# フェルマーの最終定理：フライ曲線とモジュラー性が閉じた 357 年

> n ≥ 3 で x^n + y^n = z^n が非自明解を持たないこと。n = 4 の無限降下法から、クンマーの円分体、フライ曲線、リベットのレベル下げ、ワイルズの半安定モジュラー性定理までを、計算を追いながら一続きの論証として読む。
> https://rikai.mugen-giken.com/mathematics/number-theory/fermats-last-theorem

## 0. この記事の要点

- $n \ge 3$ に対する $x^n + y^n = z^n$ の非自明整数解の非存在は、$n = 4$ の場合と $n = p$（奇素数）の場合に帰着します。$n = 4$ はフェルマー自身が無限降下法で証明しました。
- 19 世紀の主戦場は円分体 $\mathbb{Q}(\zeta_p)$ の整数環 $\mathbb{Z}[\zeta_p]$ でした。ここで素因数分解の一意性が壊れることが発覚し、クンマーは「イデアル数」を導入して**正則素数**に対する証明を与えました。しかし $37, 59, 67$ のような非正則素数は取りこぼされます。
- 決定的な転回は 1985 年のフライのアイデアです。解 $a^p + b^p = c^p$ があれば、楕円曲線 $y^2 = x(x - a^p)(x + b^p)$ が作れます。この曲線の判別式は $p$ 乗数だけで書けるため、極端に「素因数の重複度が $p$ で割れる」性質を持ちます。
- リベットのレベル下げ定理は、この曲線に付随する mod $p$ ガロア表現がレベル $2$ の重さ $2$ の新形式から来ることを強制します。ところが $S_2(\Gamma_0(2)) = 0$ です。つまりフライ曲線は存在できません。
- 残る穴は「フライ曲線がモジュラーであること」でした。ワイルズは半安定な楕円曲線がすべてモジュラーであることを証明し（テイラーとの共同論文で最後の障害を除去）、1995 年に論証が閉じました。

## 1. 動機：余白の一行から 357 年

1637 年ごろ、ピエール・ド・フェルマーはディオファントス『算術』のバシェ版の余白に、次の書き込みを残しました。立方数を二つの立方数の和に、四乗数を二つの四乗数の和に、一般に二乗より高いべきを同じべきの二つの和に分けることはできない。そして「私はこの命題の真に驚くべき証明を見つけたが、余白が狭すぎて書けない」と続けます。この書き込みは、フェルマーの死後 1670 年に息子サミュエルが出版した『算術』の注釈付き版で世に出ました。

主張自体はきわめて単純です。

$$
x^2 + y^2 = z^2
$$

には $3^2 + 4^2 = 5^2$ をはじめ無限個の整数解があります。ところが指数を $3$ に上げた途端、解が一つもなくなる。指数 $2$ と指数 $3$ の間で何が変わるのか。この問いに答えるのに 357 年かかりました。

途中経過だけ並べても、数論の主要な道具がほぼすべて動員されたことが分かります。オイラーの $n = 3$（1770 年、$\mathbb{Z}[\sqrt{-3}]$ の扱いに欠陥があり後に補完）、ソフィ・ジェルマンの第一種の場合の定理、ディリクレとルジャンドルの $n = 5$（1825 年）、ラメの $n = 7$（1839 年）、クンマーの正則素数（1847 年）。そして 20 世紀後半、問題は数論の別の大陸——楕円曲線とモジュラー形式——へ接続され、そこで解決されます。

この章では、その接続をできるだけ具体的に追います。特に、フライ曲線の判別式の計算と、最後に矛盾を生む $S_2(\Gamma_0(2)) = 0$ という「次元 $0$ の空間」の計算は、実際に手を動かして確かめられる部分なので、省略せずに書きます。楕円曲線とモジュラー形式の基本語彙は [楕円曲線とモジュラー形式](/mathematics/number-theory/elliptic-curves-and-modular-forms) を前提にします（特に <Ref to="mathematics/number-theory/elliptic-curves-and-modular-forms#def-elliptic-curve" text="楕円曲線の定義" />）。

<div data-gated data-pagefind-ignore>

## 2. 準備：問題を素数指数に落とし、$n = 4$ を片づける

<Definition id="def-nontrivial-solution" title="非自明解">
整数 $n \ge 3$ と整数の組 $(x, y, z)$ について、$x^n + y^n = z^n$ かつ $xyz \ne 0$ が成り立つとき、$(x, y, z)$ を指数 $n$ の**非自明解**と呼びます。フェルマーの最終定理とは、すべての $n \ge 3$ について非自明解が存在しない、という主張です。
</Definition>

$xyz \ne 0$ という条件が本質的です。これを外すと $1^n + 0^n = 1^n$ のような自明な解がいくらでも作れてしまいます。

<Proposition id="prop-reduction" title="指数の還元">
$n = 4$ と、すべての奇素数 $p$ について指数 $n = 4$、$n = p$ の非自明解が存在しないならば、すべての $n \ge 3$ について指数 $n$ の非自明解は存在しません。
</Proposition>

<Proof of="prop-reduction">
$n \ge 3$ を任意に取ります。$n$ の素因数分解を考えると、次の二つの場合に分かれます。

第一に、$n$ が奇素数 $p$ を素因数に持つ場合。$n = pm$（$m \ge 1$）と書けます。もし $x^n + y^n = z^n$ が $xyz \ne 0$ で成り立つなら、$X = x^m$, $Y = y^m$, $Z = z^m$ とおくと $X^p + Y^p = Z^p$ かつ $XYZ = (xyz)^m \ne 0$ となり、指数 $p$ の非自明解が得られます。仮定に反します。

第二に、$n$ が奇素数を素因数に持たない場合。このとき $n$ は $2$ のべきで、$n \ge 3$ より $n \ge 4$、すなわち $4 \mid n$ です。$n = 4m$ とおき、$X = x^m$, $Y = y^m$, $Z = z^m$ とすれば $X^4 + Y^4 = Z^4$ かつ $XYZ \ne 0$ となり、やはり仮定に反します。

以上でどちらの場合も矛盾するので、非自明解は存在しません。
</Proof>

したがって、あとは $n = 4$ と奇素数 $p$ を潰せばよい。$n = 4$ はフェルマー自身が証明しました。これはフェルマーが証明を書き残した唯一の命題でもあります。

<Theorem id="thm-fermat-n4" title="フェルマー（$n = 4$）">
$x^4 + y^4 = z^2$ を満たす正の整数の組 $(x, y, z)$ は存在しません。したがって $x^4 + y^4 = z^4$ の非自明整数解も存在しません。
</Theorem>

<Proof of="thm-fermat-n4">
無限降下法を使います。証明の構造については [証明の技術](/mathematics/foundations/proof-techniques) も参照してください。

