# ハドロンとクォーク模型：保存則・アイソスピン・SU(3) からクォークの存在まで

> 強い相互作用の保存則と量子数、アイソスピンの合成による Δ 共鳴の断面積比、フレーバー SU(3) の既約分解、クォーク模型による磁気モーメント比と色の必要性、崩壊幅・断面積の運動学を証明つきで導く。
> https://rikai.mugen-giken.com/physics/particle-physics/hadrons-quark-model

## 0. この記事の要点

陽子や中性子のほかにも、加速器や宇宙線の実験では数百種類もの粒子が見つかりました。この記事は、それらがばらばらの粒子ではなく、少数の部品（クォーク）の組合せとして整理できることを、保存則・対称性・簡単な計算で順に確かめていく話です。読み終えると、ある反応が起こるかどうかを量子数の足し算で判定でき、断面積の比や磁気モーメントの比を計算で予言できるようになります。次の箇条書きの用語は本文で一つずつ導入するので、最初からすべて分かる必要はありません。

- ハドロン（強い相互作用をする粒子。陽子・中性子・パイ中間子など）は、バリオン数（陽子や中性子の仲間を数える量）・ストレンジネス（$K$ 中間子や $\Lambda$ などが持つ「奇妙さ」の量子数）・電荷などの量子数で分類され、強い相互作用は **アイソスピン** $I$（陽子と中性子を同じ粒子の別の状態とみなす量）とストレンジネス $S$ を保存し、弱い相互作用は $S$ を保存しません。この違いが寿命の桁（$10^{-23}\,\mathrm s$ と $10^{-10}\,\mathrm s$）を分けます。
- アイソスピンの代数は角運動量と同じ $\mathfrak{su}(2)$ です。合成則だけから、$\Delta(1232)$ 共鳴の断面積比 $\sigma(\pi^+p):\sigma(\pi^-p)=3:1$ が出ます。
- アイソスピンを $\mathrm{SU}(3)$ に拡張したフレーバー $\mathrm{SU}(3)$ では、$\mathbf 3\otimes\bar{\mathbf 3}=\mathbf 8\oplus\mathbf 1$（メソン八重項と一重項）、$\mathbf 3\otimes\mathbf 3\otimes\mathbf 3$ が $\mathbf{10}\oplus\mathbf 8\oplus\mathbf 8\oplus\mathbf 1$ と分解することを、不変部分空間の構成として証明できます。$\Omega^-$ の質量はクォーク質量の差から予言されました。
- クォーク模型は、陽子・中性子の磁気モーメント比 $\mu_n/\mu_p=-2/3$（実測 $-0.685$）を説明します。一方 $\Delta^{++}=uuu$ はパウリの原理に反するので、クォークは **色** という新しい自由度を持たねばならず、$e^+e^-\to$ ハドロンの断面積比 $R$ が色の数 $3$ を決めます。
- 崩壊幅・断面積の計算に要る運動学（2 体崩壊の運動量、マンデルスタム変数、寿命と幅の関係、ブライト–ウィグナー共鳴）を整理します。

<Aside type="tip" title="この記事で使う事前知識">

- **角運動量の合成**: 2 つの角運動量を足すと、全体の値は $|j_1-j_2|$ から $j_1+j_2$ まで 1 刻みで現れる、という規則。アイソスピンの合成にそのまま使います。→ [角運動量とスピン](/physics/quantum-mechanics/angular-momentum-and-spin)
- **昇降演算子**: 磁気量子数を 1 つ上げ下げする演算子。状態を順に作るのに使います。→ [昇降演算子](/physics/quantum-mechanics/angular-momentum-and-spin#def-ladder)
- **全角運動量**: 軌道とスピンの角運動量を合わせた量。→ [全角運動量](/physics/quantum-mechanics/angular-momentum-and-spin#def-total-angular-momentum)
- **交換子**: 2 つの演算子 $A,B$ に対する $AB-BA$。→ [交換子](/physics/quantum-mechanics/operators-and-observables#def-commutator)
- **4 元運動量**: エネルギーと運動量を 1 つにまとめた量で、その大きさの 2 乗が質量の 2 乗になります。第 6 節の運動学で使います。→ [相対論的力学](/physics/relativity/relativistic-mechanics)
- **結合エネルギー**: 原子核をばらばらの核子にするのに要るエネルギー。→ [原子核](/physics/particle-physics/nuclear-physics)

</Aside>

## 1. 動機

1950 年代、加速器と宇宙線の実験から、陽子・中性子・パイ中間子のほかに、$K$ 中間子、$\Lambda$、$\Sigma$、$\Xi$、$\Delta$ といった数百種類の粒子（ハドロン）が見つかりました。これらを全部「素粒子」とみなすと、整理がつきません。ところが、ハドロンを電荷や奇妙さなどの量子数で並べると、質量のほぼ等しい粒子の組（多重項）が現れ、その配置がある対称性群の表現の形をしていることに気づかれました（ゲルマンの「八道説」、1961）。さらに 1964 年、ゲルマンとツヴァイクは、その表現が 3 種類の基本的な構成要素（クォーク）の組合せで説明できることを指摘しました。

この記事では、「保存則」「アイソスピン」「フレーバー $\mathrm{SU}(3)$」の順に対称性を積み上げ、最後にそれを背後で支えるクォーク模型と色の自由度を扱います。使う数学は、角運動量の代数（[角運動量とスピン](/physics/quantum-mechanics/angular-momentum-and-spin)）と、行列の対角化（[対角化とジョルダン標準形](/mathematics/linear-algebra/diagonalization-and-jordan-form)）が中心です。クォークは単独では取り出されない（閉じ込め）ため、ここで述べる結論は「ハドロンのスペクトルと反応から間接的にクォークの存在を示す」論法になります。単位は $\hbar=c=1$ を併用し、必要なとき戻します。

## 2. 保存則と量子数

<Definition id="def-quantum-numbers" title="ハドロンの量子数">
ハドロンには次の量子数が割り当てられる。
- 電荷 $Q$（$e$ を単位とする）。
- **バリオン数** $B$：バリオンは $+1$、反バリオンは $-1$、メソンは $0$。
- **ストレンジネス** $S$：$K^+,K^0$ は $+1$、$\Lambda,\Sigma$ は $-1$、$\Xi$ は $-2$、$\Omega^-$ は $-3$、陽子・中性子・$\pi$ は $0$。
- **ハイパーチャージ** $Y=B+S$。
- **アイソスピン** $(I,I_3)$：荷電多重項（質量がほぼ等しい粒子の組）に対し、$\mathfrak{su}(2)$ の表現として $2I+1$ 個の状態を持つ（後述）。
- **ゲル・マン–西島の関係**：$Q=I_3+\dfrac Y2$。
</Definition>

