# 行列 Lie 群と指数写像：閉部分群定理・BCH 公式・SU(2)→SO(3) と Spin 群

> GL(n,C) の閉部分群が自動的に Lie 群になること（閉部分群定理）を示し、連続準同型が Lie 環の準同型を誘導すること、BCH 公式の積分表示と収束域、単連結群への準同型の持ち上げ、SU(2)→SO(3) と Spin(n)→SO(n) の 2 重被覆を証明する。
> https://rikai.mugen-giken.com/mathematics/lie-theory/matrix-lie-groups

## 0. この記事の要点

回転を表す行列や、量子力学で使う行列など、「ある条件を満たす行列を全部集めた集合」は、物理や数学のあちこちに出てきます。この記事は、そうした行列の集合が、条件が「極限をとっても崩れない」というだけで、なめらかな曲面のような形をもつことを示します。さらに、行列の積と、行列の交換関係との間にある深い関係を調べ、最後に、3 次元の回転を 2 周すると元に戻るという不思議な性質を、はっきりした式で説明します。

- **閉部分群定理**: $GL(n,\mathbb{C})$ の閉部分群 $G$ は、それだけで[埋め込み部分多様体](/mathematics/manifolds/submanifolds-regular-values#def-submanifold)になり、Lie 群になります。その Lie 環は $\mathfrak{g}=\lbrace X : e^{tX}\in G\ (\forall t\in\mathbb{R})\rbrace$ で、指数写像が単位元の近くで $\mathfrak{g}$ と $G$ を同相に結びます。
- 行列 Lie 群の間の**連続な**準同型 $\Phi$ は自動的に滑らかで、$\Phi(e^X)=e^{\varphi(X)}$ を満たす Lie 環の準同型 $\varphi$ をただ 1 つ定めます。
- **BCH 公式**: $\|X\|+\|Y\|\lt 1/4$ なら $\log(e^Xe^Y)$ は $X,Y$ の反復交換子の絶対収束級数 $X+Y+\frac12[X,Y]+\frac1{12}[X,[X,Y]]-\frac1{12}[Y,[X,Y]]+\cdots$ で書けます。鍵は指数写像の微分公式です。
- BCH 公式から局所準同型が作れ、道に沿って延長することで、**単連結な群からは Lie 環の準同型が群の準同型に持ち上がる**ことが示せます（単連結とは、群の中の輪っかがどれも一点に縮められること）。
- $SU(2)\to SO(3)$ は 2 対 1 の被覆で、$SU(2)\cong S^3$ が単連結なので普遍被覆です。一般の $n$ では Clifford 代数（ベクトルの二乗が $-|v|^2$ になるように掛け算を入れた代数）の中に $\mathrm{Spin}(n)$ を作り、$\mathrm{Spin}(n)\to SO(n)$ が連結な 2 重被覆であることを示します。

<Aside type="tip" title="この記事で使う事前知識">

- **行列の指数関数**: $e^X=\sum X^k/k!$ で行列にも指数関数を定める。→ [行列の指数関数](/mathematics/linear-algebra/matrix-decompositions#def-matrix-exponential)
- **Lie 環**: Lie 群の単位元での接空間に、交換子の括弧を入れたもの。→ [リー環](/mathematics/manifolds/lie-groups#def-lie-algebra)
- **指数写像**: Lie 環の元を、それが生む一径数の曲線に沿って群の元へ送る写像。→ [指数写像](/mathematics/manifolds/lie-groups#def-exp)
- **埋め込み部分多様体**: まわりの空間の中で、座標の一部を $0$ とおくだけで表せる部分集合。→ [埋め込み部分多様体](/mathematics/manifolds/submanifolds-regular-values#def-submanifold)
- **随伴表現**: 群が自分の Lie 環に $X\mapsto gXg^{-1}$ で作用する表現。→ [随伴表現](/mathematics/manifolds/lie-groups#def-adjoint)
- **基本群**: 空間の中の輪っかを、連続に変形して同じとみなした類のなす群。→ [基本群](/mathematics/algebraic-topology/fundamental-group-coverings#def-pi1)

</Aside>

## 1. 動機

[リー群とリー環](/mathematics/manifolds/lie-groups) では、Lie 群を「多様体であって群演算が滑らかなもの」として定義し、左不変ベクトル場から Lie 環を作り、指数写像で両者を結びました。そこでは古典群 $O(n)$、$U(n)$ などが多様体であることを、毎回、正則値定理で確かめていました。