解が存在すると仮定し、そのうち $z$ が最小のものを $(x, y, z)$ とします（$z$ は正の整数の集合を動くので、<Ref to="mathematics/foundations/proof-techniques#ax-well-ordering" text="整列性" /> により最小元が存在します）。

**第 1 段：互いに素にしてよい。** $d = \gcd(x, y)$ とすると $d^4 \mid x^4 + y^4 = z^2$ です。よって $d^2 \mid z$ であり、$(x/d, y/d, z/d^2)$ も解になります。$z$ の最小性から $d = 1$、すなわち $\gcd(x, y) = 1$ です。

**第 2 段：ピタゴラス数として分解する。** $(x^2)^2 + (y^2)^2 = z^2$ であり、$\gcd(x^2, y^2) = 1$ なのでこれは原始ピタゴラス数です。$x, y$ がともに奇数だと $x^4 + y^4 \equiv 1 + 1 = 2 \pmod 4$ となりますが、平方数は $4$ を法として $0$ か $1$ にしかならないので不可能です。よって一方は偶数で、$y$ を偶数としてよい。原始ピタゴラス数の標準形から、互いに素で偶奇の異なる $m > n > 0$ が存在して
$$
x^2 = m^2 - n^2, \qquad y^2 = 2mn, \qquad z = m^2 + n^2
$$
と書けます。

**第 3 段：もう一度分解する。** 第 2 段の第一式は $x^2 + n^2 = m^2$ です。$\gcd(m, n) = 1$ よりこれも原始ピタゴラス数で、$x$ は奇数なので $n$ が偶数、$m$ が奇数です。再び標準形により、互いに素で偶奇の異なる $s > t > 0$ が存在して
$$
x = s^2 - t^2, \qquad n = 2st, \qquad m = s^2 + t^2 .
$$

**第 4 段：三つの平方数を取り出す。** これを $y^2 = 2mn$ に代入すると $y^2 = 2m \cdot 2st = 4mst$、すなわち
$$
\left( \frac{y}{2} \right)^2 = m\,s\,t .
$$
ここで $m, s, t$ は対ごとに互いに素です。実際 $\gcd(s, t) = 1$ であり、$q$ を $m$ と $s$ の共通素因数とすると $q \mid m - s^2 = t^2$ から $q \mid t$ となって $\gcd(s,t)=1$ に反します。$m$ と $t$ についても同様です。対ごとに互いに素な正整数の積が平方数なら、各因子が平方数です。よって
$$
m = Z^2, \qquad s = X^2, \qquad t = Y^2
$$
なる正整数 $X, Y, Z$ が取れます（$n = 2st > 0$ より $s, t \ge 1$）。

**第 5 段：降下。** $m = s^2 + t^2$ に代入すると
$$
X^4 + Y^4 = s^2 + t^2 = m = Z^2
$$
となり、$(X, Y, Z)$ も同じ方程式の正整数解です。ところが
$$
Z \le Z^2 = m \le m^2 < m^2 + n^2 = z
$$
なので $Z < z$ となり、$z$ の最小性に矛盾します。

したがって解は存在しません。後半の主張は、$x^4 + y^4 = z^4$ の非自明解 $(x,y,z)$ があれば $|x|, |y|, z^2$ が前半の方程式の正整数解を与えることから従います。
</Proof>

<Corollary id="cor-remaining-case">
フェルマーの最終定理は、$p \ge 5$ の各素数について $a^p + b^p = c^p$、$abc \ne 0$ の解が存在しないことを示せば完全に証明されます。
</Corollary>

<Proof of="cor-remaining-case">
<Ref to="prop-reduction" /> により $n = 4$ と奇素数 $p$ に帰着します。$n = 4$ は <Ref to="thm-fermat-n4" /> で片づいています。奇素数のうち $p = 3$ はオイラーが証明しました（後に $\mathbb{Z}[\omega]$、$\omega = e^{2\pi i/3}$ を使って厳密化されました）。残るのは $p \ge 5$ です。
</Proof>

この「$p \ge 5$」という条件は、第 6 節で本質的に効いてきます。

## 3. 円分体での挫折：一意分解の破れとクンマー

$p$ を奇素数、$\zeta = e^{2\pi i / p}$ とします。恒等式
$$
\prod_{i=0}^{p-1} (x + \zeta^{i} y) = x^p + y^p
$$
が成り立ちます。実際 $\prod_{i=0}^{p-1}(T - \zeta^i) = T^p - 1$ の $T$ を $-T$ に置き換えると $\prod (-T - \zeta^i) = (-T)^p - 1 = -T^p - 1$ であり、左辺の各因子から $-1$ を括り出すと $(-1)^p \prod(T + \zeta^i) = -\prod(T+\zeta^i)$ なので $\prod(T + \zeta^i) = T^p + 1$、これに $T = x/y$ を代入して $y^p$ を掛ければ得られます。

したがって $a^p + b^p = c^p$ は、円分整数環 $\mathbb{Z}[\zeta]$ の中で
$$
\prod_{i=0}^{p-1} (a + \zeta^{i} b) = c^p
$$
と読めます。左辺の因子たちが「ほぼ互いに素」であることを示せれば、各因子が $p$ 乗数（に単数を掛けたもの）だと結論でき、そこから降下が回りそうに見えます。

1847 年 3 月、ガブリエル・ラメはパリ科学アカデミーでこの筋書きによる完全証明を発表しました。ジョゼフ・リウヴィルはただちに、$\mathbb{Z}[\zeta]$ での素因数分解の一意性が使われているが、それは正当化されていないと指摘します。実際その一意性は一般には成立しません。エルンスト・クンマーは、$p = 23$ で $\mathbb{Z}[\zeta_{23}]$ が一意分解環でないことを既に見ていました。

$\mathbb{Z}$ では <Ref to="mathematics/number-theory/primes-and-prime-number-theorem#thm-fta" text="算術の基本定理" /> が一意分解を保証しますが、これは環一般に期待できる性質ではありません。壊れる感触は、もっと小さい環で確かめられます。

<Example id="ex-z-sqrt-5" title="$\mathbb{Z}[\sqrt{-5}]$ で一意分解が壊れる">
$R = \mathbb{Z}[\sqrt{-5}] = \{a + b\sqrt{-5} : a, b \in \mathbb{Z}\}$ にノルム $N(a + b\sqrt{-5}) = a^2 + 5b^2$ を入れます。$N$ は乗法的です。$R$ の中で
$$
6 = 2 \cdot 3 = (1 + \sqrt{-5})(1 - \sqrt{-5})
$$
という二通りの分解があります。これが本当に「別の分解」であることを確かめます。

まず単数です。$\alpha$ が単数なら $N(\alpha) N(\alpha^{-1}) = 1$ なので $N(\alpha) = 1$、つまり $a^2 + 5b^2 = 1$ となり $b = 0$, $a = \pm 1$。単数は $\pm 1$ だけです。