たとえば陽子は $(B,S,I,I_3)=(1,0,\tfrac12,\tfrac12)$ で $Q=\tfrac12+\tfrac12=1$、中性子は $I_3=-\tfrac12$ で $Q=0$、$\Lambda$ は $(1,-1,0,0)$ で $Q=0+\tfrac{0}{2}=0$（$Y=0$）、$K^+$ は $(0,+1,\tfrac12,\tfrac12)$ で $Y=1$、$Q=\tfrac12+\tfrac12=1$ です。

<Definition id="def-conservation-rules" title="保存則の適用範囲">
次の保存量は、相互作用ごとに次のように保存される。

| 量 | 強い相互作用 | 電磁相互作用 | 弱い相互作用 |
|---|---|---|---|
| $Q$、$B$、レプトン数 | 保存 | 保存 | 保存 |
| $S$（$Y$） | 保存 | 保存 | $\Delta S=0,\pm1$ |
| $I$ | 保存 | $\Delta I_3=0$（$I$ は破れる） | $I$ も $I_3$ も破れる |
</Definition>

この表は **実験事実**で、各行の保存は、その相互作用を記述する理論がもつ対称性（第 4 章の標準模型）として後に理解されます。ストレンジネスの保存は、$K$ や $\Lambda$ が **対で生成される**（連合生成）という観測を最初に説明しました。

<Example id="ex-associated-production" title="連合生成と寿命の階層">
$\pi^-+p\to K^0+\Lambda$ は強い相互作用で起こります。始状態は $S=0$、終状態は $S=+1+(-1)=0$ で、$B$、$Q$ も保存されます。一方、$\pi^-+p\to K^0+n$ は $S=+1$ なので強い相互作用では起こりません。生成された $\Lambda$ は、$\Lambda\to p+\pi^-$ と崩壊しますが、この崩壊は $\Delta S=1$ なので、強い相互作用では禁止され、弱い相互作用のみで起こります。平均寿命は $2.6\times10^{-10}\,\mathrm s$ で、強い相互作用による共鳴 $\Delta(1232)$ の約 $6\times10^{-24}\,\mathrm s$ より $10^{14}$ 倍長いのです。電磁崩壊 $\pi^0\to\gamma\gamma$ の寿命は $8.5\times10^{-17}\,\mathrm s$ で、その中間にあります。**寿命は、どの相互作用で崩壊するかを示す指標**です。
</Example>

## 3. アイソスピン

陽子と中性子の質量は $0.1\%$ しか違いません（$938.3$ と $939.6\,\mathrm{MeV}$）。核力の電荷独立性（陽子–陽子、中性子–中性子、陽子–中性子の核力がほぼ等しい）と合わせて、ハイゼンベルク（1932）は、陽子と中性子を同じ粒子「核子」の 2 つの状態とみなす考えを提案しました。核子を 2 成分の状態 $\binom{p}{n}$ とみなすと、その上のユニタリ変換 $\mathrm{SU}(2)$ に対して強い相互作用が不変である、という形で書けます。

<Definition id="def-isospin" title="アイソスピン">
**アイソスピン**の演算子 $\boldsymbol I=(I_1,I_2,I_3)$ は、角運動量と同じ交換関係 $[I_a,I_b]=i\epsilon_{abc}I_c$ をみたす。強い相互作用のハミルトニアンは $\boldsymbol I$ の各成分と可換とする。固有状態 $|I,I_3\rangle$ は $\boldsymbol I^2=I(I+1)$、$I_3$ の固有値をもち、同じ $I$ の状態は強い相互作用で縮退する（電磁相互作用が $m_p\ne m_n$ などの質量差を与える）。
</Definition>

アイソスピンの代数が角運動量と同じなので、<Ref to="physics/quantum-mechanics/angular-momentum-and-spin#thm-spectrum" text="角運動量の固有値" /> と <Ref to="physics/quantum-mechanics/angular-momentum-and-spin#thm-clebsch-gordan" text="合成則" /> がそのまま使えます。つまり $I$ は整数または半整数で、2 つの系の合成の $I$ は $|I_1-I_2|$ から $I_1+I_2$ までです。核子は $I=\tfrac12$、$\pi^+,\pi^0,\pi^-$ は $I=1$ の 3 重項（$I_3=+1,0,-1$）、$\Delta(1232)$ は $I=\tfrac32$ の 4 重項（$\Delta^{++},\Delta^+,\Delta^0,\Delta^-$）です。

次の定理のねらいは、パイ中間子と陽子の散乱を、アイソスピンの値ごとの成分に分けて考えることにあります。強い相互作用はアイソスピン $I$ を保存するので、散乱の前後で $I$ は変わらず、$I$ ごとに別々の強さ（振幅）が決まります。$\pi^+p$ と $\pi^-p$ では、それぞれの状態がどの $I$ をどれだけ含むかが違い、その違いが断面積の比になります。証明は、角運動量の合成と同じ手順で、昇降演算子を使って $I=\tfrac32$ の状態を順に作ります。

<Theorem id="thm-delta-ratio" title="$\Delta$ 共鳴での断面積比">
パイ中間子と核子の散乱 $\pi N$ のエネルギーが $I=\tfrac32$ のチャンネルの共鳴 $\Delta(1232)$ の付近にあり、$I=\tfrac12$ の寄与が無視できるならば、終状態の電荷の組をすべて足した全断面積について
$$
\frac{\sigma(\pi^+p)}{\sigma(\pi^-p)}=3
$$
である。ただし $\pi^+p$ は純粋な $I=\tfrac32$ 状態、$\pi^-p$ は $I=\tfrac32$ を確率 $\tfrac13$、$I=\tfrac12$ を確率 $\tfrac23$ で含む。
</Theorem>

