mathrm{J/s}}{(3.00\times10^{8}\ \mathrm{m/s})^2}
= \frac{3.85\times10^{26}}{8.99\times10^{16}} \approx 4.3\times 10^{9}\ \mathrm{kg/s}
$$
です。**毎秒 430 万トン**。1 年では $1.4\times10^{17}\ \mathrm{kg}$ になります。

驚くべき量に見えますが、太陽の質量 $2.0\times10^{30}\ \mathrm{kg}$ と比べると、100 億年（$3.2\times10^{17}$ 秒）光り続けても失うのは
$$
\frac{4.3\times10^{9}\times 3.2\times10^{17}}{2.0\times10^{30}} \approx 6.9\times10^{-4}
$$
すなわち $0.07\ \%$ にすぎません。太陽が輝くのに使っているのは、水素からヘリウムへの核融合で生じるごくわずかな質量差なのです。
</Example>

## 5. アインシュタイン（3）：重力は時空の曲がり

特殊相対性理論には穴がありました。加速する系と重力を扱えないのです。アインシュタインは 1907 年に「生涯で最も幸福な着想」と呼ぶことになるアイデアに至ります。

<Axiom id="ax-equivalence" title="等価原理">
一様な重力場の中で静止している実験室と、重力のない空間で一定の加速度 $g$ で加速している実験室は、**内部で行うどんな力学実験によっても区別できない**。
</Axiom>

エレベーターが落下している間、中の人は無重量になります。逆に、宇宙空間で加速するロケットの中では床に押しつけられます。<Ref to="ax-equivalence" /> は「これは似ているのではなく、同じである」と宣言します。ここから、重力の正体は力ではなく**時空の幾何学的な曲がり**だ、という一般相対性理論（1915 年）が生まれました。物体は重力に引かれて曲がるのではなく、曲がった時空の中で「まっすぐ」進んでいるだけだ、というのです。

この理論の最初の劇的な検証が、1919 年の日食観測です。エディントンらの遠征隊が、太陽の縁をかすめる星の光の曲がりを測り、ニュートン理論の予言のおよそ 2 倍という一般相対論の値に近い結果を得ました。翌日、アインシュタインは世界的な有名人になりました。

<Proposition id="prop-gravitational-redshift" title="重力による時間の進みの差（弱い場での近似）">
重力ポテンシャルが $\Phi$ の場所に静止した時計は、$\Phi = 0$（無限遠）に静止した時計に比べて、
$$
\frac{d\tau}{dt} \approx 1 + \frac{\Phi}{c^2} \qquad (|\Phi| \ll c^2)
$$
の割合で進む。地表付近では $\Phi = -GM/r$ なので、高いところ（$r$ が大きい）にある時計ほど速く進む。高さの差 $h$ が地球半径に比べて小さいとき、進み方の差の割合は $gh/c^2$ である。
</Proposition>

<Proof of="prop-gravitational-redshift">
高さ $h$ の差がある 2 点で、下から上へ振動数 $\nu$ の光を送ります。

<Ref to="thm-mass-energy" /> より、エネルギー $E = h_{\mathrm{P}}\nu$（$h_{\mathrm{P}}$ はプランク定数。<Ref to="physics/physics-columns/physics-in-everyday-life#def-planck" text="プランクの関係式" />）の光は実効的に質量 $m = E/c^2$ を持ちます。この「質量」が重力に逆らって高さ $h$ を登れば、位置エネルギーの分だけエネルギーを失うはずです。失うエネルギーは
$$
\Delta E = m g h = \frac{E}{c^2}\, g h .
$$
したがって上に着いたときのエネルギーは $E' = E(1 - gh/c^2)$ となり、振動数は
$$
\frac{\nu'}{\nu} = 1 - \frac{gh}{c^2}
$$
に下がります（**重力赤方偏移**）。

ここが要点です。下の時計が 1 秒間に $\nu$ 回振動する光を送り出したのに、上で受け取ると $\nu'$ 回しか届きません。上の観測者にとって「下の時計は 1 秒あたり $\nu' < \nu$ 回しか刻んでいない」、つまり**下の時計は遅れている**ことになります。逆に言えば、上の時計のほうが $gh/c^2$ の割合だけ速く進みます。一様重力場では $\Phi = gh$ と書けるので、これは主張の $\Phi/c^2$ に一致します。