$2$ は既約です。$2 = \alpha\beta$ で両方が非単数なら $N(\alpha)N(\beta) = N(2) = 4$ かつ $N(\alpha), N(\beta) > 1$ なので $N(\alpha) = 2$、つまり $a^2 + 5b^2 = 2$。$b = 0$ なら $a^2 = 2$ で不可、$|b| \ge 1$ なら左辺は $5$ 以上。解なしなので $2$ は既約です。

$3$ も同様です。$N(\alpha) = 3$ は $a^2 + 5b^2 = 3$ となり、$b = 0$ なら $a^2 = 3$ で不可、$|b| \ge 1$ なら $5$ 以上。既約です。

$1 \pm \sqrt{-5}$ も既約です。$N(1 \pm \sqrt{-5}) = 1 + 5 = 6$ なので、真の分解があればノルム $2$ か $3$ の元が現れますが、上で見たとおり存在しません。

最後に $2$ と $1 \pm \sqrt{-5}$ が同伴でないことを見ます。同伴なら単数 $\pm 1$ 倍で移り合うはずですが $\pm 2 \ne 1 \pm \sqrt{-5}$ です。ノルムを見ても $4 \ne 6$ です。よって上の二つの分解は既約元の並べ替えと単数倍では移り合わず、一意分解は成立しません。
</Example>

クンマーの解決策は、壊れた一意性を「理想的な数（イデアル数）」を付け加えて回復させることでした。現代の言葉ではイデアルの一意分解であり、これは [イデアルと剰余環](/mathematics/algebra/ideals-and-quotient-rings) で扱う概念（<Ref to="mathematics/algebra/ideals-and-quotient-rings#def-ideal" text="イデアルの定義" />）の源流です。破れの度合いは類数 $h_p$（$\mathbb{Q}(\zeta_p)$ の類数）で測られます。

奇素数 $p$ が円分体 $\mathbb{Q}(\zeta_p)$ の類数 $h_p$ を割らないとき、$p$ を**正則素数**と呼び、割るときは**非正則素数**と呼びます。正則であることは「一意分解の破れが $p$ 乗の議論を邪魔しない程度に小さい」という条件だと思ってください。

<Theorem id="thm-kummer" title="クンマー（1847）">
$p$ を正則な奇素数（すなわち $p \nmid h_p$ なる奇素数）とします。このとき $x^p + y^p = z^p$ を満たし $xyz \ne 0$ となる整数 $x, y, z$ は存在しません。
</Theorem>

<Remark id="rem-kummer-proof">
証明は円分体の類体論的な議論（クンマーの補題、ベルヌーイ数による正則性の判定）を要し、この記事の範囲を超えます。Washington, *Introduction to Cyclotomic Fields* の第 9 章に完全な証明があります。クンマー自身は、$p$ が正則であることと $p$ がベルヌーイ数 $B_2, B_4, \ldots, B_{p-3}$ の分子のいずれをも割らないことが同値である、という判定法も与えました。この判定法により $100$ 未満の非正則素数は $37, 59, 67$ の三つだと分かります。

非正則素数が無限に存在することは 1915 年にジェンセンが証明しました。一方、正則素数が無限に存在するかどうかは現在も未解決です。つまりクンマーの路線は、原理的にすべての指数を覆いきれる見込みが立たないまま止まっていたことになります。
</Remark>

20 世紀に入ると、計算機による検証は $4{,}000{,}000$ 以下のすべての指数にまで届きました。しかし「有限個の検証」と「すべての $n$」の間の距離は縮まりません。突破口は、まったく別の場所から来ます。

## 4. フライ曲線：解が存在したら何が起きるか

1985 年、ゲルハルト・フライは次の発想を提出しました。フェルマー方程式の解を「探す」のではなく、解があると仮定してそこから**楕円曲線を作り**、その曲線が持つはずのない性質を持つことを示す。

<Definition id="def-frey-curve" title="フライ曲線">
$p \ge 5$ を素数、$a, b, c$ を $0$ でない整数で対ごとに互いに素、$a^p + b^p = c^p$、$b$ は偶数、$a \equiv 3 \pmod 4$ とします。このとき
$$
E_{a,b} : \quad y^2 = x\,(x - a^p)(x + b^p)
$$
で定まる $\mathbb{Q}$ 上の楕円曲線を**フライ曲線**と呼びます。
</Definition>

正規化の条件（$b$ が偶数、$a \equiv 3 \bmod 4$）は一般性を失わずに課せます。$p$ が奇数なので $a^p + b^p = c^p$ は $a^p + b^p + (-c)^p = 0$ と同値で、三つの $p$ 乗数 $A = a^p$, $B = b^p$, $C = (-c)^p$ は和が $0$ です。$A, B, C$ がすべて奇数なら和は奇数となり $0$ になりません。対ごとに互いに素なので偶数はちょうど一つで、それを $B$ と名づけ直します。残る $A, C$ は奇数です。$A \equiv C \equiv 1 \pmod 4$ なら全体に $-1$ を掛ければ（$p$ が奇数なので $-A$ 等も $p$ 乗数のまま）両方 $3$ になるので、いずれにせよ $A \equiv 3 \pmod 4$ となるよう名づけられます。

<Figure caption="フライ曲線 y² = x(x-A)(x+B) の実点の概形。x 軸との三つの交点 -B, 0, A が 2 等分点に対応し、これらが一致しないことが判別式が 0 でないことにあたります。">
<svg viewBox="0 0 640 300" width="100%" role="img" aria-label="三つの実根を持つ楕円曲線の実点の概形">
  <g stroke="currentColor" fill="none" strokeWidth="1.5">
    <line x1="30" y1="150" x2="620" y2="150" />
    <line x1="260" y1="20" x2="260" y2="285" />
  </g>
  <g stroke="var(--sl-color-accent)" fill="none" strokeWidth="2.5">
    <path d="M 140 150 C 168 88 232 88 260 150 C 232 212 168 212 140 150 Z" />
    <path d="M 460 150 C 492 96 556 58 620 26" />
    <path d="M 460 150 C 492 204 556 242 620 274" />
  </g>
  <g fill="currentColor" fontSize="15">
    <circle cx="140" cy="150" r="4" />
    <circle cx="260" cy="150" r="4" />
    <circle cx="460" cy="150" r="4" />
    <text x="126" y="176">-B</text>
    <text x="252" y="176">0</text>
    <text x="452" y="176">A</text>
    <text x="592" y="140">x</text>
  </g>
</svg>
</Figure>

