# Jordan–Wigner 変換と Bethe 仮説：XY 鎖の自由フェルミオン解と XXZ 鎖の座標 Bethe 仮説

> 周期境界の XY 鎖を Jordan–Wigner 変換でパリティごとの 2 次フェルミオン系に直し、Fourier 変換と 2×2 の Bogoliubov 変換で全スペクトルを求める。XXZ 鎖では座標 Bethe 仮説の波動関数が固有ベクトルになることと Bethe 方程式を証明する。
> https://rikai.mugen-giken.com/physics/many-fermion-systems/jordan-wigner-bethe

## 0. この記事の要点

小さな磁石（スピン）が一列に並んだ鎖は、隣どうしが相互作用するだけの単純な模型でも、$L$ 個のスピンの状態が $2^L$ 通りあるので、そのまま計算するのは困難です。この記事は、鎖の上のスピンを「粒子」と読み替える Jordan–Wigner 変換で計算を簡単にできる場合（XY 鎖）と、粒子どうしが衝突しても 2 体の衝突の積だけで状態が書ける場合（XXZ 鎖の Bethe 仮説）の 2 つの厳密解を扱います。読み終えると、$2^L$ 個の固有値を $2\times2$ 行列の対角化から求める手順と、Bethe 方程式が出てくる理由が分かります。

- スピン $\frac12$ の鎖の Jordan–Wigner 変換 $a_j=\sigma^z_1\cdots\sigma^z_{j-1}\sigma^+_j$ で、隣接する 2 サイトの $\sigma^\pm\sigma^\mp$、$\sigma^\pm\sigma^\pm$ はフェルミオンの 2 次式になります。周期境界の結合だけは、フェルミオン数のパリティ $P=(-1)^N$ を掛けた形になり、$P=+1$ の部分空間では反周期、$P=-1$ では周期の境界条件の自由フェルミオンになります。
- XY 鎖 $-\sum_j[\frac{1+\gamma}2\sigma^x_j\sigma^x_{j+1}+\frac{1-\gamma}2\sigma^y_j\sigma^y_{j+1}]-h\sum_j\sigma^z_j$ を、Fourier 変換と運動量 $\pm k$ の 2×2 の [Bogoliubov 変換](/physics/fock-space/bogoliubov-transformations#def-bogoliubov-transformation)（粒子と正孔の生成・消滅演算子を混ぜて対角化する変換）で対角化し、$2^L$ 個の固有値をすべて $E_k=2\sqrt{(h-\cos k)^2+\gamma^2\sin^2k}$ とパリティの制約で書き表します（Lieb–Schultz–Mattis）。横磁場 Ising 模型では $h=1$ でギャップが閉じます。
- XXZ 鎖 $\sum_j[S^x_jS^x_{j+1}+S^y_jS^y_{j+1}+\Delta(S^z_jS^z_{j+1}-\frac14)]$ は下向きスピンの数 $M$ を保ちます。Jordan–Wigner 変換では最近接の密度相互作用を持つフェルミオン系で、$\Delta=0$ だけが自由です。
- 座標 Bethe 仮説：波動関数 $\psi(x_1,\dots,x_M)=\sum_{P\in S_M}A(P)\exp(i\sum_jk_{P(j)}x_j)$ の係数を 2 体の散乱振幅 $S(k,k')$ の積で決めると、どんなに多くの下向きスピンが隣り合っても固有方程式が満たされることを、「隣接条件」が 2 体ごとに分解することから証明します。周期境界条件は Bethe 方程式 $e^{ik_aL}=\prod_{b\ne a}S(k_a,k_b)$ に同値です。
- $\Delta=0$ では $S=-1$ で Bethe 仮説が [Slater 行列式](/physics/quantum-mechanics-2/identical-particles#def-slater-determinant)に戻り、境界条件 $e^{ikL}=(-1)^{M-1}$ が Jordan–Wigner のパリティの規則と一致します。Bethe ベクトルの完全性は主張にとどめます。

<Aside type="tip" title="この記事で使う事前知識">

- **CAR（正準反交換関係）**: フェルミオンの生成・消滅演算子が満たす反交換関係で、同じ状態に 2 個は入れないことを表します。→ [フェルミオン Fock 空間](/physics/fock-space/fermion-fock-space#def-fermion-fock-space)
- **Fock 空間の表現**: 粒子数が変わる状態の全体の空間に、生成・消滅演算子が作用する形で CAR を実現したものです。→ [フェルミオン Fock 空間](/physics/fock-space/fermion-fock-space#def-fermion-fock-space)
- **Bogoliubov 変換**: 生成演算子と消滅演算子の線形結合で新しいフェルミオンを作り、ハミルトニアンを対角化する変換です。→ [Bogoliubov 変換](/physics/fock-space/bogoliubov-transformations#def-bogoliubov-transformation)
- **Slater 行列式**: 互いに区別できないフェルミオン $M$ 個の状態を、1 粒子の波動関数の行列式で書いたものです。→ [Slater 行列式](/physics/quantum-mechanics-2/identical-particles#def-slater-determinant)
- **局所代数（量子スピン系）**: 有限個のサイトの上のスピンの演算子全体がなす代数です。→ [量子スピン系](/mathematics/operator-algebras/quantum-spin-systems#def-quasi-local-algebra)
- **朝永–Luttinger 模型**: Fermi 点の近くで分散を線形にした 1 次元フェルミオン系の模型です。→ [朝永–Luttinger 模型](/physics/many-fermion-systems/luttinger-liquids-bosonization#def-luttinger-model)

</Aside>

## 1. 動機

[前章](/physics/many-fermion-systems/luttinger-liquids-bosonization)の朝永–Luttinger 模型は、分散を線形にした連続模型でした。格子の上で厳密に解ける 1 次元の量子多体系としては、スピン鎖が代表的です。スピン鎖とフェルミオン系を行き来する道具が Jordan–Wigner 変換で、[フェルミオン Fock 空間](/physics/fock-space/fermion-fock-space)の章で開いた鎖の XX 模型に使いました（<Ref to="physics/fock-space/fermion-fock-space#prop-jordan-wigner" />）。本章ではまず、周期境界の XY 鎖を完全に解きます。周期境界ではフェルミオンの「ひも」が鎖を一周するため、境界の結合にフェルミオン数のパリティが現れ、2 つの境界条件の自由フェルミオンをつなぎ合わせる必要があります。これを正確に処理したのが Lieb–Schultz–Mattis（1961）です。

$S^zS^z$ の項を持つ XXZ 鎖は、Jordan–Wigner 変換で相互作用するフェルミオンになり、もはや 2 次形式ではありません。Bethe（1931）は等方的な場合（$\Delta=1$）に、固有ベクトルを平面波の重ね合わせとして書き、その係数が 2 粒子の散乱だけで決まるという仮説を立てて解きました。多体の散乱が 2 体の散乱の積に分解するという性質（散乱の因子化）が 1 次元の可積分系の核心で、本章ではそれが座標表示で実際に成り立つことを、隣接する粒子の塊がいくつあっても通用する形で証明します。XXZ 鎖は $|\Delta|\lt1$ で朝永–Luttinger 液体の典型例で、前章の Luttinger パラメータ $K$ が Bethe 仮説から厳密に求まります（<Ref to="rem-xxz-luttinger" />）。

（この章の続きは購入者向けです。）
