# なぜ星までの距離がわかるのか：宇宙の距離はしごを一段ずつ登る

> 年周視差・ケフェイド変光星・Ia 型超新星という三段の物差しを、逆二乗の法則と距離指数から順に組み立てる。δ ケフェイや遠方超新星の実際の数値で距離を計算し、段を継ぐたびに誤差がどう積み上がるかまで追う。
> https://rikai.mugen-giken.com/physics/cosmology/cosmic-distance-ladder

## 0. この記事の要点

- 星までの距離は、巻き尺を伸ばして測るわけにはいきません。天文学は「**近くで通用する物差しを使って、もう少し遠くで通用する物差しの目盛りを刻む**」という作業を何段も繰り返しています。これを宇宙の距離はしご（cosmic distance ladder）と呼びます。
- 第一段は**年周視差**です。地球の公転軌道を底辺にした三角測量で、幾何学だけから距離が出ます。公式は「距離をパーセクで測ると、視差を秒角で測った値の逆数」というだけのものです。ただし届くのは数千パーセクまでで、銀河系を横断することすらできません。
- 第二段は**ケフェイド変光星**です。明るさが変わる周期を測ると本当の明るさ（光度）がわかるので、見かけの明るさと比べれば距離が出ます。3000 万パーセク（約 1 億光年）先の銀河まで届きます。
- 第三段は **Ia 型超新星**です。爆発の引き金となる質量がほぼ一定なので、最大光度がそろっています。一時的に銀河 1 個分の明るさで輝くため、数十億光年先まで見えます。
- 距離の比は掛け算で積み上がるので、**等級（対数）で書けば足し算**になります。誤差も同じように積み上がり、どこか一段の目盛りが 0.2 等ずれるだけでハッブル定数が数 % 変わってしまいます。これが現在の宇宙論最大の未解決問題（ハッブル・テンション）の舞台です。

## 1. 動機：巻き尺が 4 光年も伸びない件について

天文学の教科書には、平然と「この星までは 430 光年」「この銀河までは 5500 万光年」と書いてあります。誰も行ったことがないのに、なぜ数字が書けるのでしょうか。

これは天文学にとって単なる豆知識ではなく、**すべての土台**です。星の本当の明るさも、大きさも、質量も、銀河がどれくらいの速さで遠ざかっているかも、宇宙が何歳かも、距離が決まらなければ何ひとつ決まりません。空を見上げて手に入るのは、結局のところ「天球上のどの向きに、どれくらいの明るさで、どんな色の光が来ているか」だけです。奥行きの情報は、そのままでは一切含まれていません。

この困難は古代から知られていました。紀元前 2 世紀のヒッパルコスは、月食のときの地球の影の大きさから、月までの距離を地球半径の約 60 倍と見積もっています（現代の値は約 60.3 倍ですから、驚くべき精度です）。彼が使ったのは三角測量で、底辺は地球のサイズでした。ところが同じ手を恒星に使おうとすると、まったく歯が立ちません。

16 世紀、コペルニクスが「地球は太陽のまわりを回っている」と言い出したとき、反対派には強力な論拠がありました。地球が動いているなら、近くの星は遠くの星に対して 1 年周期でわずかに往復して見えるはずです。ところがそんな動きは観測されない。当時最高の観測家ティコ・ブラーエは、これを地球が動いていない証拠と考えました。彼は正しく推論したのですが、前提が足りませんでした。星が単に、想像を絶するほど遠かったのです。

実際にその往復運動（年周視差）が捉えられたのは 1838 年、ベッセルによる白鳥座 61 番星の観測でした。測られた角度は約 0.31 秒角。これは 13 キロメートル先に置いた 1 円玉の直径を見込む角度に相当します。コペルニクスから約 300 年、天文学はようやく最初の一段を踏み固めたことになります。

以下では、この最初の一段から順に、はしごを組み立てていきます。前提として使うのは、[ビッグバンは本当にあったのか？](/physics/cosmology/big-bang-evidence) で扱った「光は情報を運んでくる」という考え方だけです。

## 2. 準備：明るさは距離の何を教えてくれるか

はしごの第二段より上は、すべて「明るさ」を物差しにします。そこでまず、明るさと距離の関係を整理しておきます。

<Definition id="def-luminosity-flux" title="光度と放射照度">
天体が単位時間あたりに全方向へ放出する光のエネルギーを**光度**といい、$L$ で表します。単位はワット（W）です。これは天体が持って生まれた性質で、観測者がどこにいるかによりません。

一方、観測者の位置で、光の進む向きに垂直な単位面積を単位時間あたりに通過する光のエネルギーを**放射照度**（見かけの明るさ）といい、$F$ で表します。単位は $\mathrm{W/m^2}$ です。これは観測者の位置に依存します。
</Definition>

この二つを結ぶのが、距離はしごの心臓部です。

<Proposition id="prop-inverse-square" title="逆二乗の法則">
光度 $L$ の天体があらゆる向きに一様に光を放ち、天体と観測者のあいだに光を吸収・散乱するものが一切ないとします。天体から距離 $d$ の位置での放射照度は

$$
F = \frac{L}{4\pi d^2}
$$

で与えられます。
</Proposition>

<Proof of="prop-inverse-square">
天体を中心とする半径 $d$ の球面を考えます。天体が 1 秒間に放出したエネルギー $L$ は、途中で吸収されないという仮定から、そのすべてがこの球面を通過します。またあらゆる向きに一様という仮定から、球面上のどこを通るエネルギーも同じ割合です。

半径 $d$ の球面の面積は $4\pi d^2$ ですから、球面の単位面積あたりを 1 秒間に通過するエネルギーは $L / (4\pi d^2)$ です。観測者はこの球面上にいるので、これが $F$ にほかなりません。
</Proof>

この式には、うれしいことが一つ、困ることが一つ書いてあります。うれしいのは、$L$ と $F$ の両方がわかれば $d = \sqrt{L / (4\pi F)}$ として距離が出ることです。困るのは、$F$ しか観測できない以上、$L$ をどこかから調達しないと距離が出ないことです。この「調達」こそが、距離はしごの各段でやっていることです。

<Definition id="def-standard-candle" title="標準光源">
何らかの観測可能な特徴（変光周期、スペクトルの型、光度曲線の形など）から**光度 $L$ を前もって知ることができる**天体を、**標準光源**（standard candle）といいます。
</Definition>

標準光源が一つ見つかれば、<Ref to="prop-inverse-square" /> によってその天体までの距離が出ます。ケフェイド変光星も Ia 型超新星も、要するに標準光源です。

### 2.1. 等級：天文学者が対数を使う理由

天文学では明るさをワットではなく**等級**で表します。紀元前のヒッパルコスが、肉眼で最も明るい星を 1 等星、かろうじて見える星を 6 等星と分類したのが起源です。19 世紀にポグソンが、この分類が実際には「5 等の差でおよそ 100 倍の明るさの差」に対応していることを見出し、次のように定義し直しました。

