# 宇宙の果てと年齢：138 億年と 465 億光年はどこから来た数字か

> ハッブル定数の逆数がなぜ宇宙の年齢の目安になるのかを式で追い、138 億年を導く。さらに観測可能な宇宙の半径が 465 億光年になる理由と、宇宙そのものに端があるのかを解説する。
> https://rikai.mugen-giken.com/physics/cosmology/age-and-size-of-the-universe

## 0. この記事の要点

- 宇宙の年齢 138 億年は、地層のようにどこかから掘り出した数字ではありません。**膨張の速さから逆算した**数字です。いちばん粗い見積もりは「今の膨張の速さで割り算する」こと、つまりハッブル定数の逆数 $1/H_0$ です。
- $H_0 = 67.4\ \mathrm{km/s/Mpc}$ を年に直すと $1/H_0 = 145$ 億年になります。実際の 138 億年はこれに $0.951$ を掛けた値で、この $0.951$ の中身に物質とダークエネルギーの綱引きが入っています。この記事ではその係数を手計算で出します。
- 観測可能な宇宙の半径は 138 億光年**ではなく**、約 465 億光年です。光が飛んでいた 138 億年のあいだに、光の出発点そのものが遠ざかったからです。
- いま光が届いている天体の大半は、現在、光速より速く私たちから遠ざかっています。これは相対性理論に反しません。
- 「宇宙そのものの果て」は「見える範囲の果て」とはまったく別の話です。空間は無限かもしれませんし、有限でも「端」が存在しない可能性があります。観測は、少なくとも半径 2300 億光年程度までは平坦だと告げています。

## 1. 動機：宇宙に誕生日はあるのか

「宇宙は何歳ですか」と聞かれて「138 億歳です」と即答できる時代になりました。しかしこの数字、どうやって測ったのでしょうか。宇宙に年輪はありませんし、生まれた瞬間に立ち会った目撃者もいません。

手がかりはひとつだけあります。**宇宙は膨張している**という事実です。1929 年、エドウィン・ハッブルは遠くの銀河ほど速く遠ざかっていることを報告しました。遠ざかる速さ $v$ と距離 $d$ が比例する、という関係です。ならば話は簡単そうに見えます。すべての銀河がいまの速さのまま遠ざかってきたのなら、映像を巻き戻せば、いつか全員が一点に集まるはずです。その「巻き戻し時間」が宇宙の年齢の目安になります。

ところが、この素朴な計算はいきなり困ったことになりました。ハッブルが求めた比例定数は約 $500\ \mathrm{km/s/Mpc}$ で、巻き戻し時間はおよそ **20 億年**。当時すでに放射性元素による年代測定で、地球の岩石が少なくとも 20 億年前のものだと分かっていました。宇宙が地球より若いという、なかなか気まずい結論です。

この矛盾の犯人は「距離」でした。ハッブルはセファイド変光星という「ものさし」を使って銀河までの距離を測っていましたが、そのものさしの目盛りが間違っていたのです。1952 年にヴァルター・バーデがセファイドに 2 種類あることを見抜き、距離は一気に倍以上に修正され、比例定数は半分以下になりました（この「目盛りの取り違え」については <Ref to="physics/cosmology/cosmic-distance-ladder#rem-metallicity" />）。距離を測る技術がどれだけ苦労の塊かは [なぜ星までの距離がわかるのか](/physics/cosmology/cosmic-distance-ladder) に譲りますが（はしごを継ぐたびに誤差がどう積み上がるかは <Ref to="physics/cosmology/cosmic-distance-ladder#prop-ladder-additivity" /> にまとまっています）、宇宙の年齢は結局のところ**距離の測定精度そのもの**だ、ということは覚えておいてください。

そして年齢の話をすると、必ずセットで出てくるのが「では宇宙の果てはどこですか」という質問です。この質問には二つのまったく違う意味があり、混ざったまま議論すると必ず迷子になります。この記事では、年齢の計算を最後まで実行したあと、二つの「果て」をきちんと分けて説明します。

## 2. 準備：膨張する宇宙を測る道具

### 2.1. スケール因子と共動距離

膨張する宇宙を「銀河が空間の中を飛び散っている」と考えると、ほぼ確実に間違えます。正しい描像は、**空間そのものが伸び、銀河はそこに貼り付いたまま引き離される**というものです。この描像を式にするのが次の定義です。

<Definition id="def-scale-factor" title="スケール因子と共動距離">
宇宙が一様（どこも同じ）かつ等方（どの向きも同じ）に膨張しているとする。二つの銀河のあいだの実際の距離（**固有距離**）$d(t)$ が、時刻によらない定数 $\chi$ と、すべての銀河対に共通のただ一つの関数 $a(t) > 0$ を使って

$$
d(t) = a(t)\,\chi
$$

と書けるとき、$a(t)$ を**スケール因子**、$\chi$ を**共動距離**と呼ぶ。規格化として現在時刻 $t_0$ で $a(t_0) = 1$ と取る。したがって共動距離は「現在の距離に換算した値」に等しい。
</Definition>

要するに $a(t)$ は宇宙という写真の拡大率です。$a = 0.5$ の時代には、すべての距離が今の半分でした。共動距離 $\chi$ のほうは銀河に振った背番号のようなもので、膨張しても変わりません。

### 2.2. ハッブル・ルメートルの法則

<Definition id="def-hubble" title="ハッブル定数">
スケール因子の増加率を $a$ 自身で割った量

$$
H(t) = \frac{1}{a(t)}\frac{da}{dt}
$$

を**ハッブル定数**（正確にはハッブル・パラメータ）と呼ぶ。その現在値を $H_0 = H(t_0)$ と書く。$H$ は時間の逆数の次元をもつ。
</Definition>

<Proposition id="prop-hubble-law" title="ハッブル・ルメートルの法則">
<Ref to="def-scale-factor" /> の意味で宇宙が一様等方に膨張しているとする。このとき、任意の観測者から見て、距離 $d$ にある銀河の遠ざかる速さ $v$ は

$$
v = H(t)\,d
$$

を満たす。比例定数 $H(t)$ は方向にも相手の銀河にもよらない。
</Proposition>

<Proof of="prop-hubble-law">
<Ref to="def-scale-factor" /> より、着目する銀河対の固有距離は $d(t) = a(t)\chi$ で、$\chi$ は時刻によらない定数です。遠ざかる速さは固有距離の時間変化率ですから、$\chi$ を定数として微分して

$$
v = \frac{d}{dt}\bigl(a(t)\chi\bigr) = \frac{da}{dt}\,\chi .
$$

ここで $\chi = d(t)/a(t)$ を代入すると

$$
v = \frac{da}{dt}\cdot\frac{d(t)}{a(t)} = \left(\frac{1}{a}\frac{da}{dt}\right) d(t) = H(t)\,d(t)
$$

