# 1 次元散乱と Jost 関数：Weyl の交代定理・Levinson の定理・スペクトルシフト関数

> 半直線上の Sturm–Liouville 作用素について Weyl の極限点・極限円の交代定理を証明し、Jost 解と Jost 関数で束縛状態と位相のずれを記述して Levinson の定理を導く。Krein のトレース公式をスペクトル平均で完全に証明し、1 次元で Birman–Krein 公式 S = e^{−2πiξ} を確かめる。
> https://rikai.mugen-giken.com/mathematics/spectral-scattering/one-dimensional-scattering

## 0. この記事の要点

一本の半直線の上を走る波が、途中にあるポテンシャル（壁や谷）にぶつかる場面を考えます。壁があると、返ってくる波は壁のない場合に比べて少し位置がずれ、谷があると波がそこに捕まって動かない状態（束縛状態）が生まれることもあります。この記事は、波のずれの大きさと捕まる状態の個数が、一つの関数（Jost 関数）の性質として結び付くことを示します。読み終えると、その関係（Levinson の定理）の証明の筋道と、抽象的に導入されたスペクトルシフト関数が 1 次元では具体的に何になるかが分かります。

- 半直線上の $\tau=-d^2/dx^2+q$ について、$\mathrm{Im}\,z\ne0$ なら $\tau u=zu$ の $L^2$ 解は少なくとも 1 つあり、「ちょうど 1 次元（**極限点**）」か「すべての解が $L^2$（**極限円**）」のどちらかで、この区別は $z$ によりません（**Weyl の交代定理**）。証明は入れ子になった Weyl 円板です。
- 台がコンパクトなポテンシャルでは、無限遠で $e^{ikx}$ に一致する解 $f(k,x)$（**Jost 解**）が $k$ について[整関数](/mathematics/complex-analysis/properties-of-holomorphic-functions#def-entire)になり、**Jost 関数** $F(k)=f(k,0)$ が全てを決めます。上半平面の零点 $i\kappa_j$ は束縛状態 $-\kappa_j^2$ に、実軸上の偏角は**位相のずれ** $F(k)=|F(k)|e^{-i\delta(k)}$ に、比 $S(k)=F(-k)/F(k)=e^{2i\delta(k)}$ は散乱行列になります。
- **Levinson の定理** $\delta(0)-\delta(\infty)=\pi N$（$N$ は束縛状態の個数、$F(0)\ne0$ のとき）は、$F$ に偏角の原理を使うだけで証明できます。
- 前々章で主張だけを述べた **Krein のトレース公式** $\mathrm{tr}(f(H)-f(H_0))=\int f'\xi$ を、**スペクトル平均** $\int_{\mathbb{R}}\mu_t(B)\,dt=|B|$（階数 1 摂動の族のスペクトル測度の平均は Lebesgue 測度）を鍵にして完全に証明します。摂動行列式は $\det(1+V(H_0-z)^{-1})=\exp\int\xi(\lambda)(\lambda-z)^{-1}d\lambda$ です。
- 1 次元ではスペクトルシフト関数が $\xi(\lambda)=-N(\lambda)$（$\lambda\lt0$）, $\xi(\lambda)=-\delta(\sqrt\lambda)/\pi$（$\lambda>0$）と求まり、**Birman–Krein 公式** $S(k)=e^{-2\pi i\xi(k^2)}$ が成り立ちます。Levinson の定理は「$\xi$ がしきい値 $0$ で連続」と読めます。

<Aside type="tip" title="この記事で使う事前知識">

- **自己共役作用素**: 内積について対称で、定義域も共役作用素のものと一致する作用素。→ [自己共役作用素](/mathematics/functional-analysis/self-adjoint-extensions#def-self-adjoint)
- **トレースクラス**: 特異値の和が有限で、トレース（対角和）が定義できる作用素。→ [トレースクラス摂動](/mathematics/spectral-scattering/trace-class-scattering)
- **スペクトル測度**: 自己共役作用素 $H$ とベクトル $\varphi$ に対し、$\langle\varphi,g(H)\varphi\rangle=\int g\,d\mu$ で定まる測度 $\mu$。
- **Wronskian**: 2 つの関数 $u,v$ について $uv'-u'v$。同じ 2 階線形方程式の 2 解では定数になる。→ [Sturm–Liouville 問題](/mathematics/ode/sturm-liouville)
- **整関数**: 複素平面全体で正則な関数。→ [整関数](/mathematics/complex-analysis/properties-of-holomorphic-functions#def-entire)
- **偏角の原理**: 閉路の内側の零点の個数は、閉路を一周したときの偏角の変化を $2\pi$ で割ったもの（極がないとき）。

</Aside>

## 1. 動機

[トレースクラス摂動](/mathematics/spectral-scattering/trace-class-scattering)の章では、スペクトルシフト関数 $\xi$ を Krein のトレース公式で導入し、散乱行列との関係（Birman–Krein 公式）を述べましたが、どちらも証明は筋道にとどめました。抽象論だけでは $\xi$ がどんな関数なのか見えにくいので、すべてが計算できる模型で確かめたくなります。1 次元の Schrödinger 作用素はその最良の舞台です。

1 次元では、固有値問題が常微分方程式になり、解の漸近挙動から直接スペクトルが読めます。Weyl は 1910 年に、半直線の無限遠で境界条件が必要かどうかを解の 2 乗可積分性で判定する交代定理を証明し、これが自己共役拡大の理論の出発点になりました。Jost（1947）は、無限遠で平面波に一致する解を使って散乱行列と束縛状態を一つの解析関数 $F(k)$ に集約しました。Levinson（1949）は、位相のずれの総変化が束縛状態の個数を数えることを発見しました。

この章では、これらを順に証明し、最後に抽象的なスペクトルシフト関数が 1 次元では「位相のずれ $/\pi$」と「束縛状態の個数」で書けることを示します。物理的な背景（部分波展開と位相のずれ）は[散乱理論](/physics/quantum-mechanics-2/scattering-theory-physics)の章を参照してください。

（この章の続きは購入者向けです。）