<Proof of="thm-delta-ratio">
アイソスピンの合成 $1\otimes\tfrac12$ の固有状態を、昇降演算子 $I_\pm=I_1\pm iI_2$ から作る。$I_-|I,m\rangle=\sqrt{I(I+1)-m(m-1)}\,|I,m-1\rangle$ （<Ref to="physics/quantum-mechanics/angular-momentum-and-spin#lem-ladder" text="昇降演算子の基本関係" />）である。パイ中間子の状態を $|1,m\rangle$、核子を $|\uparrow\rangle=p$、$|\downarrow\rangle=n$ と書く。$\pi^+p=|1,1\rangle|\uparrow\rangle$ は $I_3=\tfrac32$ で、$I_3=\tfrac32$ の状態はこれ 1 つしかなく $I\ge\tfrac32$ でなければならないから、これは合成 $I=\tfrac32$ の最高状態 $|\tfrac32,\tfrac32\rangle$ に等しい。
全体の $I_-=I_-^{(\pi)}+I_-^{(N)}$ を作用させる。左辺は $\sqrt{15/4-3/4}=\sqrt3$ を掛けて $|\tfrac32,\tfrac12\rangle$ になり、右辺は $\sqrt2|1,0\rangle|\uparrow\rangle+|1,1\rangle|\downarrow\rangle$ になる。よって
$$
|\tfrac32,\tfrac12\rangle=\sqrt{\tfrac23}\,|1,0\rangle|\uparrow\rangle+\sqrt{\tfrac13}\,|1,1\rangle|\downarrow\rangle.
$$
もう一度 $I_-$ を作用させる。左辺の係数は $\sqrt{15/4-(1/2)(-1/2)}=2$、右辺は $I_-|1,0\rangle=\sqrt2|1,-1\rangle$、$I_-|1,1\rangle=\sqrt2|1,0\rangle$、$I_-|\uparrow\rangle=|\downarrow\rangle$ なので
$$
2|\tfrac32,-\tfrac12\rangle=\sqrt{\tfrac23}\bigl(\sqrt2|1,-1\rangle|\uparrow\rangle+|1,0\rangle|\downarrow\rangle\bigr)+\sqrt{\tfrac13}\sqrt2\,|1,0\rangle|\downarrow\rangle=\frac{2}{\sqrt3}|1,-1\rangle|\uparrow\rangle+2\sqrt{\tfrac23}|1,0\rangle|\downarrow\rangle.
$$
したがって $|\tfrac32,-\tfrac12\rangle=\tfrac1{\sqrt3}\,\pi^-p+\sqrt{\tfrac23}\,\pi^0n$ である。$\pi^-p$ の $I=\tfrac32$ 成分への射影の係数は $\tfrac1{\sqrt3}$ なので、確率は $\tfrac13$、残る $\tfrac23$ は直交する $I=\tfrac12$ 成分である。

強い相互作用は $I$ を保存するから、遷移演算子は $T=T_{3/2}P_{3/2}+T_{1/2}P_{1/2}$（$P_I$ は全アイソスピン $I$ への射影、$T_I$ は数）と書ける。始状態 $i$ から、同じ $I_3$ の終状態 $f$（$\pi^-p$ なら $\pi^-p$ と $\pi^0n$）への遷移確率を $f$ について足すと、完全性により $\sum_f|\langle f|T|i\rangle|^2=\langle i|T^\dagger T|i\rangle=|T_{3/2}|^2\langle i|P_{3/2}|i\rangle+|T_{1/2}|^2\langle i|P_{1/2}|i\rangle$ となる。$\pi^+p$ では $\langle P_{3/2}\rangle=1$、$\langle P_{1/2}\rangle=0$ なので $\sigma(\pi^+p)\propto|T_{3/2}|^2$。$\pi^-p$ では $\sigma(\pi^-p)\propto\tfrac13|T_{3/2}|^2+\tfrac23|T_{1/2}|^2$。$|T_{1/2}|\ll|T_{3/2}|$ なら、比は $3$ である。
</Proof>

<Remark id="rem-delta-elastic" title="弾性散乱だけで比べると">
$\pi^-p$ の弾性散乱の振幅は $\tfrac13T_{3/2}+\tfrac23T_{1/2}$、荷電交換 $\pi^-p\to\pi^0n$ の振幅は $\tfrac{\sqrt2}3(T_{3/2}-T_{1/2})$ です（上の射影の係数から）。共鳴の中心 $T_{1/2}\to0$ では、弾性が $\tfrac19|T_{3/2}|^2$、荷電交換が $\tfrac29|T_{3/2}|^2$ で、合計 $\tfrac13|T_{3/2}|^2$ は定理と一致します。弾性だけで比べると $9:1$ になるので、実験の比較では終状態を区別せず足した全断面積を使います。
</Remark>

実測では、$\Delta$ のピーク付近の $\pi^+p$ の全断面積は約 $200\,\mathrm{mb}$、$\pi^-p$ は約 $70\,\mathrm{mb}$ で、比は約 $3$ です。さらに、ピークの高さは第 6 節のブライト–ウィグナーの公式で説明できます。

## 4. フレーバー SU(3)

1960 年代初め、$K$ や $\Lambda$ の発見により、$u,d$ の 2 つのフレーバーだけでは足りなくなりました。ストレンジネスを担うクォーク $s$ を加えて、3 つのフレーバー $(u,d,s)$ に対して $\mathrm{SU}(3)$ 変換を考えます。

<Definition id="def-flavor-su3" title="フレーバー SU(3)">
3 次元複素ベクトル空間 $\mathbb C^3$ の基底を $q_1=u,\ q_2=d,\ q_3=s$ とする。$\mathrm{SU}(3)$ の元 $U$ は $q_i\mapsto\sum_jU_{ji}q_j$ と作用する（**基本表現 $\mathbf 3$**）。反クォークは複素共役表現 $\bar{\mathbf 3}$ で、$\bar q_i\mapsto\sum_j\overline{U_{ji}}\,\bar q_j$ と作用する。対角のカルタン生成子は
$$
I_3=\mathrm{diag}\bigl(\tfrac12,-\tfrac12,0\bigr),\qquad Y=\mathrm{diag}\bigl(\tfrac13,\tfrac13,-\tfrac23\bigr)
$$
で、状態の固有値の組 $(I_3,Y)$ を **ウェイト**という。$Q=I_3+Y/2$ により $u,d,s$ の電荷は $\tfrac23,-\tfrac13,-\tfrac13$ になる。
</Definition>

クォークは $B=\tfrac13$ をもち、$s$ は $S=-1$（$Y=B+S=-\tfrac23$）、$u,d$ は $S=0$（$Y=\tfrac13$）です。複合粒子のウェイトは構成要素のウェイトの和で、反クォークは符号が反転します。

<Theorem id="thm-meson-octet" title="クォークと反クォークの合成">
$\mathbf 3\otimes\bar{\mathbf 3}$ は、$\mathrm{SU}(3)$ の作用で不変な 1 次元部分空間（一重項）と、既約な 8 次元部分空間（八重項）の直和に分解する。一重項は $\tfrac1{\sqrt3}(u\bar u+d\bar d+s\bar s)$ で張られる。
</Theorem>

この定理は、9 個のクォーク・反クォーク対 $q_i\bar q_j$ が 8 個と 1 個の組に分かれる、という主張です。ここでの $q_i$ は個々の粒子というより、フレーバーを表す 3 次元の状態ベクトルの基底で、$\mathrm{SU}(3)$ はそれらを混ぜる変換です。証明の方針は 3 段階です。(1) 対を $3\times3$ 行列とみなすと、変換は $M\mapsto UMU^\dagger$ になる。(2) 単位行列とトレース零の行列がそれぞれ変換で閉じる。(3) トレース零の部分がそれ以上分けられないこと（既約）を、行列単位どうしの交換子で確かめる。(3) は少し長いので、初めて読むときは結論（8 個と 1 個に分かれること）だけ追っても、先の節は読めます。