物理や表現論で実際に出会う群は、ほとんどが行列の群です。回転群 $SO(3)$、Lorentz 群 $SO^+(1,3)$、ゲージ群 $SU(3)$、シンプレクティック群 $Sp(2n,\mathbb{R})$ などです。これらはどれも「ある代数的な条件を満たす可逆行列の全体」であり、行列の収束について閉じています。この記事の第一の主題は、**閉じていることだけから多様体の構造が自動的に従う**という事実（閉部分群定理）です。これにより、群ごとに正則値定理を当てはめる手間がなくなり、さらに、たとえば「連続な準同型は自動的に滑らか」といった、Lie 群論を表現論に使うための基本的な道具が手に入ります。

第二の主題は、群の積と Lie 環の括弧の関係です。行列の積 $e^Xe^Y$ は、$X$ と $Y$ が可換でなければ $e^{X+Y}$ とは異なります。差は $[X,Y]=XY-YX$ から始まる補正で、驚くべきことに、補正の全体が**括弧だけで**書けます（BCH 公式）。これは「群の積の局所構造は Lie 環で完全に決まる」ことを意味し、そこから Lie 環の準同型を群の準同型に持ち上げる定理が出てきます。

第三の主題は被覆です。$SU(2)$ と $SO(3)$ は同じ Lie 環をもちますが、群としては異なります。量子力学のスピン $1/2$ はこの違いの現れで、$SO(3)$ の「2 価表現」は $SU(2)$ の本物の表現です。一般次元の回転群 $SO(n)$ に対して同じ役割をする $\mathrm{Spin}(n)$ を、Clifford 代数を使って具体的に構成します。これはこのテーマの最終章（Lorentz 群・Poincaré 群の表現）と、場の量子論のスピノル場の前提になります。

## 2. 準備：行列の指数関数と対数関数

$M_n(\mathbb{C})$ に作用素ノルム $\|A\|=\sup_{|v|=1}|Av|$ を入れます。これは劣乗法的（積のノルムが、ノルムの積以下になること）$\|AB\|\le\|A\|\|B\|$ で、$M_n(\mathbb{C})$ はこのノルムで完備です。$M_n(\mathbb{C})$ は実ベクトル空間として $\mathbb{R}^{2n^2}$ と同一視し、$GL(n,\mathbb{C})$ はその開集合として多様体とみなします。

行列指数関数 $e^X=\sum_{k\ge0}X^k/k!$ の収束、$\frac{d}{dt}e^{tX}=Xe^{tX}$、$e^{(s+t)X}=e^{sX}e^{tX}$ は <Ref to="mathematics/manifolds/lie-groups#lem-matrix-exp" /> で示されています（そこでは実行列ですが、複素行列でも証明は同じです）。また $XY=YX$ なら $e^{X+Y}=e^Xe^Y$ であること、$e^{gXg^{-1}}=ge^Xg^{-1}$ であることは、級数を項ごとに比べればわかります。

対数関数は、$\|A-I\|\lt1$ を満たす $A$ に対して

$$
\log A=\sum_{m\ge1}\frac{(-1)^{m+1}}{m}(A-I)^m
$$

で定義します。$\|(A-I)^m\|\le\|A-I\|^m$ なので絶対収束します。

<Lemma id="lem-exp-log" title="指数関数と対数関数の基本性質">
1. $\|B\|\lt1$ ならば $e^{\log(I+B)}=I+B$ であり、$\|\log(I+B)\|\le-\log(1-\|B\|)$、$\|\log(I+B)-B\|\le\dfrac{\|B\|^2}{1-\|B\|}$ が成り立つ。
2. $\|X\|\lt\log2$ ならば $\|e^X-I\|\lt1$ であり、$\log(e^X)=X$ が成り立つ。
</Lemma>

次の証明のねらいは、実数で知っている $e^{\log(1+x)}=1+x$ や $\log e^x=x$ が行列でも成り立つことの確認です。$B$ の冪の級数を代入して展開し、$B^j$ の係数を集め直すと、実数の場合と同じ係数が出ます。集め直しが許される理由は、すべての項の絶対値の和が有限だからです。

<Proof of="lem-exp-log">
**ノルムの評価。** $\|\log(I+B)\|\le\sum_{m\ge1}\|B\|^m/m=-\log(1-\|B\|)$ です。また $\|\log(I+B)-B\|\le\sum_{m\ge2}\|B\|^m/m\le\|B\|^2\sum_{j\ge0}\|B\|^j=\|B\|^2/(1-\|B\|)$ です。