となり、<Ref to="def-hubble" /> の $H$ が現れます。$a(t)$ はすべての銀河対に共通の関数だと仮定したので、$H$ は相手の銀河にも方向にもよりません。
</Proof>

この証明で注目してほしいのは、**特定の中心を一度も使っていない**ことです。どの銀河を原点に選んでも同じ式が出ます。したがって「速く遠ざかる銀河が多いほうが宇宙の中心から遠い」といった推論は成り立ちません。

<Example id="ex-raisin" title="レーズンパンで確かめる">
パン生地に 3 個のレーズン A, B, C が一直線に並び、A から B まで $1\ \mathrm{cm}$、A から C まで $3\ \mathrm{cm}$ 離れているとします。オーブンで 1 時間焼くと生地がちょうど 2 倍に膨らむとしましょう。つまり $a$ が 1 時間で $1 \to 2$ になります。

A から見ると、B は $1\ \mathrm{cm} \to 2\ \mathrm{cm}$ なので $1\ \mathrm{cm/h}$、C は $3\ \mathrm{cm} \to 6\ \mathrm{cm}$ なので $3\ \mathrm{cm/h}$ で遠ざかります。速さは距離に比例しており、比例定数は $1\ \mathrm{h^{-1}}$ です。

では B から見るとどうでしょう。B から A は $1\ \mathrm{cm} \to 2\ \mathrm{cm}$ で $1\ \mathrm{cm/h}$、B から C は $2\ \mathrm{cm} \to 4\ \mathrm{cm}$ で $2\ \mathrm{cm/h}$。やはり比例定数は $1\ \mathrm{h^{-1}}$ で、A から見たときとぴったり同じです。3 個のレーズンのどれも「自分が中心だ」と主張でき、しかも誰も間違っていません。宇宙の中心についての議論は、これでおしまいです。
</Example>

### 2.3. ハッブル定数の単位

$H_0$ は $\mathrm{km/s/Mpc}$（キロメートル毎秒毎メガパーセク）という妙な単位で書かれます。$1\ \mathrm{Mpc}$（メガパーセク）は $3.0857\times10^{19}\ \mathrm{km}$、光年に直すと約 326 万光年です。$H_0 = 67.4\ \mathrm{km/s/Mpc}$ とは「$1\ \mathrm{Mpc}$ 離れるごとに遠ざかる速さが毎秒 $67.4\ \mathrm{km}$ ずつ増える」という意味で、$\mathrm{km}$ と $\mathrm{Mpc}$ はどちらも長さですから、約分すれば時間の逆数になります。この約分こそが、次節の主役です。

## 3. 宇宙の年齢：ハッブル定数の逆数から 138 億年へ

<Definition id="def-hubble-time" title="ハッブル時間">
ハッブル定数の現在値の逆数

$$
t_H = \frac{1}{H_0}
$$

を**ハッブル時間**と呼ぶ。同様に $c\,t_H = c/H_0$ を**ハッブル半径**と呼ぶ。
</Definition>

<Example id="ex-hubble-time" title="ハッブル時間を年に直す">
Planck 衛星の観測に基づく標準的な値 $H_0 = 67.4\ \mathrm{km/s/Mpc}$ を使います。$1\ \mathrm{Mpc} = 3.0857\times10^{19}\ \mathrm{km}$ を代入すると

$$
H_0 = \frac{67.4\ \mathrm{km/s}}{3.0857\times10^{19}\ \mathrm{km}} = 2.184\times10^{-18}\ \mathrm{s^{-1}} .
$$

長さの単位が約分されて、残ったのは「毎秒」だけです。逆数を取ると

$$
t_H = \frac{1}{2.184\times10^{-18}\ \mathrm{s^{-1}}} = 4.578\times10^{17}\ \mathrm{s} .
$$

1 年は $3.156\times10^{7}\ \mathrm{s}$ ですから

$$
t_H = \frac{4.578\times10^{17}}{3.156\times10^{7}}\ \mathrm{year} = 1.451\times10^{10}\ \mathrm{year} \approx 145\ \text{億年} .
$$

同じ数値はハッブル半径にも使えて、$c\,t_H = 145$ 億光年です（$c \times 1\ \text{年} = 1\ \text{光年}$ なので、数値はそのまま流用できます）。
</Example>

145 億年。目的地の 138 億年に、いきなりかなり近い値が出ました。これは偶然ではありません。理由を順に見ていきます。

### 3.1. 膨張の速さが変わらなければ、年齢はハッブル時間そのもの

<Proposition id="prop-constant-rate" title="等速膨張する宇宙の年齢">
スケール因子が時刻に比例して増える、すなわちある定数 $k > 0$ を用いて $a(t) = kt$ と書けるとする。このとき $a(t_1) = 0$ となる時刻は $t_1 = 0$ であり、そこから現在 $t_0$ までの経過時間は

$$
t_0 = \frac{1}{H_0}
$$

に等しい。
</Proposition>

<Proof of="prop-constant-rate">
<Ref to="def-hubble" /> に $a(t) = kt$ を代入します。$da/dt = k$ ですから

$$
H(t) = \frac{1}{a}\frac{da}{dt} = \frac{k}{kt} = \frac{1}{t} .
$$

これを現在時刻 $t_0$ で評価すると $H_0 = 1/t_0$、すなわち $t_0 = 1/H_0$ です。また $a(t) = kt$ は $t = 0$ でのみ $0$ になるので、「すべての距離が $0$ だった瞬間」は $t = 0$ であり、そこから現在までの経過時間はちょうど $t_0$ です。
</Proof>

つまりハッブル時間 <Ref to="def-hubble-time" /> は、**膨張の速さが昔から変わっていなかったと仮定したときの宇宙の年齢**です。実際の宇宙では膨張の速さは変化してきたので、$1/H_0$ はあくまで目安にすぎません。では、どれだけずれるのでしょうか。

### 3.2. 一般の年齢の公式

<Proposition id="prop-age-integral" title="宇宙の年齢の積分表示">
スケール因子 $a(t)$ が時間の狭義単調増加関数で、$a \to 0$ となる過去の時刻が存在するとする。$H$ をスケール因子の関数として $H(a)$ と表せるとき、$a = 0$ から現在（$a = 1$）までに経過した時間は

$$
t_0 = \int_0^1 \frac{da}{a\,H(a)}
$$

で与えられる。
</Proposition>

<Proof of="prop-age-integral">
<Ref to="def-hubble" /> の定義式 $H = (1/a)(da/dt)$ を $dt$ について解くと

$$
\frac{da}{dt} = a H \quad\Longrightarrow\quad dt = \frac{da}{a H} .
$$

$a$ は時間の狭義単調増加関数なので、$t$ を $a$ でパラメータ表示し直せます。$a$ が $0$ から $1$ まで動くあいだの経過時間は、両辺を積分して

$$
t_0 = \int_{t(a=0)}^{t(a=1)} dt = \int_0^1 \frac{da}{a\,H(a)}
$$

となります。<Ref to="prop-constant-rate" /> はこの式の特別な場合で、$H(a) = H_0/a$（$a = kt$ のとき $H = 1/t = k/a = H_0/a$）を代入すると $\int_0^1 da/H_0 = 1/H_0$ が出ます。
</Proof>