<Definition id="def-magnitude" title="見かけの等級と絶対等級">
二つの天体の放射照度を $F_1, F_2$ とするとき、その**見かけの等級** $m_1, m_2$ の差を

$$
m_1 - m_2 = -2.5 \log_{10} \frac{F_1}{F_2}
$$

で定めます。等級が小さいほど明るいことに注意します。

さらに、その天体を距離 $10\ \mathrm{pc}$（パーセク、後述）に置き直したときの見かけの等級を**絶対等級**といい、$M$ で表します。絶対等級は光度と一対一に対応する、天体固有の量です。

差 $\mu = m - M$ を**距離指数**（distance modulus）といいます。
</Definition>

<Proposition id="prop-distance-modulus" title="距離指数の公式">
天体までの距離を $d$、パーセクを単位として測るとき、途中に光を吸収するものがなければ

$$
\mu = m - M = 5 \log_{10} \frac{d}{10\ \mathrm{pc}}, \qquad
d = 10^{(\mu + 5)/5}\ \mathrm{pc}
$$

が成り立ちます。
</Proposition>

<Proof of="prop-distance-modulus">
同じ天体を距離 $d$ で見たときの放射照度を $F(d)$、距離 $10\ \mathrm{pc}$ に置き直したときの放射照度を $F(10)$ とします。定義より前者の等級が $m$、後者の等級が $M$ です。<Ref to="def-magnitude" /> を適用すると

$$
m - M = -2.5 \log_{10} \frac{F(d)}{F(10)}
$$

です。ここで <Ref to="prop-inverse-square" /> より $F(d) = L/(4\pi d^2)$、$F(10) = L/(4\pi \cdot (10\ \mathrm{pc})^2)$ ですから、光度 $L$ は同じ天体なので約分できて

$$
\frac{F(d)}{F(10)} = \left( \frac{10\ \mathrm{pc}}{d} \right)^{2}
$$

となります。これを代入し、$\log_{10} x^{-2} = -2\log_{10} x$ を使うと

$$
m - M = -2.5 \times \left( -2 \log_{10} \frac{d}{10\ \mathrm{pc}} \right) = 5 \log_{10} \frac{d}{10\ \mathrm{pc}}
$$

を得ます。後半の式は、これを $d$ について解いただけです。$\mu / 5 = \log_{10} d - 1$ より $\log_{10} d = \mu/5 + 1 = (\mu + 5)/5$ となります。
</Proof>

なぜわざわざ対数を使うのか。理由は §6 で明らかになります。ひとことで言えば、**距離の比は掛け算で積み上がるのに、等級で書けば足し算になる**からです。はしごを何段も継ぐ天文学にとって、これは決定的に便利な性質です。

<Example id="ex-sun-vs-sirius" title="太陽とシリウス、本当に明るいのはどちらか">
太陽の見かけの等級は $m = -26.74$ です。距離は $1\ \mathrm{au} = 1/206265\ \mathrm{pc} = 4.85 \times 10^{-6}\ \mathrm{pc}$ ですから、<Ref to="prop-distance-modulus" /> より

$$
\mu = 5 \log_{10} \frac{4.85 \times 10^{-6}}{10} = 5 \log_{10} (4.85 \times 10^{-7}) = 5 \times (-6.314) = -31.57
$$

したがって絶対等級は $M = m - \mu = -26.74 + 31.57 = 4.83$ です。

一方、全天で最も明るい恒星シリウスは $m = -1.46$、距離は $2.64\ \mathrm{pc}$ です。

$$
\mu = 5 \log_{10} \frac{2.64}{10} = 5 \times (-0.579) = -2.89, \qquad M = -1.46 + 2.89 = 1.43
$$

見かけでは太陽が 25 等以上も明るいのに、同じ距離に並べるとシリウスのほうが $4.83 - 1.43 = 3.40$ 等だけ明るいことになります。光度の比にすると $10^{3.40/2.5} = 10^{1.36} \approx 23$ 倍です。

見かけの明るさは距離に平気で嘘をつく、ということです。だからこそ、距離を独立に決める手段が要ります。
</Example>

最後に、あとで何度も使う「誤差の換算表」を用意しておきます。

<Proposition id="prop-magnitude-precision" title="等級の誤差と距離の誤差">
距離指数の推定値が真の値から $\delta\mu$ だけずれているとき、距離の推定値は真の距離の $10^{\delta\mu/5}$ 倍になります。$|\delta\mu|$ が 1 等より十分小さいときは

$$
\frac{\delta d}{d} \approx \frac{\ln 10}{5}\, \delta\mu \approx 0.46 \, \delta\mu
$$

と近似できます。つまり **0.1 等のずれは距離の約 4.6 % のずれ**にあたります。
</Proposition>

<Proof of="prop-magnitude-precision">
<Ref to="prop-distance-modulus" /> より $d = 10^{(\mu+5)/5}$ ですから、$\mu$ を $\mu + \delta\mu$ に置き換えると

$$
\frac{d(\mu + \delta\mu)}{d(\mu)} = \frac{10^{(\mu + \delta\mu + 5)/5}}{10^{(\mu+5)/5}} = 10^{\delta\mu/5}
$$

となります。これが前半の主張です。後半は $10^{x} = e^{x \ln 10}$ と書き直し、$|y|$ が小さいとき $e^{y} \approx 1 + y$ が成り立つことを使うと

$$
10^{\delta\mu/5} = e^{(\ln 10 / 5)\delta\mu} \approx 1 + \frac{\ln 10}{5}\delta\mu = 1 + 0.4605\,\delta\mu
$$

となり、$\delta d / d = 10^{\delta\mu/5} - 1 \approx 0.46\,\delta\mu$ を得ます。

念のため確かめると、$\delta\mu = 0.1$ のとき厳密な値は $10^{0.02} - 1 = 0.0471$、近似値は $0.046$ で、確かによく合っています。
</Proof>