（この議論は光のエネルギー損失を古典的に見積もる略式のもので、係数まで正しい結果を与えますが、厳密には一般相対論の計量から導くべきものです。1959 年のパウンドとレプカによるハーバード大学の塔（高さ $22.5\ \mathrm{m}$）での実験が、この式を精度よく確かめました。）
</Proof>

<Example id="ex-gps" title="GPS 衛星の時計は 1 日に何マイクロ秒ずれるか">
GPS 衛星は地球中心から $r_s = 2.66\times10^{7}\ \mathrm{m}$ の円軌道を回っています。地表は $r_E = 6.37\times10^{6}\ \mathrm{m}$ です。地球の $GM = 3.986\times10^{14}\ \mathrm{m^3/s^2}$、$c^2 = 8.988\times10^{16}\ \mathrm{m^2/s^2}$ を使います。

**（a）重力の効果**（<Ref to="prop-gravitational-redshift" />）。衛星は地表より高いので速く進みます。差の割合は
$$
\frac{GM}{c^2}\left(\frac{1}{r_E} - \frac{1}{r_s}\right)
= 4.435\times10^{-3}\times\left(1.570\times10^{-7} - 3.765\times10^{-8}\right)
$$
$$
= 4.435\times10^{-3}\times 1.193\times10^{-7} = 5.29\times10^{-10}.
$$
1 日 $= 86400\ \mathrm{s}$ をかけると $4.57\times10^{-5}\ \mathrm{s} = 45.7\ \mu\mathrm{s}$ **速く**進みます。

**（b）速度の効果**（<Ref to="thm-time-dilation" />）。円軌道の速さは $v = \sqrt{GM/r_s} = \sqrt{1.501\times10^{7}} = 3.87\times10^{3}\ \mathrm{m/s}$ です。$v \ll c$ なので $\gamma \approx 1 + v^2/(2c^2)$ と近似でき、遅れの割合は
$$
\frac{v^2}{2c^2} = \frac{1.501\times10^{7}}{2\times 8.988\times10^{16}} = 8.35\times10^{-11}.
$$
1 日で $7.2\ \mu\mathrm{s}$ **遅く**進みます。

**（c）合計。** $45.7 - 7.2 = 38.5\ \mu\mathrm{s}$、衛星の時計は 1 日に約 $38\ \mu\mathrm{s}$ 速く進みます。これを補正しないと、位置の誤差は 1 日あたり
$$
c \times 38.5\times10^{-6}\ \mathrm{s} = 3.00\times10^{8}\times3.85\times10^{-5} \approx 1.2\times10^{4}\ \mathrm{m} = 12\ \mathrm{km}
$$
に達します。カーナビは 1 日で 12 km ずれる計算です。実際の GPS 衛星は、この分だけ最初から周波数をずらした時計を積んでいます。相対性理論は、あなたのスマホの中で毎日使われています（[日常の中の物理](/physics/physics-columns/physics-in-everyday-life) の <Ref to="physics/physics-columns/physics-in-everyday-life#thm-gps-clock" text="軌道上の時計と地上の時計の進み方の差" /> と <Ref to="physics/physics-columns/physics-in-everyday-life#ex-gps-drift" text="GPS 衛星の数値" /> も参照してください）。
</Example>

## 6. ファインマン（1）：光と電子のふしぎな理論

### 6.1. 無限大との戦い

場面を 1940 年代に移します。当時の物理学者を悩ませていたのは、電子と光（電磁場）の相互作用を量子力学で正確に計算しようとすると、答えが**無限大**になってしまうという病でした。電子が自分の作った電磁場と相互作用する効果を計算すると発散するのです。

この問題を解決した 3 人が、ジュリアン・シュウィンガー、朝永振一郎、そしてリチャード・ファインマンです。3 人は 1965 年にノーベル物理学賞を共同受賞しました。方法は「**繰り込み**」と呼ばれます。乱暴に言えば、「観測できない裸の電子の質量と電荷」に無限大を押し込め、実験で測れる量だけで理論を書き直す、という手続きです。

シュウィンガーと朝永の方法は数式的に厳密でしたが、計算は苦行でした。ファインマンが与えたのは、**絵を描いて計算する**方法です。

### 6.2. すべての道を足す

ファインマンの出発点は、1948 年に定式化した**経路積分**の考え方です。

<Definition id="def-amplitude" title="確率振幅と経路の和">
量子力学では、ある出来事（たとえば「点 $A$ を出た電子が点 $B$ に到達する」）に対して、**確率振幅**と呼ばれる複素数 $z$ が対応します。観測される確率は $|z|^2$ です（<Ref to="physics/physics-columns/schrodingers-cat#def-born" text="ボルン則" />）。

