# van Hove 模型：Weyl 作用素による厳密な対角化と、切断除去で現れる非同値表現

> van Hove ハミルトニアン dΓ(ω)+Φ_S(λv) の自己共役性を示し、v/ω∈L² なら Weyl 作用素で dΓ(ω)+E₀ と対角化できることと E₀=-λ²‖v/√ω‖²/2 を証明する。基底状態が存在する条件を特徴づけ、紫外・赤外の切断除去で基底状態が Fock 表現と非同値な表現に移ることを示す。
> https://rikai.mugen-giken.com/physics/fock-space/van-hove-model

## 0. この記事の要点

動かない電荷のまわりに、量子的な場がどんな「雲」をつくるかを、近似なしで解き切れる珍しい例を扱います。式を完全平方にして場を一定量ずらすだけで解ける一方、電荷を点にする極限や、波長の長い場の扱いでは、雲をつくるボソンの数が無限になり、もとの状態空間に収まらなくなります。読み終えると、この「収まらない」現象がどの条件で起き、そのとき何を取り替えれば極限が意味をもつのかを、証明つきで説明できるようになります。

- van Hove 模型は、自由スカラー場が動かない外部源 $\rho$ と線形に結合した系で、ハミルトニアンは $H_\lambda=\mathrm{d}\Gamma(\omega)+\Phi_{\mathrm{S}}(\lambda v)$（具体的には $v=\hat\rho/\sqrt{\omega}$）です。抽象的には、非負で単射な自己共役作用素 $T$ を使って $H_\lambda=\mathrm{d}\Gamma(T)+\Phi_{\mathrm{S}}(\lambda v)$ と書きます。
- $v\in D(T^{-1/2})$（具体的には $v/\sqrt{\omega}\in L^2$）なら、$H_\lambda$ は $D(\mathrm{d}\Gamma(T))$ 上で自己共役で、$H_\lambda\ge E_0:=-\frac{\lambda^2}{2}\|T^{-1/2}v\|^2$ です（Kato–Rellich の定理）。
- さらに $v\in D(T^{-1})$（具体的には $v/\omega\in L^2$）なら、$H_\lambda=W(i\lambda T^{-1}v)\bigl(\mathrm{d}\Gamma(T)+E_0\bigr)W(i\lambda T^{-1}v)^*$ と [Weyl 作用素](/physics/fock-space/segal-field-weyl#def-weyl-operator)で厳密に対角化でき、[基底状態](/physics/fock-space/nelson-spin-boson#def-ground-state)は[コヒーレント状態](/physics/fock-space/segal-field-weyl#def-coherent-state) $\Omega_\lambda=W(i\lambda T^{-1}v)\Omega$ です。古典論の静的解と自己エネルギー（湯川・Coulomb エネルギー）がそのまま再現されます。
- 逆に、$v\in D(T^{-1/2})\setminus D(T^{-1})$ なら $\inf\sigma(H_\lambda)=E_0$ は有限なのに、基底状態は Fock 空間に存在しません。質量ゼロで源の全電荷が $0$ でない場合（$\hat\rho/\omega^{3/2}\notin L^2$）がこれにあたります（赤外の van Hove 現象）。
- 紫外切断を外すと $E_0\to-\infty$ でエネルギーくりこみが必要になり、さらに基底状態は弱収束で $0$ に消えます。切断を外した極限の基底状態と時間発展は、Fock 表現と非同値（ユニタリ作用素で移り合えない）な「シフトした」CCR 表現の中で実現されます。

<Aside type="tip" title="この記事で使う事前知識">

- **Segal 場**: 生成・消滅作用素の和 $\Phi_{\mathrm{S}}(f)$ として書ける、場の「値」にあたる自己共役作用素。→ [Segal 場](/physics/fock-space/segal-field-weyl#def-segal-field)
- **Weyl 作用素**: Segal 場から作るユニタリ作用素で、場を一定量だけずらす働きをもつもの。→ [Weyl 作用素](/physics/fock-space/segal-field-weyl#def-weyl-operator)
- **コヒーレント状態**: 真空に Weyl 作用素を施した状態で、すべての消滅作用素の固有ベクトルになっているもの。→ [コヒーレント状態](/physics/fock-space/segal-field-weyl#def-coherent-state)
- **真空**: 粒子が 1 つもない状態 $\Omega$。→ [真空](/physics/fock-space/boson-fock-space#def-boson-fock-space)
- **基底状態**: ハミルトニアンの最低エネルギーの固有ベクトル。→ [基底状態](/physics/fock-space/nelson-spin-boson#def-ground-state)
- **CCR 表現の同値**: 2 つの表現が、ユニタリ作用素で互いに移り合えること。→ [同値](/physics/fock-space/ccr-representations#def-representation-equivalence)

</Aside>

## 1. 動機

点電荷のまわりの静電場を量子化すると何が起きるでしょうか。古典論では、静的な源 $\rho$ と結合したスカラー場のエネルギー
$$
H_{\mathrm{cl}}=\int\Bigl(\tfrac12\pi^2+\tfrac12|\nabla\varphi|^2+\tfrac12m^2\varphi^2\Bigr)d^3x+\lambda\int\rho\,\varphi\,d^3x
$$
の最小値は、静的解 $\varphi_{\mathrm{cl}}=-\lambda(-\Delta+m^2)^{-1}\rho$ で達成され、値は
$$
E_{\mathrm{cl}}=-\frac{\lambda^2}{2}\iint\rho(x)\frac{e^{-m|x-y|}}{4\pi|x-y|}\rho(y)\,d^3x\,d^3y
$$
（湯川ポテンシャルによる自己エネルギー。$m=0$ なら Coulomb エネルギー）です。点電荷 $\rho=\delta$ ではこれは $-\infty$ になります。

量子論では、相互作用 $\lambda\int\rho\varphi$ は前章の時間ゼロ場 $\lambda\varphi(\rho)=\Phi_{\mathrm{S}}(\lambda\hat\rho/\sqrt{\omega})$（[自由スカラー場](/physics/fock-space/free-scalar-field) の <Ref to="physics/fock-space/free-scalar-field#def-time-zero-fields" />）で、相互作用は生成・消滅作用素の 1 次式です。2 次式を完全平方にすれば対角化できるので、この模型は厳密に解けます。それでも、解いてみると場の量子論の発散の典型がすべて現れます。紫外では自己エネルギーが発散し、赤外では「無限個の軟らかいボソンをまとった状態」が Fock 空間からはみ出します。van Hove（1952）はこの模型で、相互作用のある場の状態空間が自由場の Fock 空間と「直交」しうることを最初に指摘しました。本章はその内容を、新井の抽象的 van Hove 模型の形で厳密に述べます。

話の筋は次のとおりです。§3 で相互作用が自由ハミルトニアンに対して小さいこと（相対限界 $0$）を示してハミルトニアンを定義し、§4 で Weyl 作用素による完全平方を厳密に実行します。§5 では完全平方のシフトが $L^2$ からはみ出す場合に、基底状態が本当に消えることを証明します。最後に §6 で、切断を外したときに「何が極限として残り、何が消えるのか」を整理し、残るもの（期待値と時間発展）が Fock 表現とは別の表現の中で実現されることを示します。解ける模型なので、発散のどこまでが計算の不手際で、どこからが表現の取り替えを要する本質的な現象なのかを、曖昧さなく切り分けられます。

（この章の続きは購入者向けです。）