あとは $H(a)$ さえ分かれば、年齢は積分するだけで求まります。そして $H(a)$ を与えるのが、一般相対性理論から導かれるフリードマン方程式です。この記事では導出には立ち入らず、結果を使います。空間が平坦な宇宙では

$$
H(a) = H_0\sqrt{\frac{\Omega_m}{a^3} + \frac{\Omega_r}{a^4} + \Omega_\Lambda}\,,
\qquad \Omega_m + \Omega_r + \Omega_\Lambda = 1
$$

です。ここで $\Omega_m$ は物質（普通の物質 + ダークマター）、$\Omega_r$ は放射（光と軽いニュートリノ）、$\Omega_\Lambda$ はダークエネルギーが現在の宇宙のエネルギーに占める割合です。$a$ のべきの違いには理由があります。物質は体積 $\propto a^3$ で薄まるだけですが、光はそのうえ波長が $a$ 倍に伸びてエネルギーを失うので $a^4$。ダークエネルギーは薄まらないので定数、というわけです。Planck 衛星の観測から

$$
\Omega_m = 0.315,\qquad \Omega_\Lambda = 0.685,\qquad \Omega_r \approx 9.2\times10^{-5}
$$

が得られています。この 3 つはいずれも臨界密度に対する比として定義された量で（<Ref to="physics/cosmology/dark-matter-and-dark-energy#def-critical-density" />）、その素性は [ダークマターとダークエネルギー](/physics/cosmology/dark-matter-and-dark-energy) を参照してください。

<Example id="ex-eds" title="ダークエネルギーを忘れると宇宙は若すぎる">
1990 年代半ばまで、多くの研究者は $\Omega_m = 1$、$\Omega_\Lambda = 0$（物質だけの平坦な宇宙）を標準と考えていました。この場合 $H(a) = H_0 a^{-3/2}$ なので、<Ref to="prop-age-integral" /> は

$$
t_0 = \int_0^1 \frac{da}{a\cdot H_0 a^{-3/2}} = \frac{1}{H_0}\int_0^1 a^{1/2}\,da = \frac{1}{H_0}\left[\frac{2}{3}a^{3/2}\right]_0^1 = \frac{2}{3}\cdot\frac{1}{H_0}
$$

となります。<Ref to="ex-hubble-time" /> の $145$ 億年を代入すると

$$
t_0 = \frac{2}{3}\times 145\ \text{億年} = 96.7\ \text{億年} .
$$

一方、天の川銀河の球状星団に含まれる最古の星の年齢は 130 億年前後と見積もられています。宇宙が 97 億歳では、130 億歳の星が入りません。これが 1990 年代の「年齢問題」です。答えは 1998 年に出ました。宇宙の膨張は減速ではなく**加速**していたのです。
</Example>

### 3.3. 138 億年を出す

<Theorem id="thm-lcdm-age" title="物質とダークエネルギーからなる平坦な宇宙の年齢">
空間が平坦で、放射を無視でき（$\Omega_r = 0$）、$\Omega_m + \Omega_\Lambda = 1$、$0 < \Omega_\Lambda < 1$ とする。このとき宇宙の年齢は

$$
t_0 = \frac{2}{3\sqrt{\Omega_\Lambda}}\,
\ln\!\left(\frac{1+\sqrt{\Omega_\Lambda}}{\sqrt{\Omega_m}}\right)\cdot\frac{1}{H_0}
$$

で与えられる。
</Theorem>

<Proof of="thm-lcdm-age">
<Ref to="prop-age-integral" /> に $H(a) = H_0\sqrt{\Omega_m a^{-3} + \Omega_\Lambda}$ を代入します。

$$
t_0 = \frac{1}{H_0}\int_0^1 \frac{da}{a\sqrt{\Omega_m a^{-3} + \Omega_\Lambda}} .
$$

根号の中を通分すると $\Omega_m a^{-3} + \Omega_\Lambda = (\Omega_m + \Omega_\Lambda a^3)/a^3$ なので、根号を開いて $a^{-3/2}$ を外に出し、前の $1/a$ と合わせると

$$
t_0 = \frac{1}{H_0}\int_0^1 \frac{a^{1/2}\,da}{\sqrt{\Omega_m + \Omega_\Lambda a^3}} .
$$

ここで $u = a^{3/2}$ と置換します。$du = \tfrac{3}{2}a^{1/2}\,da$、すなわち $a^{1/2}\,da = \tfrac{2}{3}\,du$ であり、$a: 0 \to 1$ は $u: 0 \to 1$ に対応します。また $a^3 = u^2$ ですから

$$
t_0 = \frac{2}{3H_0}\int_0^1 \frac{du}{\sqrt{\Omega_m + \Omega_\Lambda u^2}} .
$$

この積分は公式 $\displaystyle\int \frac{du}{\sqrt{A + Bu^2}} = \frac{1}{\sqrt{B}}\ln\!\left(u + \sqrt{u^2 + A/B}\right) + C$（$A, B > 0$）で計算できます。実際、右辺を $u$ で微分すると

$$
\frac{1}{\sqrt{B}}\cdot\frac{1 + \dfrac{u}{\sqrt{u^2+A/B}}}{u+\sqrt{u^2+A/B}}
= \frac{1}{\sqrt{B}}\cdot\frac{1}{\sqrt{u^2+A/B}} = \frac{1}{\sqrt{A+Bu^2}}
$$

となって被積分関数に戻ります。$A = \Omega_m$、$B = \Omega_\Lambda$ として代入すると

$$
t_0 = \frac{2}{3H_0\sqrt{\Omega_\Lambda}}
\left[\ln\!\left(u + \sqrt{u^2 + \frac{\Omega_m}{\Omega_\Lambda}}\right)\right]_0^1
= \frac{2}{3H_0\sqrt{\Omega_\Lambda}}
\ln\!\frac{1 + \sqrt{1 + \Omega_m/\Omega_\Lambda}}{\sqrt{\Omega_m/\Omega_\Lambda}} .
$$

最後に分母・分子に $\sqrt{\Omega_\Lambda}$ を掛け、仮定 $\Omega_m + \Omega_\Lambda = 1$ を使うと $\sqrt{\Omega_\Lambda + \Omega_m} = 1$ となり

$$
t_0 = \frac{2}{3H_0\sqrt{\Omega_\Lambda}}\ln\frac{\sqrt{\Omega_\Lambda} + \sqrt{\Omega_\Lambda + \Omega_m}}{\sqrt{\Omega_m}}
= \frac{2}{3\sqrt{\Omega_\Lambda}}\ln\!\left(\frac{1+\sqrt{\Omega_\Lambda}}{\sqrt{\Omega_m}}\right)\frac{1}{H_0}
$$