出来事が複数の道筋で起こりうるとき、全体の振幅は各道筋の振幅の**和**です。
$$
z_{\text{全体}} = z_1 + z_2 + \cdots, \qquad P = |z_{\text{全体}}|^2 .
$$
複素数は大きさと向きを持つ「矢印」だと思ってください。振幅を足すとは、矢印を継ぎ足していくことです。
</Definition>

確率ではなく矢印を足す、という一点がすべてを変えます。矢印は向きが逆なら打ち消し合うからです。

<Example id="ex-double-slit" title="二重スリットを矢印の足し算で読む">
2 本のスリットを通って、電子がスクリーン上の点 $P$ に届くとします。片方のスリットだけを開けたときの振幅を、大きさをそろえて $z_1 = e^{i\varphi_1}$、$z_2 = e^{i\varphi_2}$ と書きます。

片方だけ開けたときの確率は $|z_1|^2 = 1$、$|z_2|^2 = 1$ で、素朴に足すと 2 です。ところが両方開けると <Ref to="def-amplitude" /> より
$$
P = |e^{i\varphi_1} + e^{i\varphi_2}|^2
= (e^{i\varphi_1} + e^{i\varphi_2})(e^{-i\varphi_1} + e^{-i\varphi_2})
= 2 + e^{i(\varphi_1-\varphi_2)} + e^{-i(\varphi_1-\varphi_2)}
$$
$$
= 2 + 2\cos(\varphi_1 - \varphi_2).
$$
位相差 $\varphi_1 - \varphi_2$ はスリットから $P$ までの距離の差で決まります。距離差がちょうど波長の整数倍なら $\cos = 1$ で $P = 4$、半波長ずれていれば $\cos = -1$ で $P = 0$ です。

**確率の和 2 より大きい場所（明線）と、まったく届かない場所（暗線）ができる。** これが干渉縞です。「電子はどちらのスリットを通ったか」を問うと縞が消えるという有名な話は、[シュレーディンガーの猫](/physics/physics-columns/schrodingers-cat) の記事で扱う <Ref to="physics/physics-columns/schrodingers-cat#rem-measurement-problem" text="観測問題" /> につながります。
</Example>

### 6.3. ファインマン図

ファインマンは、電子と光子の相互作用に含まれる無数の「道筋」を、線と点の絵で整理しました。

<Figure caption="2 個の電子が光子を 1 個やりとりして散乱する、最も簡単なファインマン図。直線が電子、波線が光子、線が交わる黒丸が「電子が光子を放出・吸収する」相互作用の点（頂点）。">
<svg viewBox="0 0 560 260" width="100%" role="img" aria-label="電子同士が光子を交換するファインマン図">
  <g stroke="currentColor" strokeWidth="2.5" fill="none">
    <line x1="60" y1="30" x2="230" y2="80" />
    <line x1="230" y1="80" x2="400" y2="30" />
    <line x1="60" y1="230" x2="230" y2="180" />
    <line x1="230" y1="180" x2="400" y2="230" />
  </g>
  <g stroke="var(--sl-color-accent)" strokeWidth="2.5" fill="none">
    <path d="M230 80 q 16 15 0 25 q -16 15 0 25 q 16 15 0 25 q -16 15 0 25" />
  </g>
  <g fill="currentColor">
    <circle cx="230" cy="80" r="6" />
    <circle cx="230" cy="180" r="6" />
  </g>
  <text x="66" y="22" fontSize="16" fill="currentColor">e⁻</text>
  <text x="66" y="252" fontSize="16" fill="currentColor">e⁻</text>
  <text x="396" y="22" fontSize="16" fill="currentColor">e⁻</text>
  <text x="396" y="252" fontSize="16" fill="currentColor">e⁻</text>
  <text x="248" y="135" fontSize="16" fill="var(--sl-color-accent)">γ（光子）</text>
  <g stroke="currentColor" strokeWidth="2" fill="none" opacity="0.6">
    <line x1="440" y1="130" x2="530" y2="130" />
    <polygon points="536,130 524,125 524,135" fill="currentColor" stroke="none" />
  </g>
  <text x="440" y="118" fontSize="14" fill="currentColor" opacity="0.8">時間</text>
</svg>
</Figure>

