# 準備 3 の 2：自由場の多スケールのプロパゲータの一様評価 — Bałaban (CMP 89・95・96) の結果を重みつきエネルギー評価と格子ポテンシャル論で証明する

> 背景場のない格子ゲージ理論のプロパゲータについて、正値性・指数減衰・差分と Hölder の一様評価を、Agmon の重みつきエネルギー評価と格子 Green 関数の核評価、多スケールの局所的なゲージの貼り合わせで、任意の多スケールの領域の列について証明する。
> https://rikai.mugen-giken.com/physics/gauge-rg-papers/balaban-prereq-propagators-part-2

## 0. この記事の要点

- 前章 [準備 3](/physics/gauge-rg-papers/balaban-prereq-propagators) は、背景場 $U=1$ の自由場のプロパゲータの一様評価（T. Bałaban, CMP 89 (1983) の格子 Green 関数の理論、CMP 95 の Proposition 1.1–1.2、CMP 96 の Proposition 2.2–2.7・Corollary 2.8）を 1 つの定理 <Ref to="physics/gauge-rg-papers/balaban-prereq-propagators#thm-free-fine-scale-bounds" /> にまとめ、主張のみとしました。本章はそれを証明します。
- 方法は原論文と異なります。指数減衰は一般化ランダムウォーク展開ではなく **Agmon の重みつきエネルギー評価**で、差分と Hölder の評価はくりこみ群の漸化式（CMP 89 の (2.34)）ではなく **格子 Green 関数の微分の核評価**（Fourier 記号の次数から核の減衰を読む）と立方体の上の局所正則性で示します。どちらも格子間隔 $\eta$ に一様です。
- ゲージ固定のスカラー作用素 $G'=(\Delta+Q'^*\mathfrak a'Q')^{-1}$ と $C'=(Q'G'^2Q'^*)^{-1}$ については、前章の**任意の多スケールの領域の列**で、主張のすべて（正値性・指数減衰・1 階と 2 階の差分・Hölder 評価）を証明します。
- ベクトル場の作用素 $G=\Delta_a^{-1}$、$(QGQ^*)^{-1}$、$H=GQ^*(QGQ^*)^{-1}$ についても、**任意の多スケールの列**で主張のすべて（CMP 96 の Proposition 2.5–2.7、Corollary 2.8）を、単一スケールではさらに無限体積の極限を証明します。正値性 $\Delta_a\ge\gamma s^{-2}$ の要は、立方体の上の 1 形式の Poincaré 不等式（Hodge 型）を、スケールに合わせた箱の上で貼り合わせて作る局所的なゲージ（<Ref to="lem-gauge-poincare" />、<Ref to="lem-multiscale-gauge-poincare" />）です。
- 境目の粗いボンドの規約が要点です。CMP 96 の (2.3) のとおり、$\Omega_j$ から細かい側へ出る最近接対も第 $j$ スケールの変数にすると、境目でゲージ不変性が保たれ、すべての細かいボンドが平均に現れます。前章の初稿のようにこれを落とすと $\Delta_a$ に**零モード**が生じることも、反例と数値で確かめます（<Ref to="prop-interface-zero-mode" />、<Ref to="rem-zero-mode-scope" />）。

## 1. 動機

### 1.1. 何を示した論文か

Bałaban のくりこみ群では、各段で「平均を固定した揺らぎ」についてガウス積分をし、その共分散と最小化作用素（平均から最小作用の配位を作る線形写像）の性質がすべての評価の土台になります。それらはすべて、格子間隔 $\eta$ の細かい格子の上の楕円型の差分作用素の逆です。問題は、評価の定数が $\eta$ によらないことです。細かい格子の差分作用素は大きさ $\eta^{-2}$ をもつので、行列の大きさを数えるだけの評価（Schur の評価など）では $\eta$ に一様な定数は出ません。

**CMP 89**（"Regularity and decay of lattice Green's functions"）は、格子の共変 Laplacian に平均の射影を足した作用素 $-\Delta^\eta_A+aP_k(A)$ について、下界 (1.8)、Green 関数の指数減衰と差分の Hölder 評価 (1.9)(1.10) を、$\eta$ に一様な定数で示しました。証明は、一辺 $2M$ の立方体の上の局所的なプロパゲータを 1 の分割で貼り合わせる一般化ランダムウォーク表示 (2.13) と、立方体の上の $L^p$・Hölder の評価（Lemma 2.2）からなり、後者はくりこみ群の漸化式 (2.34) と鏡像法 (2.42)、無限格子の Fourier 表示 (2.43)–(2.46) に帰着されます。

**CMP 95**（"Propagators and renormalization transformations for lattice gauge theories. I"）は、Landau ゲージの射影 $R$ をもつゲージ場の作用素 $\Delta_a=\partial^*\partial+\partial R\partial^*+Q^*aQ$ を単一スケールで扱い、運動量表示 (1.81)–(1.88) による $L^2$ の評価（Proposition 1.1）と、恒等式 $G=G_0+G_0\partial P\partial^*G$ (1.132) とランダムウォーク表示 (1.123) による減衰と Hölder の評価（Proposition 1.2）を与えました。**CMP 96**（同 II）は、領域ごとに平均の段数が違う多スケールの問題に拡張し（Proposition 2.2–2.7、Corollary 2.8）、大場の論文の境界条件の役割をこの多スケールの構造に担わせました。