**合成の恒等式。** $c_m=(-1)^{m+1}/m$ とおくと
$$
e^{\log(I+B)}=\sum_{k\ge0}\frac1{k!}\Bigl(\sum_{m\ge1}c_mB^m\Bigr)^k .
$$
各 $k$ の項を展開すると $B$ の冪の和になり、展開したすべての項のノルムの和は $\sum_k\frac1{k!}\bigl(\sum_m|c_m|\|B\|^m\bigr)^k=e^{-\log(1-\|B\|)}=1/(1-\|B\|)\lt\infty$ で抑えられます。行列の各成分の絶対値は作用素ノルム以下なので、成分ごとに見れば絶対収束する多重級数で、<Ref to="mathematics/calculus/series-and-convergence#thm-double-series" />により自由にまとめ直せます（添字 $(k;m_1,\ldots,m_k)$ の集合 $\bigsqcup_k\mathbb{N}^k$ は可算なので全単射で $\mathbb{N}^2$ に移して 2 を使い、$k$ ごとのまとまりと $j=m_1+\cdots+m_k$ ごとのまとまりを比べる。$k$ ごとのまとまりの和が $\frac1{k!}\bigl(\sum_mc_mB^m\bigr)^k$ になることは、同じ定理を二つずつまとめて繰り返し使う）。したがって右辺は $\sum_j d_jB^j$ の形に整理でき、係数 $d_j$ は形式的冪級数 $\exp(\log(1+x))$ の $x^j$ の係数です。実数 $|x|\lt1$ では $e^{\log(1+x)}=1+x$ が成り立ち、同じ並べ替えから $\sum_jd_jx^j=1+x$ がすべての $|x|\lt1$ で成り立つので、冪級数の一意性から $d_0=d_1=1$、$d_j=0$（$j\ge2$）です。よって $e^{\log(I+B)}=I+B$ です。

2 も同様です。$\|e^X-I\|\le e^{\|X\|}-1\lt1$ であり、$\log(e^X)=\sum_mc_m(e^X-I)^m$ を $X$ の冪に展開したときのノルムの和は $\sum_m\frac1m(e^{\|X\|}-1)^m=-\log(2-e^{\|X\|})\lt\infty$ で抑えられます。実数 $|x|\lt\log2$ で $\log(e^x)=x$ が成り立つことから、上と同じ議論で $\log(e^X)=X$ を得ます。
</Proof>

この補題の 2 から、$\exp$ は $\lbrace\|X\|\lt\log2\rbrace$ 上で単射で、逆写像が $\log$ で与えられます。次の極限公式は、行列 Lie 群の Lie 環が**ベクトル空間**になることの根拠です。

<Proposition id="prop-trotter" title="Lie–Trotter の積公式">
任意の $X,Y\in M_n(\mathbb{C})$ に対して
$$
\lim_{m\to\infty}\bigl(e^{X/m}e^{Y/m}\bigr)^m=e^{X+Y}.
$$
</Proposition>

<Proof of="prop-trotter">
$e^{X/m}e^{Y/m}=I+B_m$ と書くと、級数を掛け合わせて $B_m=\frac{X+Y}{m}+R_m$、$\|R_m\|\le C/m^2$（$C$ は $X,Y$ だけによる定数）です。$m$ が大きければ $\|B_m\|\lt1/2$ なので <Ref to="lem-exp-log" /> の 1 により $Z_m:=\log(I+B_m)$ が定義され、$e^{Z_m}=e^{X/m}e^{Y/m}$、かつ
$$
\Bigl\|Z_m-\frac{X+Y}{m}\Bigr\|\le\|Z_m-B_m\|+\|R_m\|\le2\|B_m\|^2+\frac{C}{m^2}=O\Bigl(\frac1{m^2}\Bigr)
$$
です。よって $mZ_m\to X+Y$ で、$(e^{X/m}e^{Y/m})^m=e^{mZ_m}$（$Z_m$ は自分自身と可換なので）と $\exp$ の連続性から結論を得ます。
</Proof>

## 3. 行列 Lie 群とその Lie 環

<Definition id="def-matrix-lie-group" title="行列 Lie 群とその Lie 環">
$GL(n,\mathbb{C})$ の部分群 $G$ が $GL(n,\mathbb{C})$ の中で閉集合であるとき、$G$ を**行列 Lie 群**という。$G$ の **Lie 環**を
$$
\mathfrak{g}=\operatorname{Lie}(G)=\lbrace X\in M_n(\mathbb{C}) : \text{すべての } t\in\mathbb{R} \text{ について } e^{tX}\in G\rbrace
$$
で定める。
</Definition>

