# 構成的場の理論の地図：P(φ)₂・φ⁴₃・Yang–Mills と「存在」の意味

> 構成的場の理論が何を「存在させた」のかを、摂動論的存在・切断付きハミルトニアン・Euclid 測度・公理を満たす理論という階層で整理する。P(φ)₂・Yukawa₂・φ⁴₃・Gross–Neveu₂ の年表、φ⁴₄ の自明性、Haag–Ruelle 散乱理論、Yang–Mills の質量ギャップ問題の正確な主張を述べる。
> https://rikai.mugen-giken.com/physics/axiomatic-qft/constructive-qft-map

## 0. この記事の要点

場の量子論を数学の定理として「確かに存在する」と言えるのは、どんな場合でしょうか。物理の計算がうまく進んでも、数学の意味での存在とは別の話です。この記事では、存在の意味をいくつかの段階に分け、具体的な模型がどの段階まで示されたかを一覧にします。読み終えると、「計算ができる」ことと「理論が存在する」ことの違い、時空が 2 次元・3 次元・4 次元で何が変わるかを説明できるようになります。

- 「場の理論が存在する」には少なくとも 4 つの水準があります。(P) 摂動級数（結合定数のべき級数）の各係数が[くりこみ](/physics/qft/renormalization)で有限になる、(H) 切断付きハミルトニアン（高い運動量をあらかじめ切り捨てたエネルギー作用素）の族が自己共役で下に有界で、切断を外す極限がある、(E) [Osterwalder–Schrader 再構成定理](/physics/axiomatic-qft/osterwalder-schrader)の前提となる公理を満たす Euclid 測度（時間を虚数にした側での確率測度）がある、(W) [Wightman 公理](/physics/axiomatic-qft/wightman-axioms#def-wightman-axioms)を満たし非自明である。(E) から (W) へは再構成定理で進めますが、(P) から (W) へは一般に進めません。
- 時空 2 次元の $P(\phi)_2$ 模型では、相互作用 $\int g:\!P(\phi):\,dx$ が [Wick 順序](/physics/fock-space/gaussian-measures-q-space#def-wick-product)だけで $L^2$ の確率変数になります。この事実は 1 粒子エネルギー $1/\omega$ の多重畳み込みが有界であることから従い、3 次元では Wick 平方の時点で対数発散します。本章ではこれを証明し、次元が上がるごとにくりこみが難しくなる様子を見ます。
- 成果の年表: $P(\phi)_2$（Nelson, Glimm–Jaffe, 1965–74）、Yukawa₂（1970–76）、$\phi^4_3$（Glimm–Jaffe 1973, Feldman–Osterwalder 1976）、Gross–Neveu₂（1985–86）。いずれも弱結合で Wightman 公理と質量ギャップが示されています。
- 4 次元の $\phi^4$ 理論は摂動論的にはくりこみ可能ですが、格子からの連続極限は必ず Gauss 的（自明）になります（Aizenman–Duminil-Copin, 2021）。これは「摂動論的存在」が「存在」を含意しないことの実例です。
- Haag–Ruelle 散乱理論により、孤立した 1 粒子質量殻をもつ Wightman 理論からは漸近状態と S 行列が公理だけで得られます。漸近完全性は一般には未解決です。
- 4 次元 Yang–Mills 理論の存在と質量ギャップ（Clay ミレニアム問題）と、QED₄ の非自明性はいずれも未解決です。本章では前者の主張を正確に書きます。

<Aside type="tip" title="この記事で使う事前知識">

- **Wick 順序（Wick 積）**: 場の積で、生成作用素を左、消滅作用素を右に並べ替えたもの。真空期待値が 0 になります。→ [Wick 冪](/physics/fock-space/gaussian-measures-q-space#def-wick-product)
- **くりこみ**: 発散する量を、パラメータの調整（対抗項）で打ち消して有限な答えを得る手続き。
- **Osterwalder–Schrader 再構成定理**: Euclid 側の相関関数が反射正値性などの公理を満たせば、Wightman 理論が復元できるという定理。→ [OS の再構成定理](/physics/axiomatic-qft/osterwalder-schrader#thm-os-reconstruction)
- **Wightman 公理**: 場の量子論を数学的に定める公理の組。→ [Wightman 公理](/physics/axiomatic-qft/wightman-axioms#def-wightman-axioms)
- **漸近的自由性**: エネルギーが高いほど結合が弱くなる性質。結合定数のエネルギー依存で表されます。→ [走る結合定数](/physics/qft/dimensional-regularization-rg#def-running-coupling)

</Aside>

## 1. 動機

[Haag の定理](/physics/axiomatic-qft/pct-spin-statistics-haag) は、相互作用する場を自由場の Fock 空間の上に「相互作用表示」として置けないことを示しました。では相互作用する場の量子論は数学的にどこに存在するのでしょうか。1960 年代半ばから 1980 年代にかけて、この問いに具体的な模型で答えようとしたのが**構成的場の理論**です。目標は [Wightman 公理](/physics/axiomatic-qft/wightman-axioms) を満たす非自明な理論を作ることで、[Osterwalder–Schrader の再構成定理](/physics/axiomatic-qft/osterwalder-schrader) によって、それは Euclid 側の確率測度を作る問題に置き換えられました。

一方、物理学者が「QCD は存在する」と言うとき、意味しているのは通常、摂動級数がくりこみ可能であること、または格子上の数値計算が連続極限で収束しているように見えることです。これらはいずれも公理的な存在とは別の主張です。本章では、この食い違いを解消するために「存在」の意味を階層として定義し、どの模型がどの水準まで証明されたのかを地図としてまとめます。研究から離れていた読者には、2010 年代以降に確率偏微分方程式（Hairer の正則性構造、Gubinelli らの準制御分布）が $\phi^4_3$ の構成に新しい道を開いたこと、2021 年に $\phi^4_4$ の自明性が完全に証明されたことが、地図の大きな更新点です。

（この章の続きは購入者向けです。）
