# 厳密くりこみ群：ブロックスピン変換と多スケール解析

> Wilson のブロックスピン変換と固定点・関連変数を格子ガウス測度で定式化し、共分散の多スケール分解と Polchinski 方程式による有効ポテンシャルの帰納計算、4 次元 φ⁴ の対数補正と Balaban の格子ゲージ理論までを扱う。
> https://rikai.mugen-giken.com/physics/constructive-qft/rigorous-renormalization-group

## 0. この記事の要点

写真を縮小していくと、細かい模様は見えなくなり、大まかな濃淡だけが残ります。磁石や水の相転移の近くでは、細かいゆらぎから大きなゆらぎまでがすべて同じ重みで効くので、この「見る粗さを少しずつ変えながら、見えるものがどう変わるかを追う」やり方が役に立ちます。この記事では、それを数学の定理として証明できる形に直します。読み終えると、ガウス場で「粗く見ても同じに見える状態（固定点）」とは何かが言え、4 次元の $\varphi^4$ 模型で相互作用の強さが距離とともにゆっくり弱まる理由が説明できるようになります。以下の要点の箇条書きは、読み終えたあとの見取り図として使ってください。

- Wilson のくりこみ群は、格子の場をブロックごとに平均して $L^{[\varphi]}$ 倍する写像 $T$ が測度に誘導する写像 $R\mu=\mu\circ T^{-1}$ です。ガウス測度はガウス測度に移り、共分散は $C\mapsto L^{2[\varphi]-2d}\sum_{u\in B(x)}\sum_{v\in B(y)}C(u,v)$ と変換されます。
- $d\ge3$ の質量ゼロの格子自由場は、$[\varphi]=(d-2)/2$ のときに限り非自明な固定点（連続体の自由場をブロック平均したもの）に流れます。質量 $m^2$ は 1 段ごとに $L^2$ 倍される関連変数で、$p$ 個の場と $n$ 個の微分をもつ単項式の結合定数は $L^{d-p(d-2)/2-n}$ 倍されます。
- 共分散を正定値な部分に分ける多スケール分解 $C=\sum_jC_j$ を使うと、ガウス積分は「スケール $j$ のゆらぎを 1 段ずつ積分する」操作 $Z_{j}=\mu_{C_{j}}*Z_{j-1}$ の繰り返しに書き直せます。連続版は熱方程式で、有効ポテンシャル $V=-\log Z$ は Polchinski 方程式に従います。
- 4 次元の $\varphi^4$ では結合定数は限界的で、流れ $g_{j+1}=g_j-\beta g_j^2+O(g_j^3)$ から $g_j\sim1/(\beta j)$ となります。これが臨界現象の対数補正の源で、弱結合の $n$ 成分模型では Bauerschmidt–Brydges–Slade が感受率の指数 $(n+2)/(n+8)$ の対数補正を証明しました。
- Balaban は格子 Yang–Mills 理論の有限体積での紫外安定性をくりこみ群で示しました。相関関数の連続極限・無限体積極限・質量ギャップは未解決で、Yang–Mills のミレニアム問題はその先にあります。

<Aside type="tip" title="この記事で使う事前知識">

- **ガウス測度と共分散**: 平均 $0$ の正規分布を多変数にしたもので、分布の形が共分散行列だけで決まります。独立な 2 つのガウス変数の和は、共分散を足したガウス変数になります。
- **固定点と関連変数**: 変換を繰り返しても変わらない状態が固定点で、固定点から少しずらしたとき、ずれが変換のたびに大きくなる方向が関連変数です。
- **臨界指数**: 相転移点の近くで、感受率などの量が温度のずれのべき乗として振る舞うときの指数です。→ [臨界指数](/physics/thermodynamics/phase-transitions-mean-field#def-critical-exponents)
- **分配関数**: 統計力学で、各状態の重みを全部足し合わせた量です。→ [分配関数](/physics/qft/path-integral-quantization#def-partition-function)
- **ゲージ変換**: 物理量を変えない場の取り替えです。
- **連続極限の自明性**: 格子間隔を $0$ にした極限が相互作用のないガウス場になってしまうこと。→ [連続極限の自明性](/physics/lattice-field-theory/phi4-triviality#def-triviality)

</Aside>

## 1. 動機

前章までの構成は、[クラスター展開](/physics/constructive-qft/cluster-expansion) のように「1 つの小さなパラメータで全体を一度に展開する」方法と、[ランダムカレント表示](/physics/constructive-qft/random-current) のように特定の模型の組合せ構造を使う方法でした。どちらも、相関長が格子間隔に比べて非常に長い状況、つまり臨界点の近くや連続極限では効きません。そこでは $1$ から $\xi$ までのあらゆる長さのスケールのゆらぎが同じ重みで寄与し、どのスケールにも小さなパラメータがないからです。

Wilson の発想は、スケールを一度に扱わず、短い距離のゆらぎから順に積分して「長い距離だけを見る有効理論」を作ることでした。1 段の積分は 1 つのスケールのゆらぎしか含まないので、その段ではクラスター展開のような局所的な方法が使えます。問題は、この操作を無限回繰り返しても評価が壊れないことを示す点にあり、厳密くりこみ群とはこの「帰納法の不変量」を設計する理論です。

この章ではまず、ブロックスピン変換と固定点・関連変数を、計算が最後までできるガウス測度で定式化します。次に、実際の構成で使われる多スケール分解と帰納的な有効ポテンシャルの計算を説明し、その到達点として 4 次元 $\varphi^4$ の対数補正と Balaban の格子ゲージ理論の結果を述べます。

（この章の続きは購入者向けです。）