## 3. 第一段：年周視差 — 宇宙で唯一、純粋に幾何学的な物差し

<Figure caption="年周視差の原理。地球が公転軌道の反対側へ移ると、近くの星は遠方の背景に対してわずかにずれて見える。ずれの角度の半分が年周視差 p。">
<svg viewBox="0 0 800 300" width="100%" role="img" aria-label="年周視差の原理を示す図">
  <ellipse cx="110" cy="150" rx="42" ry="62" fill="none" stroke="currentColor" strokeOpacity="0.35" strokeDasharray="5 5" />
  <line x1="110" y1="88" x2="400" y2="150" stroke="currentColor" strokeOpacity="0.7" />
  <line x1="110" y1="212" x2="400" y2="150" stroke="currentColor" strokeOpacity="0.7" />
  <line x1="400" y1="150" x2="660" y2="206" stroke="currentColor" strokeOpacity="0.45" strokeDasharray="4 4" />
  <line x1="400" y1="150" x2="660" y2="94" stroke="currentColor" strokeOpacity="0.45" strokeDasharray="4 4" />
  <line x1="660" y1="35" x2="660" y2="265" stroke="currentColor" strokeOpacity="0.25" />
  <line x1="110" y1="150" x2="110" y2="88" stroke="var(--sl-color-accent)" strokeWidth="2.5" />
  <circle cx="110" cy="150" r="8" fill="var(--sl-color-accent)" />
  <circle cx="110" cy="88" r="5" fill="currentColor" />
  <circle cx="110" cy="212" r="5" fill="currentColor" />
  <circle cx="400" cy="150" r="6" fill="var(--sl-color-accent)" />
  <circle cx="660" cy="94" r="4.5" fill="none" stroke="var(--sl-color-accent)" strokeWidth="1.5" />
  <circle cx="660" cy="206" r="4.5" fill="none" stroke="var(--sl-color-accent)" strokeWidth="1.5" />
  <circle cx="660" cy="52" r="2.5" fill="currentColor" fillOpacity="0.5" />
  <circle cx="660" cy="140" r="2" fill="currentColor" fillOpacity="0.5" />
  <circle cx="660" cy="168" r="2.5" fill="currentColor" fillOpacity="0.5" />
  <circle cx="660" cy="248" r="2" fill="currentColor" fillOpacity="0.5" />
  <path d="M 331.6 135.4 A 70 70 0 0 0 331.6 164.6" fill="none" stroke="var(--sl-color-accent)" strokeWidth="1.5" />
  <text x="110" y="74" textAnchor="middle" fill="currentColor" fontSize="13">地球（1 月）</text>
  <text x="110" y="236" textAnchor="middle" fill="currentColor" fontSize="13">地球（7 月）</text>
  <text x="110" y="174" textAnchor="middle" fill="currentColor" fontSize="13">太陽</text>
  <text x="122" y="118" textAnchor="start" fill="var(--sl-color-accent)" fontSize="13">1 au</text>
  <text x="400" y="132" textAnchor="middle" fill="currentColor" fontSize="13">近くの星</text>
  <text x="318" y="156" textAnchor="end" fill="var(--sl-color-accent)" fontSize="14" fontStyle="italic">2p</text>
  <text x="672" y="98" textAnchor="start" fill="currentColor" fontSize="12">7 月の見かけの位置</text>
  <text x="672" y="210" textAnchor="start" fill="currentColor" fontSize="12">1 月の見かけの位置</text>
  <text x="660" y="26" textAnchor="middle" fill="currentColor" fillOpacity="0.7" fontSize="12">はるか遠方の星ぼし</text>
  <text x="400" y="288" textAnchor="middle" fill="currentColor" fillOpacity="0.7" fontSize="12">角度は大きく誇張しています。実際の p は 1 秒角より小さい値です。</text>
</svg>
</Figure>

指を立てて、右目と左目を交互につぶってみてください。指が背景に対して左右に動いて見えます。両目の間隔を底辺、指までの距離を高さとする細い三角形の頂角を、脳が測っているわけです。年周視差はこれとまったく同じ理屈で、底辺を「地球の公転軌道の半径」に取り替えただけです。

<Definition id="def-parallax" title="年周視差とパーセク">
ある恒星について、太陽から見た方向と、地球から見た方向のなす角の最大値を、その星の**年周視差**といい、$p$ で表します。言い換えれば、その星の位置から地球の公転軌道半径 $1\ \mathrm{au}$ を見込む角度です。

年周視差がちょうど $1$ 秒角（$1'' = 1/3600$ 度）になる距離を **1 パーセク**（parsec, pc）と定めます。名前は parallax（視差）と second（秒）を縮めたものです。
</Definition>

<Proposition id="prop-parallax-distance" title="視差距離の公式">
年周視差を秒角で測った値を $p['']$、距離をパーセクで測った値を $d[\mathrm{pc}]$ とすると

$$
d[\mathrm{pc}] = \frac{1}{p['']}
$$

が成り立ちます。ここで $1\ \mathrm{pc} = 206265\ \mathrm{au} = 3.086 \times 10^{13}\ \mathrm{km} = 3.26\ \text{光年}$ です。
</Proposition>

<Proof of="prop-parallax-distance">
太陽・地球・星が作る直角三角形を考えます。直角は太陽の位置にあり、太陽と地球を結ぶ辺の長さが $a = 1\ \mathrm{au}$、太陽と星を結ぶ辺の長さが $d$、星の位置の角が $p$ です。よって

$$
\tan p = \frac{a}{d}
$$

です。ここで $p$ は極めて小さい角です。ラジアンで測った微小角 $x$ について $\tan x \approx x$ が成り立つので（$p = 1''$ でも誤差は $10^{-11}$ 以下です）、$p$ をラジアンで測った値を $p[\mathrm{rad}]$ と書けば

$$
d = \frac{a}{p[\mathrm{rad}]}
$$

となります。次に単位を秒角に直します。$180$ 度 $= \pi$ ラジアン、$1$ 度 $= 3600$ 秒角ですから

$$
1\ \mathrm{rad} = \frac{180 \times 3600}{\pi}\ '' = 206264.8\ ''
$$

です。したがって $p[\mathrm{rad}] = p[''] / 206265$ となり

$$
d = \frac{206265 \, a}{p['']} = \frac{206265\ \mathrm{au}}{p['']}
$$

を得ます。<Ref to="def-parallax" /> より $p[''] = 1$ となる距離が $1\ \mathrm{pc}$ ですから、$1\ \mathrm{pc} = 206265\ \mathrm{au}$ です。両辺をこれで割れば $d[\mathrm{pc}] = 1/p['']$ が出ます。

数値も確かめておきます。$1\ \mathrm{au} = 1.496 \times 10^{8}\ \mathrm{km}$ なので $1\ \mathrm{pc} = 206265 \times 1.496 \times 10^{8} = 3.086 \times 10^{13}\ \mathrm{km}$、1 光年が $9.461 \times 10^{12}\ \mathrm{km}$ なので $3.086/0.9461 = 3.26$ 光年です。
</Proof>

このパーセクという単位は、まさにこの公式を「1 割る視差」で済ませるために作られたものです。天文学者が光年よりパーセクを好むのは、格好つけているのではなく、単に計算が楽だからです。

<Example id="ex-proxima" title="太陽に最も近い星までの距離">
プロキシマ・ケンタウリの年周視差は、ガイア衛星の観測で $p = 0.768''$ と測られています。<Ref to="prop-parallax-distance" /> より

$$
d = \frac{1}{0.768} = 1.302\ \mathrm{pc}
$$

光年に直すと $1.302 \times 3.26 = 4.25$ 光年、キロメートルに直すと $1.302 \times 3.086 \times 10^{13} = 4.0 \times 10^{13}\ \mathrm{km}$、つまり約 40 兆キロメートルです。