規則はこうです。図の各要素に決まった因子を対応させ、掛け合わせると、その道筋の振幅が得られます。そして**すべての図を足す**（<Ref to="def-amplitude" />）。頂点 1 個ごとに、振幅には結合定数 $e$ に比例する因子がつきます。

<Definition id="def-fine-structure" title="微細構造定数">
電磁相互作用の強さを表す無次元の定数
$$
\alpha = \frac{e^2}{4\pi\varepsilon_0 \hbar c} = \frac{1}{137.036\ldots} \approx 0.0072973
$$
を**微細構造定数**といいます。頂点が 2 個増えるごとに、振幅の寄与はおおよそ $\alpha$ 倍だけ小さくなります。
</Definition>

$\alpha$ が 1 より十分小さいことが、QED を「計算できる理論」にしています。図を複雑にするほど寄与が小さくなるので、簡単な図から順に足していけば、必要な精度で打ち切れるのです。ファインマンはこの定数について、どの理論からも導けない「悪魔の数」だと繰り返し語りました。なぜ 137 なのかは、いまも未解決です（[物理学の未解決問題](/physics/physics-columns/unsolved-problems-in-physics) を参照してください）。

### 6.4. 12 桁の一致

QED がどれほど正確かを、具体的な数で見ます。電子は小さな磁石として振る舞い、その強さは $g$ 因子という量で測られます。

<Proposition id="prop-schwinger" title="電子の異常磁気モーメント">
ディラック方程式（相対論的な電子の方程式）だけから予言される値は $g = 2$、すなわち $g/2 = 1$ である。しかし QED では、電子が光子を放出して吸収し直す図の寄与によって
$$
\frac{g}{2} = 1 + \frac{\alpha}{2\pi} + O(\alpha^2)
$$
となる。$\alpha/(2\pi)$ の項はシュウィンガーが 1948 年に計算した。
</Proposition>

<Remark id="rem-no-proof">
<Ref to="prop-schwinger" /> の証明には QED の摂動計算（1 ループ積分の繰り込み）が必要で、この記事の範囲を超えます。ファインマン『光と物質のふしぎな理論』とファインマン図の計算については参考文献を見てください。ここでは結果の数値だけを確かめます。
</Remark>

<Example id="ex-g-minus-2" title="人類が最も正確に予言した数">
<Ref to="prop-schwinger" /> の第 1 補正を計算します。<Ref to="def-fine-structure" /> の $\alpha = 1/137.036$ を使うと
$$
\frac{\alpha}{2\pi} = \frac{1}{137.036 \times 6.28319} = \frac{1}{861.02} = 0.00116141 .
$$
したがって $g/2 \approx 1.00116141$ です。

一方、2023 年にファンらが報告した測定値は
$$
\frac{g}{2} = 1.00115965218059 \pm 0.00000000000013
$$
です。シュウィンガーの 1 項だけで、$0.00116141$ と $0.00115965$、**上から 3 桁が合っています**。ディラックの $g/2 = 1$ から出発すると、$1.00116$ という値の小数第 3 位以下は「電子が絶えず光子を出し入れしている」ことの効果そのものです。

$\alpha^2$、$\alpha^3$、$\alpha^4$、$\alpha^5$ の項まで（数千個のファインマン図を含みます）計算した理論値は、上の実験値と有効数字で 12 桁にわたって一致します。ファインマンはこの精度を「ロサンゼルスからニューヨークまでの距離を、髪の毛 1 本の太さの誤差で言い当てるようなものだ」とたとえました。
</Example>

## 7. ファインマン（2）：金庫とボンゴと O リング

ファインマンの名を一般に知らしめたのは、QED ではなく逸話集『ご冗談でしょう、ファインマンさん』でした。ここでは 4 つだけ紹介します。どれも、笑い話の下に彼の科学観が透けて見えます。

**金庫破り。** 第二次大戦中、ファインマンは原爆開発のロスアラモス研究所にいました。彼は暇つぶしに、機密書類の入った同僚のキャビネットの錠を次々と開けてみせます。特殊技能があったわけではありません。多くの人がダイヤルを工場出荷時の初期値のままにしていたこと、数学者は $\pi$ や $e$ の数字を暗証番号に使いがちなこと、施錠前のダイヤル位置から数字が推定できることを、彼が観察して試したからです。これは「セキュリティは人間の習慣が最も弱い」という現代にも通じる指摘でした。

