# Coulomb ゲージのハミルトニアン形式：Christ–Lee ハミルトニアン・Gribov 領域・格子上の Gauss 法則・Schwinger 模型

> 非可換ゲージ場の Coulomb ゲージで Gauss 法則を FP 作用素で解き、Christ–Lee 型のハミルトニアンを導く。Gribov 領域の凸性・有界性と軌道上の極小点の性質を証明し、格子上で木ゲージにより物理的状態空間と色電荷の超選択則を決め、Schwinger 模型の質量生成と Lowenstein–Swieca 解の Krein 構造を扱う。
> https://rikai.mugen-giken.com/physics/indefinite-metric/coulomb-gauge-hamiltonian

## 0. この記事の要点

電磁気では、電荷から電場が決まる関係（Gauss 法則）を解けば、電場の「電荷で決まる部分」を電荷の分布だけで書き直せます。この記事は、同じことを、力の担い手自身も電荷をもつ非可換ゲージ理論でやろうとすると何が起こるかを調べます。解くために必要な作用素が、場の大きさによっては逆を持てなくなるため、「どこまでの場なら安全か」という領域の形が問題になります。読み終えると、その領域の形、格子の上でこの問題が厳密に解けること、空間 1 次元の解ける模型で光子が質量をもつ様子が分かります。

- Coulomb ゲージ $\partial_iA_i=0$ では、Gauss 法則 $D_iE_i=\rho$ を電場の縦成分について解けます。電場を $E=E^{\mathrm{tr}}-\nabla\phi$ と分けると、$\phi$ は **Faddeev–Popov 作用素** $M(A)=-\partial_iD_i$ を使った方程式 $M(A)\phi=\rho-[A_i,E^{\mathrm{tr}}_i]$ の解で、エネルギーは横成分の運動エネルギーと「Coulomb 項」$\frac12\langle\rho_{\mathrm{tot}},M^{-1}(-\Delta)M^{-1}\rho_{\mathrm{tot}}\rangle$ の和になります。これが **Christ–Lee ハミルトニアン**の古典的な骨格で、量子論では FP 行列式 $\det M(A)$ が測度と演算子の順序に入ります。この順序（微分と行列式の掛け算をどの順に並べるか）の意味を、2 次元の回転対称性という最も簡単な模型で厳密に確かめます。
- Coulomb 項が意味をもつには $M(A)$ が可逆でなければなりません。$M(A)>0$ となる横波の配位の集合が **Gribov 領域** $\Omega$ です。3 次元トーラスの上で、$\Omega$ が凸で $0$ の近傍を含み、非可換な場合にはすべての方向に有界であること、その境界（Gribov 地平線）で無限小の Gribov コピー（同じゲージ軌道上の、Coulomb ゲージ条件を満たす別の配位）が現れること、ゲージ軌道上でノルムを極小にする配位が $\overline\Omega$ に入ることを証明します。
- 格子ゲージ理論では Gauss 法則を厳密に解けます。全域木の上のリンクを $1$ に固定する**木ゲージ**で、物理的状態空間は「木に入らないリンクの関数で、根での大域的な色回転に対して共変なもの」とユニタリ同値になり、Gauss 法則を根以外で課した空間は**全色電荷**で分類される超選択セクター（観測量では互いに行き来できない状態空間の部分）に分かれます。これは Kijowski–Rudolph の物理的観測量の代数の骨格です。
- 1+1 次元の QED（**Schwinger 模型**）では、Coulomb ゲージで Gauss 法則を解いた Coulomb 項が、ボソン化（フェルミオンの理論を等価なスカラー場の理論で書き直すこと）した場 $\phi$ の質量項 $\frac{e^2}{2\pi}\int\phi^2$ に化け、光子は質量 $e/\sqrt\pi$ のボソンになります。共変なゲージでの Lowenstein–Swieca の演算子解は、質量 $0$ の正ノルムと負ノルムの場の対を含む [Krein 空間](/physics/indefinite-metric/krein-spaces#def-krein-space)（内積が負になる方向を許す空間）に住み、その物理的な商は質量 $e/\sqrt\pi$ の自由ボソンの [Fock 空間](/physics/qft/why-quantum-field-theory#def-fock-space)だけになります。

<Aside type="tip" title="この記事で使う事前知識">

- **ゲージ変換**: ポテンシャルを時空の点ごとに変えても、電場・磁場のような物理量が変わらない、という変換。→ [ゲージ変換](/physics/electromagnetism/gauge-potentials#def-gauge-transformation)
- **Faddeev–Popov 作用素**: ゲージを固定するときに現れる、場に依存する微分作用素。→ [非可換ゲージ理論の量子化](/physics/qft/nonabelian-gauge-quantization)
- **Gauss 法則**: 電場の発散が電荷密度に等しい、という拘束条件。格子上では Gauss 作用素の核が物理的状態。→ [Gauss 作用素](/physics/lattice-field-theory/hamiltonian-lattice-gauge#def-gauss-law)
- **Coulomb ゲージと共変ゲージの同値性**: 電磁場では両者の物理的な空間がユニタリ同値。→ [ゲージの同値性](/physics/indefinite-metric/gauge-equivalence)
- **Fock 空間**: 粒子数が変わる状態をまとめて扱う空間。→ [Fock 空間](/physics/qft/why-quantum-field-theory#def-fock-space)
- **Krein 空間**: 内積が正にも負にもなる空間で、Hilbert 空間の拡張。→ [Krein 空間](/physics/indefinite-metric/krein-spaces#def-krein-space)

</Aside>

## 1. 動機

[ゲージの同値性](/physics/indefinite-metric/gauge-equivalence) では、電磁場について Coulomb ゲージの Hilbert 空間と共変ゲージの Gupta–Bleuler 商がユニタリ同値であることを証明しました。Coulomb ゲージの利点は、最初から正定値の Hilbert 空間の上で、ゲージの自由度を消した物理的な自由度だけを扱えることです。代償は Lorentz 共変性で、さらに相互作用のある理論では、Gauss 法則を解いて縦の電場を消去するときに非局所的な Coulomb 相互作用が現れます。

非可換ゲージ理論では、この消去がずっと難しくなります。電磁場では Gauss 法則 $\partial_iE_i=\rho$ の解は $-\Delta$ の逆で書けましたが、非可換の場合は共変微分 $D_i$ が場 $A$ に依存するので、逆にすべき作用素は場に依存する FP 作用素 $M(A)$ です。$M(A)$ は $A$ が小さければ可逆ですが、$A$ が大きくなると零固有値をもつことがあります（[非可換ゲージ場の量子化](/physics/qft/nonabelian-gauge-quantization) の <Ref to="physics/qft/nonabelian-gauge-quantization#rem-gribov-singer" />）。そこではゲージ固定が破綻し（Gribov コピー）、Coulomb 相互作用も発散します。

本章では、Coulomb ゲージのハミルトニアン形式を 4 つの角度から扱います。

1. 古典場の Gauss 法則を解いて Christ–Lee 型のハミルトニアンを導き、その量子化で FP 行列式が現れる仕組みを有限次元の模型で厳密に示す（第 3 節）。
2. Gribov 領域の幾何学的な性質を証明する（第 4 節）。
3. 格子上では Gauss 法則が厳密に解けることを示し、物理的状態空間と色電荷の超選択則を決める（第 5 節）。
4. 厳密に解ける Schwinger 模型で、Coulomb ゲージの質量生成と、共変ゲージの演算子解の Krein 構造を比べる（第 6 節）。

（この章の続きは購入者向けです。）
