# 準備 3：背景場中のプロパゲータと一般化ランダムウォーク展開 — Bałaban『Propagators』I・II (1984) と背景場版 (1985) の結果

> Bałaban のプロパゲータ 3 論文の結果を、Landau ゲージの代数的恒等式、平均化の Jensen 不等式による二次形式の下界と運動量展開、重みつき核ノルムの一般化ランダムウォーク展開、背景場への局所化と解析接続の順に証明する。
> https://rikai.mugen-giken.com/physics/gauge-rg-papers/balaban-prereq-propagators

## 0. この記事の要点

- T. Bałaban の 3 本の論文 "Propagators and renormalization transformations for lattice gauge theories. I, II"（Commun. Math. Phys. 95 (1984) 17–40、96 (1984) 223–250）と "Propagators for lattice gauge theories in a background field"（同 99 (1985) 389–434）は、格子ゲージ理論のくりこみ群で現れる二次形式の逆作用素（プロパゲータ）が、格子間隔と段数によらない定数で指数減衰し、背景のゲージ場に解析的に依存することを示しました。後の紫外安定性の論文はこれを「[13] の Theorem 3.1–3.10」として何度も引きます。
- 本章はその結果を 4 層に分けて証明します。(1) Landau ゲージの射影 $R$ と、$R D^*GQ^*=0$、$G''Q^*=0$ などの**代数的恒等式**（線形代数だけで完全に証明）。(2) 重みつき核ノルムの **Banach 代数**と、それを使った**一般化ランダムウォーク展開**・Combes–Thomas 型の逆作用素の減衰・領域の変更の評価（抽象定理として完全に証明）。(3) **自由場の二次形式** $\Delta_k$ の下界 $\langle B,\Delta_kB\rangle\ge\|\partial B\|^2$（平均化の Jensen 不等式から、定数 $1$ で出ます）、軸ゲージの Poincaré 不等式、運動量展開 $\widehat\Delta_{k,\mu\nu}(p)=\Delta_0(p)\delta_{\mu\nu}-\bar d_\mu(p)d_\nu(p)+O(|p|^4)$。(4) **背景場**への局所化と解析接続。
- 自由場（背景場 $U=1$）の一様な核評価（CMP 95 の Proposition 1.1–1.2、CMP 96 の Proposition 2.2–2.7 と Corollary 2.8。土台は Bałaban (1983) の格子 Green 関数の正則性理論）は、本章では 1 つの定理にまとめ、その証明（重みつきエネルギー評価と格子ポテンシャル論による）を部 2 [準備 3 の 2](/physics/gauge-rg-papers/balaban-prereq-propagators-part-2) に置きます。本章の残りはすべてこの定理から証明します。
- 背景場の定理（Theorems 3.1–3.4、3.7、3.9–3.13）は「局所的な小さい場への摂動（Neumann 級数）」「ゲージ共変性」「近似逆作用素とランダムウォーク展開」の 3 つの道具の組み合わせで出ます。原論文が非局所な交換子のために行った打ち消しの議論は、近似逆作用素と領域の変更の評価で置き換えられることを示します。
- 原論文との対応の注意: 多スケール領域の境目の粗いボンドは CMP 96 の (2.3) の規約（$\Omega_j$ から細かい側へ出る対は第 $j$ スケールの変数）に従い、平均は CMP 99 の (3.15)(3.19) の入れ子の合成とします。これでゲージ不変性が境目でも厳密に成り立ち、すべての細かいボンドが平均に現れます（初稿の別の規約では零モードが生じました。<Ref to="rem-interface-bonds" />）。Lemma 2.1 の条件 (2.59) には $\log L$ の項が必要です。軸ゲージの Poincaré 不等式の定数は本章の証明では $L^{d+2}$ の冪になります（原文は $L^{d+1}$）。

## 1. 動機

### 1.1. 何を示した論文か

Bałaban のくりこみ群では、各段で場を「平均 $B$ を固定した揺らぎ」と「平均」に分け、揺らぎについてガウス積分をします。ガウス積分の共分散は、Wilson 作用を背景場 $U$ のまわりで 2 次まで展開した二次形式を、平均の拘束 $QA=B$ とゲージ固定の拘束 $RD^*A=0$ の下で逆にしたものです。これが**プロパゲータ**で、最小化作用素 $H$（平均 $B$ から最小作用の配位を作る線形写像）も同じ仕組みで決まります。紫外安定性の証明のあらゆる評価は、これらの作用素の 3 つの性質に帰着します。