<Proof of="thm-meson-octet">
$\mathbf 3\otimes\bar{\mathbf 3}$ の元 $\sum_{ij}M_{ij}\,q_i\bar q_j$ を $3\times3$ 行列 $M$ と同一視する。$U$ の作用は $q_i\bar q_j\mapsto\sum_{kl}U_{ki}\overline{U_{lj}}\,q_k\bar q_l$ なので、$M\mapsto UMU^\dagger$ である（随伴表現）。

(i) 単位行列 $\mathbb 1$ は $U\mathbb 1U^\dagger=\mathbb 1$ で不変、これが一重項 $\tfrac1{\sqrt3}\sum_iq_i\bar q_i$ である。トレース $\mathrm{tr}\,M$ は不変量なので、$\mathrm{tr}M=0$ の部分空間 $W$（次元 $8$）も不変であり、$\mathbf 3\otimes\bar{\mathbf 3}=\mathbb C\mathbb 1\oplus W$ を得る。

(ii) $W$ が既約であることを示す。$W$ の不変な部分空間 $V'\ne0$ をとる。$\mathrm{SU}(3)$ の作用の微分から、$V'$ は交換子 $M\mapsto[X,M]$（$X$ はトレース零のエルミート行列、およびその複素線形結合として任意のトレース零行列）で閉じる。行列単位 $e_{ij}$ について $[e_{ij},e_{kl}]=\delta_{jk}e_{il}-\delta_{li}e_{kj}$ が成り立つ。
$M\in V'$ に対して、対角行列 $H=\mathrm{diag}(h_1,h_2,h_3)$（$h_i$ の差が互いに異なるものを選ぶ）をとると $[H,M]_{ij}=(h_i-h_j)M_{ij}$ である。$\mathrm{ad}\,H$ の固有値 $0$（対角成分）と $h_i-h_j$（$i\ne j$、6 個）は互いに異なるから、$\mathrm{ad}H$ の多項式で各固有空間への射影が作れ、$V'$ は $M$ の各固有空間成分を含む。したがって、$V'$ は「対角成分」または「ある 1 つの $e_{ab}$（$a\ne b$）」を含む。
- $e_{ab}\in V'$ ならば、$[e_{ba},e_{ab}]=e_{bb}-e_{aa}$、第 3 の添字 $c\ne a,b$ について $[e_{ca},e_{ab}]=e_{cb}$、$[e_{ab},e_{bc}]=e_{ac}$、さらに $[e_{bc},e_{ca}]$ などを繰り返せば、すべての $e_{ij}$（$i\ne j$）とすべての $e_{ii}-e_{jj}$ が $V'$ に入る。これは $W$ 全体を張る。
- 対角成分 $D\ne0$ を含む場合、$D$ はトレース零なので成分がすべて等しくはなく、$D_{aa}\ne D_{bb}$ となる $a,b$ がある。$[e_{ab},D]=(D_{bb}-D_{aa})e_{ab}\in V'$ から、前の場合に帰着する。
ゆえに $V'=W$ で、$W$ は既約である。
</Proof>

これで 9 個のクォーク・反クォーク対が 8 個と 1 個に分かれることが示せました。ウェイトを並べると、$u\bar d$ は $(1,0)$、$u\bar s$ は $(\tfrac12,1)$、$d\bar s$ は $(-\tfrac12,1)$、$s\bar u$ は $(-\tfrac12,-1)$、$s\bar d$ は $(\tfrac12,-1)$ で、これらはそれぞれ $\pi^+,K^+,K^0,K^-,\bar K^0$ に対応します。零ウェイトの 2 状態が $\pi^0$ と $\eta$ です（もう 1 つの混合が一重項 $\eta'$）。

<Theorem id="thm-baryon-decomposition" title="3 つのクォークの合成">
$(\mathbf 3)^{\otimes 3}$（次元 $27$）は、$\mathrm{SU}(3)$ で不変な部分空間に
$$
\mathbf 3\otimes\mathbf 3\otimes\mathbf 3=\mathbf{10}_S\oplus\mathbf 8_{M}\oplus\mathbf 8_{M'}\oplus\mathbf 1_A
$$
と分解する。ここで $\mathbf{10}_S$ は完全対称テンソル（次元 $\binom{3+2}{3}=10$）、$\mathbf 1_A$ は完全反対称テンソル（次元 $\binom33=1$）、残りの 16 次元は、2 つの 8 次元の不変部分空間（混合対称性）に分かれる。
</Theorem>

3 つのクォークから作るバリオンの場合も、考え方はメソンと同じで、27 個の組を $\mathrm{SU}(3)$ で閉じた部分空間に分けます。手がかりは、3 つの因子を入れ替える操作（置換）です。入れ替えても符号が変わらない組（完全対称）、符号が変わる組（完全反対称）が、それぞれ閉じた部分空間になります。残りは、一部だけ対称・反対称の組で、前の定理の結果に帰着して調べます。

<Proof of="thm-baryon-decomposition">
置換群 $S_3$ は 3 つの因子の入れ替えとして $(\mathbb C^3)^{\otimes3}$ に作用し、$U\otimes U\otimes U$ と可換である。よって完全対称部分空間 $\mathrm{Sym}^3$ と完全反対称部分空間 $\Lambda^3$ は $\mathrm{SU}(3)$ の作用で不変である。$\mathrm{Sym}^3$ の基底は、$\{1,2,3\}$ の重複組合せ $q_iq_jq_k$（$i\le j\le k$）の個数 $\binom{5}{3}=10$ 個、$\Lambda^3$ の基底は $q_1\wedge q_2\wedge q_3$ のみで次元 $1$ である。
残りを調べるため、$\mathbb C^3\otimes\mathbb C^3=\mathrm{Sym}^2\oplus\Lambda^2$ を使って $(\mathbb C^3)^{\otimes3}=(\mathrm{Sym}^2\otimes\mathbb C^3)\oplus(\Lambda^2\otimes\mathbb C^3)$ と分ける（次元は $18+9$）。どちらも不変である。
$\Lambda^2\mathbb C^3$ は $\epsilon_{ijk}$ を使った写像 $q_i\wedge q_j\mapsto\sum_k\epsilon_{ijk}\bar q_k$ により $\bar{\mathbf 3}$ と同型である（$\det U=1$ なので $U$ の作用と可換）。したがって $\Lambda^2\otimes\mathbf 3\cong\bar{\mathbf 3}\otimes\mathbf 3$ で、前の定理により不変な 1 次元部分空間と 8 次元部分空間に分かれる。完全反対称な $\Lambda^3$ は $\Lambda^2\otimes\mathbb C^3$ に含まれる不変な 1 次元部分空間であり、その一重項は一意なので、$\Lambda^3$ に一致する。残りの 8 次元不変部分空間を $\mathbf 8_M$ とする。
同様に $\mathrm{Sym}^3\subset\mathrm{Sym}^2\otimes\mathbb C^3$ で、ユニタリ作用に関する直交補空間は次元 $18-10=8$ の不変部分空間 $\mathbf 8_{M'}$ である。次元は $10+8+8+1=27$ で、全体と一致する。
</Proof>

