# spin-boson・Kondo・共鳴準位模型：構成的ボソン化・Toulouse 点・Coulomb 気体

> 散逸のある 2 準位系の 3 つの模型を定義し、共鳴準位模型を厳密に解き、カイラル・フェルミオンの構成的ボソン化（Kronig 恒等式）を証明する。spin-boson 模型の真空振幅を Anderson–Yuval–Hamann の Coulomb 気体として導き、Toulouse 点を Cauchy 行列式で説明する。
> https://rikai.mugen-giken.com/physics/open-quantum-systems/spin-boson-kondo

## 0. この記事の要点

この記事は、「2 つの状態を行き来するだけの小さな系が、まわりの無数の自由度とつながると何が起きるか」を扱います。小さな系の例は、上向きか下向きかのスピンです。まわりの自由度は、光子や格子振動、伝導電子のようなものです。この問題が実は、電子 1 個の簡単な問題や、電荷を並べた気体の問題に書き換えられることを、証明つきで順に確かめます。読み終えると、3 つの模型がなぜ同じ仲間なのか、結合がちょうど $\alpha=\frac12$ のときになぜ厳密に解けるのかが分かります。

- 熱浴と結合した 2 準位系の代表的な模型は、ボソン浴と結合する **spin-boson 模型**、伝導電子と結合する **異方的 Kondo 模型**、1 準位と伝導帯が混成する **共鳴準位模型** の 3 つです。浴の効き方はスペクトル密度 $J(s)$ と、その虚時間相関 $W(t)=\frac1{2\pi}\int_0^\infty J(s)e^{-|t|s}\,\mathrm{d}s$ にまとまります。
- 共鳴準位模型は 1 粒子の問題に帰着し、準位の Green 関数は $\bigl(\varepsilon_d-z-\Sigma(z)\bigr)^{-1}$ と厳密に書けます。広帯域極限で準位のスペクトル測度は幅 $\Gamma=\pi V^2$ の Lorentz 分布に弱収束し、基底状態の占有数は $\frac12-\frac1\pi\arctan(\varepsilon_d/\Gamma)$ になります。
- 円周上のカイラル・フェルミオンの密度ゆらぎ $\rho(p)$ は、異常交換関係 $[\rho(p),\rho(q)]=-p\,\delta_{p+q,0}$ を満たすボソンです。分割数の数え上げ（Frobenius 座標）により、フェルミオンの Fock 空間は電荷ごとのボソン Fock 空間の直和と一致し、自由ハミルトニアンは $\frac12\mathcal{Q}^2+\sum_nn\,b_n^*b_n$ になります（Kronig の恒等式）。
- spin-boson 模型の真空振幅をトンネル項で Dyson 展開すると、各項はスピンの経路 $\sigma(t)$ について $\exp\int\!\!\int\sigma\sigma W$ の重みを持ちます。これを跳び（キンク）の電荷で書き直したものが Anderson–Yuval–Hamann の **Coulomb 気体**で、Ohmic 型では隣り合うキンクが $|t|^{-2\alpha}$ で引き合います。
- 結合 $\alpha=\frac12$ では Coulomb 気体の重みが Cauchy 行列式 $\det[1/(y_j-x_i)]$ に一致し、自由フェルミオンの伝播関数の行列式になります。これが **Toulouse 点**で、spin-boson 模型（あるいは Kondo 模型）が共鳴準位模型と等価になる点です。

<Aside type="tip" title="この記事で使う事前知識">

- **spin-boson 模型**: 2 準位系がボソン場と結合した模型。トンネル分裂 $\varepsilon=0$ なら厳密に解けて、基底状態は 2 重に縮退する。→ [spin-boson 模型](/physics/fock-space/nelson-spin-boson#def-spin-boson)
- **基底状態**: ハミルトニアンのエネルギーが最も低い状態。→ [基底状態](/physics/fock-space/nelson-spin-boson#def-ground-state)
- **Segal 場と Weyl 作用素**: ボソン場を表す自己共役作用素と、それを指数にしたユニタリ作用素。→ [Segal 場](/physics/fock-space/segal-field-weyl#def-segal-field)、[Weyl 作用素](/physics/fock-space/segal-field-weyl#def-weyl-operator)
- **コヒーレントベクトル**: 真空に Weyl 作用素を施して得る、ボソンの「古典的な場」に当たる状態。→ [コヒーレントベクトル](/physics/fock-space/nelson-spin-boson#def-coherent-vector)
- **van Hove ハミルトニアン**: ボソン場に線形に結合する模型で、Weyl 作用素で厳密に対角化できる。→ [van Hove ハミルトニアン](/physics/fock-space/van-hove-model#def-van-hove-hamiltonian)
- **反対称テンソル積**: フェルミオンの多粒子状態を作る、入れ替えで符号が変わるテンソル積。→ [反対称テンソル積](/physics/fock-space/fermion-fock-space#def-antisymmetric-tensor)

</Aside>

## 1. 動機

量子系は孤立していることがなく、必ず周囲の無限に多い自由度と結合しています。原子は電磁場に光子を放出し、固体中の欠陥は格子振動や伝導電子と相互作用します。こうした**開放量子系**を厳密に扱うには、系と浴を合わせた全体を 1 つのハミルトニアンで書き、浴の自由度を積分するか、極限を取って消去する必要があります。このテーマ「spin-boson 模型と開放量子系」では、その最も単純で、しかも非自明な現象を示す場合として、2 準位系が浴に結合した模型を作用素論と確率論の両面から調べます。

テーマ全体の流れは次のとおりです。この章では模型を定義し、厳密に解ける部分（共鳴準位模型、ボソン化、Coulomb 気体）を証明します。[次章](/physics/open-quantum-systems/feynman-kac-jump-processes)では spin-boson 模型の半群を、跳び過程と Euclid 場による Feynman–Kac 表示に書き、連続時間の長距離 Ising 模型に移して Griffiths・FKG の不等式を使えるようにします。第 3 章ではそれを使って相図（局在転移）を調べ、第 4 章では基底状態を摂動から作る Gell-Mann–Low の公式を厳密に述べ、基底状態が Fock 空間に入らない赤外の状況を Tauber 定理で扱います。最終章では、浴を弱結合極限で消去すると完全正値な半群（Lindblad 型の生成子）が現れることを、GKSL 定理と Davies の弱結合極限として証明します。

この章の主役である spin-boson 模型は [Nelson 模型と spin-boson 模型](/physics/fock-space/nelson-spin-boson) で定義済みです。そこで見たとおり、トンネル分裂 $\varepsilon=0$ では厳密に解け、基底状態は 2 重に縮退してボソンの雲をまといます。$\varepsilon\ne0$ を入れると、2 つの雲の重なり $e^{-\lambda^2\|\omega^{-1}v\|^2}$ がトンネルを抑えます。Ohmic 型の浴ではこの重なりが赤外で $0$ になり、結合が強いとトンネルが完全に止まる**局在**が起きると考えられています。

この現象を最初に定量的に捉えたのは、Kondo 問題についての Anderson–Yuval–Hamann の仕事でした。彼らは Kondo 模型の分配関数をスピン反転の時刻について展開し、それが 1 次元の Coulomb 気体（対数相互作用する交互電荷の気体）になることを見つけました。spin-boson 模型も同じ Coulomb 気体に写るので、2 つの模型は同じ普遍クラスに属します。さらに特別な結合（Toulouse 点）ではフェルミオンに書き直すと自由になり、共鳴準位模型として厳密に解けます。この章では、これらの対応のうち数学的に閉じた形で述べられる部分を、証明つきで整理します。

（この章の続きは購入者向けです。）