を得ます。
</Proof>

<Example id="ex-lcdm-number" title="実際に代入して 138 億年を出す">
<Ref to="thm-lcdm-age" /> に $\Omega_m = 0.315$、$\Omega_\Lambda = 0.685$ を入れます。まず平方根を計算して

$$
\sqrt{\Omega_\Lambda} = \sqrt{0.685} = 0.8276,\qquad \sqrt{\Omega_m} = \sqrt{0.315} = 0.5612 .
$$

対数の中身は

$$
\frac{1 + 0.8276}{0.5612} = \frac{1.8276}{0.5612} = 3.256,\qquad \ln 3.256 = 1.1806 .
$$

前の係数は $\dfrac{2}{3\times 0.8276} = 0.8054$ なので

$$
t_0 = 0.8054 \times 1.1806 \times \frac{1}{H_0} = 0.9509\,\frac{1}{H_0} .
$$

<Ref to="ex-hubble-time" /> の $1/H_0 = 145.1$ 億年を掛けて

$$
t_0 = 0.9509 \times 145.1\ \text{億年} = 138.0\ \text{億年} .
$$

Planck 衛星による公式値 $137.97 \pm 0.23$ 億年とみごとに一致します。放射（$\Omega_r$）を無視した影響は $0.05\%$ 未満で、$0.1$ 億年ほど年齢を減らす向きに効きます（<Ref to="ex-python-check" /> で確認します）。
</Example>

なぜ $0.9509$ という「ほぼ 1」の係数になったのか、少し考えてみる価値があります。宇宙は前半で減速し（物質の重力が優勢だった時期は <Ref to="ex-eds" /> のとおり係数を $2/3$ に下げます）、後半でダークエネルギーによって加速しました。この減速と加速がたまたま打ち消し合い、「ずっと等速だったと仮定した年齢」$1/H_0$ にほぼ戻ってきた、というのが $0.9509$ の正体です。私たちはその偶然が成立している時代に住んでいます。

<Remark id="rem-hubble-tension" title="ハッブル定数はまだ揉めている">
年齢は $H_0$ にそのまま反比例するので、$H_0$ の値が変われば年齢も変わります。ところが $H_0$ の測定には現在も決着のつかない食い違いがあります。宇宙マイクロ波背景放射から間接的に求めると $H_0 = 67.4 \pm 0.5\ \mathrm{km/s/Mpc}$、近傍の超新星とセファイドから直接測ると $H_0 = 73.0 \pm 1.0\ \mathrm{km/s/Mpc}$ となり、誤差の範囲を大きく超えて合いません。これを**ハッブル・テンション**と呼びます。同じ食い違いを距離はしごの側から眺めたものが <Ref to="physics/cosmology/cosmic-distance-ladder#ex-hubble-tension" /> です。後者を採用すると年齢は 127 億年まで下がり、最古の星の年齢との余裕がかなり苦しくなります（<Ref to="exr-h0-73" />）。この不一致が測定の系統誤差なのか、標準模型の綻びなのかは、いま最も熱い未解決問題のひとつです。
</Remark>

## 4. 観測可能な宇宙の果て：なぜ 465 億光年なのか

宇宙が 138 億歳なら、光が飛べた距離は 138 億光年まで。だから見える範囲の半径は 138 億光年——と考えたくなります。残念ながら違います。光が旅していたあいだにも空間は伸び続けていたからです。

### 4.1. 地平線の定義と公式

<Definition id="def-particle-horizon" title="粒子的地平線（観測可能な宇宙の半径）">
宇宙の始まり（$a = 0$）の瞬間に出発した光が現在（$t_0$）までに到達できる最大の共動距離を $\chi_{\mathrm{hor}}$ とする。これに対応する現在の固有距離

$$
d_{\mathrm{hor}}(t_0) = a(t_0)\,\chi_{\mathrm{hor}} = \chi_{\mathrm{hor}}
$$

を**粒子的地平線**、あるいは**観測可能な宇宙の半径**と呼ぶ。これより遠くの天体からは、原理的にまだ 1 個の光子も届いていない。
</Definition>

<Proposition id="prop-horizon-formula" title="粒子的地平線の積分表示">
<Ref to="def-scale-factor" /> の宇宙で、光は局所的に速さ $c$ で進むとする。このとき粒子的地平線は

$$
d_{\mathrm{hor}}(t_0) = \int_0^{t_0} \frac{c\,dt}{a(t)} = \int_0^1 \frac{c\,da}{a^2 H(a)}
$$

で与えられる。
</Proposition>

<Proof of="prop-horizon-formula">
光が微小時間 $dt$ のあいだに進む固有距離は $c\,dt$ です。<Ref to="def-scale-factor" /> より固有距離と共動距離は $d = a\chi$ で結ばれるので、この移動に対応する共動距離の増分は

$$
d\chi = \frac{c\,dt}{a(t)}
$$

です。$t = 0$ から $t = t_0$ まで足し合わせると、光が稼いだ共動距離の総和は $\chi_{\mathrm{hor}} = \int_0^{t_0} c\,dt/a(t)$ となります。$a(t_0) = 1$ という規格化から、現在の固有距離はこれと同じ値です。

積分変数を $t$ から $a$ に変えるには、<Ref to="prop-age-integral" /> の証明で使った関係 $dt = da/(aH)$ を代入すればよく

$$
\int_0^{t_0}\frac{c\,dt}{a} = \int_0^1 \frac{c}{a}\cdot\frac{da}{aH(a)} = \int_0^1\frac{c\,da}{a^2H(a)}
$$

を得ます。被積分関数に $1/a^2$ が現れたことに注意してください。この $1/a$ の余分な因子が、「光が出発したあとに空間が $1/a$ 倍に伸びた」効果を表しています。
</Proof>

<Example id="ex-horizon-numbers" title="地平線を計算する">
**(1) 物質だけの宇宙**（<Ref to="ex-eds" /> の設定）では $a(t) = (t/t_0)^{2/3}$ です。<Ref to="prop-horizon-formula" /> の左の形に代入すると

$$
d_{\mathrm{hor}} = \int_0^{t_0} c\left(\frac{t}{t_0}\right)^{-2/3} dt
= c\,t_0^{2/3}\left[3t^{1/3}\right]_0^{t_0} = 3c\,t_0 .
$$

光が飛んだ時間 $t_0$ から素朴に予想される $c\,t_0$ の、ちょうど **3 倍**です。

**(2) 実際の宇宙**では $H(a)$ が上のフリードマン方程式で与えられ、積分は初等関数では書けないので数値計算します（<Ref to="ex-python-check" />）。結果は

$$
d_{\mathrm{hor}}(t_0) \approx 461\ \text{億光年}
$$

で、文献でよく引用される値は約 **465 億光年**です。この 1% 程度の差は、宇宙初期の放射やニュートリノの扱いの細かい違いから来ます。いずれにせよ、$c\,t_0 = 138$ 億光年のおよそ $3.3$ 倍です。直径にすれば約 930 億光年になります。
</Example>

