# 準自由状態の準同値：Powers–Størmer 不等式・Uhlmann の忠実度・Bures の定理

> Powers–Størmer 不等式と Uhlmann の忠実度を証明し、忠実度の単調極限から無限テンソル積状態の準同値を判定する Bures の定理を導く。同時対角化できる準自由状態について Powers–Størmer と Araki–Yamagami の判定を証明し、一般形と Feldman–Hájek の二分法を述べる。
> https://rikai.mugen-giken.com/mathematics/operator-algebras/quasi-free-equivalence

## 0. この記事の要点

2 つの量子状態が「同じ世界の住人」なのか「まったく別の世界の住人」なのかを、数値ひとつで見分ける話です。有限個の粒子なら 2 つの状態はいつでも比べられますが、無限個の粒子（たとえば無限に広い系）では、状態によっては何をしても互いに行き来できません。そこで 2 つの状態がどれくらい重なっているかを測る量を作り、粒子 1 個あたりの重なりの積が 0 になるかどうかで、2 つが同じ世界に属するかを判定します。読み終えると、熱平衡状態の温度を変えたときに世界が変わるかどうかを、計算で決められるようになります。

- **Powers–Størmer 不等式**：正のトレースクラス作用素 $\rho,\sigma$ について $\|\rho^{1/2}-\sigma^{1/2}\|_2^2\le\|\rho-\sigma\|_1$。平方根の Hilbert–Schmidt 距離は、状態のノルム距離で抑えられます。
- 2 つの状態 $\varphi,\psi$ の **忠実度** $F(\varphi,\psi)$ を、共通の表現の中の代表ベクトルの重なり $|\langle\xi,\eta\rangle|$ の上限で定めます。これは表現の可換子の単位球の上の上限として計算でき、密度行列では **Uhlmann の公式** $F=\|\rho^{1/2}\sigma^{1/2}\|_1$ になります。$d_B=(2-2F)^{1/2}$ が **Bures 距離**です。
- 忠実度は部分環への制限で増え、部分環の増大列について単調に減少して全体の忠実度に収束します。[互いに素](/mathematics/operator-algebras/quasi-equivalence#def-quasi-equivalence)な状態の忠実度は $0$ です。
- これらから **Bures の定理**を証明します。無限テンソル積の積状態 $\bigotimes\varphi_j$ と $\bigotimes\psi_j$ は、$\sum_j(1-F(\varphi_j,\psi_j))<\infty$ なら[準同値](/mathematics/operator-algebras/quasi-equivalence#def-quasi-equivalence)、そうでなければ互いに素です。Kakutani の定理の非可換版です。
- 応用として、1 粒子作用素が同時対角化できる場合に、ゲージ不変な CAR 準自由状態の **Powers–Størmer の判定**と CCR 準自由状態の **Araki–Yamagami の判定**（平方根の差が Hilbert–Schmidt）を完全に証明します。一般の場合の判定と、Gauss 測度の **Feldman–Hájek の二分法**はその延長として述べます。

<Aside type="tip" title="この記事で使う事前知識">

- **準同値**: 2 つの表現 $\pi_1,\pi_2$ について、$\pi_1(a)\mapsto\pi_2(a)$ を保つ生成 von Neumann 環の $*$-同型があること（「同じ世界」にあること）。→ [表現の準同値](/mathematics/operator-algebras/quasi-equivalence#def-quasi-equivalence)
- **互いに素**: 2 つの表現が共通の部分表現を一切持たないこと。→ [互いに素](/mathematics/operator-algebras/quasi-equivalence#def-quasi-equivalence)
- **GNS 三つ組**: 状態から、Hilbert 空間・表現・巡回ベクトルの組を作る構成。→ [GNS 構成](/mathematics/operator-algebras/states-and-gns#thm-gns)
- **π-正規状態**: 表現 $\pi$ について、密度作用素 $\rho$（トレースクラスの正の作用素でトレース 1）を用いて $\mathrm{tr}(\rho\,\pi(\cdot))$ の形に書ける状態。→ [π-正規状態](/mathematics/operator-algebras/quasi-equivalence#def-normal-folium)
- **Hellinger 親和度**: 2 つの確率分布の、確率の平方根どうしの積の和。分布の重なりを測る。→ [Hellinger 親和度](/mathematics/operator-algebras/quasi-equivalence#def-hellinger-affinity)

</Aside>

## 1. 動機

[表現の準同値と準自由状態の判定](/mathematics/operator-algebras/quasi-equivalence) では、準同値を「正規状態の集合（フォリウム）が一致すること」として特徴づけ、可換な場合には Kakutani の定理で、純粋な積状態では内積の無限積で判定しました。その最後に、準自由状態の準同値が「2 点関数の平方根の差が Hilbert–Schmidt」という条件で決まることを、証明の筋道だけ述べました（<Ref to="mathematics/operator-algebras/quasi-equivalence#thm-ccr-gauge-invariant-criterion" />、<Ref to="mathematics/operator-algebras/quasi-equivalence#thm-powers-stormer" />）。

純粋状態の場合の判定 $\sum_j(1-|\langle\xi_j,\eta_j\rangle|)<\infty$ が示すとおり、鍵は「2 つの状態がどれくらい重なっているか」を測る量です。純粋状態ならベクトルの内積の絶対値がそれで、混合状態に拡張したものが Uhlmann の忠実度です。可換な場合には [Hellinger 親和度](/mathematics/operator-algebras/quasi-equivalence#def-hellinger-affinity)に一致します。本章では、まず忠実度の一般論を整え、それが部分環の増大列について連続であることを示します。すると、無限自由度の状態の重なりを有限自由度の重なりの極限として計算でき、Kakutani の定理の証明とまったく同じ形で、混合した積状態の準同値が判定できます（Bures の定理）。

準自由状態は、1 粒子作用素を対角化すれば各モードの熱平衡状態の積になります。そこで 1 粒子作用素が同時対角化できる場合には、Bures の定理がそのまま Hilbert–Schmidt 条件を与えます。平方根が現れるのは、忠実度が密度行列の平方根の積で書けるからで、Powers–Størmer 不等式はその平方根と元の状態の距離を結びつけます。

（この章の続きは購入者向けです。）
