# 自由スカラー場の Fock 空間上の構成：Segal 場・Poincaré 共変性・Wightman 公理

> 1 粒子空間 L²(R³) と ω(k)=√(k²+m²) から、時間ゼロ場 φ(f)・π(f) を Segal 場で、時空の場 φ(F) を作用素値超関数として構成する。H₀=dΓ(ω) と Poincaré 群の表現 Γ(u(a,Λ)) を作り、Wightman 公理を確かめ、2 点関数と質量ゼロの赤外の注意を述べる。
> https://rikai.mugen-giken.com/physics/fock-space/free-scalar-field

## 0. この記事の要点

物理の教科書では、空間のどの点にも「場の値」があると考えて、場を生成・消滅の演算子で書き表します。ところが、その式をそのまま数学の作用素として読もうとすると意味が付かなくなります。この記事では、粒子が 1 個のときの状態空間と、粒子のエネルギーの式だけを出発点にして、点ではなく少し広がりをもたせた場として自由な場を正確に作ります。読み終えると、この場が時空の対称性と因果律（離れた場所の測定が互いに干渉しないこと）の要請を満たすことを、自分で確かめられるようになります。

- 質量 $m\ge 0$ の自由スカラー場の 1 粒子空間は $\mathfrak{h}=L^2(\mathbb{R}^3,d^3k)$、1 粒子エネルギーは $\omega(k)=\sqrt{|k|^2+m^2}$ です。時間ゼロ場は [Segal 場](/physics/fock-space/segal-field-weyl#def-segal-field)を使って $\varphi(f)=\Phi_{\mathrm{S}}(\hat f/\sqrt{\omega})$、$\pi(f)=\Phi_{\mathrm{S}}(i\sqrt{\omega}\hat f)$ と定義され、正準交換関係 $[\varphi(f),\pi(g)]=i\langle f,g\rangle_{L^2}$ を満たします。
- 自由ハミルトニアンは $H_0=\mathrm{d}\Gamma(\omega)$、運動量は $P_j=\mathrm{d}\Gamma(k_j)$ です。$(H_0,\boldsymbol{P})$ の結合スペクトル（エネルギーと運動量の同時にとりうる値の集合）は閉じた前方光錐に入り、$m>0$ なら $\{0\}\cup(\text{質量殻})\cup\{p^0\ge\sqrt{|\boldsymbol{p}|^2+4m^2}\}$ です。
- 1 粒子空間上の Poincaré 群のユニタリ表現 $u(a,\Lambda)$ を第二量子化した $U(a,\Lambda)=\Gamma(u(a,\Lambda))$ が、Fock 空間上の Poincaré 対称性を与えます。
- 形式的な点の場 $\varphi(x)$ は作用素ではなく、時空のテスト関数 $F$ で塗った $\varphi(F)=\Phi_{\mathrm{S}}(E_mF)$ が意味を持ちます（$E_mF$ は $\tilde F$ の質量殻への制限を $\sqrt{\omega}$ で割ったもの）。この $\varphi$ は [Wightman 公理](/physics/axiomatic-qft/wightman-axioms#def-wightman-axioms)（共変性・スペクトル条件・局所可換性・真空の一意性と巡回性）をすべて満たします。
- 2 点関数は $W(x)=(2\pi)^{-3}\int e^{-ip\cdot x}\,d^3k/(2\omega)$ で、時間順序積が Feynman 伝播関数になります。$m=0$ では $1/\sqrt{\omega}$ が原点で特異になり、空間 1 次元ではテスト関数が $\hat f(0)=0$ を満たさないと場が定義できません（赤外の困難）。

<Aside type="tip" title="この記事で使う事前知識">

- **ボソン Fock 空間と真空**: 粒子数が 0, 1, 2, … の状態をまとめた空間と、粒子が 1 個もない状態のこと。→ [ボソン Fock 空間](/physics/fock-space/boson-fock-space#def-boson-fock-space)
- **数作用素**: 粒子の個数を読み取る作用素。→ [数作用素](/physics/fock-space/boson-fock-space#def-number-operator)
- **Segal 場**: 消滅作用素と生成作用素の和を $\sqrt2$ で割った自己共役な作用素。→ [Segal 場](/physics/fock-space/segal-field-weyl#def-segal-field)
- **Weyl 作用素**: Segal 場の指数 $e^{i\Phi_{\mathrm{S}}(f)}$ で作るユニタリ作用素。→ [Weyl 作用素](/physics/fock-space/segal-field-weyl#def-weyl-operator)
- **交換子**: 2 つの作用素 $A,B$ に対する $AB-BA$。→ [交換子](/physics/quantum-mechanics/operators-and-observables#def-commutator)
- **Bogoliubov 変換**: この記事の前提となる、Fock 空間上の正準変換の話。→ [Bogoliubov 変換と Shale の定理](/physics/fock-space/bogoliubov-transformations)

</Aside>

## 1. 動機

物理の教科書の正準量子化（[スカラー場の正準量子化](/physics/qft/canonical-quantization)）では、場を
$$
\varphi(x)=\int\frac{d^3k}{(2\pi)^{3/2}\sqrt{2\omega(k)}}\Bigl(a(k)e^{-ip\cdot x}+a(k)^*e^{ip\cdot x}\Bigr),\qquad p=(\omega(k),k)
$$
と書きます。この式には二つの問題があります。まず $a(k)$ は作用素ではありません（$\|a(k)^*\Omega\|^2=\delta(0)$）。次に、$a(k)$ を作用素値超関数（テスト関数で塗って初めて作用素になるもの）と読んでも、$x$ を止めた $\varphi(x)$ は積分 $\int d^3k/\omega(k)$ が紫外で発散するため Fock 空間の作用素になりません。

これまでの章で用意した道具を使うと、この二つは同時に解消します。$a(k)$ を $k$ で塗ったものが消滅作用素 $a(f)$ であり、場を $x$ で塗ったものは Segal 場 $\Phi_{\mathrm{S}}$ に、ある決まった 1 粒子ベクトルを入れたものになります。本章では自由場をこの形で構成し、それが場の量子論の公理（Wightman 公理）の模範例になっていることを確かめます。次章の [van Hove 模型](/physics/fock-space/van-hove-model) はこの自由場に外部源との相互作用を加えた模型で、本章の記法をそのまま使います。

（この章の続きは購入者向けです。）
