# 超選択セクターと荷電状態：DHR の統計・Doplicher–Roberts・Gauss の法則と赤外粒子

> 局所化された自己準同型の交換作用素が電荷の運び方によらないことを因果的補集合の連結性から示し、置換群の表現と統計パラメタの量子化 λ∈{0,±1/d} を証明する。Doplicher–Roberts の再構成定理を述べ、Gauss の法則が電荷の局所化と Lorentz 対称性を壊すことを示す。
> https://rikai.mugen-giken.com/physics/axiomatic-qft/superselection-charged-sectors

## 0. この記事の要点

電子のような同じ種類の粒子を二つ入れ替えたとき、状態がそのままか、符号だけ変わるか、という問いが「粒子の統計」です。この記事では、粒子そのものではなく、粒子が運ぶ電荷が局所的な測定にどう現れるかだけを手がかりに、入れ替えの規則がどんな形に限られるかを調べます。読み終えると、統計が「符号が変わるか変わらないか」のほかに、整数 $d$ を使った $\pm1/d$ という離散的な値（または無限統計）にしかならない理由と、電荷をもつ粒子が QED で特別扱いされる理由の見取り図がもてます。

- 空間が 3 次元なら、[二重錐](/physics/axiomatic-qft/haag-kastler#def-causal-regions)の因果的補集合は連結です。このことから、局所化された自己準同型 $\rho,\sigma$ の**交換作用素** $\varepsilon(\rho,\sigma)$（二つの電荷の入れ替えを表すユニタリ作用素）は電荷を遠くへ運ぶ道筋によらず、$\varepsilon(\sigma,\rho)\varepsilon(\rho,\sigma)=1$ を満たします。とくに[統計作用素](/physics/axiomatic-qft/haag-kastler#def-statistics-operator)は $\varepsilon_\rho^2=1$ を満たし、$\rho^{k-1}(\varepsilon_\rho)$ が対称群 $S_n$ の表現を生成します。
- 左逆元 $\phi$（$\rho$ を左から打ち消す正値な写像。§5 で定義します）をもつ既約な $\rho$ では $\phi(\varepsilon_\rho)=\lambda_\rho1$ となり、統計パラメタは $\lambda_\rho\in\{0\}\cup\{\pm1/d:d\in\mathbb{N}\}$ に量子化されます。証明は、$\phi^n$ が対称群の群環に定める Markov 型の正値汎関数を、反対称化子と対称化子に当てるだけで済みます。
- Doplicher–Roberts の再構成定理（主張）: 有限統計のセクター全体から、コンパクト群 $G$ と、Bose・Fermi 型の交換関係をもつ場のネットが復元されます。セクターは $G$ の既約表現に、統計次元は表現の次元に対応します。
- Gauss の法則 $\partial_\mu F^{\mu\nu}=j^\nu$ があると、電荷は遠方の電場の流束で測れます。そのため、ある二重錐の因果的補集合で真空と一致する状態の電荷は $0$ で、電荷 $q\ne0$ のセクターは DHR の選択基準を満たしません。
- 既約な荷電表現では漸近流束が定数になり、Lorentz 変換と両立しません（Fröhlich–Morchio–Strocchi）。電荷をもつ粒子は鋭い質量をもてない、という Buchholz の赤外粒子の定理（主張）も同じ根から来ます。

<Aside type="tip" title="この記事で使う事前知識">

- **二重錐と因果的補集合**: 時空の有界な「箱」（ある点の未来と別の点の過去の共通部分）が二重錐で、その箱のどの点とも空間的に離れた点の集まりが因果的補集合です。→ [二重錐](/physics/axiomatic-qft/haag-kastler#def-causal-regions)
- **局所化された自己準同型と超選択セクター**: 電荷をもつ状態の表現を、真空表現のうち一つの箱の外では変えない写像 $\rho$ で表す、という見方です。→ [Haag–Kastler 公理と局所ネット](/physics/axiomatic-qft/haag-kastler)
- **統計作用素**: 同じ電荷 $\rho$ を二つ入れ替える操作を表すユニタリ作用素 $\varepsilon_\rho$ です。→ [統計作用素](/physics/axiomatic-qft/haag-kastler#def-statistics-operator)
- **von Neumann 環**: 弱位相で閉じた作用素環で、二重可換子定理により $\mathfrak{M}=\mathfrak{M}''$ と特徴づけられます。→ [von Neumann 環](/mathematics/operator-algebras/von-neumann-algebras#def-von-neumann-algebra)
- **表現と既約性**: C* 環を Hilbert 空間上の作用素として実現するのが表現で、不変部分空間をもたないものが既約です。→ [表現](/mathematics/operator-algebras/states-and-gns#def-representation)

</Aside>

## 1. 動機

[Haag–Kastler 公理と局所ネット](/physics/axiomatic-qft/haag-kastler) の最後の節で、電荷をもつ状態の表現（超選択セクター）を DHR 選択基準で定式化し、それが局所化された自己準同型 $\rho$ で表されることを示しました（<Ref to="physics/axiomatic-qft/haag-kastler#prop-localized-endomorphism" />）。そのうえで、統計作用素 $\varepsilon_\rho$ が選び方によらないこと、$\varepsilon_\rho^2=1$、対称群の表現、統計次元の量子化をまとめた DHR の統計定理（<Ref to="physics/axiomatic-qft/haag-kastler#thm-dhr-statistics" />）は、主張だけを述べました。本章の前半はその証明です。

証明で効くのは二つの事実だけです。一つは**幾何**です。空間が 3 次元なら、ある二重錐の因果的補集合の中で別の二重錐を動かして、どこへでも運べます。電荷を遠くへ運ぶ道筋を連続的に変形できるので、二つの電荷の入れ替え方は道筋によらなくなります。空間が 1 次元だと因果的補集合は左右に分かれ、「左から回るか右から回るか」が区別されて、置換群の代わりに組紐群が現れます。もう一つは**正値性**です。左逆元 $\phi$ は正写像なので、反対称化子のような射影に当てた値は負になりません。統計パラメタが $\pm1/d$ に量子化されるのは、この正値性が粒子数 $n$ ごとに課す無限個の不等式の帰結です。

後半では、DHR の枠組みが**当てはまらない**場合を扱います。量子電磁気学では、電荷は Gauss の法則によって遠方の電場に痕跡を残すので、「因果的補集合では真空と区別できない」という DHR 選択基準そのものが破れます。この破れが、荷電セクターでの Lorentz 対称性の自発的な破れ（Fröhlich–Morchio–Strocchi）と、電子が鋭い質量殻をもたないこと（赤外粒子、Buchholz）につながります。[赤外問題](/physics/fock-space/infrared-problem) で見た「電荷の速度ごとに表現が非同値になる」という現象（<Ref to="physics/fock-space/infrared-problem#cor-velocity-superselection" />）は、その具体的な現れでした。

（この章の続きは購入者向けです。）