<Figure caption="宇宙論に出てくる距離の比べ方。いちばん下の細い線は、いま届いている宇宙マイクロ波背景放射を放った場所の「当時の」距離です。">
<svg viewBox="0 0 720 300" width="100%" role="img" aria-label="宇宙論的な距離の比較を示す横棒グラフ">
  <g fill="currentColor" font-size="13">
    <text x="0" y="16">光が飛んだ距離（光速 × 138 億年）</text>
    <text x="720" y="16" text-anchor="end" font-size="12">138 億光年</text>
    <rect x="0" y="24" width="142" height="14" fill="currentColor" opacity="0.35" />

    <text x="0" y="64">ハッブル半径 c/H₀（後退速度が光速になる距離）</text>
    <text x="720" y="64" text-anchor="end" font-size="12">145 億光年</text>
    <rect x="0" y="72" width="150" height="14" fill="currentColor" opacity="0.35" />

    <text x="0" y="112">事象の地平線（いま出た光が届く限界）</text>
    <text x="720" y="112" text-anchor="end" font-size="12">167 億光年</text>
    <rect x="0" y="120" width="172" height="14" fill="currentColor" opacity="0.35" />

    <text x="0" y="160">背景放射を放った場所の いまの距離</text>
    <text x="720" y="160" text-anchor="end" font-size="12">452 億光年</text>
    <rect x="0" y="168" width="467" height="14" fill="currentColor" opacity="0.35" />

    <text x="0" y="208">観測可能な宇宙の半径（粒子的地平線）</text>
    <text x="720" y="208" text-anchor="end" font-size="12">465 億光年</text>
    <rect x="0" y="216" width="480" height="14" fill="var(--sl-color-accent)" />

    <text x="0" y="256">背景放射を放った場所の 当時の距離</text>
    <text x="720" y="256" text-anchor="end" font-size="12">0.41 億光年</text>
    <rect x="0" y="264" width="3" height="14" fill="var(--sl-color-accent)" />
    <line x1="6" y1="271" x2="60" y2="271" stroke="currentColor" stroke-width="1" stroke-dasharray="3 3" />
    <text x="66" y="275" font-size="11">（4100 万光年。この幅では線 1 本ぶんもありません）</text>
  </g>
</svg>
</Figure>

いま届いている宇宙マイクロ波背景放射は、宇宙が 38 万歳、$a = 1/1100$ 程度だった時代に放たれた光です（この時刻の求め方は <Ref to="physics/cosmology/big-bang-evidence#ex-recombination-redshift" />、全体像は [ビッグバンは本当にあったのか](/physics/cosmology/big-bang-evidence) を参照）。この光を放った場所は、放射の瞬間には私たちからわずか **4100 万光年**しか離れていませんでした。その距離が 138 億年かけて 1100 倍に引き伸ばされ、いまでは **452 億光年**になっている、というのが上の図の意味です。宇宙の果てが遠いのは、光が長く飛んだからではなく、飛んでいるあいだに道が伸びたからなのです。

### 4.2. 光速より速く遠ざかる天体が、なぜ見えるのか

<Ref to="prop-hubble-law" /> によれば、距離 $d$ の天体は $v = H_0 d$ で遠ざかります。この $v$ が $c$ に等しくなる距離が、ちょうどハッブル半径 $c/H_0 = 145$ 億光年です。ところが背景放射を放った場所はいま 452 億光年先にあり、後退速度は

$$
v = H_0 \times 452\ \text{億光年} = \frac{452}{145}\,c = 3.1\,c
$$

になります。光速の 3 倍で遠ざかっている場所から、光が届いてしまっているのです。

<Aside type="note">
これは相対性理論に反しません。特殊相対論が禁じているのは「同じ場所にある二つの物体が、互いに光速を超えてすれ違うこと」です。遠く離れた銀河の後退速度は、あいだの空間が伸びた量を距離の差で表しただけの量で、誰かの横を光速で通り過ぎているわけではありません。実際、どの銀河もその場所では静止しており、そこを通る光は必ずその銀河を光速で追い越していきます。
</Aside>

では、光速より速く遠ざかる場所からどうやって光が届くのでしょうか。次の例が、その仕組みをそのまま再現します。

<Example id="ex-ant" title="伸びるゴムひもの上を歩くアリ">
長さ $L_0 = 1\ \mathrm{m}$ のゴムひもの左端にアリがいます。ひもは全体が均等に伸び、右端は毎秒 $k = 1\ \mathrm{m/s}$ で遠ざかります。アリはひもに対して $v = 1\ \mathrm{cm/s} = 0.01\ \mathrm{m/s}$ で右へ歩きます。アリの速さは伸びの速さの 100 分の 1 しかなく、右端との距離は最初のうち広がる一方です。アリは右端にたどり着けるでしょうか。

アリの位置を $x(t)$、ひもの長さを $L(t) = L_0 + kt$ とし、**進んだ割合** $s = x/L$ を追いかけます。$s$ が増えるのはアリが自力で歩いたぶんだけで（伸びはアリも右端も同じ割合で運ぶので $s$ を変えません）、

$$
\frac{ds}{dt} = \frac{v}{L(t)} = \frac{v}{L_0 + kt} .
$$

両辺を $0$ から $t$ まで積分すると

$$
s(t) = \frac{v}{k}\ln\!\left(1 + \frac{kt}{L_0}\right) .
$$

対数はゆっくりですが、上限なくいくらでも大きくなります。したがって $s(t) = 1$ となる有限の時刻が必ず存在し、それは

$$
t = \frac{L_0}{k}\left(e^{k/v} - 1\right) = 1\times\left(e^{100}-1\right)\ \mathrm{s} \approx 2.7\times10^{43}\ \mathrm{s}
$$

です。年に直すと約 $8.5\times10^{35}$ 年、宇宙の年齢のおよそ $10^{26}$ 倍。**アリは必ず到着します**。ただし、待つ側にそれなりの覚悟が要ります。

宇宙の光もこのアリと同じです。遠方の銀河は光速を超える速さで遠ざかっていますが、光は共動距離を着実に稼ぎ続け、しかも宇宙初期は膨張が急速に減速していたためアリよりずっと有利でした。だから 3 倍の速さで逃げる場所から出た光でも、私たちに届いたのです。
</Example>

<Remark id="rem-horizon-personal" title="地平線は一人ひとり違う">
粒子的地平線 <Ref to="def-particle-horizon" /> は「観測者を中心とする半径 465 億光年の球面」です。船から見える水平線と同じで、**観測者ごとに別の球面**があります。100 億光年離れた銀河の住人にも半径 465 億光年の観測可能な宇宙があり、それは私たちのものと大きく重なりますが、一致はしません。彼らには私たちに見えない領域が見えています。宇宙に文明がいくつあるかを見積もるときも、数えられるのはこの球の中だけです（<Ref to="physics/cosmology/fermi-paradox#def-drake-equation" />、[宇宙人はどのくらいいるのか](/physics/cosmology/fermi-paradox)）。そして地平線が有限であることは、夜空が暗い理由そのものでもあります（<Ref to="physics/cosmology/olbers-paradox#prop-finite-age" />、[夜空はなぜ暗いのか](/physics/cosmology/olbers-paradox)）。
</Remark>