秒速 $30\ \mathrm{km}$ 程度で飛ぶ現在の惑星探査機なら、到着まで約 4 万年かかります。「最も近い」星がこれです。
</Example>

<Proposition id="prop-parallax-reach" title="視差法が届く距離">
視差の測定誤差を $\sigma_p$（秒角）とします。距離を相対誤差 $\varepsilon$ 以内で決めたいとき、測定できる最大距離は

$$
d_{\max}[\mathrm{pc}] = \frac{\varepsilon}{\sigma_p['']}
$$

です。
</Proposition>

<Proof of="prop-parallax-reach">
<Ref to="prop-parallax-distance" /> より $d = 1/p$ なので、$p$ が $\sigma_p$ だけずれると $d$ の相対誤差は

$$
\frac{\sigma_d}{d} = \frac{|1/(p+\sigma_p) - 1/p|}{1/p} = \frac{\sigma_p}{p + \sigma_p} \approx \frac{\sigma_p}{p}
$$

となります（$\sigma_p \ll p$ のとき）。ここで再び $p = 1/d$ を代入すると $\sigma_d / d \approx \sigma_p \, d$ です（$d$ はパーセク、$\sigma_p$ は秒角）。これが $\varepsilon$ 以下という条件は $d \le \varepsilon / \sigma_p$ と書けます。
</Proof>

数字を入れてみます。相対誤差 10 %（$\varepsilon = 0.1$）を許すとして、

| 観測装置 | 視差の誤差 $\sigma_p$ | 届く距離 $d_{\max}$ |
|---|---|---|
| 地上望遠鏡（20 世紀） | 約 $0.01''$ | 約 10 pc |
| ヒッパルコス衛星（1990 年代） | 約 $0.001''$ | 約 100 pc |
| ガイア衛星（2010 年代以降） | 約 $0.00002''$ | 約 5000 pc |

ガイアは驚異的です。$0.00002''$（20 マイクロ秒角）は、地球の裏側に置いた 1 円玉の厚みを見分ける精度に相当します。それでも届くのは 5000 パーセク、約 1 万 6000 光年です。

ところが銀河系の直径は約 3 万パーセク、アンドロメダ銀河までは約 78 万パーセクあります。**幾何学だけで測れる範囲は、自分の住む銀河すら横断できない**のです。ここで一段目は終わり、二段目に乗り換えなければなりません。

<Aside type="note">
年周視差は、はしごの中で唯一「物理の仮定をほとんど含まない」段です。使っているのは三角形の性質と、地球が公転しているという事実だけです。上の段はすべて、天体の性質について何かを仮定します。だからこそ視差の精度向上は、はしご全体の精度をそのまま押し上げます。
</Aside>

## 4. 第二段：ケフェイド変光星 — 点滅の速さが明るさを教える

1908 年、ハーバード大学天文台でヘンリエッタ・リービットは、小マゼラン雲という天体の写真乾板を延々と比較して変光星を探す仕事をしていました。当時、女性は望遠鏡を覗かせてもらえず、「計算手」として写真の測定をするのが仕事でした。

彼女は 25 個の変光星について、明るさが変わる周期と、平均の見かけの明るさを表にしました。すると、**周期が長い星ほど明るい**という関係が、驚くほどきれいな直線として現れたのです（横軸を周期の対数に取ったとき）。

この発見が決定的だったのは、小マゼラン雲という舞台のおかげです。小マゼラン雲の中の星は、地球からの距離がほぼ全部同じです（雲の奥行きは、雲までの距離に比べてずっと小さい）。ということは、<Ref to="prop-inverse-square" /> の $d$ が共通なので、**見かけの明るさの違いは、そのまま本当の明るさの違い**を意味します。リービットは距離を知らないまま、光度と周期の関係を掴んだわけです。

<Definition id="def-period-luminosity" title="周期光度関係">
ケフェイド変光星（セファイド変光星）と呼ばれる種族の脈動変光星について、変光周期 $P$（日）と絶対等級 $M_V$ のあいだには

$$
M_V = a \log_{10} \frac{P}{1\ \text{日}} + b
$$

という一次の関係が成り立ちます。これを**周期光度関係**（リービットの法則）といいます。可視光での係数はおおよそ $a \approx -2.8$、$b \approx -1.4$ です。
</Definition>

$a$ が負であることに注意してください。等級は小さいほど明るいので、周期が長いほど明るいという意味になります。

なぜこんな関係があるのでしょうか。ケフェイド変光星は、ヘリウムが電離したり再結合したりすることで外層の透明度が周期的に変わり、星全体が膨らんだり縮んだりを繰り返している「熱機関」です。大きく膨らんだ星ほど脈動の周期が長く、同時に表面積が大きいので光度も大きい。周期と光度が結びつくのは、どちらも星のサイズが決めているからです。

<Proposition id="prop-cepheid-distance" title="ケフェイドまでの距離">
ケフェイド変光星の変光周期 $P$ と平均見かけ等級 $m_V$ が観測でき、その方向の星間減光による減光量 $A_V$（等級）がわかっているとき、その星までの距離は

$$
d = 10^{(m_V - A_V - M_V + 5)/5}\ \mathrm{pc}, \qquad M_V = a \log_{10} P + b
$$

で与えられます。
</Proposition>

<Proof of="prop-cepheid-distance">
まず <Ref to="def-period-luminosity" /> により、観測された周期 $P$ から絶対等級 $M_V$ が決まります。次に、星間物質による吸収がなければ見かけの等級は $m_V - A_V$ だったはずです（減光は星を暗く、すなわち等級を大きく見せるので、真の値に戻すには引きます）。

したがって減光を補正した距離指数は $\mu_0 = (m_V - A_V) - M_V$ です。<Ref to="prop-distance-modulus" /> の後半の式 $d = 10^{(\mu+5)/5}$ に $\mu = \mu_0$ を代入すれば、主張の式を得ます。
</Proof>

<Example id="ex-delta-cephei" title="δ ケフェイまでの距離を実際に計算する">
この種族の名前の由来となった星、ケフェウス座 δ 星（δ ケフェイ）で試します。観測値は次のとおりです。

- 変光周期 $P = 5.366$ 日
- 平均見かけ等級 $m_V = 3.95$
- この方向の星間減光 $A_V = 0.28$ 等

まず絶対等級を求めます。$\log_{10} 5.366 = 0.7296$ ですから、<Ref to="def-period-luminosity" /> より

$$
M_V = -2.8 \times 0.7296 - 1.4 = -2.043 - 1.4 = -3.44
$$

次に減光を補正した距離指数は

$$
\mu_0 = (3.95 - 0.28) - (-3.44) = 3.67 + 3.44 = 7.11
$$

<Ref to="prop-cepheid-distance" /> より

$$
d = 10^{(7.11 + 5)/5} = 10^{2.422} = 264\ \mathrm{pc}
$$

一方、ハッブル宇宙望遠鏡は δ ケフェイの年周視差を直接測っており、その値は $273 \pm 11\ \mathrm{pc}$ です。**まったく別の原理で測った二つの値が、誤差の範囲で一致しました。** これがはしごの継ぎ目が信用できることの、最も直接的な証拠です。

