# 固有関数とレゾルベントの指数減衰：Combes–Thomas 評価・Agmon 距離・Persson の定理

> Schrödinger 作用素のレゾルベントの積分核がスペクトルから離れたエネルギーで指数減衰すること（Combes–Thomas 評価）と、固有関数が Agmon 距離で測って減衰すること（Agmon 評価）を証明する。本質スペクトルの下端の Persson の公式、x²y² ポテンシャルの離散スペクトル、格子版の明示的な評価も扱う。
> https://rikai.mugen-giken.com/mathematics/spectral-scattering/exponential-decay

## 0. この記事の要点

量子力学では、粒子が本来入れないはずの場所にも波動関数が染み出します。この記事は、その染み出しの大きさが、入れない領域の奥へ進むにつれて指数関数のように急に小さくなることを、数学として厳密に示す章です。読み終えると、遠く離れた二点のあいだの影響の大きさを不等式で押さえる方法と、束縛状態の裾の速さを見積もる方法が使えるようになります。

- **Combes–Thomas 評価**: $z$ が $H=-\Delta+V$ のスペクトルから離れていれば、レゾルベントを指数関数で共役した $e^{\alpha\phi}(H-z)^{-1}e^{-\alpha\phi}$（$\phi$ は 1-Lipschitz）は $\alpha$ が小さい限り一様有界です。帰結として $\|\mathbf{1}_X(H-z)^{-1}\mathbf{1}_Y\|\le Ce^{-\alpha_0\,\mathrm{dist}(X,Y)}$。証明は「指数で共役すると $H$ が相対的に小さく変わるだけ」という一点に尽きます。
- **Agmon 評価**: 固有値 $E$ の固有関数 $\psi$ は、計量 $(V(x)-E)_+\,dx^2$ による距離 $\rho_E$（**Agmon 距離**）で測って $e^{(1-\varepsilon)\rho_E}\psi\in L^2$ を満たします。古典的に禁止された領域 $\{V>E\}$ でのトンネル効果の WKB 近似 $e^{-\int\sqrt{V-E}}$ を厳密にしたものです。
- 鍵の恒等式は $\mathrm{Re}\langle e^{2f}\psi,(H-E)\psi\rangle=\|\nabla(e^f\psi)\|^2+\langle e^f\psi,(V-E-|\nabla f|^2)e^f\psi\rangle$ です。$|\nabla f|^2\lt V-E$ の領域では右辺第 2 項が正になります。
- **Persson の定理**: $\inf\sigma_{\mathrm{ess}}(H)=\lim_{R\to\infty}\inf\{h(u)/\|u\|^2:\ \mathrm{supp}\,u\subset\{|x|\ge R\}\}$。本質スペクトルは「無限遠のエネルギー」で決まります。応用として $-\Delta+x^2y^2$ は、ポテンシャルが座標軸に沿って $0$ のままなのに離散スペクトルしか持ちません（Simon）。
- 格子 $\mathbb{Z}^d$ では全てが有界作用素になり、$|\langle\delta_x,(H-z)^{-1}\delta_y\rangle|\le\frac2\delta e^{-\mu|x-y|_1}$、$\mu=\log(1+\delta/4d)$ という明示的な評価が 5 行で証明できます。

<Aside type="tip" title="この記事で使う事前知識">

- **自己共役作用素**: $A=A^*$（定義域まで含めて）を満たす作用素のこと。スペクトルが実数に限られ、量子力学で観測量を表します。→ [自己共役作用素](/mathematics/functional-analysis/self-adjoint-extensions#def-self-adjoint)
- **閉形式と表現定理**: 下に有界な閉じた二次形式から、自己共役作用素がただ一つ定まるという事実。→ [自己共役性の判定](/mathematics/functional-analysis/self-adjointness-criteria)
- **Schrödinger 作用素 $-\Delta+V$**: 運動エネルギー $-\Delta$ にポテンシャル $V$ を足した作用素。→ [シュレーディンガー作用素](/mathematics/spectral-scattering/schrodinger-operators)
- **弱収束**: 任意のベクトルとの内積が収束する、という弱い意味の収束。→ [弱収束](/mathematics/functional-analysis/hilbert-spaces#def-weak-convergence)
- **コンパクト作用素**: 弱収束する列をノルム収束する列に変える作用素。→ [コンパクト作用素](/mathematics/functional-analysis/compact-operators#def-compact-operator)
- **Neumann 級数**: ノルムが $1$ より小さい作用素 $T$ について、$1+T$ の逆が $\sum_n(-T)^n$ で得られること。

</Aside>

## 1. 動機

量子力学の束縛状態は、古典的に到達できない領域にも染み出しますが、その振幅は指数関数的に小さくなります。WKB 近似では、エネルギー $E$ の 1 次元の固有関数は $V(x)>E$ の領域で $\exp(-\int^x\sqrt{V(t)-E}\,dt)$ のように減衰します。多体系の固有関数の減衰（イオン化エネルギーとの関係）、半古典極限でのトンネル分裂、ランダム作用素の Anderson 局在の証明など、多くの議論がこの種の指数減衰評価を「部品」として使います。

この章では、その厳密な形を二つ証明します。一つは**レゾルベント**についての評価（Combes–Thomas）で、エネルギーがスペクトルの外にあれば、遠く離れた二点を結ぶ「伝播」は指数的に小さいというものです。もう一つは**固有関数**についての評価（Agmon）で、減衰の速さを幾何学的な距離 $\rho_E$ で精密に捉えます。後者は本質スペクトルより下の固有値に適用され、その「本質スペクトルの下端」を無限遠の情報だけで決めるのが Persson の定理です。

[HVZ 定理](/mathematics/spectral-scattering/hvz-theorem)の章ではクラスター分解による本質スペクトルの決定を、[Schrödinger 作用素](/mathematics/spectral-scattering/schrodinger-operators)の章では束縛状態の個数を扱いました。この章はそれらと相補的で、束縛状態の「形」について述べます。

（この章の続きは購入者向けです。）