## 5. 宇宙そのものの果て：「端」はあるのか

ここまでの「果て」は、すべて**見える範囲の果て**でした。壁があるわけではありません。地平線の向こうにも銀河はあり、そこの住人は自分が宇宙の真ん中だと思っています。では、空間そのものはどこかで終わっているのでしょうか。

<Figure caption="「宇宙の果て」という一つの言葉に含まれる、二つの別々の問い">
<Mermaid code={`flowchart TD
  Q["「宇宙の果て」とは？"] --> A["(1) 見える範囲の果て"]
  Q --> B["(2) 空間そのものの果て"]
  A --> A1["半径 約465億光年<br/>観測者を中心とする球面"]
  A1 --> A2["確実に存在する<br/>ただし人によって場所が違う"]
  B --> B1["空間が無限なら 端はない"]
  B --> B2["有限でも 3次元球面やトーラスなら端はない"]
  B --> B3["端があるなら「外」が必要"]
  B3 --> B4["そんな証拠は見つかっていない"]
  B1 --> C["観測: 曲率はほぼゼロ<br/>少なくとも半径2300億光年まで平坦"]
  B2 --> C`} />
</Figure>

### 5.1. 有限でも端がない、という選択肢

「有限なら端がある」というのは、実は直感の勇み足です。地球の表面を考えてください。面積は有限（約 $5.1\times10^{8}\ \mathrm{km^2}$）ですが、どこまで歩いても崖はありません。2 次元の生き物が球面の上を暮らしていたら、「私たちの世界は有限だが端はない」と言うでしょう。

同じことが 3 次元でも起こります。空間が 3 次元球面（4 次元的に見たときの球の表面にあたるもの）なら、体積は有限で、しかも端はありません。まっすぐ飛び続ければ、いつか元の場所に帰ってきます。ドーナツ状のトーラスでも同様で、こちらは曲率が $0$ のまま有限になります。ゲームの画面で右端から出たキャラクターが左端から現れるあの構造です。

「じゃあ宇宙は何かの中に入っているの？」という疑問が湧きますが、必要ありません。球面や 3 次元球面は、外の空間なしに、それ自体として数学的に定義できます。私たちが球面を紙に描くとき 3 次元の紙面を使うのは、単に描く側の都合です。

### 5.2. 観測は何を言っているか

空間が閉じているか無限かは、**曲率**を測れば分かります。曲率のある宇宙では、フリードマン方程式に

$$
H(a)^2 = H_0^2\left(\frac{\Omega_m}{a^3} + \Omega_\Lambda + \frac{\Omega_K}{a^2}\right)
$$

という項が加わり、$\Omega_K$ の符号が空間の形を決めます。$\Omega_K < 0$ なら閉じた（有限の）宇宙、$\Omega_K > 0$ なら開いた宇宙、$\Omega_K = 0$ なら平坦です。そして $\Omega_K \neq 0$ のとき、曲率半径 $R_c$ は

$$
R_c = \frac{c/H_0}{\sqrt{|\Omega_K|}}
$$

で与えられます。Planck 衛星のデータと銀河分布の観測を合わせると

$$
\Omega_K = 0.0007 \pm 0.0019
$$

です。$0$ と誤差の範囲で一致しており、宇宙は平坦に見えます。ここから、宇宙が仮に閉じていたとしてもどれだけ大きいかが言えます。

<Proposition id="prop-curvature-radius" title="曲率半径の下限">
$|\Omega_K| \le 0.004$（上の測定値の $2\sigma$ 上限に相当）ならば、空間の曲率半径は

$$
R_c \ge 2290\ \text{億光年}
$$

を満たす。これは観測可能な宇宙の半径のおよそ $4.9$ 倍であり、体積にすればおよそ 120 倍である。
</Proposition>

<Proof of="prop-curvature-radius">
$R_c = (c/H_0)/\sqrt{|\Omega_K|}$ は $|\Omega_K|$ の減少関数ですから、$|\Omega_K|$ が上限値を取るときに $R_c$ は最小になります。<Ref to="ex-hubble-time" /> より $c/H_0 = 145$ 億光年、また $\sqrt{0.004} = 0.0632$ なので

$$
R_c \ge \frac{145\ \text{億光年}}{0.0632} = 2294\ \text{億光年} .
$$

<Ref to="ex-horizon-numbers" /> の $465$ 億光年と比べると $2294/465 = 4.93$ 倍、体積は半径の 3 乗に比例するので $4.93^3 = 120$ 倍です。
</Proof>

つまり、宇宙は有限かもしれませんが、有限だとしても私たちが見ている範囲は全体の 1% 以下ということになります。地球が丸いことに気づかないまま生涯を過ごす、6 畳間のアリのようなものです。

さらに、有限性は曲率がなくても（トーラスのように）起こりえます。この場合は空間が「一周」しているので、同じ天体の光が別方向からも届き、宇宙マイクロ波背景放射の地図に**同じ模様の円**が 2 か所現れるはずです。この「空に描かれた円」の探索は WMAP と Planck の地図に対して実行され、何も見つかりませんでした。したがって、もし宇宙が一周しているとしても、その一周は少なくとも観測可能な宇宙より大きいということになります。

<Remark id="rem-infinite-honestly" title="正直に言うと、分かりません">
「宇宙は無限か」という問いに、現在の観測は答えを出せていません。測れるのは「見える範囲の中で曲率が $0$ に非常に近い」ことだけで、そこから全体が無限だと結論することはできないからです。ちょうど、地面が平らに見えるからといって地球が平面だと結論できないのと同じです。有限だと示すには曲率か「空に描かれた円」を検出する必要があり、無限だと示すのは原理的にもっと困難です。ここは「分からない」が誠実な答えです。
</Remark>

## 6. これから：見える宇宙は広がり、見える銀河は減る

最後にもうひとつの「果て」を紹介します。粒子的地平線 <Ref to="def-particle-horizon" /> が「過去から届いた光の限界」だったのに対し、こちらは「未来に届く光の限界」です。

<Definition id="def-event-horizon" title="事象の地平線">
現在（$t_0$）に出発した光が、$t \to \infty$ までのあいだに到達できる最大の共動距離を $\chi_{\mathrm{eh}}$ とする。これに対応する現在の固有距離

$$
d_{\mathrm{eh}}(t_0) = \chi_{\mathrm{eh}} = \int_{t_0}^{\infty}\frac{c\,dt}{a(t)} = \int_1^{\infty}\frac{c\,da}{a^2 H(a)}
$$

