# φ⁴ 理論の自明性・有限体積効果・O(N) 模型：くりこまれた結合が消える理由と Higgs 質量の上限

> 格子 φ⁴ 理論のくりこまれた結合を感受率から定義し、4 次元の自明性を Lüscher–Weisz の解析と Aizenman・Aizenman–Duminil-Copin の厳密結果から論じる。Higgs 質量の上限、有限体積効果と零モード、O(N) 模型と大 N 展開も扱う。
> https://rikai.mugen-giken.com/physics/lattice-field-theory/phi4-triviality

## 0. この記事の要点

粒子どうしの押し合い（相互作用）の強さは、近くで測るか遠くから測るかで違って見えます。この記事の中心の問いは、「素粒子を表す最も単純な模型の 1 つで、相互作用を好きなだけ強くして細かい格子の目を無限に細かくしていくと、遠くから見た相互作用の強さはどうなるか」です。4 次元では、答えは「ゼロに近づく」です。読み終えると、この結論が Higgs 粒子の質量の上限という具体的な数字にどうつながるかと、周期的な箱や連続対称性のある模型で何が起きるかを、一通り説明できるようになります。

- 対称相のくりこまれた質量 $m_R$、場のくりこみ $Z_R$、結合 $g_R$ は、感受率 $\chi_2,\chi_4$ と 2 次モーメント $\mu_2$ から $m_R^2=2d\chi_2/\mu_2$、$g_R=-m_R^d\chi_4/\chi_2^2$ で定まります（<Ref to="prop-renormalized-from-moments" />）。$g_R$ は数値計算と級数展開で直接測れる量です。
- 4 次元では、どれほど大きな裸の結合 $\lambda$ から出発しても、連続極限 $m_R\to0$ で $g_R\to0$ となります（自明性）。$\beta$ 関数が正なので、減り方は $g_R\simeq1/(\beta_1\ln(1/m_R))$ と対数的です（<Ref to="prop-log-decay-coupling" />）。
- 厳密な結果として、$d\ge5$ では Aizenman と Fröhlich（1982）が、$d=4$ では Aizenman と Duminil-Copin（2021）が、Ising 模型と $\phi^4$ 模型のスケーリング極限が Gauss 的であることを証明しました（<Ref to="thm-aizenman-frohlich" />、<Ref to="thm-aizenman-duminil-copin" />）。
- 自明性は、カットオフ $\Lambda$ を固定したときの $g_R$ の上限、したがって Higgs 質量 $m_H^2=g_Rv^2/3$ の上限を与えます。格子の非摂動的な解析では $\Lambda\gtrsim2m_H$ のとき $m_H\lesssim$ 600〜650 GeV 程度です。
- 有限体積では、質量ギャップのある相で補正が $e^{-mL}$ で消え、鏡像和で計算できます（<Ref to="thm-image-sum" />）。対称性の破れた相や質量 0 の場合は、零モードとトンネル効果が支配的になります。
- O(N) 模型では、$d\ge3$ で[反射正値性](/physics/lattice-field-theory/reflection-positivity-lattice#def-reflection-positivity)からの赤外評価（長距離の相関の大きさに上限を与える不等式）が連続対称性の[自発的破れ](/physics/qft/gauge-theory-and-symmetry-breaking#def-ssb)を保証し（<Ref to="cor-long-range-order" />）、$d=2$ では Mermin–Wagner の定理がそれを禁じます。大 N 極限ではギャップ方程式が臨界点を赤外評価の閾値と一致させます。

<Aside type="tip" title="この記事で使う事前知識">

- **格子 $\phi^4$ 理論の作用**: 格子点ごとの実数の場に、隣どうしの結合 $\kappa$ と自己相互作用 $\lambda$ を持たせた模型。→ [格子 φ⁴ 作用](/physics/lattice-field-theory/lattice-scalar-field#def-lattice-phi4-action)
- **感受率と 2 次モーメント**: 2 点関数を全格子点で足したものが感受率 $\chi_2$、距離の 2 乗の重みを付けて足したものが $\mu_2$。→ [感受率・2 次モーメント](/physics/lattice-field-theory/lattice-scalar-field#def-susceptibility-second-moment)
- **ベータ関数**: エネルギーのスケールを変えたときに結合の値がどう変わるかを表す関数。→ [$\phi^4$ 理論のベータ関数](/physics/qft/renormalization#prop-phi4-beta)
- **反射正値性**: 格子を鏡で折り返したときの期待値が非負になるという性質。赤外評価の出発点になる。→ [反射正値性](/physics/lattice-field-theory/reflection-positivity-lattice#def-reflection-positivity)
- **自発的対称性の破れ**: 作用は対称なのに、選ばれる真空がその対称性を保たないこと。→ [自発的対称性の破れ](/physics/qft/gauge-theory-and-symmetry-breaking#def-ssb)

</Aside>

## 1. 動機

[前章](/physics/lattice-field-theory/lattice-scalar-field) で、格子 $\phi^4$ 理論の連続極限は臨界線 $\kappa=\kappa_c(\lambda)$ に近づくことで取ると述べました。問題は、そこで得られる連続理論がどんな理論かです。[くりこみ理論](/physics/qft/renormalization) で見たとおり、4 次元 $\phi^4$ 理論のベータ関数は正で、結合は紫外で増大し、1 ループでは有限のエネルギーで Landau 極（結合が無限大になってしまうエネルギー）に達します。逆にいえば、カットオフ $\Lambda$ を無限大にしながら低エネルギーの結合を有限に保つことはできず、$\Lambda\to\infty$ で低エネルギーの結合が $0$ に押しつぶされることが予想されます。これが「自明性」の摂動論的な根拠です。

摂動論の結論は、結合が大きい領域では信用できません。裸の結合 $\lambda$ を非常に大きく、あるいは $\infty$（Ising 極限）にとれば、非自明な紫外固定点が現れるかもしれないからです。この問いに非摂動的に答えるのが、格子の役目です。答えは否定的で、4 次元の $\phi^4$ 理論は相互作用する連続理論を与えません。それでも、カットオフを有限に保った有効理論としては意味を持ち、そのことが Higgs 粒子の質量の上限という物理的な予言につながります。

後半では、数値計算に避けて通れない有限体積効果と、標準模型の Higgs 場にあたる O(N) 模型を扱います。O(N) 模型は、連続対称性の自発的破れ・ゴールドストーンボソン・大 N 展開という 3 つの話題を、格子上で厳密に、あるいは制御された近似で議論できる場です。

（この章の続きは購入者向けです。）
