# Virasoro の最高ウェイト表現：Verma 加群・Kac 行列式・ユニタリ性・Feigin–Fuchs の Fock 加群

> Virasoro 代数の Verma 加群と反変形式を構成し、Gram 行列式の次数と最高次係数、特異ベクトルからの因子の現れ方を証明する。Kac 行列式公式を主張として受け入れて c ≥ 1 のユニタリ性を導き、Feigin–Fuchs の Fock 加群と退化表現の運動量を計算する。
> https://rikai.mugen-giken.com/mathematics/vertex-algebras/virasoro-representations

## 0. この記事の要点

この記事は、Virasoro 代数という「エネルギーを上げ下げする演算子」の集まりが働く状態空間を、いちばんエネルギーの低い状態から順に組み立てる話です。組み立てた空間には自然に「長さ（内積）」の候補が入りますが、これが常に正の値になるとは限らず、量子論で使える状態空間になるのは特別な場合だけです。読み終えると、状態空間の作り方と、それが分解できるか・内積が正になるかを行列式で見分ける仕組みが分かります。

- Virasoro 代数の **[Verma 加群](#def-verma-vir)** $M(c,h)$ は、$L_{-\lambda_1}\cdots L_{-\lambda_k}v$（$\lambda_1\ge\cdots\ge\lambda_k\ge1$）を基底にもち、$L_0$ の固有値 $h+N$ の空間の次元は分割数 $p(N)$ です。唯一の既約商を $L(c,h)$ と書きます。
- $L_n\mapsto L_{-n}$ に関して反変な形式（Shapovalov 形式。$L_n$ を左から右へ移すと $L_{-n}$ になる内積のようなもの）があり、その根基が極大部分加群です。$M(c,h)$ が既約であることと、各レベル $N$ の Gram 行列式 $\det G_N(c,h)$ が $0$ でないことは同値です。
- **証明する部分**: $\det G_N$ は $h$ について次数 $\sum_{rs\le N}p(N-rs)$、最高次係数 $\prod_{\lambda\vdash N}\prod_r(2r)^{m_r}m_r!$ の多項式であり、レベル $rs$ に特異ベクトル（すべての $L_n$、$n\ge1$ で $0$ になる、最低ウェイト以外のベクトル）があれば $(h-h_{r,s})^{p(N-rs)}$ で割り切れます。**Kac の公式**（これらの因子で尽きること）は主張として述べます。
- Kac の公式から、$c\ge1$、$h\ge0$ なら $L(c,h)$ はユニタリ（内積が正定値）です。$c\lt1$ では Friedan–Qiu–Shenker（FQS）の離散系列 $c_m=1-\frac{6}{m(m+1)}$、$h=h_{r,s}$ に限られます（必要性は主張、十分性は[次章](/mathematics/vertex-algebras/coset-minimal-models)で構成します）。
- **Feigin–Fuchs の Fock 加群**: 自由ボソンに背景電荷 $\alpha_0$ を入れると $c=1-12\alpha_0^2$ の Virasoro 表現が得られ、Kac 表の $h_{r,s}$ は運動量 $\mu_{r,s}=\frac12\bigl((1-r)\alpha_++(1-s)\alpha_-\bigr)$ の Fock 加群の最低ウェイトになります。

<Aside type="tip" title="この記事で使う事前知識">

- **Virasoro 代数**: Witt 代数に中心元 $C$ を加えた Lie 代数で、$L_n$（$n\in\mathbb{Z}$）と $C$ が基底。→ [Virasoro 代数](/mathematics/vertex-algebras/virasoro-algebra#def-virasoro)
- **Verma 加群**: 最高ウェイトベクトル $v$ に下げる側の演算子を自由に作用させて得られる、最も大きな最高ウェイト加群。→ [Verma 加群](/mathematics/lie-theory/highest-weight-theory#def-verma)
- **PBW の定理**: 普遍包絡代数の基底が、基底の順序づけた単項式で与えられるという定理。→ [最高ウェイト理論](/mathematics/lie-theory/highest-weight-theory)
- **部分加群**: 作用で閉じた部分空間。真の部分加群とは全体でも $0$ でもないもの。→ [部分加群](/mathematics/commutative-algebra/modules-exact-sequences-nakayama#def-module-hom)
- **半正定値**: すべてのベクトルで二次形式の値が $0$ 以上になる、という性質。→ [半正定値](/mathematics/linear-algebra/spectral-theorem#def-positive-definite)

</Aside>

## 1. 動機

[前章](/mathematics/vertex-algebras/virasoro-algebra) で、Witt 代数の中心拡大は [Virasoro 代数](/mathematics/vertex-algebras/virasoro-algebra#def-virasoro) $\mathrm{Vir}$ ただ 1 つであることを示しました。共形場理論の状態空間は、ハミルトニアン $L_0$ の固有値（エネルギー）が下に有界な $\mathrm{Vir}$ の表現で、エネルギー最低の状態から $L_{-n}$ を作用させて得られます。これは有限次元半単純 Lie 環の [最高ウェイト理論](/mathematics/lie-theory/highest-weight-theory) とまったく同じ構図で、$L_n$（$n\gt0$）が上昇ではなく「エネルギーを下げる」演算子として $\mathfrak{n}^+$ の役を果たします。

有限次元の場合と決定的に違うのは、既約表現が無限次元で、しかも **どの最高ウェイトが「物理的」（ユニタリ）か** が非自明な問題になることです。量子論ではヒルベルト空間の内積が正定値でなければなりませんが、$L_{-n}^{*}=L_n$ を満たす内積は最高ウェイトから一意に決まってしまい、その正定値性は $(c,h)$ に強い制約を課します。この制約を完全に記述するのが Kac 行列式と FQS の定理で、その結果 $c\lt1$ のユニタリ表現は離散的な系列しかありません。2 次元臨界現象の普遍性クラス（Ising $c=\frac12$、三重臨界 Ising $c=\frac7{10}$ など）がこの系列で分類されるのは、この代数的な事実の帰結です。

（この章の続きは購入者向けです。）
