# φ⁴₃ と確率量子化：質量くりこみ・正則性構造・パラ制御解析による測度の構成

> 3 次元 φ⁴ 測度に必要な質量と真空エネルギーの対抗項を冪勘定と sunset 図形から導き、Parisi–Wu の確率量子化で測度を確率偏微分方程式の不変測度として作る。Hairer、Mourrat–Weber の結果と、4 次元で自明性が避けられない理由を述べる。
> https://rikai.mugen-giken.com/physics/constructive-qft/phi4-3-stochastic-quantization

## 0. この記事の要点

3 次元の空間にランダムな場を考え、場どうしが非線形に作用し合う模型の確率分布を、数学として厳密に作ることがこの記事の話題です。素朴に式を書くと無限大が現れ、そのままでは分布が定まりません。そこで、無限大を打ち消す補正を加えて分布を作る方法（くりこみ）と、その分布を「時間とともにランダムに揺れる方程式の落ち着き先」として作る方法（確率量子化）を順に見ます。読み終えると、3 次元では補正で分布が作れるのに、4 次元では同じ方法でも相互作用のない場にしかならないのはなぜか、を説明できるようになります。

- 3 次元の $\phi^4$ 模型では、Wick 順序付けで除ける自己ループの発散のほかに、2 次の sunset 図形（2 つの頂点を 3 本の線で結ぶ図形。§3 の図）による質量の対数発散 $\gamma_\kappa=6\lambda^2b_\kappa\sim\frac{3\lambda^2}{8\pi^2}\log\kappa$ と、真空エネルギーの線形発散・対数発散が残ります。冪勘定 $\omega=3-n-E/2$ から、発散する図形はこれで尽きます（超くりこみ可能性）。
- 対抗項を入れた有限体積の測度は紫外切断を外す極限をもちます（Glimm–Jaffe, Feldman, Feldman–Osterwalder）。古典的な証明は位相セル展開（運動量と位置を細かな区画に分けて一つずつ評価する方法）で、運動量の殻と空間の立方体の組ごとに、くりこみと局所的な展開を交互に行います。極限の測度は自由場の測度と互いに特異です。
- 確率量子化（Parisi–Wu）は、測度 $e^{-S}$ を Langevin 方程式 $\partial_t\phi=-\nabla S(\phi)+\sqrt2\,\xi$ の不変測度として捉えます。有限次元では積分による部分積分 $\int Lf\,e^{-S}=0$ がすべてで、自由場は無限次元の Ornstein–Uhlenbeck 過程（原点へ引き戻す力とノイズで揺れる過程）の不変測度です。
- $\phi^4_3$ の確率偏微分方程式では解が $\mathcal{C}^{-1/2-}$ にしか入らず、$\phi^3$ が定義できません。Hairer の正則性構造と、Gubinelli–Imkeller–Perkowski のパラ制御解析は、確率的な対象を先に作ってくりこみ、解をその「局所的な展開」として求めることで局所解を構成します。放物型のスケール変換で結合定数が $\delta^{4-d}\lambda$ に変わるので、この方法が働くのは $d\lt4$ に限られます。
- 3 次元の立方の減衰項は初期値によらない評価（Mourrat–Weber の「無限遠からの下降」）を与え、大域解と不変測度の存在が PDE の評価から出ます。$\mathbb{R}^3$ 上でも、任意の結合定数で非 Gauss 的で[反射正値](/physics/lattice-field-theory/reflection-positivity-lattice#def-reflection-positivity)な測度が作れます（Gubinelli–Hofmanová）。4 次元では方程式が臨界になり、格子の確率量子化の不変測度は格子 $\phi^4_4$ 測度そのものなので、Aizenman–Duminil-Copin の自明性がそのまま当てはまります。

<Aside type="tip" title="この記事で使う事前知識">

- **Feynman–Kac 表示**: 場の模型の期待値を、時間方向の汎関数積分（経路についての積分）で書く方法。→ [前の章](/physics/constructive-qft/feynman-kac-field-models)
- **Wick 冪**: ガウス分布に従う確率変数の冪から、自己ループにあたる平均の寄与を差し引いて整えたもの。→ [Wick 冪](/physics/fock-space/gaussian-measures-q-space#def-wick-product)
- **反射正値性**: 時間を反転した関数との積の期待値が非負になる、という Euclid 側の性質。量子論に戻すための条件になる。→ [反射正値性](/physics/lattice-field-theory/reflection-positivity-lattice#def-reflection-positivity)
- **Ornstein–Uhlenbeck 過程**: 原点へ引き戻す力とノイズで揺れ、長い時間では正規分布に落ち着く過程。
- **緊密と弱収束**: 確率測度の族が質量を無限遠へ逃がさないのが緊密、有界連続関数の期待値が収束するのが弱収束。
- **Feller 性**: 時刻 $t$ の推移を表す作用素が、有界連続関数を有界連続関数に写すという性質。

</Aside>

## 1. 動機

Wick 積の章で、3 次元では $:\!\phi^n\!:(f)$ が $n\ge3$ で確率変数として存在しないこと（<Ref to="physics/constructive-qft/wick-products-nelson#prop-d3-wick-divergence" />）と、摂動論から質量と真空エネルギーの対抗項が必要になること（<Ref to="physics/constructive-qft/wick-products-nelson#rem-phi4-3-counterterms" />）を見ました。$\phi^4_3$ の測度は「$e^{-V}\mathrm{d}\mu_C$」という形では書けず、切断を外す極限としてしか定義できません。公理的場の量子論のテーマでは、その極限が存在するという結果だけを <Ref to="physics/axiomatic-qft/constructive-qft-map#thm-phi4-3-existence" /> として述べました。

この章の第 1 の目的は、その「対抗項がちょうど発散を打ち消す」という主張を、2 次の摂動の範囲で完全に証明し、古典的な構成（位相セル展開）が何をしているのかを見通すことです。第 2 の目的は、1981 年に Parisi と Wu が提案した確率量子化が、2014 年以降の特異確率偏微分方程式の理論によって、測度を構成する独立な方法になったことを説明することです。確率量子化では、測度を直接扱う代わりに、その測度を不変測度にもつ確率力学を解きます。紫外発散は「解が粗すぎて非線形項が定義できない」という PDE の問題として現れ、くりこみは確率的な対象の構成に集約されます。

最後に、この方法でも 4 次元では自明性を避けられないことを、スケール変換による臨界性と、格子の確率量子化の不変測度が格子 $\phi^4_4$ 測度であることの 2 点から説明します。

（この章の続きは購入者向けです。）
