# 質量のあるベクトル場：Proca 場の Fock 量子化・Stueckelberg 場の Krein–Fock 実現と物理商・質量 0 極限

> 質量 m のベクトル場を、3 偏極の Proca 場として正定値の Fock 空間上に構成し、4 成分のベクトル場と Stueckelberg スカラーからなる Krein–Fock 空間の Gupta–Bleuler 型の商が Proca の Fock 空間とユニタリ同値であることを証明する。m→0 の極限で縦偏極がスカラーに移ることを示す。
> https://rikai.mugen-giken.com/physics/indefinite-metric/proca-stueckelberg

## 0. この記事の要点

光は質量がなく、振動の向き（偏極）が 2 通りです。では、光に質量があったらどうなるでしょうか。質量のあるベクトル場では、振動の向きは 3 通りになります。この記事は、その 3 通りを素直に数える方法（Proca 場）と、あえて余分な成分を足して見通しを良くし、あとで余りを取り除く方法（Stueckelberg 場）が、同じ結果を与えることを示します。さらに質量を 0 に近づけると $3=2+1$ の形で光につながることも確かめます。

- 質量 $m>0$ の自由ベクトル場（Proca 場）は、運動量 $\boldsymbol k$ ごとに $k_\mu\varepsilon^\mu=0$ を満たす 3 つの偏極ベクトル $\varepsilon_\lambda(\boldsymbol k)$ をもち、1 粒子空間 $L^2(\mathbb{R}^3,d\mu_m;\mathbb{C}^3)$ 上の**正定値**（確率として読める普通の内積）の [Fock 空間](/physics/qft/why-quantum-field-theory#def-fock-space)に構成できます。2 点関数は $\big(-g_{\mu\nu}-m^{-2}\partial_\mu\partial_\nu\big)D_m^+$ で、場は局所的で、Proca 方程式 $\partial^\mu F_{\mu\nu}+m^2A_\nu=0$ を作用素として満たします。
- Gupta–Bleuler 形式の証明は、「1 粒子空間の中立部分空間 $\mathfrak g$ と、それと Hilbert 内積で直交し $J_1$ で不変な正部分空間 $\mathfrak t$ があって $\mathfrak g^{[\perp]}=\mathfrak t\oplus\mathfrak g$」という 1 つの構造だけを使っています。本章ではこれを抽象化した **Gupta–Bleuler 三つ組**の定理を証明し、以降の章（線形化重力など）で繰り返し使います。
- **Stueckelberg 形式**では、4 成分のベクトル場 $A_\mu$（時間成分が負ノルム）と正ノルムのスカラー $B$ を、どちらも質量 $m$ の Klein–Gordon 場として Krein–Fock 空間に置き、補助条件 $(\partial\cdot A+mB)^{(+)}\Psi=0$ で物理的状態を選びます。その商空間は Proca の Fock 空間と等長同型で、ゲージ不変な組み合わせ $A_\mu-m^{-1}\partial_\mu B$ は商の上で Proca 場そのものになります（本章の主定理）。
- Proca 場の 2 点関数は $m\to0$ で $m^{-2}$ の項のために発散しますが、保存電流（発散が $0$ の試験関数）で均した量や場の強さ $F_{\mu\nu}$ の相関は Maxwell 場のものに収束し、縦偏極の振幅は $O(m)$ で消えます。Stueckelberg 形式では極限は滑らかで、縦偏極のベクトル $e_3(\boldsymbol k)$ はスカラー $B$ の方向へ、ゲージ方向 $n(\boldsymbol k)$ は Gupta–Bleuler のゲージ光子の方向へ連続に移ります。自由度は $3=2+1$ のまま保たれます。

