# ガウス測度と Q 空間表示：Wiener–伊藤–Segal 同型と超縮小性

> 実 Hilbert 空間上のガウス確率過程と Bochner–Minlos の定理で Q 空間を作り、ボソン Fock 空間との Wiener–伊藤–Segal 同型を構成する。Segal 場が掛け算作用素に、n 粒子空間が n 次カオスになることを示し、Γ(C) の正値性保存と Nelson の超縮小性を扱う。
> https://rikai.mugen-giken.com/physics/fock-space/gaussian-measures-q-space

## 0. この記事の要点

粒子が何個あるかを数える見方（Fock 空間）とは別に、場の値そのものを確率変数とみなして関数として扱う見方があります。この記事は、この二つの見方が「ぴったり同じもの」であることを示します。身近な例は調和振動子で、生成・消滅作用素で書いても、位置 $x$ の関数（ガウス関数に Hermite 多項式を掛けたもの）で書いても同じ系を表します。同じことを無限個の自由度の場でやると、場の多項式や正値性といった確率論の道具が使えるようになります。読み終えると、その翻訳の規則と、そこから出る正値性や $L^p$ ノルムの評価がわかります。

- 実 Hilbert 空間 $\mathcal{H}$ 上の**ガウス確率過程**（等正規過程）$\phi$ とは、$f\mapsto\phi(f)$ が線形で、各 $\phi(f)$ が平均 $0$・分散 $\|f\|^2/2$ の正規分布に従う確率変数の族です。可分な $\mathcal{H}$ には必ず存在し、$\mathcal{H}$ が Schwartz 空間を連続に含むなら **Bochner–Minlos の定理**（連続で正定値な関数を、ある確率測度の特性関数として実現する定理）により $\mathcal{S}'(\mathbb{R}^d)$ 上の測度として実現できます。
- **Wiener–伊藤–Segal 同型** $U:\mathcal{F}_{\mathrm{b}}(\mathcal{H}_{\mathbb{C}})\to L^2(Q,d\mu)$ は、真空 $\Omega$ を定数関数 $1$ に、指数ベクトル $\varepsilon(f)$ を Wick 指数関数 $:\!e^{\sqrt2\phi(f)}\!:$（指数関数を規格化して平均を $1$ にしたもの）に写すユニタリ作用素です。
- この同型で [Segal 場](/physics/fock-space/segal-field-weyl#def-segal-field) $\Phi_{\mathrm{S}}(f)$ は掛け算作用素 $\phi(f)$ に、$n$ 粒子空間は $n$ 次の Wick 多項式が張る空間（$n$ 次カオス、伊藤の $n$ 重積分の像）に、[数作用素](/physics/fock-space/boson-fock-space#def-number-operator)は Ornstein–Uhlenbeck 半群（確率過程 $dX_t=-X_tdt+dB_t$ に対応する、関数を平均へ平らにならす半群）の生成子になります。1 自由度ではこれは調和振動子と Hermite 多項式の関係そのものです。
- $C$ が $\mathcal{H}$ を保つ縮小作用素なら $\Gamma(C)$ は $L^2(Q)$ 上で**正値性を保ち**、$L^p$ 縮小です。「実」の仮定を外すと正値性は壊れます。
- **Nelson の超縮小性**: $1<p\le q<\infty$ かつ $e^{-2t}\le(p-1)/(q-1)$ なら $\|e^{-tN}F\|_q\le\|F\|_p$。この条件は最良で、Wick 指数関数で破れを直接確かめられます。

<Aside type="tip" title="この記事で使う事前知識">

- **ボソン Fock 空間**: 0 粒子（真空）、1 粒子、2 粒子、… の対称な状態空間を直和でつないだ空間。→ [ボソン Fock 空間](/physics/fock-space/boson-fock-space#def-boson-fock-space)
- **Segal 場**: 生成作用素と消滅作用素の和を $\sqrt2$ で割った自己共役作用素で、場の「位置」にあたるもの。→ [Segal 場](/physics/fock-space/segal-field-weyl#def-segal-field)
- **コヒーレント状態**: 消滅作用素の固有状態で、指数ベクトルを規格化したもの。→ [コヒーレント状態](/physics/fock-space/segal-field-weyl#def-coherent-state)
- **第二量子化作用素 $\Gamma(C)$**: 1 粒子空間の縮小作用素 $C$ を、各粒子に同じ $C$ を作用させる形で Fock 空間全体に延ばしたもの。→ [第二量子化作用素](/physics/fock-space/second-quantization#def-gamma)
- **条件付き期待値**: ある情報（部分 $\sigma$-加法族）がわかっているときの確率変数の平均で、$L^2$ では直交射影になるもの。→ [条件付き期待値](/mathematics/probability/conditional-expectation)

</Aside>

## 1. 動機

1 自由度の調和振動子は、生成・消滅作用素で書く（Fock 表示）こともでき、$L^2(\mathbb{R})$ 上の微分作用素として書く（Schrödinger 表示）こともできます。後者では位置 $x$ は単なる掛け算作用素で、[基底状態](/physics/fock-space/nelson-spin-boson#def-ground-state)はガウス関数、励起状態は Hermite 多項式です。無限自由度の場でも同じ二つの見方ができるでしょうか。

$L^2(\mathbb{R}^\infty,dx)$ は意味をもちませんが、基底状態の 2 乗 $e^{-x^2}dx/\sqrt\pi$ を**確率測度**として取り込めば、無限個の積を作れます。こうして得られる確率空間 $(Q,\mu)$ 上の $L^2$ が、[ボソン Fock 空間](/physics/fock-space/boson-fock-space#def-boson-fock-space)の「Schrödinger 表示」です。この表示では場の作用素 $\Phi_{\mathrm{S}}(f)$ がすべて同時に掛け算作用素になり、相互作用 $\int\phi(x)^4dx$ のような場の多項式も掛け算作用素として扱えます。さらに、自由ハミルトニアンの半群 $e^{-tH_0}$ が正値性を保つことや、$L^p$ ノルムを改善すること（超縮小性）が使えるようになります。これらは Nelson 模型や $P(\phi)_2$ 模型で自己共役性や基底状態の一意性を示すときの基本的な道具です（[Nelson 模型と spin-boson 模型](/physics/fock-space/nelson-spin-boson)）。

確率論の側から見れば、これは Brown 運動の汎関数を伊藤の多重積分で展開する **Wiener のカオス展開**と同じものです。

（この章の続きは購入者向けです。）
