# Bogoliubov 変換と Shale の定理：Fock 空間で実装できる正準変換の判定

> 生成・消滅作用素の線形な組み替え a(Uf)+a(VCf)* が CCR を保つ条件を導き、それが Fock 空間のユニタリ作用素で実装できるのは V が Hilbert–Schmidt のときに限るという Shale の定理を証明する。フェルミオン版、スクイーズド状態、2 次ハミルトニアンの対角化、シフト変換も扱う。
> https://rikai.mugen-giken.com/physics/fock-space/bogoliubov-transformations

## 0. この記事の要点

量子の世界では、粒子を 1 個増やす操作（生成）と 1 個減らす操作（消滅）を組み合わせて状態を表します。この操作を線形に混ぜ合わせて新しい「生成と消滅」の組を作ると、それに対する「何もない状態（真空）」も新しくなります。ここで知りたいのは、混ぜ方を変えたあとの真空が、もとの粒子の空間の中にきちんとあるのか、はみ出してしまうのか、ということです。この記事では、その答えが「混ぜ込まれる生成の部分がある意味で小さいか」という具体的な条件で決まることを示します。

- 共役子 $C$（複素共役を一般の Hilbert 空間に持ち込んだもの）を固定し、$a_T(f)=a(Uf)+a(VCf)^*$（$U,V$ は有界作用素）の形の組み替えを **Bogoliubov 変換**と呼びます。これが CCR を保ち逆変換も持つ条件は、$\bar{A}=CAC$, $A^{\mathsf{T}}=CA^*C$ と書いて $U^*U-V^{\mathsf{T}}\bar{V}=1$, $U^*V=V^{\mathsf{T}}\bar{U}$, $UU^*-VV^*=1$, $UV^{\mathsf{T}}=VU^{\mathsf{T}}$ です。実線形写像 $T=U+VC$ が $\sigma(f,g)=\mathrm{Im}\langle f,g\rangle$ を保つことと同じです。
- **Shale の定理**: Bogoliubov 変換が [Fock 空間](/physics/fock-space/boson-fock-space#def-boson-fock-space)上のユニタリ作用素 $\mathbb{U}$ で $\mathbb{U}W(f)\mathbb{U}^*=W(Tf)$（$W(f)$ は [Weyl 作用素](/physics/fock-space/segal-field-weyl#def-weyl-operator)）と実装できるための必要十分条件は、$V$ が [Hilbert–Schmidt 作用素](/mathematics/functional-analysis/compact-operators)であることです。必要性は「新しい真空 $\mathbb{U}\Omega$ の 2 粒子成分が $V$ を Hilbert–Schmidt 作用素として表す」ことから出ます。
- 実装できるとき、新しい真空の粒子数の期待値は $\|V\|_2^2$ で、真空は $\exp(-\frac12\sum K_{jk}a_j^*a_k^*)\Omega$ という Gauss 型ベクトルです。1 モードではスクイーズド真空（位置か運動量のどちらかのゆらぎを真空より小さくした状態）になり、2 次ハミルトニアン $\omega a^*a+\frac{\lambda}{2}(a^2+a^{*2})$（$|\lambda|<\omega$）は Bogoliubov 変換で $\varepsilon b^*b-\frac12(\omega-\varepsilon)$, $\varepsilon=\sqrt{\omega^2-\lambda^2}$ に対角化されます。
- 無限個のモードを同じ強さでスクイーズする変換は $V$ が Hilbert–Schmidt でなく実装できません。前章の[互いに素](/physics/fock-space/ccr-representations#def-representation-equivalence)な表現 $\pi_s$ はこの例です。$V$ がコンパクトでも Hilbert–Schmidt でなければ実装できません。
- シフト $a(f)\mapsto a(f)+\langle f,g\rangle$ は $g\in\mathcal{H}$ のときに限り実装でき、実装作用素は Weyl 作用素 $W(i\sqrt2\,g)$ です。$g\notin\mathcal{H}$ となる赤外発散が van Hove 模型の非同値表現の起源です。フェルミオンでも同じ形の判定（Shale–Stinespring の定理）が成り立ちます。