ここで減光の補正を忘れるとどうなるか、試してみましょう。$\mu = 3.95 + 3.44 = 7.39$ として

$$
d = 10^{(7.39+5)/5} = 10^{2.478} = 301\ \mathrm{pc}
$$

真の値より 14 % ほど遠く出てしまいます。<Ref to="prop-magnitude-precision" /> の換算どおり、$0.28$ 等のずれが $0.46 \times 0.28 = 0.13$、つまり 13 % の距離のずれを生んだわけです（厳密には $10^{0.28/5} - 1 = 0.137$）。
</Example>

<Remark id="rem-extinction" title="星間減光という永遠の敵">
<Ref to="prop-inverse-square" /> は「途中に光を吸収するものがない」という仮定の上に立っていました。実際の銀河には星間塵が漂っており、光を吸収・散乱します。これを**星間減光**といいます。

減光は星を暗く見せるので、補正を忘れると距離を必ず**過大評価**します。しかも塵は青い光をより強く散乱する（だから夕日は赤い）ので、遠くの星は実際より赤く見えます。この「赤化」の度合いを測ることで、逆に減光量 $A_V$ を推定するのが標準的な手口です。

さらに近年は、赤外線での観測が好まれます。赤外線は塵をよく透過するので、減光の補正誤差そのものが小さくなるからです。
</Remark>

<Example id="ex-m100" title="1 億光年先の銀河までの距離">
ハッブル宇宙望遠鏡の初期の主要目標の一つが、おとめ座銀河団の渦巻銀河 M100 の中に個々のケフェイド変光星を見つけることでした。1994 年、これは成功します。

見つかったケフェイドの一つが、周期 $P = 30$ 日、減光補正後の平均見かけ等級 $m_V = 25.6$ だったとしましょう。$\log_{10} 30 = 1.477$ なので

$$
M_V = -2.8 \times 1.477 - 1.4 = -4.14 - 1.4 = -5.54
$$

$$
\mu = 25.6 - (-5.54) = 31.14, \qquad d = 10^{(31.14+5)/5} = 10^{7.228} = 1.69 \times 10^{7}\ \mathrm{pc}
$$

すなわち約 $17$ メガパーセク、光年に直すと $1.69 \times 10^{7} \times 3.26 = 5.5 \times 10^{7}$、5500 万光年です。実際に報告された値は $17.1 \pm 1.8$ メガパーセクでした。

ここで見かけ等級 $25.6$ という数字を味わってください。肉眼の限界が 6 等、$25.6$ 等はその $10^{(25.6-6)/2.5} = 10^{7.84} \approx 7 \times 10^{7}$ 分の 1 の明るさです。地上の望遠鏡では大気のゆらぎに埋もれてしまい、宇宙望遠鏡が必要だったのはこのためです。
</Example>

<Remark id="rem-metallicity" title="目盛りは一度、間違ったことがある">
1920 年代、ハッブルはアンドロメダ銀河の中にケフェイドを見つけ、その距離を約 30 万パーセクと求めました。これは「渦巻星雲は銀河系の中の天体か、外の別の銀河か」という当時の大論争に決着をつけた歴史的な計算です。

ところが 1952 年、バーデはケフェイドに二つの種族があり、それぞれ別の周期光度関係に従うことを発見しました。ハッブルは種族を取り違えていたのです。訂正の結果、**銀河系外の距離はすべて一気に約 2 倍**になりました。宇宙の大きさが一夜にして倍になった、という事件です。

はしごの下の段の目盛りが狂うと、上の段はまとめて狂う。この教訓は、後で見るハッブル・テンションの議論にそのまま生きています。現在も、ケフェイドの周期光度関係が母銀河の重元素量（金属量）にどれくらい依存するかは、精密測定の主要な不確定要素の一つです。
</Remark>

## 5. 第三段：Ia 型超新星 — 宇宙が用意した使い捨ての街灯

ケフェイドで届くのは、明るいもので 3000 万パーセク（約 1 億光年）程度です。それより遠い銀河では、個々の星を分解して見ることができません。もっと明るい標準光源が要ります。

そこで登場するのが **Ia 型超新星**です。仕組みはこうです。

太陽程度の質量の星は、最期に**白色矮星**という、地球ほどの大きさに太陽ほどの質量を詰め込んだ天体になります。白色矮星は電子の縮退圧という量子力学的な圧力で自分を支えていますが、この支え方には上限があります。質量が太陽の約 1.4 倍（**チャンドラセカール限界**）を超えると支えきれません。

白色矮星が連星系にいて、相手の星からガスを吸い取り続けると、質量はこの限界に近づいていきます。そして限界の直前で中心部の炭素が点火し、核融合が星全体に暴走的に広がって、白色矮星は跡形もなく吹き飛びます。これが Ia 型超新星です。

決定的なのは、**引き金が引かれる質量がいつもほぼ同じ**だという点です。同じ量の燃料が同じように燃えるので、放出されるエネルギーもほぼ同じになります。最大光度での絶対等級は $M_B \approx -19.3$、太陽のおよそ 50 億倍の明るさです。一時的に、母銀河にある数千億個の星の合計に匹敵するほど輝きます。

つまり Ia 型超新星は、宇宙が勝手に置いてくれた、規格のそろった街灯です。ただし数週間で燃え尽きる使い捨てですが。

<Example id="ex-sn-reach" title="Ia 型超新星でどこまで届くか">
まず目盛りを合わせます。2011 年、地球から比較的近い銀河 M101（回転花火銀河）で SN 2011fe という Ia 型超新星が爆発しました。M101 まではケフェイドで距離が測られており、距離指数は $\mu = 29.04$（約 $6.4$ メガパーセク）です。この超新星の最大時の見かけ等級は約 $9.9$ 等でした。したがって

$$
M_B = 9.9 - 29.04 = -19.1
$$

確かに $-19$ 等台です。**ケフェイドの段から超新星の段へ、目盛りが受け渡された**瞬間です。

次に、この目盛りを使います。遠方の銀河で、最大時の見かけ等級が $m_B = 20.0$ の Ia 型超新星が見つかったとしましょう。

$$
\mu = 20.0 - (-19.1) = 39.1, \qquad d = 10^{(39.1+5)/5} = 10^{8.82} = 6.6 \times 10^{8}\ \mathrm{pc}
$$

約 660 メガパーセク、光年に直すと約 21 億光年です。

同じ銀河にケフェイドがあったとして、それは何等に見えるでしょうか。周期 30 日のケフェイドなら $M_V = -5.54$ なので

$$
m_V = 39.1 - 5.54 = 33.6
$$

$33.6$ 等です。ハッブル宇宙望遠鏡の限界が 30 等前後ですから、これは絶望的です。Ia 型超新星が必要になる理由が、数字ではっきりします。
</Example>