この曲線がなぜ「おかしい」のか。判別式を計算すれば分かります。

<Proposition id="prop-frey-invariants" title="フライ曲線の不変量">
$A, B$ を整数、$C = A + B$ とし、$E : y^2 = x(x - A)(x + B)$ とします。このとき
$$
c_4 = 16\,(A^2 + AB + B^2), \qquad \Delta = 16\,(ABC)^2 .
$$
特にフライ曲線 $E_{a,b}$ については $\Delta = 16\,(abc)^{2p}$ です。
</Proposition>

<Proof of="prop-frey-invariants">
右辺を展開すると $y^2 = x^3 + (B - A)x^2 - ABx$ なので、ヴァイエルシュトラス係数は
$$
a_1 = 0,\quad a_2 = B - A,\quad a_3 = 0,\quad a_4 = -AB,\quad a_6 = 0 .
$$
標準的な補助量は
$$
\begin{aligned}
b_2 &= a_1^2 + 4a_2 = 4(B - A), \\
b_4 &= 2a_4 + a_1 a_3 = -2AB, \\
b_6 &= a_3^2 + 4a_6 = 0, \\
b_8 &= a_1^2 a_6 + 4 a_2 a_6 - a_1 a_3 a_4 + a_2 a_3^2 - a_4^2 = -A^2B^2 .
\end{aligned}
$$
よって
$$
c_4 = b_2^2 - 24 b_4 = 16(B-A)^2 + 48AB = 16(A^2 + AB + B^2)
$$
であり、
$$
\begin{aligned}
\Delta &= -b_2^2 b_8 - 8 b_4^3 - 27 b_6^2 + 9 b_2 b_4 b_6 \\
&= -16(B-A)^2 \cdot (-A^2B^2) - 8(-2AB)^3 \\
&= 16 A^2 B^2 (B-A)^2 + 64 A^3 B^3 \\
&= 16 A^2 B^2 \left[ (B-A)^2 + 4AB \right] \\
&= 16 A^2 B^2 (A+B)^2 = 16 (ABC)^2 .
\end{aligned}
$$
フライ曲線では $A = a^p$, $B = b^p$, $C = a^p + b^p = c^p$ なので $ABC = (abc)^p$ となり $\Delta = 16(abc)^{2p}$ を得ます。
</Proof>

<Example id="ex-frey-pythagorean" title="ピタゴラス数から作った「フライ曲線」">
$p = 2$ に対応する $3^2 + 4^2 = 5^2$ で試すと、$A = 9$, $B = 16$, $C = 25$ で
$$
E : y^2 = x(x - 9)(x + 16)
$$
です。<Ref to="prop-frey-invariants" /> より
$$
\Delta = 16 (9 \cdot 16 \cdot 25)^2 = 16 \cdot 3600^2 = 16 \cdot 12{,}960{,}000 = 207{,}360{,}000
$$
であり、$(abc)^{2p} = (3 \cdot 4 \cdot 5)^4 = 60^4 = 12{,}960{,}000$ と一致します。この曲線自体は何も病的ではなく、ごく普通のモジュラーな楕円曲線です。矛盾を生むのは指数が $p \ge 5$ のときで、そこでは判別式の各奇素因子の重複度が $2p$ の倍数という異常な整除性を持ちます。「解が存在するなら、判別式が完全な $2p$ 乗に近い曲線ができてしまう」——これがフライの見た違和感です。
</Example>

<Definition id="def-semistable" title="半安定">
$\mathbb{Q}$ 上の楕円曲線 $E$ が**半安定**であるとは、すべての素数 $\ell$ において $E$ が良還元または乗法的還元を持つ（加法的還元を持たない）ことをいいます。半安定なら導手 $N$ は平方因子を持たず、$N = \prod_{\ell \mid \Delta_{\min}} \ell$ と、$\Delta_{\min}$ の素因子の積になります。
</Definition>

<Proposition id="prop-frey-semistable" title="フライ曲線は半安定">
<Ref to="def-frey-curve" /> の正規化の下で、フライ曲線 $E_{a,b}$ は半安定であり、その最小判別式と導手は
$$
\Delta_{\min} = \frac{(abc)^{2p}}{2^{8}}, \qquad N = \prod_{\ell \mid abc} \ell
$$
で与えられます。
</Proposition>

<Remark id="rem-semistable-proof">
証明の要点だけ記します。奇素数 $\ell$ については、$\ell$ が $abc$ を割るとき $\ell$ は $A, B, C$ のちょうど一つだけを割る（対ごとに互いに素だから）ので、$x^3 + (B-A)x^2 - ABx$ は $\mathbb{F}_\ell$ 上で二重根をちょうど一つ持ち、三重根は持ちません。これは乗法的還元です。$\ell \nmid abc$ なら $\ell \nmid \Delta$ で良還元です。

$\ell = 2$ での半安定性に $b$ が偶数、$a \equiv 3 \pmod 4$ という正規化が効きます。$x = 4X$, $y = 8Y + 4X$ という座標変換で $\mathbb{Z}$ 上のヴァイエルシュトラス方程式が得られ、判別式は $u = 2$ に対する $u^{-12}$ 倍、つまり $16(abc)^{2p} / 2^{12} = (abc)^{2p}/2^{8}$ になります。$b$ が偶数で $p \ge 5$ だから $v_2\!\left((abc)^{2p}\right) = 2p\, v_2(b) \ge 10 > 8$ となり、これは整数です。詳細は Silverman, *The Arithmetic of Elliptic Curves*（第 VII 章の還元理論）と Darmon–Diamond–Taylor の解説論文にあります。
</Remark>

ここで最重要の観察をします。$\ell$ を $abc$ の奇素因子とすると
$$
v_\ell(\Delta_{\min}) = 2p \cdot v_\ell(abc) \equiv 0 \pmod p
$$
です。一方 $\ell = 2$ では
$$
v_2(\Delta_{\min}) = 2p \cdot v_2(b) - 8 \equiv -8 \pmod p
$$
で、$p \ge 5$ なので $p \nmid 8$、つまりこれは $p$ で割り切れません。この「奇素数ではすべて $p$ で割れ、$2$ でだけ割れない」という指数の分布が、次節以降で決定的な役割を果たします。

## 5. モジュラー性：楕円曲線をモジュラー形式で書く

<Definition id="def-modular-curve" title="モジュラーな楕円曲線">
$E$ を $\mathbb{Q}$ 上の楕円曲線、$N$ をその導手とします。素数 $\ell \nmid N$ に対し
$$
a_\ell(E) = \ell + 1 - \#E(\mathbb{F}_\ell)
$$
とおきます（<Ref to="mathematics/number-theory/elliptic-curves-and-modular-forms#def-ap" text="トレースの定義" />）。$E$ が**モジュラー**であるとは、重さ $2$、レベル $\Gamma_0(N)$ の正規化された新形式（ヘッケ固有形式。<Ref to="mathematics/number-theory/elliptic-curves-and-modular-forms#def-gamma0" text="新形式の定義" />）$f = \sum_{n \ge 1} a_n q^n$ が存在して、すべての素数 $\ell \nmid N$ について $a_\ell = a_\ell(E)$ が成り立つことをいいます。
</Definition>