**ボンゴと絵。** ファインマンはブラジル滞在中に打楽器に熱中し、カーニバルのパレードに参加するほどになりました。50 代では「科学者にも芸術がわかることを証明する」と称して友人の画家と技能を交換し、絵を売れるところまで上達しています。彼にとって、物理も打楽器も絵も、「やってみて、うまくいくか確かめる」という同じ活動でした。

**ノーベル賞の電話。** 1965 年、受賞を告げる電話は未明にかかってきました。ファインマンはまず「もっと常識的な時間にかけ直してくれ」と応じたと伝えられます。彼は賞や肩書きが研究の邪魔になると考えており、受賞を辞退することも一時は検討しました。

**O リングと氷水。** 1986 年、スペースシャトル「チャレンジャー」の爆発事故を調査する大統領委員会に、彼は病身を押して加わりました。原因は固体ロケットブースターの接合部を密封するゴム製 O リングが、打ち上げ日の低温（約 $-0.6\ ^\circ\mathrm{C}$）で弾性を失っていたことでした。彼はテレビ中継された公聴会で、コップの氷水に O リングの試料を沈め、取り出して見せました。ゴムは押しつぶされた形のまま、すぐに元に戻りませんでした。数百ページの報告書より、この 1 分の実演のほうが世界を納得させました。

事故調査報告書に付した個人所見の末尾で、彼は次の趣旨のことを書いています。**自然は広報活動よりも優先されなければならない。技術がうまくいくためには、現実が世間体に勝たなければならない。自然はごまかせないからだ。**

<Aside type="note">
ファインマンが講義でよく言った戒めに、「第一の原則は、自分自身をだましてはいけないということだ。そして自分は最もだましやすい相手である」というものがあります（1974 年のカリフォルニア工科大学卒業式講演「カーゴ・カルト・サイエンス」）。金庫破りも O リングも、この原則の実践例として読めます。
</Aside>

## 8. 二人に共通するもの

アインシュタインとファインマンは、性格も時代も研究対象も違います。共通しているのは、**「わかる」の基準が異様に高かった**ことです。

アインシュタインは、マクスウェル方程式が正しいことは知っていましたが、「では光と一緒に走ったら何が見えるのか」に答えられないことに耐えられませんでした。ファインマンは、量子力学の計算規則を使えることは知っていましたが、「なぜその規則になるのか」を自分の言葉で言い直せるまで満足しませんでした。

もう 1 つの共通点は、**答えを予言に変換した**ことです。アインシュタインは「時空が曲がる」で終わらせず、日食で星の位置が $1.75$ 秒角ずれると数を出しました。ファインマンは「電子は光子を出し入れする」で終わらせず、$g/2$ の小数第 12 位まで数を出しました。数を出せば、間違っていれば潰されます。そこに賭けるのが物理学です。

なお、アインシュタインは自分が土台を作った量子力学の確率解釈を、生涯受け入れませんでした。ボルンへの手紙の「神はサイコロを振らない」という一節が有名です。一方、ファインマンは確率解釈を出発点として受け入れ、その上で計算法を作りました。決定論をめぐるこの対立は、[ラプラスの悪魔と決定論](/physics/physics-columns/laplaces-demon) の記事（<Ref to="physics/physics-columns/laplaces-demon#def-demon" text="ラプラスの悪魔" /> と <Ref to="physics/physics-columns/laplaces-demon#thm-kennard" text="ケナードの不確定性関係" />）と、[マクスウェルの悪魔](/physics/physics-columns/maxwells-demon) で扱った情報と物理の関係（<Ref to="physics/physics-columns/maxwells-demon#thm-landauer" text="ランダウアーの原理" />）につながっていきます。

## 9. 演習

<Exercise id="exr-gamma-two" difficulty="易">
$\gamma = 2$ となる速さ $v$ を求めてください。またそのとき、地上で 1 年が経過する間に、宇宙船内では何か月が経過しますか。
<Solution>
$\gamma = 1/\sqrt{1 - v^2/c^2} = 2$ より $\sqrt{1 - v^2/c^2} = 1/2$、両辺を 2 乗して $1 - v^2/c^2 = 1/4$、すなわち $v^2/c^2 = 3/4$ です。よって
$$
v = \frac{\sqrt{3}}{2}c \approx 0.866\,c \approx 2.60\times10^{8}\ \mathrm{m/s} .
$$