### 5.1. 「ほぼ同じ」を「かなり同じ」にする補正

正直に書くと、Ia 型超新星の最大光度は完全にはそろっていません。素のままだとばらつきは $0.4$ 等ほどあり、<Ref to="prop-magnitude-precision" /> によれば距離の誤差にして約 18 % です。これでは精密宇宙論には使えません。

1993 年、フィリップスがこのばらつきに規則性を見つけました。**明るい超新星ほど、爆発後の減光がゆっくりである**というのです。最大光度からの 15 日間に B バンドで暗くなる等級を $\Delta m_{15}(B)$ と書くと、この量と最大絶対等級のあいだにきれいな相関があります。

$\Delta m_{15}(B)$ は光度曲線（明るさの時間変化）を追いかければ測れる量ですから、これを使ってばらつきを補正できます。補正後のばらつきは約 $0.15$ 等、距離にして約 7 % まで下がります。標準光源というより、「観測すれば校正できる光源」というほうが正確でしょう。

<Remark id="rem-ia-mechanism" title="正体はまだ完全にはわかっていない">
上で「連星の相手からガスを吸い取る」と書きましたが、これは有力なシナリオの一つ（単縮退シナリオ）にすぎません。白色矮星どうしが合体して爆発するシナリオ（二重縮退シナリオ）も有力で、どちらがどれくらいの割合を占めるかは決着していません。合体なら、爆発時の総質量はチャンドラセカール限界に一致するとは限りません。

つまり、なぜ Ia 型超新星がこれほど均質なのかは、理論から完全に導けているわけではないのです。私たちが頼っているのは、近傍の超新星で確かめられた**経験則**です。標準光源の「標準」は、証明された定理ではなく、検証され続けている仮説だと理解してください。
</Remark>

この物差しの威力が最も劇的に現れたのが 1998 年です。二つの研究チームが数十個の遠方 Ia 型超新星を観測し、それらが「宇宙が一定の速さで膨張しているとしたら暗すぎる = 予想より遠い」ことを見出しました。宇宙の膨張は減速どころか**加速**していたのです。この発見が、[ダークマターとダークエネルギー](/physics/cosmology/dark-matter-and-dark-energy) の後半を占める難問の出発点になりました（加速膨張が何を要求するかは <Ref to="physics/cosmology/dark-matter-and-dark-energy#prop-acceleration-condition" /> にまとめてあります）。

## 6. はしごとして積む：距離指数は足し算、誤差も足し算

<Figure caption="宇宙の距離はしごの構造。実線は距離が測れる範囲、点線は下の段が上の段の目盛りを刻む（較正する）関係を表す。">
<Mermaid code={`flowchart TD
  A["段 0 レーダー測距 — 1 天文単位の実長を決める"]
  B["段 1 年周視差 — 約 5000 パーセクまで"]
  C["段 2 ケフェイド変光星 — 約 3000 万パーセクまで"]
  D["段 3 Ia 型超新星 — 数十億光年まで"]
  E["ハッブル定数、宇宙の年齢と大きさ"]
  A --> B --> C --> D --> E
  B -.->|"近傍のケフェイドの絶対等級を決める"| C
  C -.->|"近傍銀河の超新星の絶対等級を決める"| D`} />
</Figure>

| 段 | 使う天体・現象 | 何を「知っている」ことにするか | 届く距離の目安 | 主な誤差の原因 |
|---|---|---|---|---|
| 0 | レーダー測距・電波観測 | 光の速さ | 太陽系内（数十 au） | ほぼ無視できる |
| 1 | 年周視差 | 地球の公転軌道の半径 | 約 5000 pc | 角度の測定精度 |
| 2 | ケフェイド変光星 | 周期光度関係 | 約 3000 万 pc | 星間減光・金属量・目盛り合わせ |
| 3 | Ia 型超新星 | 最大光度がほぼ一定 | 数十億光年 | 母銀河の環境・目盛り合わせ |

はしごの継ぎ目で実際に何をしているのかを、式で書いておきます。ここが本記事の核心です。

<Proposition id="prop-ladder-additivity" title="はしごの継ぎ方と誤差の伝わり方">
天体 A と天体 B が同種の標準光源であり（すなわち絶対等級 $M$ が共通であり）、それぞれの減光補正済み見かけ等級が $m_A, m_B$ であるとします。このとき

$$
\mu_B = \mu_A + (m_B - m_A), \qquad \frac{d_B}{d_A} = 10^{(m_B - m_A)/5}
$$

が成り立ちます。**この式に $M$ は現れません。** すなわち、絶対等級の値を知らなくても、A までの距離さえわかっていれば B までの距離が決まります。

さらに、$\mu_A$ の誤差を $\sigma_A$、$m_B - m_A$ の測定誤差を $\sigma_{AB}$ とし、両者が独立であれば

$$
\sigma_{\mu_B} = \sqrt{\sigma_A^2 + \sigma_{AB}^2}
$$

です。一方、両者が同じ向きの系統誤差 $\Delta_A, \Delta_{AB}$ を持つ場合、それらは単純に足し合わさって $\Delta_{\mu_B} = \Delta_A + \Delta_{AB}$ となります。
</Proposition>

<Proof of="prop-ladder-additivity">
<Ref to="def-magnitude" /> の距離指数の定義より $\mu_A = m_A - M$、$\mu_B = m_B - M$ です。辺々引くと

$$
\mu_B - \mu_A = (m_B - M) - (m_A - M) = m_B - m_A
$$

となり、$M$ が消えます。移項すれば第一式です。第二式は、<Ref to="prop-magnitude-precision" /> の証明と同じ計算で $d_B/d_A = 10^{(\mu_B - \mu_A)/5}$ が言えることから従います。

誤差については、$\mu_B$ が二つの独立な量の和で書けているので、分散が加法的であること（独立な確率変数の和の分散は分散の和）から $\sigma_{\mu_B}^2 = \sigma_A^2 + \sigma_{AB}^2$ が出ます。系統誤差は確率的なばらつきではなく決まったずれなので、和の中でそのまま足し合わさります。
</Proof>

$M$ が消えるという事実は、はしごという発想そのものを支えています。ケフェイドの本当の光度がワットで何値かを知る必要はなく、「近くのケフェイドと遠くのケフェイドは同じ種族だ」と言えればよいのです。天文学が絶対値でなく比を扱う学問である理由が、ここにあります。

そして誤差の伝わり方が、はしごの宿命を決めます。距離が掛け算で積み上がるということは、**相対誤差が積み上がる**ということです。等級（対数）で書けば、それは足し算として現れます。

具体的にやってみます。三段のはしごで、各段の距離指数の統計誤差が

- 段 1（視差でケフェイドの目盛りを刻む）：$\sigma_1 = 0.05$ 等
- 段 2（近傍銀河のケフェイドで超新星の目盛りを刻む）：$\sigma_2 = 0.10$ 等
- 段 3（遠方の超新星を測る）：$\sigma_3 = 0.15$ 等