これは「$E$ という幾何的対象の点の個数の列」と「$f$ という保型形式のフーリエ係数の列」が完全に一致する、という主張です。まったく別の世界にある二つの数列が同じものだ、と言っている点に驚きがあります。

<Example id="ex-curve-11a" title="導手 11 の曲線とその新形式">
$E : y^2 + y = x^3 - x^2$ は導手 $11$ の楕円曲線です。$\mathbb{F}_2$ 上で点を数えます。$x = 0$ のとき $y^2 + y = 0$ より $y = 0, 1$ の 2 点。$x = 1$ のとき $y^2 + y = 1 - 1 = 0$ より $y = 0, 1$ の 2 点。無限遠点を加えて $\#E(\mathbb{F}_2) = 5$、よって $a_2(E) = 2 + 1 - 5 = -2$ です。

$\mathbb{F}_3$ 上では、$u = 2y + 1$ と置くと $u^2 = 4(x^3 - x^2) + 1 = x^3 - x^2 + 1$（$4 \equiv 1 \bmod 3$）と平方完成できます。$x = 0$ で $u^2 = 1$ より 2 点、$x = 1$ で $u^2 = 1$ より 2 点、$x = 2$ で $u^2 = 8 - 4 + 1 = 5 \equiv 2$ ですが $\bmod\ 3$ の平方剰余は $0, 1$ のみなので 0 点。無限遠点を加えて $\#E(\mathbb{F}_3) = 5$、$a_3(E) = 3 + 1 - 5 = -1$ です。

一方、レベル $11$ 重さ $2$ の新形式は
$$
f(q) = q \prod_{n \ge 1} (1 - q^n)^2 (1 - q^{11n})^2 = q - 2q^2 - q^3 + 2q^4 + q^5 + 2q^6 - 2q^7 - \cdots
$$
と明示的に書けます。$a_2(f) = -2$, $a_3(f) = -1$ で、確かに一致しています。この一致がすべての素数で続く、というのがこの曲線のモジュラー性です。
</Example>

<Theorem id="thm-modularity" title="モジュラー性定理（谷山・志村予想）">
$\mathbb{Q}$ 上のすべての楕円曲線はモジュラーである。
</Theorem>

<Remark id="rem-modularity-history">
1955 年の日光の国際会議で谷山豊が提出した問題を、志村五郎が精密化し、1960 年代にヴェイユが導手とレベルの一致を含む形に定式化しました。ワイルズ（1995）が半安定な場合を、ブルイユ・コンラッド・ダイアモンド・テイラー（2001）が一般の場合を証明し、予想は定理になりました。同じ定理の、モジュラー形式の側から見た定式化は <Ref to="mathematics/number-theory/elliptic-curves-and-modular-forms#thm-modularity" /> にあります。
</Remark>

## 6. リベットのレベル下げと矛盾の完成

フライの観察を定理にするには、「フライ曲線がモジュラーだとすると矛盾する」という部分を厳密化する必要があります。それを担うのが mod $p$ ガロア表現です。

<Definition id="def-mod-p-rep" title="mod $p$ ガロア表現">
$E/\mathbb{Q}$ を楕円曲線、$p$ を素数とします。$p$ 等分点のなす群は $E[p] \cong (\mathbb{Z}/p\mathbb{Z})^2$ で、絶対ガロア群 $G_{\mathbb{Q}} = \mathrm{Gal}(\overline{\mathbb{Q}}/\mathbb{Q})$ がこれに作用します。基底を選ぶことで得られる準同型
$$
\bar\rho_{E,p} : G_{\mathbb{Q}} \longrightarrow \mathrm{GL}_2(\mathbb{F}_p)
$$
を $E$ の **mod $p$ ガロア表現**と呼びます。$E$ がモジュラーで対応する新形式が $f$ のとき、$\bar\rho_{E,p}$ は「レベル $N$ の新形式から来る」と言います。
</Definition>

セールは 1987 年、既約な mod $p$ 表現に対して最小のレベル $N(\bar\rho)$ と重さを予言する予想（セール予想）を定式化しました。そのうち「レベルを下げられる」部分がリベットにより証明されます。半安定楕円曲線に対して必要な形だけを述べます。

<Theorem id="thm-ribet" title="リベットのレベル下げ定理（必要な特別な場合）">
$E/\mathbb{Q}$ を半安定な楕円曲線、$N$ をその導手、$\Delta_{\min}$ を最小判別式、$p \ge 5$ を素数とします。$\bar\rho_{E,p}$ が既約であり、かつ $E$ がモジュラーであると仮定します。このとき
$$
N(\bar\rho_{E,p}) \; = \prod_{\substack{\ell \mid N \\ p \,\nmid\, v_\ell(\Delta_{\min})}} \ell
$$
とおくと、重さ $2$、レベル $\Gamma_0\!\left(N(\bar\rho_{E,p})\right)$ の新形式 $g$ が存在して、$\bar\rho_{g,p} \cong \bar\rho_{E,p}$ が成り立ちます。
</Theorem>

<Remark id="rem-ribet-source">
原論文は K. Ribet, "On modular representations of $\mathrm{Gal}(\overline{\mathbb{Q}}/\mathbb{Q})$ arising from modular forms", *Inventiones Mathematicae* 100 (1990) です。証明はモジュラー曲線のヤコビアンと志村曲線の間の合同関係を使うもので、この記事では扱いません。直感的には、$p \mid v_\ell(\Delta_{\min})$ という条件は $\bar\rho$ が $\ell$ で不分岐になることを意味し、不分岐な素数はレベルから落とせる、ということです。
</Remark>

<Theorem id="thm-wiles" title="ワイルズ（1995）">
$\mathbb{Q}$ 上のすべての半安定な楕円曲線はモジュラーである。
</Theorem>

<Remark id="rem-wiles-source">
A. Wiles, "Modular elliptic curves and Fermat's Last Theorem", *Annals of Mathematics* 141 (1995) と、同じ号の R. Taylor and A. Wiles, "Ring-theoretic properties of certain Hecke algebras" によります。証明の骨格は第 7 節に述べます。
</Remark>

矛盾を生む最後の材料は、次元 $0$ の空間です。

<Example id="ex-genus-x0-2" title="$S_2(\Gamma_0(2)) = 0$ の計算">
重さ $2$、レベル $\Gamma_0(N)$ の尖点形式の空間 $S_2(\Gamma_0(N))$ の次元は、モジュラー曲線 $X_0(N)$ の種数 $g$ に等しいことが知られています。種数公式は
$$
g = 1 + \frac{\mu}{12} - \frac{\nu_2}{4} - \frac{\nu_3}{3} - \frac{\nu_\infty}{2}
$$
です。ここで $\mu = [\mathrm{PSL}_2(\mathbb{Z}) : \bar\Gamma_0(N)] = N \prod_{\ell \mid N}(1 + 1/\ell)$、$\nu_2, \nu_3$ は位数 $2, 3$ の楕円点の個数、$\nu_\infty$ は尖点の個数です。

