# K-理論入門：射影とユニタリで測る非可換空間の位相

> コンパクト空間上のベクトル束の分類から出発し、C*-代数の K₀ 群と K₁ 群を射影のマレー–フォン・ノイマン同値とユニタリ群の連結成分として定義する。六項完全系列とボット周期性を述べ、トープリッツ拡大の指数計算まで実行する。
> https://rikai.mugen-giken.com/mathematics/operator-algebras/k-theory

## 0. この記事の要点

穴の数や向きといった空間の形の特徴を調べるとき、ふつうは空間の点や図形を使います。ところが掛け算の順序を入れ替えられない代数（非可換な代数）には、そもそも点がありません。この記事では、点を使わずに、代数の中の「射影」と「ユニタリ」という元を数えることで、形の特徴に当たる整数や群を取り出す方法（K-理論）を紹介します。読み終えると、円周や行列環の K-群を計算し、トープリッツ拡大でフレドホルム指数が現れる理由まで追えるようになります。

- [コンパクト](/mathematics/topology/compactness#def-compact)ハウスドルフ空間 $X$ 上の複素ベクトル束は直和について可換半群をなします。これをグロタンディーク群化（整数を自然数から作るときのように、引き算ができる群にすること）したものが位相的 K-理論 $K^0(X)$ です。
- セール–スワン定理（ベクトル束を代数の言葉に翻訳する定理）により、$X$ 上のベクトル束は $C(X)$ 上の[有限生成](/mathematics/commutative-algebra/modules-exact-sequences-nakayama#def-free-finite)[射影加群](/mathematics/commutative-algebra/tensor-flatness-projective-injective#def-projective)と同じものであり、後者は行列環 $M_n(C(X))$ の射影と同じものです。射影という概念は非可換代数でもそのまま意味を持ちます。ここが非可換化の通り道です。
- 一般の $C^*$-代数 $A$ に対し、$K_0(A)$ は行列環の射影をマレー–フォン・ノイマン同値で割ってグロタンディーク群化したもの、$K_1(A)$ は[ユニタリ](/mathematics/functional-analysis/bounded-operators#def-operator-classes)群 $U_\infty(A)$ の[連結成分](/mathematics/topology/connectedness#def-component)の集合として定義されます。どちらも $*$-準同型に関して関手的で、ホモトピー不変（連続的に変形しても値が変わらない）かつ安定です。
- ボット周期性 $K_0(A) \cong K_1(SA)$ が成り立つため、$K_n$ は 2 周期になり、短完全列に対して六項完全系列という強力な計算道具が得られます。境界写像の一方（指数写像）はフレドホルム指数（作用素の核の次元と余核の次元の差）そのものです。
- $K$-群は代数の同型不変量です。単位元の類 $[1]_0$ や順序、トレースとの組み合わせで、行列環・キュンツ代数・非可換トーラスといった代数を区別できます。

<Aside type="tip" title="この記事で使う事前知識">

- **C\*-代数**: ノルムが完備で $\|a^{*}a\| = \|a\|^2$ を満たす、対合付きの複素代数。→ [C*-代数](/mathematics/operator-algebras/c-star-algebras#def-cstar)
- **コンパクト空間**: どんな開被覆からも有限個を選んで覆える、という性質を持つ空間。→ [コンパクト空間](/mathematics/topology/compactness#def-compact)
- **ユニタリ**: $u^{*}u = uu^{*} = 1$ を満たす元。内積を保つ可逆な変換にあたる。→ [ユニタリ](/mathematics/functional-analysis/bounded-operators#def-operator-classes)
- **連結成分**: 空間を、それ以上分けられない連結なかたまりに分けたときの一つひとつ。→ [連結成分](/mathematics/topology/connectedness#def-component)
- **連続関数カルキュラス**: 正規元 $a$ と連続関数 $f$ から元 $f(a)$ を作る操作。→ [連続関数カルキュラス](/mathematics/operator-algebras/c-star-algebras#cor-functional-calculus)
- **コンパクト作用素**: ヒルベルト空間の作用素のうち、有界集合を相対コンパクトな集合に写すもの。→ [コンパクト作用素](/mathematics/functional-analysis/compact-operators#def-compact-operator)

</Aside>

## 1. 動機：非可換空間に位相不変量を与える

[C*-代数の基礎](/mathematics/operator-algebras/c-star-algebras)と[C*-代数の基礎](/mathematics/operator-algebras/c-star-algebras)で見たとおり、<Ref to="mathematics/operator-algebras/c-star-algebras#rem-gns" text="ゲルファント–ナイマルクの定理" />は、可換な $C^*$-代数の圏と[局所コンパクト](/mathematics/topology/local-compactness#def-lc)ハウスドルフ空間の圏が（射の向きを逆にして）同値であることを主張します。この辞書に従えば「非可換空間」とは非可換な $C^*$-代数のことだ、と宣言できます。しかし宣言しただけでは幾何学になりません。空間について私たちが知りたいのは、点の個数ではなく、穴の個数や向き付け可能性といった位相不変量だからです。

ところが、ホモロジーやコホモロジーを非可換代数へ移そうとすると、たちまち行き詰まります。特異ホモロジーは「$X$ への単体の連続写像」を数えますが、非可換代数には点がなく、したがって単体もありません。開被覆やチェックの神経も同様です。空間の内部構造に依存する構成は、ことごとく翻訳できないのです。

生き残るのは、はじめから代数の言葉だけで書かれた不変量です。K-理論はまさにそれにあたります。出発点はグロタンディークが 1957 年にリーマン–ロッホの定理を代数幾何学的に一般化したときの構成で、彼は連接層の同型類のなす半群を群に完備化し、その群 $K$ の上で指数の等式を定式化しました。アティヤとヒルツェブルフはこれを位相空間上のベクトル束に対して行い、位相的 K-理論 $K^0(X)$ を作りました。そして 1963 年、アティヤ–シンガーの指数定理は、楕円型作用素の解析的指数と位相的指数が K-理論の中で一致することを主張します。K-理論は、指数が住むべき場所として発見されたのです。

K-理論が非可換化を生き延びるのは、次の連鎖のおかげです。

$$
\text{ベクトル束} \;\longleftrightarrow\; \text{有限生成射影加群} \;\longleftrightarrow\; \text{行列環の射影 } p = p^{*} = p^{2}.
$$

最後の項には可換性がどこにも要りません。$A$ が非可換でも $M_n(A)$ の射影は定義でき、それらを適切な[同値関係](/mathematics/foundations/equivalence-relations#def-equivalence)で割れば群が得られます。同じことがユニタリ元 $u^{*}u = uu^{*} = 1$ についても言え、そちらからは $K_1$ が生まれます。

素朴な問いの形で言い換えると、こうです。**代数 $A$ は本質的に異なる射影をいくつ持っているか。異なるユニタリ元をいくつ持っているか。** この 2 つの問いへの答えが $K_0(A)$ と $K_1(A)$ です。以下ではまず可換な場合（ベクトル束）で答えの形を確かめ、それを非可換な場合へ持ち上げます。

（この章の続きは購入者向けです。）