<Aside type="tip" title="この記事で使う事前知識">

- **Gupta–Bleuler 形式**: 電磁場の 4 成分をそのまま量子化すると負ノルムの状態が出るので、補助条件で物理的な状態を選び、ノルム 0 の状態を割って正定値にする方法。→ [Gupta–Bleuler 形式の数学的構造](/physics/indefinite-metric/gupta-bleuler-rigorous)
- **Krein 空間と不定内積**: 内積が負の値をとることを許した空間。普通の内積 $\langle\cdot,\cdot\rangle$ と符号を決める作用素 $J_1$ で $[v,w]_1=\langle v,J_1w\rangle$ と書く。→ [Gupta–Bleuler 形式の数学的構造](/physics/indefinite-metric/gupta-bleuler-rigorous)
- **ボソン Fock 空間**: 1 粒子の空間から、粒子を 0 個、1 個、2 個、…と並べて作る空間。→ [ボソン Fock 空間](/physics/fock-space/boson-fock-space#def-boson-fock-space)
- **自由スカラー場**: 質量 $m$ の Klein–Gordon 方程式に従う、成分が 1 つの場。→ [自由スカラー場](/physics/fock-space/free-scalar-field#def-spacetime-field)
- **J 共役**: 不定内積に関する随伴作用素のこと。→ [J 共役](/physics/indefinite-metric/krein-operators#def-j-adjoint)

</Aside>

## 1. 動機

[電磁場](/physics/indefinite-metric/gupta-bleuler-rigorous)の共変量子化で不定計量が避けられないのは、質量 $0$ の光子がゲージ不変性をもち、4 成分のうち物理的なものが 2 つしかないからでした。では質量のあるベクトル場ではどうでしょうか。質量項 $\frac12m^2A_\mu A^\mu$ はゲージ不変性を壊し、運動方程式から $\partial\cdot A=0$ が拘束として出てきます（[ゲージ理論と対称性の破れ](/physics/qft/gauge-theory-and-symmetry-breaking) の Proca 理論の議論）。拘束を先に解いてしまえば 3 偏極だけが残り、不定計量は不要です。これが Proca の量子化で、第 3 節で正定値の Fock 空間上に構成します。

それでも Proca の形には 2 つの不満があります。1 つは 2 点関数の $k_\mu k_\nu/m^2$ の項で、紫外で減衰せず、$m\to0$ で発散します。くりこみ可能性が素朴には失われるのはこの項のためです（<Ref to="physics/qft/gauge-theory-and-symmetry-breaking#rem-proca-renormalizability" />）。もう 1 つは、Lorentz 共変性が偏極ベクトルの選び方の中に隠れ、場の各成分が単純な Klein–Gordon 場にならないことです。

Stueckelberg（1938）は、スカラー場 $B$ を 1 つ足してゲージ不変性を回復し、そのうえで共変ゲージを固定することで、5 つの成分がどれも質量 $m$ の Klein–Gordon 方程式を満たす定式化を与えました。代償は不定計量です。$A_0$ が負ノルムになり、物理的状態を補助条件で選んで零ノルム状態を割る必要があります。つまり Stueckelberg 形式は、質量のある場合の Gupta–Bleuler 形式です。

本章の目標は次の 3 つです。

1. Proca 場を正定値の Fock 空間上で構成し、2 点関数・局所性・場の方程式を証明する。
2. Gupta–Bleuler 形式を抽象化した定理を用意し、Stueckelberg 場の Krein–Fock 実現の物理的商が Proca の Fock 空間に等長同型で、ゲージ不変な場が Proca 場に移ることを証明する。
3. $m\to0$ の極限で何が起こるかを、Proca 側（発散と縦偏極の消失）と Stueckelberg 側（滑らかな極限と自由度の付け替え）の両方から調べる。

記法は前章までに従います。Minkowski 計量は $g=\mathrm{diag}(1,-1,-1,-1)$、内積 $\langle\cdot,\cdot\rangle$ と不定内積 $[\cdot,\cdot]$ はどちらも第 1 変数について共役線形です。

（この章の続きは購入者向けです。）