$N = 2$ で計算します。
$$
\mu = 2 \left( 1 + \tfrac{1}{2} \right) = 3 .
$$
$\nu_2 = \prod_{\ell \mid N} \left( 1 + \left( \tfrac{-1}{\ell} \right) \right)$ で、$\ell = 2$ のときこの記号は $0$ と約束されるので $\nu_2 = 1 + 0 = 1$。$\nu_3 = \prod_{\ell \mid N}\left(1 + \left(\tfrac{-3}{\ell}\right)\right)$ で、$\ell = 2$ に対しこの記号も $0$ ではなく、$3 \nmid 2$ かつ $N$ が $9$ で割れないときの規約により $\left(\tfrac{-3}{2}\right) = -1$、よって $\nu_3 = 1 - 1 = 0$。尖点は $0$ と $\infty$ の 2 個なので $\nu_\infty = 2$。代入すると
$$
g = 1 + \frac{3}{12} - \frac{1}{4} - 0 - \frac{2}{2} = 1 + \frac14 - \frac14 - 1 = 0 .
$$
したがって $\dim S_2(\Gamma_0(2)) = 0$、すなわち重さ $2$ レベル $2$ の尖点形式は $0$ しかなく、新形式は一つも存在しません。
</Example>

以上で材料がそろいました。

<Corollary id="cor-flt" title="フェルマーの最終定理">
$n \ge 3$ を整数とすると、$x^n + y^n = z^n$ かつ $xyz \ne 0$ を満たす整数 $x, y, z$ は存在しません。
</Corollary>

<Proof of="cor-flt">
<Ref to="cor-remaining-case" /> により、素数 $p \ge 5$ について $a^p + b^p = c^p$、$abc \ne 0$ の解がないことを示せば十分です。

解が存在したとします。共通因子を割ることで $a, b, c$ は対ごとに互いに素としてよく、<Ref to="def-frey-curve" /> の直後で述べた並べ替えと符号の付け替えにより $b$ は偶数、$a \equiv 3 \pmod 4$ としてよい。フライ曲線
$$
E = E_{a,b} : \quad y^2 = x(x - a^p)(x + b^p)
$$
を考えます。$abc \ne 0$ なので三つの根 $0, a^p, -b^p$ は相異なり、<Ref to="prop-frey-invariants" /> より $\Delta \ne 0$、すなわち $E$ は確かに楕円曲線です。

**第 1 段（半安定性）。** <Ref to="prop-frey-semistable" /> より $E$ は半安定で、$\Delta_{\min} = (abc)^{2p}/2^8$、$N = \prod_{\ell \mid abc} \ell$ です。

**第 2 段（既約性）。** メイザーの有理同種定理により、半安定な $\mathbb{Q}$ 上の楕円曲線と素数 $p \ge 5$ に対し $\bar\rho_{E,p}$ は既約です。$p \ge 5$ という仮定がここで効きます。

**第 3 段（モジュラー性）。** 第 1 段と <Ref to="thm-wiles" /> より $E$ はモジュラーです。つまり $\bar\rho_{E,p}$ はレベル $N$ の重さ $2$ の新形式から来ます。

**第 4 段（レベル下げ）。** 第 1〜3 段の仮定がそろったので <Ref to="thm-ribet" /> を適用できます。第 4 節末尾の計算により、$abc$ の奇素因子 $\ell$ では $v_\ell(\Delta_{\min}) = 2p\,v_\ell(abc)$ が $p$ で割れ、$\ell = 2$ では $v_2(\Delta_{\min}) = 2p\,v_2(b) - 8 \equiv -8 \pmod p$ が $p \ge 5$ より $p$ で割れません。よって
$$
N(\bar\rho_{E,p}) = 2 .
$$
<Ref to="thm-ribet" /> は、重さ $2$、レベル $\Gamma_0(2)$ の新形式 $g$ で $\bar\rho_{g,p} \cong \bar\rho_{E,p}$ となるものの存在を主張します。

**第 5 段（矛盾）。** <Ref to="ex-genus-x0-2" /> により $S_2(\Gamma_0(2)) = 0$ なので、そのような $g$ は存在しません。矛盾です。

したがって $p \ge 5$ に対する解は存在せず、フェルマーの最終定理が従います。
</Proof>

<Figure caption="証明の論理構造。上から下へ矛盾に至ります。">
<Mermaid code={`flowchart TD
  A["a^p + b^p = c^p, abc ≠ 0, p ≥ 5"] --> B["フライ曲線 E: y² = x(x-a^p)(x+b^p)"]
  B --> C["E は半安定、Δmin = (abc)^2p / 2^8"]
  C --> D["ワイルズ: E はモジュラー"]
  C --> E["メイザー: mod p 表現は既約"]
  D --> F["リベット: レベル 2 の重さ 2 の新形式が存在"]
  E --> F
  C --> F
  F --> G["しかし S₂(Γ₀(2)) = 0"]
  G --> H["矛盾。解は存在しない"]`} />
</Figure>

<Aside type="note">
この論証は、フェルマーの最終定理が「単独の孤立した難問」ではなく、楕円曲線の数論の系だったことを示しています。同じ枠組みは他のディオファントス方程式にも適用され、たとえば $x^p + y^p = z^2$ や $x^p + y^p = z^3$ 型の一般化フェルマー方程式にも成果があります。方程式の解の「大きさ」を素因数の重複度で制御するという発想は [ABC 予想](/mathematics/number-theory/abc-conjecture) とも直結していて、実際 ABC 予想からはフェルマーの最終定理が（十分大きい $n$ について直ちに）従います（<Ref to="mathematics/number-theory/abc-conjecture#thm-flt-asymptotic" text="ABC 予想から従う漸近的フェルマー" />）。
</Aside>

## 7. ワイルズの証明の骨格：$R = T$

<Ref to="thm-wiles" /> の証明そのものは 100 ページを超える大論文ですが、戦略は一文で言えます。**ガロア表現の変形環 $R$ とヘッケ環 $T$ が同型であることを示す**、というものです。

**変形環 $R$。** 固定した剰余表現 $\bar\rho : G_{\mathbb{Q}} \to \mathrm{GL}_2(\mathbb{F}_p)$ に対し、それを還元して得られる $p$ 進表現 $\rho : G_{\mathbb{Q}} \to \mathrm{GL}_2(\mathcal{O})$ のうち、指定した分岐条件（どの素数でどう分岐してよいか）を満たすものを考えます。メイザーの変形理論により、そのようなもの全体を普遍的に表す環 $R$（普遍変形環）が存在します。$R$ は「$\bar\rho$ を持ち上げるガロア表現の全体」を代数的に束ねた対象です。