<Ref to="thm-time-dilation" /> より $\Delta t = \gamma\,\Delta\tau$ なので、地上の $\Delta t = 12$ か月に対して船内の固有時間は $\Delta\tau = \Delta t/\gamma = 6$ か月です。
</Solution>
</Exercise>

<Exercise id="exr-one-gram" difficulty="標準">
質量 $1\ \mathrm{g}$ が完全にエネルギーに変わったとすると、何ジュールになりますか。また、それは TNT 火薬何トン分に相当しますか。TNT 1 トンは $4.18\times10^{9}\ \mathrm{J}$ とします。
<Solution>
<Ref to="thm-mass-energy" /> より
$$
E = mc^2 = (1.00\times10^{-3}\ \mathrm{kg})\times(3.00\times10^{8}\ \mathrm{m/s})^2
= 1.00\times10^{-3}\times 9.00\times10^{16} = 9.00\times10^{13}\ \mathrm{J}.
$$

TNT 換算では
$$
\frac{9.00\times10^{13}}{4.18\times10^{9}} = 2.15\times10^{4}\ \text{トン} = 21.5\ \text{キロトン}
$$
です。広島に投下された原爆の出力が約 15 キロトンと見積もられていることと同程度の桁になります。

なお、実際の核分裂で質量に変わるのは燃料のうちおよそ $0.1\ \%$ 程度なので、$1\ \mathrm{g}$ の質量欠損を得るには数キログラムの核燃料が要ります。「$1\ \mathrm{g}$ の物質を用意すればこのエネルギーが取り出せる」わけではない点に注意してください。
</Solution>
</Exercise>

<Exercise id="exr-skytree" difficulty="標準">
東京スカイツリーの展望台（高さ $h = 450\ \mathrm{m}$）に置いた時計は、地上に置いた時計に比べて 1 日あたり何ナノ秒だけ速く進みますか。$g = 9.8\ \mathrm{m/s^2}$、$c = 3.00\times10^{8}\ \mathrm{m/s}$、1 日 $= 86400\ \mathrm{s}$ とします。
<Solution>
<Ref to="prop-gravitational-redshift" /> より、進み方の差の割合は
$$
\frac{gh}{c^2} = \frac{9.8 \times 450}{9.00\times10^{16}} = \frac{4410}{9.00\times10^{16}} = 4.90\times10^{-14}.
$$

1 日あたりでは
$$
4.90\times10^{-14} \times 86400 = 4.23\times10^{-9}\ \mathrm{s} \approx 4.2\ \mathrm{ns}
$$
です。

これは実際に測られています。香取秀俊らのグループは 2020 年、可搬型の光格子時計 2 台をスカイツリーの地上階と展望台に置き、この $10^{-14}$ 台の差を直接検出しました。一般相対性理論の検証が、宇宙ではなく東京の観光施設でできる時代になっています。
</Solution>
</Exercise>

<Exercise id="exr-alpha-order" difficulty="難">
<Ref to="prop-schwinger" /> の次の補正項は、大まかに $(\alpha/2\pi)^2$ の程度の大きさだと見積もれます。この量を計算し、$g/2$ の値の小数第何位あたりに効いてくるかを述べてください。また、$\alpha$ がもし $1$ より大きい定数だったら QED の計算にどんな困難が生じるかを説明してください。
<Solution>
<Ref to="ex-g-minus-2" /> で求めた $\alpha/(2\pi) = 1.161\times10^{-3}$ を 2 乗すると
$$
\left(\frac{\alpha}{2\pi}\right)^2 = (1.161\times10^{-3})^2 = 1.35\times10^{-6}
$$
です。$g/2 = 1.00115965\ldots$ の小数第 6 位、つまり $1.00115\underline{9}65$ の下線のあたりに効いてきます。実際、$\alpha^2$ の項の係数は $1$ ではなく約 $-0.328$（$(\alpha/\pi)^2$ の係数として）なので、寄与の大きさは $10^{-6}$ よりやや小さくなりますが、桁の見積もりとしては妥当です。