を（宇宙論的な）**事象の地平線**と呼ぶ。この距離より遠くで今日起きた出来事は、どれだけ待っても私たちには届かない。
</Definition>

<Proposition id="prop-event-horizon-finite" title="加速膨張する宇宙には事象の地平線がある">
$\Omega_\Lambda > 0$ の平坦な宇宙では <Ref to="def-event-horizon" /> の積分は収束し、

$$
d_{\mathrm{eh}}(t_0) \le \frac{c}{H_0\sqrt{\Omega_\Lambda}}
$$

を満たす。$\Omega_m = 0.315$、$\Omega_\Lambda = 0.685$、$H_0 = 67.4\ \mathrm{km/s/Mpc}$ のとき、この上限は 175 億光年である。
</Proposition>

<Proof of="prop-event-horizon-finite">
フリードマン方程式 $H(a) = H_0\sqrt{\Omega_m a^{-3} + \Omega_\Lambda}$ において、根号の中の第 1 項は非負なので、すべての $a$ に対して

$$
H(a) \ge H_0\sqrt{\Omega_\Lambda}
$$

が成り立ちます。したがって被積分関数は

$$
\frac{c}{a^2 H(a)} \le \frac{c}{a^2 H_0\sqrt{\Omega_\Lambda}}
$$

で上から押さえられ、

$$
d_{\mathrm{eh}}(t_0) \le \frac{c}{H_0\sqrt{\Omega_\Lambda}}\int_1^\infty \frac{da}{a^2}
= \frac{c}{H_0\sqrt{\Omega_\Lambda}}\left[-\frac{1}{a}\right]_1^\infty = \frac{c}{H_0\sqrt{\Omega_\Lambda}} .
$$

数値は <Ref to="ex-hubble-time" /> の $c/H_0 = 145$ 億光年と $\sqrt{0.685} = 0.8276$ から $145/0.8276 = 175$ 億光年です。

なお、<Ref to="prop-horizon-formula" /> の粒子的地平線の積分にこの議論は使えません。過去に向かう積分では $a \to 0$ で $H$ が発散し、収束するかどうかは物質と放射の効き方で決まるからです。実際、加速膨張する宇宙では両方の地平線が同時に存在します。
</Proof>

数値積分すると、事象の地平線の現在値は約 **167 億光年**です。上の上限 175 億光年よりわずかに小さく、宇宙が完全にダークエネルギー優勢になる遠い未来には、この値に近づいていきます。

ここから、少し寂しい結論が出ます。いま私たちが見ている銀河のうち、現在の距離が 167 億光年を超えるもの——赤方偏移でいえばおよそ $z > 1.8$ の天体——が**今日**発した光は、永遠に地球に届きません。それらの銀河はいまも見えていますが、それは過去の姿であり、時間が経つほど古い姿だけが引き伸ばされて暗く赤くなっていきます。加速膨張が続けば、およそ 1000 億年後には局所銀河群の外の銀河はすべて見えなくなり、その時代の天文学者は「宇宙は私たちの銀河ひとつでできており、静止している」と結論するでしょう。私たちは、宇宙の歴史を読み解ける限られた時期に居合わせたことになります。

<Aside type="tip">
ブラックホールの事象の地平線と名前が同じなのは偶然ではありません。どちらも「そこから先の出来事の情報が二度と届かない境界」であり、数学的な扱いも似ています。違いは、ブラックホールの地平線が向こう側にあるのに対し、宇宙論の地平線は私たちを取り囲んでいる点です。向こう側の地平面の定義は <Ref to="physics/cosmology/black-holes#def-event-horizon" /> にあります。詳しくは [ブラックホールの先にあるもの](/physics/cosmology/black-holes) を参照してください。
</Aside>

<Example id="ex-python-check" title="自分で数値積分してみる">
<Ref to="prop-age-integral" /> と <Ref to="prop-horizon-formula" /> の積分は、どちらも $a \to 0$ で被積分関数が急激に変化します。そこで $a = u^2$ と置換して（$da = 2u\,du$）刻みを細かくし、台形則で計算します。

```python
import numpy as np

H0 = 67.4                  # km/s/Mpc
Om, OL, Or = 0.315, 0.685, 9.2e-5
Mpc_km = 3.0857e19         # 1 Mpc [km]
yr_s = 3.1557e7            # 1 年 [s]

tH = Mpc_km / H0 / yr_s    # ハッブル時間 [年]
print(f"1/H0        = {tH/1e8:.1f} 億年")

def E(a):                  # H(a) / H0
    return np.sqrt(Om / a**3 + OL + Or / a**4)

u = np.linspace(1e-8, 1.0, 2_000_001)   # a = u^2 と置換
a = u**2
age = np.trapezoid(2 * u / (a * E(a)), u) * tH
hor = np.trapezoid(2 * u / (a**2 * E(a)), u) * tH

print(f"年齢        = {age/1e8:.1f} 億年")
print(f"粒子的地平線 = {hor/1e8:.0f} 億光年")
```

出力は次のとおりです。

```
1/H0        = 145.1 億年
年齢        = 137.9 億年
粒子的地平線 = 461 億光年
```

年齢は <Ref to="ex-lcdm-number" /> の手計算 138.0 億年と、放射を入れたぶんだけ $0.1$ 億年小さくなっています。地平線の 461 億光年は、よく引用される 465 億光年とは 1% ほど違います。この差は $\Omega_r$ の値、特にニュートリノを放射として扱うか物質として扱うかの選択から来るもので、$\Omega_r = 4.2\times10^{-5}$（光子のみ）とすると 464 億光年になります。「465 億光年」を有効数字 3 桁の確定値だと思わないでください。
</Example>

## 7. 演習

<Exercise id="exr-h0-73" difficulty="易">
超新星とセファイド変光星による直接測定の値 $H_0 = 73.0\ \mathrm{km/s/Mpc}$ を採用したとき、(1) ハッブル時間 $1/H_0$ を年で求めてください。(2) <Ref to="thm-lcdm-age" /> の係数 $0.9509$（$\Omega_m = 0.315$、$\Omega_\Lambda = 0.685$）を掛けて宇宙の年齢を求め、最古の球状星団の年齢 130 億年と比べてください。

<Solution>
**(1)** <Ref to="ex-hubble-time" /> と同じ手順です。$1\ \mathrm{Mpc} = 3.0857\times10^{19}\ \mathrm{km}$ より

$$
H_0 = \frac{73.0}{3.0857\times10^{19}}\ \mathrm{s^{-1}} = 2.366\times10^{-18}\ \mathrm{s^{-1}},
$$

$$
\frac{1}{H_0} = 4.227\times10^{17}\ \mathrm{s} = \frac{4.227\times10^{17}}{3.156\times10^{7}}\ \text{年} = 1.339\times10^{10}\ \text{年} = 134\ \text{億年} .
$$