だったとします。<Ref to="prop-ladder-additivity" /> を二回使うと、最終的な距離指数の誤差は

$$
\sigma_{\mathrm{total}} = \sqrt{0.05^2 + 0.10^2 + 0.15^2} = \sqrt{0.0025 + 0.01 + 0.0225} = \sqrt{0.035} = 0.187\ \text{等}
$$

<Ref to="prop-magnitude-precision" /> で距離に直すと $0.46 \times 0.187 = 0.086$、約 8.6 % です。

ところが、もし各段が同じ向きに $0.05$ 等ずつ**系統的に**ずれていたら、合計は $0.05 \times 3 = 0.15$ 等、距離にして約 7 % のずれになります。しかも系統誤差は、観測数をいくら増やしても減りません。これがはしごの怖いところです。

<Example id="ex-hubble-tension" title="0.17 等が引き起こしている大論争">
遠方銀河の距離 $d$ と後退速度 $v$（<Ref to="physics/cosmology/big-bang-evidence#def-redshift" /> から測ります）の比から求まるのが**ハッブル定数** $H_0 = v/d$ です（<Ref to="physics/cosmology/age-and-size-of-the-universe#def-hubble" />）。宇宙の年齢と大きさは、ほぼこの一つの数で決まります（詳しくは [宇宙の果てと年齢](/physics/cosmology/age-and-size-of-the-universe) の <Ref to="physics/cosmology/age-and-size-of-the-universe#thm-lcdm-age" /> を参照してください）。

現在、二つの独立な測り方が食い違っています。

- 本記事のはしご（視差 → ケフェイド → Ia 型超新星）による値：$H_0 = 73.0 \pm 1.0\ \mathrm{km/s/Mpc}$
- 宇宙マイクロ波背景放射のゆらぎから、宇宙論モデルを介して求めた値：$H_0 = 67.4 \pm 0.5\ \mathrm{km/s/Mpc}$

差は $5.6$、それぞれの誤差を合成した $\sqrt{1.0^2 + 0.5^2} = 1.1$ で割ると約 $5$ 倍です。偶然の一致では説明できない食い違いで、**ハッブル・テンション**と呼ばれています（<Ref to="physics/cosmology/big-bang-evidence#rem-hubble-tension" /> も参照）。

この食い違いを距離の言葉に翻訳してみましょう。$H_0 = v/d$ なので、はしごが距離を系統的に $8$ % 小さく見積もっていれば、$H_0$ は $8$ % 大きく出ます。$73.0/67.4 = 1.083$ ですから、まさにこの程度です。

では $8$ % の距離のずれは、等級で何等でしょうか。<Ref to="prop-magnitude-precision" /> より

$$
\delta\mu = \frac{0.08}{0.46} = 0.17\ \text{等}
$$

**たった 0.17 等**です。明るさにして 17 % のずれが、どこか一段の目盛りに紛れ込んでいれば済んでしまう。だからこそ、多くの天文学者が「はしごのどこかに未発見の系統誤差があるのでは」と疑って総点検を続けています。同時に、いくら点検しても見つからないので「新しい物理が必要では」と考える人も増えています。

<Ref to="rem-metallicity" /> で見たバーデの訂正は、距離を 2 倍にする間違いでした。今回の食い違いはその 10 分の 1 以下のスケールです。はしごの精度が、いかにここまで上がってきたかがわかります。
</Example>

<Aside type="caution">
「はしご」という比喩は、その脆さも正しく伝えています。一段目が折れれば、上の段はすべて落ちます。天文学者が視差測定の精度向上（ヒッパルコス、ガイア、そして将来計画）に多大な資源を注ぎ込むのは、それが唯一、下の段を補強する方法だからです。

なお近年は、はしごを経由せずに一気に距離を出す方法（重力波源の観測、赤色巨星分枝の先端の明るさ、重力レンズを受けたクェーサーの時間差など）も発展しています。独立な方法が増えれば、どこがおかしいのかを絞り込めます。
</Aside>

## 7. 演習

<Exercise id="exr-parallax-basic" difficulty="易">
ある恒星の年周視差が $p = 0.025''$ と測定されました。

(a) この星までの距離をパーセクと光年で求めてください。

(b) この星の見かけの等級が $m = 8.0$ のとき、絶対等級 $M$ はいくらですか。星間減光は無視してよいものとします。

<Solution>
(a) <Ref to="prop-parallax-distance" /> より

$$
d = \frac{1}{0.025} = 40\ \mathrm{pc}
$$

光年に直すと $40 \times 3.26 = 130$ 光年です。

(b) <Ref to="prop-distance-modulus" /> より

$$
\mu = 5 \log_{10} \frac{40}{10} = 5 \log_{10} 4 = 5 \times 0.602 = 3.01
$$

したがって

$$
M = m - \mu = 8.0 - 3.01 = 4.99 \approx 5.0
$$

<Ref to="ex-sun-vs-sirius" /> で求めた太陽の絶対等級は $4.83$ でしたから、この星は太陽とほぼ同じ明るさの星だとわかります。40 パーセク離れると、太陽のような星は肉眼ではまったく見えなくなる（8 等星になる）わけです。
</Solution>
</Exercise>

<Exercise id="exr-cepheid-extinction" difficulty="標準">
ある系外銀河の中に、変光周期 $P = 20$ 日のケフェイド変光星が見つかり、平均見かけ等級は $m_V = 22.9$ でした。この方向の星間減光は $A_V = 0.5$ 等と推定されています。周期光度関係 $M_V = -2.8 \log_{10}(P/1\ \text{日}) - 1.4$ を用いて、次に答えてください。

(a) この銀河までの距離をパーセクと光年で求めてください。

(b) もし星間減光の補正を忘れると、距離を何 % 誤りますか。過大評価と過小評価のどちらになりますか。

<Solution>
(a) $\log_{10} 20 = 1.301$ なので、<Ref to="def-period-luminosity" /> より

$$
M_V = -2.8 \times 1.301 - 1.4 = -3.643 - 1.4 = -5.04
$$

<Ref to="prop-cepheid-distance" /> に従い、減光を補正した距離指数を計算します。

$$
\mu_0 = (22.9 - 0.5) - (-5.04) = 22.4 + 5.04 = 27.44
$$

$$
d = 10^{(27.44+5)/5} = 10^{6.488} = 3.08 \times 10^{6}\ \mathrm{pc}
$$

すなわち約 $3.1$ メガパーセク、光年に直すと $3.08 \times 10^{6} \times 3.26 = 1.00 \times 10^{7}$、ちょうど 1000 万光年です。

(b) 減光を無視すると $\mu = 22.9 + 5.04 = 27.94$ となり

$$
d' = 10^{(27.94+5)/5} = 10^{6.588} = 3.88 \times 10^{6}\ \mathrm{pc}
$$

比を取ると $d'/d = 3.88/3.08 = 1.26$ なので、約 26 % の**過大評価**です。これは <Ref to="prop-magnitude-precision" /> の厳密な式 $10^{\delta\mu/5} = 10^{0.5/5} = 10^{0.1} = 1.259$ と一致します。

