# シュレーディンガー作用素の自己共役性と束縛状態：Hardy・Kato・Birman–Schwinger

> Hardy の不等式、Kato クラスと形式有界性、Lᵖ+L^∞ ポテンシャルの自己共役性を証明し、Birman–Schwinger 原理で束縛状態を数える。1・2 次元では弱い引力でも束縛状態があり 3 次元ではないこと、Kato の不等式と反磁性不等式も扱う。
> https://rikai.mugen-giken.com/mathematics/spectral-scattering/schrodinger-operators

## 0. この記事の要点

原子の中の電子のように、力を受けて動く量子の粒子のエネルギーは、シュレーディンガー作用素という式で決まります。力が一点に近づくほど極端に強くなると、そもそもエネルギーが意味のある量として定まるのか、という素朴な疑問が出ます。また引力があるとき、粒子が引力の中心に捕まる状態がいくつあるか、そして弱い引力でも捕まるかどうかは、空間の次元によって変わります。この記事を読むと、どんな力なら話が成り立つかの見分け方と、捕まる状態の数え方がわかります。

- **Hardy の不等式** $\int|\psi|^2/|x|^2\le\frac{4}{(d-2)^2}\int|\nabla\psi|^2$（$d\ge3$）は「粒子を原点に閉じ込めると運動エネルギーが $1/|x|^2$ 程度かかる」という不確定性原理の定量版です。定数は最良で、逆 2 乗ポテンシャル $-c/|x|^2$ は $c$ が $(d-2)^2/4$ を超えた瞬間に下に有界でなくなります。
- ポテンシャル（力のもと）が **Kato クラス** $K_d$（局所的な特異性が弱い関数の集まり）に属すれば $-\Delta$ に関して形式限界 $0$ で、[KLMN の定理](/mathematics/functional-analysis/self-adjointness-criteria#thm-klmn)から $-\Delta+V$ が定まります。$V\in L^p+L^\infty$（$p\ge2$、$p\gt d/2$）なら作用素の意味で相対限界 $0$ で、$H^2$ 上で自己共役です（**Kato の定理**）。
- **Birman–Schwinger 原理**: $-\Delta-V$ の $-E$ より下の固有値の個数は、[コンパクト作用素](/mathematics/functional-analysis/compact-operators#def-compact-operator) $V^{1/2}(-\Delta+E)^{-1}V^{1/2}$ の $1$ より大きい固有値の個数に等しい。3 次元ではここから個数の上界 $\|V\|_{\mathrm{R}}^2/16\pi^2$ が出ます。一般の $d\ge3$ では **Cwikel–Lieb–Rozenblum 評価** $N\le L_d\int V_-^{d/2}$ が成り立ちます。
- 1・2 次元では $\int V\lt0$ を満たす任意に弱い引力が束縛状態を作り、3 次元では十分弱い引力は束縛状態を作りません（Simon）。差は自由レゾルベントの積分核が $E\downarrow0$ で発散するかどうかにあり、CLR 評価が $d\le2$ で成り立たない理由でもあります。
- **Kato の不等式** $\Delta|u|\ge\mathrm{Re}[(\mathrm{sgn}\,\bar u)\Delta u]$ と**反磁性不等式** $|\nabla|\psi||\le|(\nabla-iA)\psi|$ は、絶対値を取る操作がエネルギーを下げることを表し、磁場が（スピンのない粒子の）基底エネルギーを下げないことを導きます。

<Aside type="tip" title="この記事で使う事前知識">

- **KLMN の定理**: 下に有界な自己共役作用素に、形式限界が 1 未満の二次形式の摂動を足しても、また自己共役作用素が定まるという定理。→ [KLMN の定理](/mathematics/functional-analysis/self-adjointness-criteria#thm-klmn)
- **形式有界性（形式限界）**: 摂動の大きさを二次形式（エネルギー）で測り、$a\,q[\psi]+b\|\psi\|^2$ で押さえられるときの、最小の $a$ が形式限界。→ [形式の意味での相対有界性](/mathematics/functional-analysis/self-adjointness-criteria#def-form-bound)
- **本質的自己共役**: 閉包が自己共役になる対称作用素のこと。自己共役な拡張がただ一つ決まります。→ [本質的自己共役](/mathematics/functional-analysis/self-adjointness-criteria#def-symmetric-essentially-self-adjoint)
- **Friedrichs 拡大**: 下に有界な対称作用素の二次形式を閉包して作る、標準的な自己共役拡大。→ [Friedrichs 拡大](/mathematics/functional-analysis/self-adjointness-criteria#thm-friedrichs-extension)
- **相対コンパクト**: $B$ が $A$ に関して相対コンパクトとは、$B(A-z)^{-1}$ がコンパクト作用素になること。→ [相対コンパクト](/mathematics/functional-analysis/spectrum-classification#def-relatively-compact)
- **コンパクト作用素と特異値**: 有界な集合を相対コンパクトな集合に移す作用素で、その大きさは特異値を大きい順に並べた列で測れます。→ [コンパクト作用素](/mathematics/functional-analysis/compact-operators#def-compact-operator)、[特異値](/mathematics/functional-analysis/compact-operators#def-singular-values)

</Aside>

## 1. 動機

[前章](/mathematics/spectral-scattering/hvz-theorem) では、ポテンシャルが $-\Delta$ に関して相対コンパクトであるという仮定のもとで多体系の本質スペクトルを決めました。この章では 1 体のシュレーディンガー作用素 $-\Delta+V$ に戻り、二つの基本的な問いに答えます。一つは「どのような $V$ なら $-\Delta+V$ が自己共役作用素として意味を持つか」、もう一つは「本質スペクトルより下に固有値（束縛状態）がいくつあるか」です。

前者については、関数解析の段階で Kato–Rellich の定理と KLMN の定理を学びました（[自己共役性の判定](/mathematics/functional-analysis/self-adjointness-criteria)）。抽象定理を具体的なポテンシャルに適用するには、$V$ を $-\Delta$ で押さえる不等式が必要です。その代表が Hardy の不等式と Sobolev 型の評価で、ポテンシャルの「特異性の許容範囲」はこれらの不等式の最良定数で決まります。

後者は物理的にも重要です。井戸型ポテンシャルを浅くしていくと、1 次元ではどれほど浅くても束縛状態が残りますが、3 次元ではある深さで束縛状態が消えます。この次元による違いを、ミニマックス原理と Birman–Schwinger 原理で精密に述べるのがこの章の後半です。束縛状態の個数とエネルギーの和の評価は、次の [Lieb–Thirring 不等式](/mathematics/spectral-scattering/lieb-thirring) の章で物質の安定性へとつながります。

（この章の続きは購入者向けです。）