<Remark id="rem-irreducibility" title="既約性について">
定理の $\mathbf{10}$ と $\mathbf 8_{M'}$ の既約性は、メソンの場合と同様に最高ウェイトの議論で示せますが、長いので省略します（最高ウェイトによる既約表現の分類と次元公式は <Ref to="mathematics/lie-theory/highest-weight-theory#thm-finite-dim-classification" text="最高ウェイト定理" /> と <Ref to="mathematics/lie-theory/highest-weight-theory#ex-sl3-dimensions" text="sl(3) の表現の次元" /> にあり、$\mathbf{10}$ は最高ウェイト $3\omega_1$ の既約表現として次元 $10$ をもちます）。以下で使うのは、これらが不変部分空間であること、およびウェイトの分布だけです。
</Remark>

完全対称な 10 次元のウェイトは、3 つのフレーバーの重複組合せです。$uuu$ は $(I_3,Y)=(\tfrac32,1)$、$uud$ は $(\tfrac12,1)$、$udd$ は $(-\tfrac12,1)$、$ddd$ は $(-\tfrac32,1)$（$\Delta^{++},\Delta^+,\Delta^0,\Delta^-$）、$uus$ は $(1,0)$、$uds$ は $(0,0)$、$dds$ は $(-1,0)$（$\Sigma^{*+,0,-}$）、$uss$ は $(\tfrac12,-1)$、$dss$ は $(-\tfrac12,-1)$（$\Xi^{*0,-}$）、$sss$ は $(0,-2)$（$\Omega^-$）です。逆三角形に並びます。バリオン八重項は $p,n$（$Y=1$）、$\Sigma^{+,0,-}$ と $\Lambda$（$Y=0$）、$\Xi^{0,-}$（$Y=-1$）です。

<Figure caption="ウェイト図（横軸 I₃、縦軸 Y）。左はメソン八重項（中央の点は π⁰・η の 2 状態が重なる）、右はバリオン十重項。右の図では下の段ほど質量が一定間隔で重くなる。">
<svg viewBox="0 0 760 270" width="100%" role="img" aria-label="メソン八重項の六角形とバリオン十重項の逆三角形のウェイト図">
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    <path d="M 60 140 L 330 140 M 190 40 L 190 230" />
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  <path d="M 245 140 L 217.5 90 L 162.5 90 L 135 140 L 162.5 190 L 217.5 190 Z" fill="none" stroke="var(--sl-color-accent)" stroke-width="2" />
  <path d="M 487.5 50 L 652.5 50 L 570 200 Z" fill="none" stroke="var(--sl-color-accent)" stroke-width="2" />
  <g fill="currentColor">
    <circle cx="245" cy="140" r="5" /><circle cx="135" cy="140" r="5" /><circle cx="190" cy="140" r="7" />
    <circle cx="217.5" cy="90" r="5" /><circle cx="162.5" cy="90" r="5" /><circle cx="162.5" cy="190" r="5" /><circle cx="217.5" cy="190" r="5" />
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  </g>
  <g fill="currentColor" font-size="14" text-anchor="middle">
    <text x="252" y="162">π⁺</text><text x="128" y="162">π⁻</text><text x="190" y="164">π⁰, η</text>
    <text x="226" y="80">K⁺</text><text x="154" y="80">K⁰</text><text x="154" y="212">K⁻</text><text x="226" y="212">K̄⁰</text>
    <text x="487" y="38">Δ⁻</text><text x="542" y="38">Δ⁰</text><text x="597" y="38">Δ⁺</text><text x="652" y="38">Δ⁺⁺</text>
    <text x="515" y="88">Σ&#42;⁻</text><text x="570" y="88">Σ&#42;⁰</text><text x="625" y="88">Σ&#42;⁺</text>
    <text x="542" y="138">Ξ&#42;⁻</text><text x="598" y="138">Ξ&#42;⁰</text><text x="570" y="224">Ω⁻</text>
  </g>
  <g fill="currentColor" font-size="13">
    <text x="318" y="132" text-anchor="end">I₃</text><text x="198" y="48">Y</text>
    <text x="698" y="92" text-anchor="end">I₃</text><text x="578" y="38">Y</text>
  </g>
</svg>
</Figure>

<Proposition id="prop-decuplet-spacing" title="デカプレットの等間隔則と $\Omega^-$ の予言">
クォーク質量を $m_u=m_d=m<m_s$ として、バリオン質量が構成クォークの質量の和（近似）で与えられるとき、デカプレットの質量は $Y$ について線形である：
$$
M(Y)=M_0-\bigl(m_s-m\bigr)\,(Y-1)\quad(=3m+n_s(m_s-m)),
$$
ここで $n_s$ は $s$ クォークの数。したがって隣り合う段（$Y=1,0,-1,-2$）の質量差はすべて等しい。
</Proposition>

<Proof of="prop-decuplet-spacing">
デカプレットの粒子は $uuu$ 型で、$s$ クォークの個数 $n_s=0,1,2,3$ に応じて $Y=B+S=1-n_s$（$B=1$、$S=-n_s$）である。質量は $M=(3-n_s)m+n_sm_s=3m+n_s(m_s-m)$ で、$n_s=1-Y$ を代入して主張を得る。差は $m_s-m$ で一定。
</Proof>

$\Delta(1232),\Sigma^*(1385),\Xi^*(1530)$ の質量差は $153$、$145\,\mathrm{MeV}$ で、等間隔則がよく成り立ちます。1962 年、ゲル・マンはこの規則から、まだ見つかっていなかった $\Omega^-$ の質量を約 $1530+145\approx1680\,\mathrm{MeV}$ と予言しました。1964 年にブルックヘブンで見つかった $\Omega^-$ の質量は $1672\,\mathrm{MeV}$ でした。$sss$ という構成のため、$\Omega^-$ は $S=-3$ を持ち、$\Delta S=\pm1$ の弱い崩壊しかできず、寿命が $8\times10^{-11}\,\mathrm s$ と長いことも、軌跡の発見を助けました。

## 5. クォーク模型と色

クォーク模型では、メソンを $q\bar q$、バリオンを $qqq$ とし、基底状態では軌道角運動量 $L=0$、バリオンのスピンは 3 つのクォークスピン $\tfrac12$ の合成です。

次の命題は、クォーク模型が実験の数字を説明する最初の例です。陽子を $uud$ の 3 つのクォークでできているとし、各クォークのスピンの向きと $u,d$ の並びをうまく組み合わせた状態（下の式）を考えます。この式は、全体のスピンが $\tfrac12$ で、3 つのクォークの入れ替えに対して対称になるように作ったもので、証明の中でスピンが $\tfrac12$ になることを確かめます。あとは、各クォークの磁気モーメントを足し合わせるだけです。