なお線形近似 $0.46 \times 0.5 = 0.23$ では 23 % となり、真の 26 % とややずれます。$\delta\mu = 0.5$ は「1 等より十分小さい」とは言いにくく、近似の適用限界にさしかかっているためです。
</Solution>
</Exercise>

<Exercise id="exr-sn-statistics" difficulty="難">
Ia 型超新星の最大絶対等級のばらつきが、光度曲線による補正の前は標準偏差 $0.40$ 等、補正後は $0.15$ 等だとします。

(a) 超新星 1 個から求めた距離の相対誤差は、補正前と補正後でそれぞれ何 % ですか。<Ref to="prop-magnitude-precision" /> の線形近似を使ってください。

(b) ある銀河団の中で、同種の超新星を $N$ 個独立に観測し、求めた距離指数を平均するとします。誤差は何分の 1 になりますか。$N = 25$ のとき、補正なしでも補正ありの 1 個分を上回る精度が得られますか。

(c) (b) の議論には重大な但し書きが付きます。それは何ですか。

<Solution>
(a) <Ref to="prop-magnitude-precision" /> より $\delta d/d \approx 0.46\,\delta\mu$ です。

- 補正前：$0.46 \times 0.40 = 0.184$、約 18 %
- 補正後：$0.46 \times 0.15 = 0.069$、約 7 %

フィリップスの補正一つで、距離の精度が 2.7 倍近く改善したことになります。

(b) 独立な $N$ 個の測定の平均の標準偏差は、もとの標準偏差の $1/\sqrt{N}$ です。<Ref to="prop-ladder-additivity" /> の誤差の合成則（分散が加法的）から、$N$ 個の平均の分散は $\sigma^2/N$ となるためです。

$N = 25$ なら $1/\sqrt{25} = 1/5$ ですから、補正なしの誤差は

$$
\frac{18\ \%}{5} = 3.7\ \%
$$

補正ありの 1 個分（7 %）を上回ります。統計だけを見れば、答えは「得られる」です。

(c) 但し書きは、**$1/\sqrt{N}$ で減るのは統計誤差だけで、系統誤差はまったく減らない**ことです。

<Ref to="prop-ladder-additivity" /> の後半で見たとおり、系統誤差は単純に足し合わさります。たとえば「近傍の超新星の目盛り合わせに使ったケフェイドの絶対等級が、全体として $0.05$ 等ずれていた」という誤りは、超新星を 25 個観測しようが 2500 個観測しようが、$0.05$ 等のずれとして残ります。

<Ref to="ex-hubble-tension" /> のハッブル・テンションが厄介なのは、まさにこの理由です。観測数はすでに十分多く、統計誤差は小さい。残っているのは系統誤差か、あるいは新しい物理のどちらかです。
</Solution>
</Exercise>

## 参考文献

- Leavitt, H. S. and Pickering, E. C., "Periods of 25 Variable Stars in the Small Magellanic Cloud", *Harvard College Observatory Circular* 173 (1912), 1–3. — 周期光度関係の原論文。わずか 3 ページで、宇宙の測り方が変わりました。
- Benedict, G. F. et al., "Astrometry with the Hubble Space Telescope: A Parallax of the Fundamental Distance Calibrator δ Cephei", *The Astronomical Journal* 124 (2002), 1695–1705. — <Ref to="ex-delta-cephei" /> で比較に用いた視差の値の出典。
- Phillips, M. M., "The Absolute Magnitudes of Type IA Supernovae", *The Astrophysical Journal* 413 (1993), L105–L108. — 光度曲線の減光速度と最大光度の相関を示した論文。
- Freedman, W. L. et al., "Final Results from the Hubble Space Telescope Key Project to Measure the Hubble Constant", *The Astrophysical Journal* 553 (2001), 47–72. arXiv:[astro-ph/0012376](https://arxiv.org/abs/astro-ph/0012376) — ケフェイドによる系外銀河距離の較正と、はしご全体の誤差評価が詳しく書かれています。
- Riess, A. G. et al., "A Comprehensive Measurement of the Local Value of the Hubble Constant with 1 km/s/Mpc Uncertainty from the Hubble Space Telescope and the SH0ES Team", *The Astrophysical Journal Letters* 934 (2022), L7. arXiv:[2112.04510](https://arxiv.org/abs/2112.04510) — <Ref to="ex-hubble-tension" /> で用いた $H_0 = 73.0 \pm 1.0$ の出典。
- Planck Collaboration, "Planck 2018 results. VI. Cosmological parameters", *Astronomy & Astrophysics* 641 (2020), A6. arXiv:[1807.06209](https://arxiv.org/abs/1807.06209) — 宇宙マイクロ波背景放射側の $H_0 = 67.4 \pm 0.5$ の出典。

## Appendix: 「1 天文単位」はどうやって測ったのか

**はしごの零段目。** 本文では <Ref to="prop-parallax-distance" /> の底辺として $1\ \mathrm{au}$ を当たり前のように使いましたが、これ自体が測定の対象です。三角測量の底辺の長さを知らなければ、三角測量はできません。

**惑星の配置は比だけならわかる。** ケプラーの第 3 法則は、公転周期の 2 乗が軌道長半径の 3 乗に比例することを述べています。周期は空を眺めていれば測れるので、太陽系のすべての惑星の軌道半径の**比**は、17 世紀の時点で正確にわかっていました。足りないのは、その比に長さの単位を与える 1 本の物差しだけです。

**金星の日面通過。** 18 世紀、ハレーの提案に基づき、金星が太陽面を横切る現象を地球上の遠く離れた 2 地点から観測する国際的な大事業が組まれました（1761 年と 1769 年）。観測地点の緯度が違えば、金星が太陽面を横切る経路がわずかにずれます。そのずれは、地球上の 2 地点間の距離を底辺とする三角測量にほかなりません。キャプテン・クックの第 1 回航海の主目的の一つが、タヒチでのこの観測でした。得られた値は現代の値から数 % 以内に入っていました。

**レーダーが決着をつけた。** 1961 年、金星に電波を打ち込んで反射波が返ってくるまでの時間が測られました。光速は正確にわかっているので、往復距離が直接求まります。誤差は一気に $10^{-6}$ を下回りました。

**現在は定義値。** 精度が上がりすぎた結果、2012 年に国際天文学連合は $1\ \mathrm{au} = 149\,597\,870\,700\ \mathrm{m}$ と、**きっかりの定義値**として固定しました。もはや測定される量ではありません。

こうして零段目が固まっているおかげで、その上のすべての段が意味を持ちます。距離はしごは、電波で測った太陽系の大きさから、100 億光年先の超新星までを、途切れなく一本につないでいるのです。
