# ゲージの同値性：Lorenz ゲージと Coulomb ゲージのユニタリ同値・外部電流・切断つき QED・ξ 族

> 共変ゲージの Krein–Fock 空間で Gupta–Bleuler 条件を解き、物理的状態の商が Coulomb ゲージの Fock 空間とユニタリ同値であることを場と Poincaré 変換まで含めて証明する。保存外部電流の散乱演算子、切断つき QED の定式化と未解決点、ξ 族を扱う。
> https://rikai.mugen-giken.com/physics/indefinite-metric/gauge-equivalence

## 0. この記事の要点

光の量子論を作るには、電磁場の「ポテンシャル」の成分のうち、実際の光には関係しない余分な自由度をどう扱うかを決めなければなりません。この扱い方（ゲージの固定）には、式の見た目がきれいだが負の確率が出てしまうやり方（Lorenz ゲージ）と、物理的な光子だけを残すが相対論的な対称性が見えにくいやり方（Coulomb ゲージ）があります。この記事では、両者が結局は同じ理論を与えることを、「負の確率を生む余分な部分を割り算で消す」という操作で確かめます。読み終えると、どの範囲で同じと言え、どこから先が未解決なのかが分かります。

- 自由電磁場の共変（Feynman）ゲージの状態空間は、1 粒子空間 $\mathfrak h=L^2(\mathbb{R}^3;\mathbb{C}^4)$ に不定内積 $[u,v]_1=-\int\overline{u^\mu}g_{\mu\nu}v^\nu\,d^3k$ を入れた [Krein 空間](/physics/indefinite-metric/krein-spaces#def-krein-space)（内積が負の値も取りうる空間）の [Fock 空間](/physics/fock-space/boson-fock-space#def-boson-fock-space)（粒子数ごとの状態を集めた空間）です。Gupta–Bleuler 条件を満たすベクトルの全体は、閉部分空間 $\mathcal K_{\mathrm{phys}}=\mathcal F_{\mathrm b}(\mathfrak h_{\mathrm{phys}})$（$\mathfrak h_{\mathrm{phys}}=\{k_\mu u^\mu=0\}$）にちょうど一致します。
- $\mathcal K_{\mathrm{phys}}$ は非負で、その等方部分で割った商は**完備化なしで** Coulomb ゲージの Fock 空間 $\mathcal F_{\mathrm b}(\mathfrak h_{\mathrm C})$ とユニタリ同値です。この同値は真空・ゲージ不変な場 $A(h)$（$\partial^\mu h_\mu=0$）・時空並進・Lorentz 変換をすべて絡み合わせます。ゲージ不変でない場はこの商の上で定義できません。
- 保存する外部電流 $j^\mu$ の散乱演算子は、Lorenz ゲージでは Krein 空間上の [Weyl 作用素](/physics/fock-space/segal-field-weyl#def-weyl-operator)、Coulomb ゲージでは Hilbert 空間上の Weyl 作用素に位相を掛けたものです。両者は物理的部分空間の上で一致し、Coulomb ゲージの**瞬間的クーロン相互作用**の位相は、Lorenz ゲージのスカラー光子と縦光子の交換がちょうど再現します。電流が保存しないと、Lorenz 側では真空持続の「確率」が $1$ を超えます。
- 紫外切断つき QED では、Coulomb ゲージのハミルトニアンは Kato–Rellich の定理で自己共役になり、Feynman ゲージのハミルトニアンは [J 自己共役](/physics/indefinite-metric/krein-operators#def-j-selfadjoint)（Krein 空間での自己共役にあたる性質）になります。しかし、切断が局所的な電流保存を壊すこと、J ユニタリな時間発展の存在、荷電状態と Gauss の法則の関係が障害となり、非摂動的なゲージ同値性は一般には示されていません。
- ゲージパラメータ $\xi$ の族では、2 点関数の $\xi$ 依存部分は $k^\mu k^\nu$ に比例し、ゲージ不変な試験関数と縮約すると消えます。したがって、ゲージ不変な場の相関関数と物理的 Hilbert 空間は、すべての $\xi\ge0$ で Coulomb ゲージのものと一致します。

