# Symanzik 改良・gradient flow・Lüscher の有限体積公式：格子の系統誤差を制御する

> Symanzik の有効理論で格子アーティファクトを分類し、clover 項と Lüscher–Weisz ゲージ作用による改良を導く。Wilson flow とスケール t0、流れた場の有限性、Lüscher の質量補正と 2 粒子の位相差公式、Schrödinger 汎関数によるくりこみを述べる。
> https://rikai.mugen-giken.com/physics/lattice-field-theory/lattice-improvement-finite-volume

## 0. この記事の要点

コンピュータの上で素粒子の理論を計算するには、空間を細かい格子に区切り、有限の大きさの箱に入れます。すると答えは、格子の細かさと箱の大きさに少しずつ左右されてしまいます。この記事は、そのずれの大きさを見積もり、小さくし、場合によっては物理の情報を取り出すのに使う方法を紹介します。読み終えると、格子計算の誤差がどこから来て、どう減らされているかの全体像がつかめます。

- 格子理論は、連続理論に次元の高い演算子を $a$ のべきで足した**Symanzik の有効理論**（格子間隔の誤差を連続理論の言葉で書き表す考え方）で記述されます。格子間隔の誤差は「どの次元 5・6 の演算子が現れるか」で分類でき、それを打ち消す項を格子作用に足すのが改良です。
- Wilson フェルミオンの $O(a)$ 誤差は、運動方程式と質量・結合の再定義を使うと、**clover 項** $c_{\mathrm{SW}}\frac{ia}{4}\sigma_{\mu\nu}\hat F_{\mu\nu}$ の 1 つの係数に集約されます。ゲージ作用の $O(a^2)$ 誤差は、$1\times2$ の長方形ループを係数 $c_1=-1/12$ で足すと古典的に消えます。
- **Wilson flow**（gradient flow）はゲージ場を作用の勾配方向に流す拡散方程式で、半径 $\sqrt{8t}$ で場を平滑化します。$t\gt0$ のゲージ不変な合成場は追加のくりこみなしに有限で、$t^2\langle E(t)\rangle=0.3$ から精度のよいスケール $t_0$ が決まります。
- **Lüscher の公式**は有限体積を誤差ではなく道具に変えます。安定粒子の質量は $e^{-mL}$ 程度しかずれず、2 粒子のエネルギー準位は $k\cot\delta_0(k)=S(\eta)/(\pi L)$ を通して散乱位相差を与えます。
- **Schrödinger 汎関数**は箱の大きさ $L$ だけをスケールとするくりこみ結合を定義し、ステップスケーリング関数の反復で低エネルギーから高エネルギーまで非摂動的につなぎます。

<Aside type="tip" title="この記事で使う事前知識">

- **Wilson 作用**: 格子ゲージ理論で、リンク変数を 1 周した最小の正方形（プラケット）の和として書かれる作用。→ [Wilson 作用](/physics/lattice-field-theory/lattice-gauge-fields#def-wilson-action)
- **Wilson–Dirac 作用素**: 格子上のフェルミオンの作用に Wilson 項を加えたもの。→ [Wilson–Dirac 作用素](/physics/lattice-field-theory/lattice-fermions#def-wilson-dirac)
- **ハイブリッド・モンテカルロ法**: 格子上の場の配置を確率的に生成する標準的な方法の 1 つ。→ [モンテカルロ法](/physics/lattice-field-theory/lattice-monte-carlo#def-hmc)
- **Sommer スケール**: 静的クォーク間の力から決める、格子間隔を物理単位に換算するための長さの基準。→ [Sommer スケール](/physics/lattice-field-theory/lattice-qcd#def-sommer-scale)
- **ハミルトニアン**: 系の全エネルギーを表す演算子で、その固有値がエネルギー準位。
- **パリティ**: 空間座標の向きを反転する離散対称性の操作。→ [パリティ](/physics/qft/dirac-field#def-discrete-symmetries)

</Aside>

## 1. 動機

格子 QCD の計算結果には、統計誤差（[モンテカルロ法](/physics/lattice-field-theory/lattice-monte-carlo)）のほかに 3 種類の系統誤差があります。格子間隔 $a$ が有限であること、体積 $L^4$ が有限であること、くりこみ定数を摂動論で近似していることです。$a$ を半分にすると計算量は少なくとも $2^4$ 倍、臨界減速を考えれば $2^6$ 倍程度になるので、$a\to0$ の外挿を力ずくで行うことはできません。誤差が $O(a)$ か $O(a^2)$ かで、同じ格子で得られる精度は大きく違います。

Symanzik（1983 年）は、格子間隔の誤差そのものを連続理論の言葉で記述しました。格子作用は、低エネルギーでは連続理論の作用に「格子間隔の分だけ抑えられた高次元の演算子」を足したものと区別できない、という考え方です。演算子の候補は対称性と次元で決まる有限個なので、それぞれの係数を調整すれば誤差を系統的に 1 次ずつ消せます。

有限体積の側では、Lüscher（1986 年・1991 年）が、有限体積でのエネルギーの体積依存性が無限体積の物理量（質量・散乱振幅）で決まることを示しました。体積依存性は避けるべき誤差であると同時に、Euclid 格子では直接測れない散乱の情報を引き出す窓にもなります。

くりこみについては、Lüscher らが Schrödinger 汎関数と gradient flow という 2 つの道具を作り、摂動論に頼らずにくりこみ定数と走る結合を決める枠組みを整えました。この記事はこれらを順に述べます。いずれも主張の完全な証明は論文数本分の長さになるので、核心の主張を正確に述べ、自由場・1 ループ・古典極限など自分で確かめられる部分は証明します。

（この章の続きは購入者向けです。）