**ヘッケ環 $T$。** 一方、対応するレベルと重さのモジュラー形式の空間に作用するヘッケ作用素が生成する環 $T$ を取ります。$T$ は「$\bar\rho$ を持ち上げる**モジュラーな**表現の全体」を束ねます。

すべてのモジュラー表現はガロア表現なので、自然な全射 $R \twoheadrightarrow T$ があります。「すべてのガロア表現がモジュラーである」とは、この射が同型だということです。これが $R = T$ です。

**出発点。** $R = T$ を示すには、そもそも $\bar\rho$ 自身がモジュラーでなければ話が始まりません。ワイルズは $p = 3$ から出発します。$\mathrm{GL}_2(\mathbb{F}_3)$ は $\mathrm{GL}_2(\mathbb{Z}[\sqrt{-2}])$ の部分群として実現でき、可解群としての性質からラングランズ・タネルの定理（可解な場合の基底変換）が適用でき、$\bar\rho_{E,3}$ がモジュラーだと分かります。

**3-5 トリック。** $\bar\rho_{E,3}$ が可約な場合はこの出発点が使えません。ワイルズは補助的な楕円曲線 $E'$ を作り、$\bar\rho_{E',5} \cong \bar\rho_{E,5}$ かつ $\bar\rho_{E',3}$ が既約となるようにします。すると $E'$ のモジュラー性が $3$ 経由で示せ、それが $5$ 経由で $E$ に伝わります。

**最後の障害。** 1993 年 6 月のケンブリッジの講演で発表された証明には、$R = T$ を示すためのオイラー系の議論に欠陥がありました。ワイルズは 1 年以上をかけて、リチャード・テイラーとともに別の道具——ヘッケ環の性質を有限レベルで積み上げる「テイラー・ワイルズ系」（パッチング）——に置き換え、1994 年 9 月に完成させます。二篇の論文は 1995 年の *Annals of Mathematics* 141 巻に並んで掲載されました。

<Remark id="rem-general-modularity">
ワイルズの方法が扱えたのは半安定な場合、すなわち $p = 3$ での分岐が穏やかな場合でした。加法的還元を持つ曲線を含む一般の場合は、コンラッド・ダイアモンド・テイラーらの改良を経て、ブルイユ・コンラッド・ダイアモンド・テイラー（2001）が「野性的な 3 進的計算」により完成させました。これにより <Ref to="thm-modularity" /> が定理になりました。
</Remark>

## 8. 演習

<Exercise id="exr-reduction" difficulty="易">
$n = 100$ の場合、フェルマーの最終定理は $n = 4$ か奇素数 $p$ のどちらの場合に帰着しますか。両方に帰着できるなら両方書き、対応する変数変換を明示してください。
<Solution>
$100 = 4 \cdot 25 = 5 \cdot 20$ なので両方に帰着できます。

$4 \mid 100$ なので、$x^{100} + y^{100} = z^{100}$ の非自明解 $(x,y,z)$ からは $X = x^{25}$, $Y = y^{25}$, $Z = z^{25}$ とおいて $X^4 + Y^4 = Z^4$ の非自明解が得られます（$XYZ = (xyz)^{25} \ne 0$）。

また $5 \mid 100$ なので、$X = x^{20}$, $Y = y^{20}$, $Z = z^{20}$ とおけば $X^5 + Y^5 = Z^5$ の非自明解が得られます。

どちらの帰着でも <Ref to="prop-reduction" /> の議論がそのまま使えます。実用上は、$n$ の任意の素因数（または $4$）一つを選べば十分です。
</Solution>
</Exercise>

<Exercise id="exr-frey-invariants" difficulty="標準">
$E : y^2 = x(x - A)(x + B)$、$C = A + B$ とします。$j$ 不変量が
$$
j = \frac{2^8 (A^2 + AB + B^2)^3}{(ABC)^2}
$$
であることを示してください。さらに、フライ曲線について $j$ の分母の各素因子の重複度が $2p$ の倍数になる（$\ell = 2$ を除く）ことを確かめてください。
<Solution>
$j = c_4^3 / \Delta$ です。<Ref to="prop-frey-invariants" /> より $c_4 = 16(A^2 + AB + B^2)$、$\Delta = 16(ABC)^2$ なので
$$
j = \frac{\left(16(A^2+AB+B^2)\right)^3}{16 (ABC)^2} = \frac{16^3}{16} \cdot \frac{(A^2+AB+B^2)^3}{(ABC)^2} = \frac{2^8 (A^2+AB+B^2)^3}{(ABC)^2}
$$
です（$16^3/16 = 16^2 = 2^8$）。

フライ曲線では $ABC = (abc)^p$ なので分母は $(abc)^{2p}$ です。$\ell$ を $abc$ の素因子とすると、その重複度は $2p \cdot v_\ell(abc)$ であり、$2p$ の倍数です。$\ell = 2$ については、<Ref to="prop-frey-semistable" /> の最小モデルに移ると $2^8$ の分だけずれ、$v_2(\Delta_{\min}) = 2p\,v_2(b) - 8$ となります。$j$ 不変量は座標変換で不変なので $j$ の $2$ での位数は $8 - 2p\,v_2(b)$、これは $2p$ の倍数ではありません。
</Solution>
</Exercise>

<Exercise id="exr-genus-x0-11" difficulty="標準">
種数公式を使って $X_0(11)$ の種数を求め、$\dim S_2(\Gamma_0(11))$ を決定してください。<Ref to="ex-curve-11a" /> の曲線との関係を述べてください。
<Solution>
$N = 11$ は素数なので
$$
\mu = 11 \left( 1 + \frac{1}{11} \right) = 12 .
$$
楕円点の個数は、$11 \equiv 3 \pmod 4$ より $\left( \frac{-1}{11} \right) = -1$ なので
$$
\nu_2 = 1 + \left( \tfrac{-1}{11} \right) = 1 - 1 = 0 .
$$
$11 \equiv 2 \pmod 3$ より $\left( \frac{-3}{11} \right) = -1$ なので
$$
\nu_3 = 1 + \left( \tfrac{-3}{11} \right) = 0 .
$$
$N$ が素数のとき尖点は $0$ と $\infty$ の 2 個で $\nu_\infty = 2$。よって
$$
g = 1 + \frac{12}{12} - 0 - 0 - \frac{2}{2} = 1 + 1 - 1 = 1 .
$$
したがって $\dim S_2(\Gamma_0(11)) = 1$ です。