<Proposition id="prop-magnetic-moments" title="核子の磁気モーメント比">
クォークのスピン磁気モーメントを $\mu_q=Q_q\,e/(2m_q)$（ディラック粒子の値、$Q_q$ はクォークの電荷）、$m_u=m_d$ とする。陽子のスピン・フレーバー波動関数を（スピン上向き）
$$
|p\uparrow\rangle=\frac1{\sqrt{18}}\Bigl[2\,u_\uparrow u_\uparrow d_\downarrow-u_\uparrow u_\downarrow d_\uparrow-u_\downarrow u_\uparrow d_\uparrow\Bigr]+\text{(3 つの位置の入れ替え)}
$$
とすると、陽子と中性子の磁気モーメントは $\mu_p=\tfrac43\mu_u-\tfrac13\mu_d$、$\mu_n=\tfrac43\mu_d-\tfrac13\mu_u$ で、
$$
\mu_p=\frac{e}{2m},\quad\mu_n=-\frac23\,\frac{e}{2m},\qquad\frac{\mu_n}{\mu_p}=-\frac23
$$
である。ここで $m=m_u=m_d$ とした。
</Proposition>

<Proof of="prop-magnetic-moments">
波動関数は 3 つのクォークの入れ替えで対称で（上の 3 項を位置 $(1,2,3)$ の入れ替えで 9 項に展開したもの）、規格化は $3\times(4+1+1)/18=1$。スピン $\tfrac12$ であることは、上昇演算子 $J_+=\sum_iJ_+^{(i)}$ を作用させて確かめる。第 1 の組の 3 項に作用させると、$2u_\uparrow u_\uparrow d_\uparrow-u_\uparrow u_\uparrow d_\uparrow-u_\uparrow u_\uparrow d_\uparrow=0$（係数 $2-1-1=0$）で、他の位置の入れ替えも同様に $0$ となる。したがって $J_+|p\uparrow\rangle=0$ で、$J_z=\tfrac12$ の最高ウェイト状態だから $J=\tfrac12$ である。
$u$ クォークのスピン $\sigma_z=\pm1$ の和の期待値を求める。第 1 項（係数 $2$、重み $4$）では $u$ のスピンが $\uparrow\uparrow$ で和 $+2$、第 2・3 項（重み $1$）では $\uparrow\downarrow$ または $\downarrow\uparrow$ で和 $0$ なので、$\langle\sum_u\sigma_z\rangle=\tfrac{3}{18}(4\times2+0+0)=\tfrac43$。$d$ クォークは第 1 項で $\downarrow$（$-1$、重み $4$）、第 2・3 項で $\uparrow$（$+1$、重み $1$ ずつ）だから $\langle\sum_d\sigma_z\rangle=\tfrac3{18}(-4+1+1)=-\tfrac13$。磁気モーメントは $\mu=\sum_q\mu_q\langle\sigma_z\rangle_q$ だから $\mu_p=\tfrac43\mu_u-\tfrac13\mu_d$。$\mu_u=\tfrac23\frac e{2m}$、$\mu_d=-\tfrac13\frac e{2m}$ を入れて $\mu_p=\tfrac89+\tfrac19=1$（単位 $e/2m$）。中性子は $u\leftrightarrow d$ の入れ替えで $\mu_n=\tfrac43\mu_d-\tfrac13\mu_u=-\tfrac49-\tfrac29=-\tfrac23$。
</Proof>

実測の値は $\mu_p=2.793\mu_N$、$\mu_n=-1.913\mu_N$（$\mu_N$ は核磁子）で、比は $-0.685$ です。理論値 $-\tfrac23=-0.667$ と $3\%$ で合います。また、$\mu_p=e/2m$ を実測値 $2.793\mu_N$ に合わせると、構成クォーク質量 $m=\tfrac{m_p}{2.793}\approx336\,\mathrm{MeV}$ になり、陽子質量のほぼ $\tfrac13$ に一致します。

次に、クォークに「色」が必要な理由です。

<Proposition id="prop-color-pauli" title="色の必要性（$\Delta^{++}$ の問題）">
$\Delta^{++}$（$uuu$、$J=\tfrac32$、$J_z=\tfrac32$）の基底状態の波動関数が、空間・スピン・フレーバーの自由度だけで書けると仮定すると、フェルミ粒子の統計に反する。クォークがさらに 3 値を取る **色**の自由度を持ち、バリオンの色の部分が完全反対称な $\epsilon_{abc}/\sqrt6$（色一重項）であれば、矛盾は解消する。
</Proposition>

<Proof of="prop-color-pauli">
$\Delta^{++}$ では、3 つのクォークがすべて $u$ なので、フレーバー部分は $|uuu\rangle$ で入れ替えに対して対称。$J_z=\tfrac32$ はスピンがすべて上向きの $|\uparrow\uparrow\uparrow\rangle$ でしか実現できず、これも対称。基底状態は $L=0$（空間部分は $\psi(\boldsymbol r_1,\boldsymbol r_2,\boldsymbol r_3)$ が入れ替えに対して対称な最低エネルギー状態）。よって全体が完全対称となる。これは、2 つの同種フェルミオンの入れ替えに対して波動関数が反対称でなければならないというパウリの原理に反する。色の自由度 $c_i\in\{1,2,3\}$ を加え、色の部分を $\epsilon_{c_1c_2c_3}$（任意の 2 個の入れ替えで符号が変わる）とすれば、全体は反対称になる。
</Proof>

<Theorem id="thm-r-ratio" title="$R$ 比と色の数">
$e^+e^-$ の衝突のエネルギー $\sqrt s$ が、クォーク対の生成が開く範囲にあり、クォーク質量が無視できるとき、最低次で
$$
R\equiv\frac{\sigma(e^+e^-\to\text{ハドロン})}{\sigma(e^+e^-\to\mu^+\mu^-)}=N_c\sum_fQ_f^2
$$
である。ここで和は生成可能なフレーバー $f$ にわたり、$N_c$ は色の数である。
</Theorem>

<Proof of="thm-r-ratio">
$e^+e^-\to\mu^+\mu^-$ の最低次の微分断面積 <Ref to="physics/qft/feynman-rules-lsz#prop-ee-mumu" text="e⁺e⁻ → μ⁺μ⁻ の微分断面積" /> は、質量を無視すると $d\sigma/d\Omega=\alpha^2(1+\cos^2\theta)/(4s)$ で、角度積分 $\int(1+\cos^2\theta)d\Omega=2\pi(2+\tfrac23)=\tfrac{16\pi}3$ より $\sigma_{\mu\mu}=\tfrac{4\pi\alpha^2}{3s}$ である。
クォーク対 $q\bar q$ の生成は、ミューオンの電荷 $-1$ を $Q_q$ に置き換えるだけで、振幅は $Q_q$ 倍、断面積は $Q_q^2$ 倍になる。クォークは終状態の色 $a=1,\dots,N_c$ で区別でき、始状態の電子・陽電子は色を持たないから、$N_c$ 通りの終状態が足し合わされて断面積は $N_c$ 倍になる。ハドロン化は確率 $1$（全断面積はクォーク対生成の断面積で決まる）として $\sigma_{\text{ハドロン}}=N_c\sum_fQ_f^2\,\sigma_{\mu\mu}$ を得る。
</Proof>