### 1.2. 本章の方法

本章では、3 つの道具ですべてを示します。

1. **下界**。スカラーの $\Delta'_a$ はブロックごとの Poincaré 不等式だけで $\gamma s^{-2}$ 以上になります。$Q'G'^2Q'^*$ と $QGQ^*$ の下界は、うまく選んだ試験関数による変分評価です。ベクトル場の $\Delta_a$ の下界は、立方体の上の 1 形式の Poincaré 不等式を貼り合わせて作るゲージと、ゲージ固定の作用素の代数的な恒等式から出します。
2. **指数減衰**。作用素 $T$ を重み $e^\rho$ で共役すると、$\langle e^\rho f,Te^{-\rho}f\rangle$ と $\langle f,Tf\rangle$ の差は、$T$ の核に $\cosh(\rho(x)-\rho(x'))-1$ を掛けたものになります（<Ref to="lem-agmon" />）。重み $\rho$ を、細かいボンド 1 本ごとに $\theta\eta/s$ しか変わらないように選べば、この差は $\theta^2s^{-2}$ の大きさで、下界 $\gamma s^{-2}$ に吸収できます。$\eta$ への依存はここで消えます。
3. **正則性**。無限格子の Laplacian の基本解の差分の核を Fourier 記号の次数で評価し（<Ref to="lem-symbol-decay" />）、それを使って一辺 $\sim s$ の立方体の上で、$L^2$ のノルムから各点の値・差分・Hölder 半ノルムを抑えます（<Ref to="prop-local-regularity" />）。

粗い格子の作用素 $C'$、$(QGQ^*)^{-1}$ の減衰は、前章の Combes–Thomas 型の補題 <Ref to="physics/gauge-rg-papers/balaban-prereq-propagators#lem-combes-thomas" /> で得ます。原論文のランダムウォーク表示そのものは前章の <Ref to="physics/gauge-rg-papers/balaban-prereq-propagators#thm-random-walk-expansion" /> で一般的に扱われているので、本章では使いません。

### 1.3. 境目の粗いボンド

多スケールの問題では、$\Omega_j\setminus\Omega_{j+1}$ の変数は第 $j$ スケールの平均で、境目の細かいボンドがどのスケールの変数になるかを決める必要があります。CMP 96 は「点の集合をボンドの集合（少なくとも一方の端点がその集合にあるもの）とも見なす」約束のもとで $A_j=\Omega_j^{(j)}\setminus\Omega_{j+1}^{(j)}$ とし、$\Omega_j$ から細かい側へ出る第 $j$ スケールの最近接対を第 $j$ スケールの変数にします（前章の <Ref to="physics/gauge-rg-papers/balaban-prereq-propagators#rem-interface-bonds" />。Dimock の多スケールの論文の §3.3 も同じ）。平均が入れ子 $Q'_j=Q'(U_{j-1})Q'_{j-1}$ なので、細かい側の $j$ 胞の上の $Q'_j\lambda$ は $N(Q')$ の元で $0$ になり、ゲージ不変性は境目でも厳密に成り立ちます。前章の初稿は、外へ出るボンドを落として「両端が同じ $A_j$ にあるもの」だけを粗いボンドにしていました。すると $\Omega_{j+1}$ の境界をまたぐ細かいボンドがどの平均にも現れず、$\partial1_{\Omega_{j+1}}$ を Landau ゲージに移した配位が $\Delta_a$ の零モードになります（§3）。零モードはこの規約の人工物で、原論文の規約では生じません。本章の §5.4 と §9 は原論文の規約で多スケールのベクトル場の評価を証明します。

### 1.4. 原論文との対応

| 原論文の結果 | 本章 |
|---|---|
| CMP 89 (1.8)（$A=0$）、CMP 96 (2.11) | <Ref to="prop-scalar-lower-bounds" /> |
| CMP 89 の Theorem (1.9)(1.10)（$A=0$）、CMP 96 Proposition 2.2 | <Ref to="prop-scalar-l2-decay" />、<Ref to="thm-free-fine-scale-bounds-proof" /> の (A) |
| CMP 89 Lemma 2.1・2.2・2.4（立方体の上の評価） | <Ref to="prop-local-regularity" />、<Ref to="lem-lattice-kernel" /> |
| CMP 89 §5（単位格子の作用素の一般定理）、CMP 96 Proposition 2.3 | <Ref to="prop-coarse-decay" /> |
| CMP 95 Proposition 1.1（(1.89)(1.90) のうち下界と $L^2$ の評価） | <Ref to="prop-vector-lower-bounds" />、<Ref to="prop-vector-l2-decay" /> |
| CMP 95 Proposition 1.2 | <Ref to="thm-free-fine-scale-bounds-proof" /> の (B) |
| CMP 96 の $\Delta_a$ の正値性、(2.147) | <Ref to="prop-vector-lower-bounds-multiscale" /> |
| CMP 96 Proposition 2.5–2.7、Corollary 2.8（多スケールのベクトル場） | <Ref to="prop-vector-l2-decay-multiscale" />、<Ref to="thm-free-fine-scale-bounds-proof" /> の (B) |

背景のゲージ場 $A\neq0$ のある場合（CMP 89 の主定理の一般の場合、Proposition 3.1′）は、前章の §6 が $U=1$ の評価からの摂動として扱う範囲なので、本章では扱いません。

（この章の続きは購入者向けです。）