この 1 次元空間を張るのが <Ref to="ex-curve-11a" /> のイータ積 $f(q) = q \prod (1-q^n)^2 (1-q^{11n})^2$ であり、対応する楕円曲線が $y^2 + y = x^3 - x^2$ です。種数 $1$ のモジュラー曲線 $X_0(11)$ 自身がこの楕円曲線と同型になっている、という点も味わい深いところです。

対比のため <Ref to="ex-genus-x0-2" /> を見返すと、$N = 2$ では $g = 0$、すなわち導手 $2$ の楕円曲線は存在しないことも同時に分かります。これが <Ref to="cor-flt" /> の最終段で効いた事実です。
</Solution>
</Exercise>

<Exercise id="exr-where-p5" difficulty="難">
<Ref to="cor-flt" /> の証明で、仮定 $p \ge 5$ はどこで使われましたか。すべて挙げ、$p = 2$ と $p = 3$ でそれぞれ何が壊れるかを説明してください。
<Solution>
$p \ge 5$ は少なくとも三箇所で使われています。

第一に、第 2 段の既約性です。$\bar\rho_{E,p}$ が既約であることをメイザーの有理同種定理から導く際、$p \ge 5$ が必要です。$p = 3$ ではフライ曲線に有理 $3$ 同種があり得るため、この段が保証されません。<Ref to="thm-ribet" /> は既約性を仮定しているので、ここが崩れるとレベル下げが適用できません。

第二に、第 4 段のレベル計算です。$v_2(\Delta_{\min}) = 2p\,v_2(b) - 8 \equiv -8 \pmod p$ が $p$ で割れないことを使いました。ここで必要なのは $p \nmid 8$、つまり $p \ne 2$ です。$p = 2$ なら $2$ もレベルから落ちてしまい、レベル $1$ の重さ $2$ の新形式が要求されますが——それも存在しないとはいえ——そもそも $p = 2$ ではフェルマー方程式に解が存在する（$3^2 + 4^2 = 5^2$）ので、他の段が破綻していなければなりません。実際 <Ref to="ex-frey-pythagorean" /> の曲線 $y^2 = x(x-9)(x+16)$ は完全にまともなモジュラー曲線です。

第三に、<Ref to="prop-frey-semistable" /> の $\ell = 2$ での議論で $v_2\!\left((abc)^{2p}\right) = 2p\,v_2(b) \ge 2p \ge 10 > 8$ を使い、$\Delta_{\min}$ が整数であることを保証しました。$p = 3$ でも $v_2(b) \ge 2$ なら成り立ちますが、$v_2(b) = 1$ だと $2p\,v_2(b) = 6 < 8$ で崩れます。

なお $p = 3$ の場合はオイラーによって別途証明されており、$p = 2$ には実際に解があるので、この二つを除外しても <Ref to="cor-remaining-case" /> により全体の証明に穴は生じません。
</Solution>
</Exercise>

## 参考文献

- A. Wiles, "Modular elliptic curves and Fermat's Last Theorem", *Annals of Mathematics* 141 (1995), 443–551.
- R. Taylor and A. Wiles, "Ring-theoretic properties of certain Hecke algebras", *Annals of Mathematics* 141 (1995), 553–572.
- K. A. Ribet, "On modular representations of $\mathrm{Gal}(\overline{\mathbf{Q}}/\mathbf{Q})$ arising from modular forms", *Inventiones Mathematicae* 100 (1990), 431–476.
- H. Darmon, F. Diamond and R. Taylor, "Fermat's Last Theorem", in *Elliptic Curves, Modular Forms and Fermat's Last Theorem*（International Press, 1997）— 全体の詳細な解説。
- F. Diamond and J. Shurman, *A First Course in Modular Forms*, Springer GTM 228, 2005 — 第 3 章（種数公式）、第 8 章（楕円曲線とモジュラー性）。
- J. H. Silverman, *The Arithmetic of Elliptic Curves*, 2nd ed., Springer GTM 106, 2009 — 第 III 章（ヴァイエルシュトラス方程式と不変量）、第 VII 章（還元と半安定性）。
- L. C. Washington, *Introduction to Cyclotomic Fields*, 2nd ed., Springer GTM 83, 1997 — 第 9 章（正則素数とフェルマーの最終定理）。
- サイモン・シン『フェルマーの最終定理』（青木薫訳）新潮社、2000 — 歴史的経緯の読み物。

## Appendix: 不変量の記号について

**ヴァイエルシュトラス係数の記法。** <Ref to="prop-frey-invariants" /> で使った $b_2, b_4, b_6, b_8, c_4, \Delta$ は、一般のヴァイエルシュトラス方程式
$$
y^2 + a_1 xy + a_3 y = x^3 + a_2 x^2 + a_4 x + a_6
$$
に対して定義される標準的な量です。定義式は
$$
\begin{aligned}
b_2 &= a_1^2 + 4a_2, & b_4 &= 2a_4 + a_1 a_3, & b_6 &= a_3^2 + 4 a_6, \\
b_8 &= a_1^2 a_6 + 4a_2a_6 - a_1a_3a_4 + a_2a_3^2 - a_4^2, & c_4 &= b_2^2 - 24 b_4, & c_6 &= -b_2^3 + 36 b_2 b_4 - 216 b_6
\end{aligned}
$$
であり、判別式は
$$
\Delta = -b_2^2 b_8 - 8 b_4^3 - 27 b_6^2 + 9 b_2 b_4 b_6
$$
です。$1728\,\Delta = c_4^3 - c_6^2$ という関係が成り立ちます。$j = c_4^3/\Delta$ が $j$ 不変量です。

**座標変換の効き方。** 座標変換 $x = u^2 x' + r$, $y = u^3 y' + s u^2 x' + t$（$u \ne 0$）により $c_4 \mapsto u^{-4} c_4$, $\Delta \mapsto u^{-12}\Delta$ となり、$j$ は不変です。<Ref to="rem-semistable-proof" /> で使った $u = 2$ の変換で判別式が $2^{12}$ 分の 1 になるのは、この規則によります。最小判別式 $\Delta_{\min}$ とは、$\mathbb{Z}$ 係数のヴァイエルシュトラス方程式のうち $|\Delta|$ を最小にするものの判別式のことです。

**なぜ $v_\ell(\Delta_{\min})$ が意味を持つか。** 乗法的還元を持つ素数 $\ell$ において、$E$ の $\ell$ での局所的な振る舞いはテイト曲線 $\mathbb{G}_m/q^{\mathbb{Z}}$ で記述され、$v_\ell(q) = v_\ell(\Delta_{\min})$ が成り立ちます。$p \mid v_\ell(\Delta_{\min})$ であることは、$q$ が局所体の中で $p$ 乗元と単数の積になることを意味し、それが $E[p]$ への $\ell$ での惰性群の作用を自明にします。これが <Ref to="rem-ribet-source" /> で述べた「不分岐性」の内実です。


</div>