<Aside type="tip" title="この記事で使う事前知識">

- **Hilbert–Schmidt 作用素**: 基底を 1 組選んだとき、各基底ベクトルの像の長さの 2 乗の和が有限になる作用素。→ [コンパクト作用素・Hilbert–Schmidt 作用素](/mathematics/functional-analysis/compact-operators)
- **Weyl 作用素**: 場の作用素 $\Phi_{\mathrm{S}}(f)$ から $e^{i\Phi_{\mathrm{S}}(f)}$ として作る、CCR を扱いやすい形にしたユニタリ作用素。→ [Weyl 作用素](/physics/fock-space/segal-field-weyl#def-weyl-operator)
- **Segal 場**: 生成作用素と消滅作用素の和 $\frac{1}{\sqrt2}(a(f)+a(f)^*)$ として作る自己共役な場の作用素。→ [Segal 場](/physics/fock-space/segal-field-weyl#def-segal-field)
- **真空**: どの消滅作用素で消しても $0$ になる、粒子が 1 個もない状態。→ [真空](/physics/fock-space/boson-fock-space#def-boson-fock-space)
- **表現の同値と互いに素**: 2 つの表現がユニタリ作用素で互いに移り合うとき同値、共通の部分をまったく持たないとき互いに素という。→ [同値・互いに素・既約](/physics/fock-space/ccr-representations#def-representation-equivalence)
- **数作用素**: 粒子の個数を測る作用素 $N$。→ [数作用素](/physics/fock-space/boson-fock-space#def-number-operator)

</Aside>

## 1. 動機

超流動の Bogoliubov 理論、BCS 理論、曲がった時空や加速系の Unruh 効果、量子光学のスクイーズド光は、どれも「生成・消滅作用素を線形に混ぜて新しい生成・消滅作用素を作り、それについての真空を新しい基底状態とする」という同じ操作に基づいています。有限個のモードなら、Stone–von Neumann の定理（<Ref to="physics/fock-space/ccr-representations#thm-stone-von-neumann" />）によって新しい生成・消滅作用素も Fock 表現を与え、両者はユニタリ作用素で結ばれます。無限個のモードではそうとは限らず、前章の <Ref to="physics/fock-space/ccr-representations#thm-scaled-representations-disjoint" /> のように、新しい真空が元の Fock 空間に存在しないことがあります。

どの変換なら Fock 空間の中で実装できるのか。この問いに完全な答えを与えるのが Shale の定理で、答えは「混ぜ込まれる生成作用素の部分 $V$ が Hilbert–Schmidt であること」という、驚くほど具体的な条件です。物理的には「新しい真空に含まれる元の粒子の数 $\|V\|_2^2$ が有限であること」と読めます。

<Figure caption="Shale の定理のイメージ。$V$ が Hilbert–Schmidt なら新しい真空は元の Fock 空間の中にあり、そうでなければ Fock 空間の外にある。">
<svg viewBox="0 0 640 260" width="100%" role="img" aria-label="大きな楕円で表した元の Fock 空間の中に Fock 真空と、V が Hilbert–Schmidt のときの新しい真空の点がある。楕円の外には、V が Hilbert–Schmidt でないときの新しい真空が点線の丸で描かれている。">
  <g fill="none" stroke="currentColor" stroke-width="1.6">
    <ellipse cx="200" cy="130" rx="180" ry="100" />
    <circle cx="150" cy="130" r="5" fill="currentColor" />
    <circle cx="260" cy="110" r="5" fill="currentColor" />
    <circle cx="520" cy="130" r="9" stroke-dasharray="4 4" />
  </g>
  <g stroke="currentColor" stroke-width="1" opacity="0.5">
    <line x1="155" y1="129" x2="255" y2="111" />
  </g>
  <g fill="currentColor" font-size="14">
    <text x="130" y="62">元の Fock 空間</text>
    <text x="95" y="160">Fock 真空 Ω</text>
    <text x="225" y="92">新しい真空 UΩ</text>
    <text x="170" y="190" font-size="12">V が Hilbert–Schmidt のとき</text>
    <text x="440" y="100" font-size="14">新しい真空に当たる</text>
    <text x="440" y="118" font-size="14">ベクトルは空間に無い</text>
    <text x="440" y="165" font-size="12">V が Hilbert–Schmidt</text>
    <text x="440" y="181" font-size="12">でないとき</text>
  </g>
</svg>
</Figure>

歴史的には、Bogoliubov は弱く相互作用する Bose 気体のハミルトニアンを、運動量 $k$ と $-k$ の生成・消滅作用素を混ぜる変換で 2 次形式に対角化し、準粒子の分散関係がフォノン的になることを示しました。このとき準粒子の真空は、有限体積でも元の真空に $\pm k$ の対を無限個まで含む重ね合わせで、無限体積の極限では元の Fock 空間から外れます。物理の計算では無限体積の極限を最後に取るので気づきにくいのですが、作用素論の立場では「どの段階で表現が変わったか」を Shale の定理が正確に教えてくれます。本章では、まず変換が CCR を保つ代数的な条件を整理し（§3）、実装可能性を Hilbert–Schmidt 条件で特徴づけ（§4）、具体例（§5）とシフト変換（§6）、フェルミオン版（§7）を順に扱います。

（この章の続きは購入者向けです。）