$H_0$ が $67.4$ の $1.083$ 倍になったので、ハッブル時間は $145.1/1.083 = 134$ 億年と、割り算でも確認できます。

**(2)** $t_0 = 0.9509 \times 133.9\ \text{億年} = 127.3\ \text{億年}$ です。最古の球状星団の年齢 130 億年前後を、下回ってしまいます。星の年齢推定にも 5 億年程度の誤差があるので即座に矛盾とは言えませんが、余裕はほとんどありません。<Ref to="rem-hubble-tension" /> のハッブル・テンションが単なる測定誤差では済まないかもしれない、と考えられている理由のひとつがこれです。
</Solution>
</Exercise>

<Exercise id="exr-eds-horizon" difficulty="標準">
物質だけからなる平坦な宇宙（$\Omega_m = 1$、$\Omega_\Lambda = \Omega_r = 0$）を考えます。(1) <Ref to="prop-age-integral" /> と同じ方法で、この宇宙のスケール因子が $a(t) = (t/t_0)^{2/3}$ と書けることを確かめてください。(2) <Ref to="prop-horizon-formula" /> の右側の形（$a$ による積分）から粒子的地平線を計算し、$3c\,t_0$ になることを示してください。

<Solution>
**(1)** $\Omega_m = 1$ のときフリードマン方程式は $H(a) = H_0 a^{-3/2}$ です。<Ref to="def-hubble" /> より $da/dt = aH = H_0 a^{-1/2}$ なので、変数分離して

$$
a^{1/2}\,da = H_0\,dt \quad\Longrightarrow\quad \frac{2}{3}a^{3/2} = H_0 t
$$

（$t = 0$ で $a = 0$ という条件を使いました）。よって $a = (3H_0t/2)^{2/3}$ です。現在 $t = t_0$ で $a = 1$ となる条件から $3H_0t_0/2 = 1$、すなわち $t_0 = (2/3)/H_0$ が出て、これは <Ref to="ex-eds" /> と一致します。この $H_0 = 2/(3t_0)$ を戻すと $a(t) = (t/t_0)^{2/3}$ を得ます。

**(2)** <Ref to="prop-horizon-formula" /> に $H(a) = H_0a^{-3/2}$ を代入すると

$$
d_{\mathrm{hor}} = \int_0^1 \frac{c\,da}{a^2\cdot H_0a^{-3/2}}
= \frac{c}{H_0}\int_0^1 a^{-1/2}\,da
= \frac{c}{H_0}\Bigl[2a^{1/2}\Bigr]_0^1 = \frac{2c}{H_0} .
$$

被積分関数は $a \to 0$ で発散しますが、$a^{-1/2}$ の発散は積分可能なので値は有限です。ここに (1) の $1/H_0 = (3/2)t_0$ を代入すると

$$
d_{\mathrm{hor}} = 2c\cdot\frac{3}{2}t_0 = 3c\,t_0
$$

となり、<Ref to="ex-horizon-numbers" /> の (1) と一致します。
</Solution>
</Exercise>

<Exercise id="exr-cmb" difficulty="標準">
宇宙マイクロ波背景放射は $a = 1/1100$ の時代に放たれた光で、それを放った場所の現在の距離は 452 億光年です。(1) 光が放たれた瞬間、その場所は私たちからどれだけ離れていましたか。(2) その場所の現在の後退速度を <Ref to="prop-hubble-law" /> で求め、光速と比べてください。(3) (2) の答えが特殊相対性理論と矛盾しない理由を、<Ref to="ex-ant" /> を使って説明してください。

<Solution>
**(1)** <Ref to="def-scale-factor" /> より固有距離は $d(t) = a(t)\chi$ で、共動距離 $\chi$ は変わりません。現在 $a = 1$ での距離が 452 億光年なので $\chi = 452$ 億光年、放射の瞬間は $a = 1/1100$ だったので

$$
d = \frac{1}{1100}\times 452\ \text{億光年} = 0.411\ \text{億光年} = 4110\ \text{万光年} .
$$

天文学のスケールでは「すぐ隣」と言ってよい距離です。この光は 4100 万光年先から出発したのに、138 億年もかかって到着しました。空間が伸び続けて、道のりが増え続けたからです。

**(2)** <Ref to="prop-hubble-law" /> に $H_0 = 1/(145\ \text{億年})$ と $d = 452$ 億光年を代入して

$$
v = H_0 d = \frac{452\ \text{億光年}}{145\ \text{億年}} = 3.12\ \text{光年/年} = 3.1\,c .
$$

光速の 3.1 倍です。

**(3)** アリのゴムひもと同じ状況です。ひもの右端はアリの 100 倍の速さで遠ざかっていましたが、アリは進んだ**割合** $s$ を着実に増やし、有限時間で到達しました。宇宙でも、光は各地点で必ず光速で進んでおり、追い越されている物体はひとつもありません。後退速度 $3.1c$ は「離れた 2 点のあいだの空間が伸びる量」を距離で割った値であって、誰かの横をすれ違う速さではありません。特殊相対論が禁じるのは後者だけです。
</Solution>
</Exercise>

## 参考文献

- E. Hubble, "A relation between distance and radial velocity among extra-galactic nebulae", *Proceedings of the National Academy of Sciences* 15 (1929), 168–173. 膨張の発見を報告した原論文。比例定数として約 $500\ \mathrm{km/s/Mpc}$ が与えられている。
- Planck Collaboration, "Planck 2018 results. VI. Cosmological parameters", *Astronomy & Astrophysics* 641 (2020), A6. [arXiv:1807.06209](https://arxiv.org/abs/1807.06209) — この記事で使った $H_0$、$\Omega_m$、$\Omega_\Lambda$、$\Omega_K$、宇宙年齢の値の出典。
- A. G. Riess et al., "A Comprehensive Measurement of the Local Value of the Hubble Constant with 1 km/s/Mpc Uncertainty from the Hubble Space Telescope and the SH0ES Team", *The Astrophysical Journal Letters* 934 (2022), L7. [arXiv:2112.04510](https://arxiv.org/abs/2112.04510) — ハッブル・テンションの一方の当事者。
- T. M. Davis and C. H. Lineweaver, "Expanding Confusion: Common Misconceptions of Cosmological Horizons and the Superluminal Expansion of the Universe", *Publications of the Astronomical Society of Australia* 21 (2004), 97–109. [arXiv:astro-ph/0310808](https://arxiv.org/abs/astro-ph/0310808) — 地平線と超光速後退の誤解を正した定番論文。図が非常に分かりやすい。
- Planck Collaboration, "Planck 2013 results. XXVI. Background geometry and topology of the Universe", *Astronomy & Astrophysics* 571 (2014), A26. [arXiv:1303.5086](https://arxiv.org/abs/1303.5086) — 「空に描かれた円」の探索結果。
- 松原隆彦『現代宇宙論 ― 時空と物質の共進化』東京大学出版会、2010 — 第 2 章・第 3 章にフリードマン方程式と各種の距離・地平線が丁寧に書かれている。