1. **一様な有界性と指数減衰**: 核が $e^{-\delta_0\,\mathrm{dist}}$ で減衰し、定数が格子間隔 $\eta$ にも段数 $k$ にもよらない。
2. **局所性**: 作用素を「局所化した領域の上の作用素の積」の和（一般化ランダムウォーク展開）に書け、各項は通る領域の上の背景場にしか依存しない。
3. **解析性**: 背景場を複素化した小さい近傍まで解析的に延長でき、同じ評価を保つ。

第 1 論文（CMP 95）は 1 スケール（全体で同じ平均の段数 $k$）の自由場について、Feynman 型のゲージ固定への変更（Faddeev–Popov）、射影 $R$ の表示、$H_k=G_kQ^*(QG_kQ^*)^{-1}$ という表示、Fourier 表示による $G_k$ の一様評価（Proposition 1.1–1.2）を与えました。第 2 論文（CMP 96）は「大場の領域」を扱うため、領域ごとに平均の段数が違う多スケールの問題に拡張し（Proposition 2.2–2.7、Corollary 2.8）、揺らぎの単位格子の共分散 $C^{(k)}$ の表示と下界（Lemma 2.4、(2.153)–(2.157)）を与えました。第 3 論文（CMP 99）は背景場 $U$ を入れ、正則な $U$ の局所的なゲージ変換で小さい場に帰着し、ランダムウォーク展開で貼り合わせて、すべての評価を背景場つきで示しました（Theorems 3.1–3.15）。

### 1.2. 本章の構成と原論文との対応

| 原論文の結果 | 本章 |
|---|---|
| CMP 95 (1.24)–(1.28)、CMP 99 (3.25) の射影 $R$ | <Ref to="prop-landau-projection" /> |
| CMP 95 (1.95)(1.97)(1.103)(1.107)、CMP 96 (2.31)(2.34)(2.35)、CMP 99 (3.124)(3.126)(3.147)–(3.153) | <Ref to="prop-g-operator-identities" /> |
| CMP 99 (3.118)–(3.122) のゲージ不変な拡張 | <Ref to="prop-gauge-invariant-extension" /> |
| CMP 99 (3.28)–(3.34) の変換則 | <Ref to="prop-propagator-gauge-covariance" /> |
| CMP 96 Lemma 2.1 | <Ref to="lem-weighted-distance-sums" /> |
| CMP 95 (1.123)(1.131)、CMP 96 (2.50)(2.86)(2.141)、CMP 99 Theorems 3.7–3.10・Corollary 3.8 | <Ref to="thm-random-walk-expansion" /> |
| CMP 99 Theorem 3.14 | <Ref to="cor-domain-change" /> |
| CMP 95 (1.65)–(1.67)、CMP 96 (2.118)(2.153)–(2.157) | <Ref to="prop-fluctuation-covariance-representation" /> |
| CMP 96 Lemma 2.4 | <Ref to="lem-axial-gauge-poincare" /> |
| CMP 95 (1.29)–(1.37)(1.66) の運動量表示、RG I の (4.41)(4.43)(4.45) | <Ref to="prop-lattice-propagator-momentum-expansion" /> |
| CMP 95 Prop. 1.1–1.2、CMP 96 Prop. 2.2–2.7・Cor. 2.8（自由場） | <Ref to="thm-free-fine-scale-bounds" />（証明は部 2） |
| CMP 96 (2.79)(2.157) の単位格子作用素の減衰 | <Ref to="thm-free-multiscale-propagator-decay" /> |
| CMP 99 (3.7)–(3.12)、(3.50)–(3.86)、Theorem 3.15 の下界 | <Ref to="thm-background-quadratic-form-lower-bound" /> |
| CMP 99 Theorems 3.1–3.4、3.11–3.13、(3.49)(3.133) | <Ref to="thm-propagator-norm-bounds" /> |

### 1.3. 物理への含意

4 次元の Yang–Mills 理論の紫外安定性は、くりこみ群の各段の揺らぎ積分が「局所化された項の和」に書け、その和が体積に比例して抑えられることに帰着します。局所化の源泉はプロパゲータの指数減衰で、項ごとの小ささの源泉はランダムウォーク展開の各歩が運ぶ $O(M^{-1/2})$ の因子です。QED$_4$ のような可換理論でも、背景場が非自明な（たとえば大場の領域の近くの）配位のまわりでは同じ多スケールのプロパゲータが現れるので、本章の評価は非可換の場合に限らず使えます。可換の場合は $R(U)$ が恒等写像になり、背景場の依存は平均作用素の位相因子だけになるので、§6 の摂動の評価はさらに簡単になります。

（この章の続きは購入者向けです。）