$\alpha > 1$ だった場合、頂点を 2 個増やすたびに寄与が**大きく**なります。<Ref to="def-fine-structure" /> の直後で述べたとおり、QED の計算は「複雑な図ほど寄与が小さい」ことを前提に、簡単な図から順に足して途中で打ち切る方法（摂動論）です。$\alpha > 1$ ではこの級数が発散してしまい、何項まで計算しても近似になりません。実際、強い相互作用（量子色力学）では低エネルギーで結合が $1$ 程度以上になり、このためファインマン図を数個足す方法が使えず、格子上の数値計算などの別の手法が必要になります。
</Solution>
</Exercise>

## 参考文献

- A. Einstein, "Zur Elektrodynamik bewegter Körper", *Annalen der Physik* **17** (1905), 891–921. — 特殊相対性理論の原論文。<Ref to="thm-time-dilation" /> の内容が §4 にあります。
- A. Einstein, "Ist die Trägheit eines Körpers von seinem Energieinhalt abhängig?", *Annalen der Physik* **18** (1905), 639–641. — $E = mc^2$ を導いた 3 ページの論文。
- R. P. ファインマン『光と物質のふしぎな理論 — 私の量子電磁力学』釜江常好・大貫昌子訳、岩波現代文庫（原著 *QED: The Strange Theory of Light and Matter*, Princeton University Press, 1985）. — 数式をほとんど使わずに、矢印の足し算として QED を説明した一般向け講義録。
- R. P. ファインマン『ご冗談でしょう、ファインマンさん』大貫昌子訳、岩波現代文庫. — 金庫破り、ブラジルのボンゴ、ノーベル賞の逸話はこの本にあります。
- R. P. ファインマン、R. B. レイトン、M. サンズ『ファインマン物理学』岩波書店. — 第 I 巻（力学）に光時計と相対論、第 V 巻（量子力学）に二重スリットの議論があります。
- M. Takamoto, I. Ushijima, N. Ohmae, et al., "Test of general relativity by a pair of transportable optical lattice clocks", *Nature Photonics* **14** (2020), 411–415. [DOI: 10.1038/s41566-020-0619-8](https://doi.org/10.1038/s41566-020-0619-8) — 東京スカイツリーでの重力赤方偏移の検証。
- X. Fan, T. G. Myers, B. A. D. Sukra, G. Gabrielse, "Measurement of the Electron Magnetic Moment", *Physical Review Letters* **130** (2023), 071801. [DOI: 10.1103/PhysRevLett.130.071801](https://doi.org/10.1103/PhysRevLett.130.071801) — <Ref to="ex-g-minus-2" /> で使った $g/2$ の測定値の出典。

## Appendix: 同時刻の相対性

**「動いている時計が遅れる」が対称であっても矛盾しない理由を、もう少し丁寧に見ておきます。**

長さ $2\ell$ の電車の中央から、前と後ろに向かって同時に光を発射します。電車に乗っている人にとって、光は前後どちらにも距離 $\ell$ を進むので、前の壁と後ろの壁に**同時に**届きます。

ところがホームに立つ人から見ると、電車は前へ動いています。後ろの壁は光に向かって近づき、前の壁は光から逃げていきます。<Ref to="ax-relativity" /> により、ホームの人にとっても光の速さは前後とも $c$ です。したがって、光は**後ろの壁に先に届く**ことになります。

同じ 2 つの出来事（前の壁に光が届く／後ろの壁に光が届く）が、ある慣性系では同時、別の慣性系では同時でない。これが**同時刻の相対性**です。

**この事実が <Ref to="rem-symmetry" /> の疑問を解消します。** 「A の時計と B の時計を比べる」には、両者を同時刻に読む必要があります。ところが「同時刻」の意味が慣性系ごとに違うのですから、A が「B の時計は遅れている」と言い、B が「A の時計は遅れている」と言っても、2 人は違う組み合わせの事象を比べているだけで、直接の矛盾は生じません。

矛盾が本当に問題になるのは、2 つの時計を同じ場所に持ってきて並べたときだけです。これが双子のパラドックスです。地球に残った双子と、ロケットで往復した双子を再会させると、確かにロケットの双子のほうが若くなっています。対称性が破れる理由は、ロケットの双子は途中で折り返すために**加速**しており、ずっと同じ慣性系にとどまっていないからです。<Ref to="thm-time-dilation" /> が適用できるのは慣性系どうしの比較だけであり、折り返しの前後でロケットの双子が使う慣性系が切り替わる点に、非対称性の起源があります。
