# 表現の準同値と準自由状態の判定：正規状態・Kakutani の定理・Hilbert–Schmidt 条件

> 表現と状態の準同値を正規状態の集合で特徴づけ、Kakutani の無限直積測度の定理、無限テンソル積状態の判定、準自由状態の Hilbert–Schmidt 条件（Shale・Powers–Størmer・Araki–Yamagami）を述べ、van Hove 模型の赤外問題を読み直す。
> https://rikai.mugen-giken.com/mathematics/operator-algebras/quasi-equivalence

## 0. この記事の要点

無限個の粒子やスピンを扱う理論では、同じ系を記述する数学的な枠組み（表現）が何通りもあります。その中で、見た目は違っても物理としては同じことを言っているものと、本当に別の世界を記述しているものをどう区別するか、というのがこの記事の問いです。有限個の硬貨なら表の確率が少し違っても区別がつきませんが、無限回投げ続けると区別がつきます。その区別の仕方を、硬貨の場合から出発して、スピンの鎖やボソンの熱平衡状態へと広げていきます。読み終えると、2 つの状態が「同じ相」か「別の相」かを、具体的な数列や作用素の和・ノルムの有限性で判定できるようになります。

- $C^*$ 環 $\mathfrak{A}$ の 2 つの[表現](/mathematics/operator-algebras/states-and-gns#def-representation)が**準同値**であるとは、生成する [von Neumann 環](/mathematics/operator-algebras/von-neumann-algebras#def-von-neumann-algebra)の間に生成元を生成元に移す $*$-同型があることです。これは「密度行列で書ける状態（[正規状態](/mathematics/operator-algebras/von-neumann-algebras#def-normal-state)）の集合が一致する」ことと同値で、物理的には「同じ物理を記述する」ことの正確な定式化です。
- 因子表現（とくに既約表現）どうしは、準同値か互いに素かのどちらかです。既約表現では準同値はユニタリ同値と一致します。
- 可換な場合、確率測度の状態の準同値は測度の相互絶対連続性です。**Kakutani の定理**は、無限直積測度が「同値か互いに特異か」のどちらかで、Hellinger 親和度の無限積が正かどうかで決まることを述べます。非可換版として、純粋な積状態 $\bigotimes\xi_j$ と $\bigotimes\eta_j$ がユニタリ同値であることは $\sum_j(1-|\langle\xi_j,\eta_j\rangle|)<\infty$ と同値で、そうでなければ互いに素です。
- 準自由状態の準同値は「共分散の差が Hilbert–Schmidt」という形の条件で判定されます。純粋なボソン準自由状態では Shale の定理、ゲージ不変な CAR 準自由状態では Powers–Størmer の定理、一般の CCR 準自由状態では Araki–Yamagami の定理がこれを与えます。
- van Hove 模型の赤外発散で現れた「切断を外した基底状態」は、Fock 状態と互いに素な状態です。切断つきの基底状態はどれも Fock 表現の正規状態なのに、極限は正規状態の集合の外に出ます。正規状態の集合は弱 $*$ 位相で閉じていないからです。

<Aside type="tip" title="この記事で使う事前知識">

- **表現**: $C^*$ 環の元を Hilbert 空間上の作用素に写す、積と共役を保つ対応のこと。→ [表現](/mathematics/operator-algebras/states-and-gns#def-representation)
- **von Neumann 環**: 作用素の集まりのうち、二重可換子と一致する（弱位相で閉じた）もの。→ [von Neumann 環](/mathematics/operator-algebras/von-neumann-algebras#def-von-neumann-algebra)
- **正規状態**: von Neumann 環上の状態のうち、密度行列を使って期待値が $\mathrm{tr}(\rho\,\cdot)$ と書けるもの。→ [正規状態](/mathematics/operator-algebras/von-neumann-algebras#def-normal-state)
- **中心台**: 射影を含む最小の中心射影のこと。第 3 節の証明の主役です。→ [中心台](/mathematics/operator-algebras/factor-types#def-central-support)
- **CCR・CAR 代数と準自由状態**: ボソン・フェルミオンの交換関係から作る $C^*$ 環と、その上の Gauss 型の状態。第 6 節で使います。→ [CCR・CAR 代数と準自由状態](/mathematics/operator-algebras/ccr-car-algebras)

</Aside>

## 1. 動機

フォック空間テーマの [CCR の表現](/physics/fock-space/ccr-representations) と [Bogoliubov 変換と Shale の定理](/physics/fock-space/bogoliubov-transformations) では、Weyl 関係の既約表現が無限自由度ではたくさんあり、ユニタリ同値かどうかが Hilbert–Schmidt 条件で判定されることを見ました。しかし物理で現れる表現の多くは既約ではありません。有限温度の熱平衡状態の GNS 表現は既約でなく（<Ref to="physics/fock-space/ccr-representations#ex-thermal-representation" />）、既約でない表現どうしはユニタリ同値でなくても「同じ物理」を表すことがあります。例えば、有限次元の既約表現 $\pi$ と、それを 2 つ並べた $\pi\oplus\pi$ は（次元が違うので）ユニタリ同値ではありませんが、どちらの表現でも同じ観測量が同じ密度行列の期待値として現れます。

物理の言葉で言えば、ある表現を選ぶことは「その表現の Hilbert 空間の密度行列で書ける状態」全体を、局所的な操作で互いに移り合える状態の集まりとして選ぶことです。この集まりは**フォリウム**と呼ばれ、熱力学的な相（温度、秩序変数の値、赤外の着衣の仕方）に対応します。2 つの表現が同じフォリウムを持つという関係が準同値で、これは von Neumann 環の言葉では生成元を保つ $*$-同型の存在として書けます（§3）。

準同値の判定は、無限自由度系で「2 つの状態が局所的には似ていても大域的には異なる」ことを測る道具です。原型は確率論にあります。2 つの硬貨の無限回の独立試行を表す確率測度は、表の確率が少しでも違えば互いに特異になります（大数の法則）。Kakutani はこれを一般化して、無限直積測度は同値か互いに特異かの二択であることを示しました（§4）。量子版がスピン鎖の積状態の判定（§5）で、準自由状態の Hilbert–Schmidt 条件（§6）はこれを Gauss 型の状態に移したものです。最後に、van Hove 模型の赤外問題をこの枠組みで読み直します（§7）。

（この章の続きは購入者向けです。）