<Aside type="tip" title="この記事で使う事前知識">

- **Krein 空間**: 内積が負の値も取りうるベクトル空間で、正の部分と負の部分に分けて扱えるもの。→ [Krein 空間](/physics/indefinite-metric/krein-spaces#def-krein-space)
- **ボソン Fock 空間**: 1 粒子の状態空間から、粒子数 0, 1, 2, … の対称な状態を全部集めて作る空間。→ [ボソン Fock 空間](/physics/fock-space/boson-fock-space#def-boson-fock-space)
- **Weyl 作用素**: 場を指数の肩に載せた形の作用素で、状態をずらす（コヒーレント状態を作る）もの。→ [Weyl 作用素](/physics/fock-space/segal-field-weyl#def-weyl-operator)
- **J 自己共役**: Krein 空間の内積に関して自己共役にあたる性質。→ [J 自己共役](/physics/indefinite-metric/krein-operators#def-j-selfadjoint)
- **J ユニタリ作用素**: Krein 空間の内積を保つ作用素。→ [J ユニタリ作用素](/physics/indefinite-metric/krein-operators#def-j-unitary)
- **ゲージ変換**: 電磁ポテンシャルを $A\to A+\partial\Lambda$ と取り替えても電場・磁場が変わらないこと。→ [ゲージ変換](/physics/electromagnetism/gauge-potentials#def-gauge-transformation)

</Aside>

## 1. 動機

[電磁場の量子化とゲージ固定](/physics/qft/maxwell-field-quantization)では、Coulomb ゲージと Feynman ゲージという 2 つの量子化を並べ、空間を箱に入れた有限粒子ベクトルの範囲で、Gupta–Bleuler 条件を満たす状態の商が横光子の空間と等長同型であることを示しました（<Ref to="physics/qft/maxwell-field-quantization#thm-gupta-bleuler" />）。散乱振幅の言葉では、保存カレント間の光子交換が両ゲージで一致することも確かめました（<Ref to="physics/qft/maxwell-field-quantization#ex-coulomb-vs-feynman" />）。

本テーマのここまでの章で、この結果を Krein 空間の言葉で述べ直す準備はそろっています。[Krein 空間と J 内積](/physics/indefinite-metric/krein-spaces)は退化した非負部分空間の商の作り方を、[Krein 空間上の作用素](/physics/indefinite-metric/krein-operators)は不変な非負部分空間の上で J ユニタリ群がユニタリ群を誘導することを与えました。本章の課題は、「Lorenz ゲージと Coulomb ゲージは同じ理論である」という主張を、どこまで定理として言えるかを確定することです。

主張には少なくとも 3 つの水準があります。

1. **状態空間の同値**：物理的状態の商空間どうしがユニタリ同値である。
2. **観測量と対称性の同値**：その同型がゲージ不変な場、時間発展、Poincaré 変換を絡み合わせる。
3. **相互作用の下での同値**：電流と結合したときにも、物理的部分空間が時間発展で保たれ、同型が動力学を絡み合わせる。

自由場では 3 つの水準すべてが証明できます（第 3 節）。古典的な外部電流との結合でも、電流が保存すれば証明でき、そこで Coulomb ゲージ特有の瞬間的相互作用がどこから来るのかが見えます（第 4 節）。量子化された Dirac 場と結合した QED では、紫外切断を入れても、上の 3 の水準での同値は一般には得られていません。どの仮定が足りないのかを第 5 節で整理します。最後に、ゲージ固定のパラメータ $\xi$ の族について、物理量の $\xi$ 非依存性を自由場の範囲で証明します（第 6 節）。

記号は本テーマの共通記法に従います。内積は第 1 変数について共役線形、Minkowski 計量は $g=\mathrm{diag}(1,-1,-1,-1)$、$k\cdot x=k^0x^0-\boldsymbol k\cdot\boldsymbol x$ です。

（この章の続きは購入者向けです。）