$u,d,s$ のみが開いているとき $\sum Q_f^2=\tfrac49+\tfrac19+\tfrac19=\tfrac23$ なので、$N_c=3$ なら $R=2$、$c$ が開けば $\tfrac23+\tfrac49=\tfrac{10}9$ ですから $R=\tfrac{10}3$、$b$ が開けば $R=\tfrac{10}{3}+\tfrac13=\tfrac{11}{3}$ です。実測の $R$ は $\sqrt s\approx2\text{〜}3\,\mathrm{GeV}$ で約 $2.2$、$c\bar c$ 閾値より上で約 $3.6$、$b\bar b$ 閾値より上で約 $3.9$ で、いずれも $N_c=3$ の予測に QCD の補正（約 $1+\alpha_s/\pi$）を加えて説明できます。$N_c=1$ なら $R=2/3$ となり、全く合いません。

## 6. 崩壊幅と断面積の運動学

反応の速さを決める量が、崩壊幅 $\Gamma$ と断面積 $\sigma$ です。幅は寿命と $\tau=\hbar/\Gamma$ で結びついています。<Ref to="physics/qft/feynman-rules-lsz#thm-cross-section" text="断面積と崩壊率の公式" /> で、運動学の部分は位相空間 $d\Pi_n$ に集約されていました。この節では、その運動学を整理します。

<Proposition id="prop-two-body-momentum" title="2 体崩壊の運動量">
質量 $M$ の粒子が静止系で質量 $m_1,m_2$ の 2 粒子に崩壊するとき（$M>m_1+m_2$）、2 粒子の運動量の大きさは
$$
p^*=\frac{\sqrt{\bigl[M^2-(m_1+m_2)^2\bigr]\bigl[M^2-(m_1-m_2)^2\bigr]}}{2M},\qquad E_1^*=\frac{M^2+m_1^2-m_2^2}{2M}
$$
である。また、崩壊幅は $|\mathcal M|^2$ が角度によらない（スピン 0 の崩壊など）とき $\Gamma=\dfrac{p^*}{8\pi M^2}|\mathcal M|^2$ である。
</Proposition>

<Proof of="prop-two-body-momentum">
運動量保存より 2 粒子の運動量は逆向きで大きさ $p^*$。エネルギー保存 $M=E_1+E_2$ から $E_2=M-E_1$、$E_2^2=m_2^2+p^{*2}$、$E_1^2=m_1^2+p^{*2}$ なので $(M-E_1)^2-E_1^2=m_2^2-m_1^2$、すなわち $M^2-2ME_1=m_2^2-m_1^2$ となり $E_1^*$ の式を得る。$p^{*2}=E_1^{*2}-m_1^2=\bigl[(M^2+m_1^2-m_2^2)^2-4M^2m_1^2\bigr]/(4M^2)$ で、分子は $(M^2+m_1^2-m_2^2-2Mm_1)(M^2+m_1^2-m_2^2+2Mm_1)=[(M-m_1)^2-m_2^2][(M+m_1)^2-m_2^2]$ であり、因数分解して $[M^2-(m_1+m_2)^2][M^2-(m_1-m_2)^2]$ に一致する（$(M-m_1-m_2)(M-m_1+m_2)(M+m_1-m_2)(M+m_1+m_2)$ の並べ替え）。幅は <Ref to="physics/qft/feynman-rules-lsz#thm-cross-section" /> と <Ref to="physics/qft/feynman-rules-lsz#prop-two-body-phase-space" /> から $\Gamma=\dfrac1{2M}|\mathcal M|^2\dfrac{4\pi p^*}{16\pi^2M}=\dfrac{p^*}{8\pi M^2}|\mathcal M|^2$。
</Proof>

<Example id="ex-pion-decay-kinematics" title="$\pi^+\to\mu^+\nu_\mu$">
$m_\pi=139.57\,\mathrm{MeV}$、$m_\mu=105.66\,\mathrm{MeV}$、$m_\nu=0$ では、$p^*=(m_\pi^2-m_\mu^2)/(2m_\pi)=(19481-11164)/279.14=29.8\,\mathrm{MeV}/c$ です。ミューオンの運動エネルギーは $\sqrt{105.66^2+29.8^2}-105.66=4.1\,\mathrm{MeV}$ で、パイ中間子が止まって崩壊するときのミューオンのエネルギーは常にこの値になります（単色の飛跡）。
</Example>

反応の運動学を記述するローレンツ不変量が、マンデルスタム変数です。

<Proposition id="prop-mandelstam" title="マンデルスタム変数">
$p_1+p_2\to p_3+p_4$ に対して $s=(p_1+p_2)^2$、$t=(p_1-p_3)^2$、$u=(p_1-p_4)^2$ と定める（計量は $(+,-,-,-)$、$p_i^2=m_i^2$）。このとき
$$
s+t+u=m_1^2+m_2^2+m_3^2+m_4^2.
$$
</Proposition>

<Proof of="prop-mandelstam">
$s=m_1^2+m_2^2+2p_1\!\cdot\!p_2$、$t=m_1^2+m_3^2-2p_1\!\cdot\!p_3$、$u=m_1^2+m_4^2-2p_1\!\cdot\!p_4$ の和は、$3m_1^2+m_2^2+m_3^2+m_4^2+2p_1\!\cdot\!(p_2-p_3-p_4)$ である。4 元運動量保存 $p_3+p_4=p_1+p_2$ から $p_2-p_3-p_4=-p_1$ で、最後の項は $-2m_1^2$。ゆえに和は $m_1^2+m_2^2+m_3^2+m_4^2$ である。
</Proof>

$s$ は重心系エネルギーの 2 乗です。たとえば <Ref to="physics/relativity/relativistic-mechanics#thm-invariant-mass" text="不変質量" /> として、$\sqrt s$ が生成粒子の質量を超えると共鳴が起こります。

次の定理は、共鳴のピークの高さを決める式です。スピンのない散乱ではピークの高さが $4\pi(2l+1)/k^2$ でした。粒子にスピンがあると、入射するスピン状態のうち共鳴に入るものだけが寄与するので、その割合 $g$ が掛かります。

<Theorem id="thm-breit-wigner-spin" title="スピンのある共鳴の断面積（ピークの高さ）">
スピン $s_a,s_b$ の 2 粒子の散乱で、全角運動量 $J$ の共鳴（質量 $E_r$、幅 $\Gamma$）が弾性チャンネルだけに崩壊するなら、重心系の運動量を $k$ として、共鳴エネルギーでの断面積は
$$
\sigma(E_r)=\frac{4\pi}{k^2}\,g,\qquad g=\frac{2J+1}{(2s_a+1)(2s_b+1)}
$$
である。エネルギー依存は <Ref to="physics/quantum-mechanics-2/scattering-theory-physics#thm-breit-wigner" text="Breit–Wigner の公式" /> と同じローレンツ型 $\dfrac{\Gamma^2/4}{(E-E_r)^2+\Gamma^2/4}$ である。
</Theorem>

<Proof of="thm-breit-wigner-spin">
スピンのない場合は <Ref to="physics/quantum-mechanics-2/scattering-theory-physics#thm-breit-wigner" /> により、ピークの高さは $4\pi(2l+1)/k^2$ で、$2l+1$ は部分波 $l$ の磁気量子数の個数である。スピンがあるときは、始状態の $(2s_a+1)(2s_b+1)$ 個のスピン状態が等確率で入射すると平均し、そのうち全角運動量 $J$ の共鳴に入るのは $2J+1$ 個の状態だけなので、平均の重みは $g=(2J+1)/[(2s_a+1)(2s_b+1)]$ になる。共鳴の部分波ではユニタリ性の上限（$4\pi/k^2$ に対応）まで散乱が起こる。
</Proof>

<Example id="ex-delta-peak" title="$\Delta(1232)$ のピーク">
$W=1232\,\mathrm{MeV}$、$m_N=938.9\,\mathrm{MeV}$、$m_\pi=139.6\,\mathrm{MeV}$ では、<Ref to="prop-two-body-momentum" /> により $p^*=226.6\,\mathrm{MeV}/c$、$k=p^*/\hbar c=1.148\,\mathrm{fm}^{-1}$。$J=\tfrac32$、$s_\pi=0$、$s_N=\tfrac12$ で $g=4/2=2$ なので、純粋な $I=\tfrac32$ である $\pi^+p$ のピークは $\sigma=\dfrac{8\pi}{k^2}=19.1\,\mathrm{fm}^2=191\,\mathrm{mb}$（$1\,\mathrm{fm}^2=10\,\mathrm{mb}$）。実測は約 $200\,\mathrm{mb}$ です。$\pi^-p$ はその $\tfrac13$（<Ref to="thm-delta-ratio" />）で約 $64\,\mathrm{mb}$ です。幅 $\Gamma=117\,\mathrm{MeV}$ から寿命は $\tau=\hbar/\Gamma=6.58\times10^{-22}\,\mathrm{MeV\,s}/117\,\mathrm{MeV}=5.6\times10^{-24}\,\mathrm s$ で、光が陽子の大きさ（約 $1\,\mathrm{fm}$）を横切る時間 $3\times10^{-24}\,\mathrm s$ と同程度です。
</Example>

## 7. 演習

<Exercise id="exr-conservation" difficulty="易">
次の反応・崩壊のうち、強い相互作用で許されるものはどれか。(a) $K^-+p\to\Lambda+\pi^0$ (b) $p+p\to p+\Sigma^++K^0$ (c) $\pi^-+p\to K^-+\Sigma^+$ (d) $\Xi^-\to\Lambda+\pi^-$
<Solution>
(a) 左辺は $S=-1$、右辺は $S=-1+0=-1$。$B=1$、$Q=0$ も保存。許される。(b) 左辺 $S=0$、右辺 $S=0-1+1=0$ で $B=2$、$Q=2$ も保存。許される。(c) 左辺 $S=0$、右辺 $S=-1-1=-2$。$\Delta S=-2$ で禁止。(d) $S$: $-2\to-1$ で $\Delta S=+1$。強い相互作用では禁止（弱崩壊で実際に起こる）。
</Solution>
</Exercise>

<Exercise id="exr-dd-alpha-pi" difficulty="標準">
反応 $d+d\to\alpha+\pi^0$ は、エネルギー的に許される領域でも強い相互作用では起こらないことを、アイソスピンで示せ。$d$、$\alpha$ はアイソスピン $0$ である。
<Solution>
始状態は $I=0\otimes0=0$。終状態は $\alpha$ が $I=0$、$\pi^0$ が $I=1$ だから全体は $I=1$。強い相互作用は $I$ を保存するので $0\to1$ は禁止される。実験でも断面積は電磁相互作用の程度に小さい。
</Solution>
</Exercise>

<Exercise id="exr-omega-mass" difficulty="標準">
$\Sigma^*(1385)$、$\Xi^*(1533)$ の質量から、デカプレットの等間隔則（<Ref to="prop-decuplet-spacing" />）で $\Omega^-$ の質量を予言し、実測 $1672\,\mathrm{MeV}$ と比較せよ。さらに $s$ クォークと $u,d$ クォークの質量差の目安を求めよ。
<Solution>
間隔は $1533-1385=148\,\mathrm{MeV}$ なので $M(\Omega^-)=1533+148=1681\,\mathrm{MeV}$ で、実測 $1672$ との差は $0.5\%$。質量差は間隔そのもので $m_s-m\approx145\text{〜}150\,\mathrm{MeV}$ になる。
</Solution>
</Exercise>

<Exercise id="exr-k-decay" difficulty="標準">
$K^+\to\mu^+\nu_\mu$ の静止系でのミューオンの運動量を求めよ。$m_K=493.7\,\mathrm{MeV}$、$m_\mu=105.66\,\mathrm{MeV}$、$m_\nu=0$ とする。
<Solution>
<Ref to="prop-two-body-momentum" /> により $p^*=(m_K^2-m_\mu^2)/(2m_K)=(243{,}740-11{,}164)/987.4=235.6\,\mathrm{MeV}/c$。（$m_K^2=493.7^2=243{,}740$。）
</Solution>
</Exercise>

## 参考文献

- David Griffiths, *Introduction to Elementary Particles*, 2nd ed., Wiley-VCH, 2008 — 第 4 章（アイソスピンと八道説）、第 5 章（クォーク模型）。
- Donald H. Perkins, *Introduction to High Energy Physics*, 4th ed., Cambridge University Press, 2000 — アイソスピンと SU(3)、R 比。
- M. Gell-Mann, "A schematic model of baryons and mesons", *Phys. Lett.* 8 (1964), 214–215 — クォーク模型の提案。
- G. Zweig, "An SU(3) model for strong interaction symmetry and its breaking", CERN-TH-412 (1964) — 同時期の独立な提案。
- V. E. Barnes et al., "Observation of a hyperon with strangeness minus three", *Phys. Rev. Lett.* 12 (1964), 204–206 — $\Omega^-$ の発見。