「$GL(n,\mathbb{C})$ の中で閉」であって、$M_n(\mathbb{C})$ の中で閉である必要はありません。$GL(n,\mathbb{C})$ 自身がその例です。

<Theorem id="thm-lie-algebra-of-matrix-group" title="行列 Lie 群の Lie 環は実 Lie 環">
$G$ を行列 Lie 群とする。
1. $\mathfrak{g}$ は $M_n(\mathbb{C})$ の実部分空間である。
2. $g\in G$、$X\in\mathfrak{g}$ ならば $gXg^{-1}\in\mathfrak{g}$ である。
3. $X,Y\in\mathfrak{g}$ ならば $[X,Y]=XY-YX\in\mathfrak{g}$ である。

すなわち $\mathfrak{g}$ は交換子を括弧とする実 Lie 環である。
</Theorem>

<Proof of="thm-lie-algebra-of-matrix-group">
**1。** $X\in\mathfrak{g}$、$s\in\mathbb{R}$ なら $e^{t(sX)}=e^{(ts)X}\in G$ なので $sX\in\mathfrak{g}$ です。$X,Y\in\mathfrak{g}$ なら、<Ref to="prop-trotter" /> により $e^{t(X+Y)}=\lim_m(e^{tX/m}e^{tY/m})^m$ です。右辺の各項は $G$ の元で、極限 $e^{t(X+Y)}$ は $GL(n,\mathbb{C})$ に属し、$G$ は $GL(n,\mathbb{C})$ で閉なので $e^{t(X+Y)}\in G$ です。

**2。** $e^{t\,gXg^{-1}}=ge^{tX}g^{-1}\in G$ です。

**3。** $X,Y\in\mathfrak{g}$ とします。2 から $c(t):=e^{tX}Ye^{-tX}\in\mathfrak{g}$ です。$\mathfrak{g}$ は有限次元の部分空間なので $M_n(\mathbb{C})$ で閉であり、$c$ は滑らかなので、その微分 $c'(0)=\lim_{t\to0}(c(t)-Y)/t$ も $\mathfrak{g}$ に入ります。積の微分から $c'(0)=XY-YX$ です。
</Proof>

<Example id="ex-classical-lie-algebras" title="古典群の Lie 環">
次の群はすべて行列 Lie 群です（条件が連続関数の等式なので閉）。それぞれの Lie 環を、定義から求めます。

| 群 | 定義 | Lie 環 | 実次元 |
|---|---|---|---|
| $SL(n,\mathbb{C})$ | $\det g=1$ | $\operatorname{tr}X=0$ | $2(n^2-1)$ |
| $U(n)$ | $g^*g=I$ | $X^*=-X$ | $n^2$ |
| $SU(n)$ | $g^*g=I$, $\det g=1$ | $X^*=-X$, $\operatorname{tr}X=0$ | $n^2-1$ |
| $SO(n)$ | $g\in M_n(\mathbb{R})$, $g^{\mathsf T}g=I$, $\det g=1$ | $X\in M_n(\mathbb{R})$, $X^{\mathsf T}=-X$ | $n(n-1)/2$ |
| $O(1,3)$ | $g\in M_4(\mathbb{R})$, $g^{\mathsf T}\eta g=\eta$ | $X^{\mathsf T}\eta+\eta X=0$ | $6$ |

たとえば $U(n)$ では、$X^*=-X$ なら $(e^{tX})^*=e^{-tX}=(e^{tX})^{-1}$ です。逆に $e^{tX}\in U(n)$ がすべての $t$ で成り立てば、$(e^{tX})^*e^{tX}=I$ を $t=0$ で微分して $X^*+X=0$ です。$\det e^{tX}=e^{t\operatorname{tr}X}$ から、$\det=1$ の条件は $\operatorname{tr}X=0$ に対応します（$e^{t\operatorname{tr}X}=1$ がすべての $t$ で成り立つことと $\operatorname{tr}X=0$ は同値です）。$O(1,3)$ の $\eta=\operatorname{diag}(1,-1,-1,-1)$ は Minkowski 計量です。
</Example>

## 4. 閉部分群定理

行列 Lie 群は閉部分群として定義しただけで、多様体であるとはまだ言っていません。それを示すのがこの節の定理です。

<Lemma id="lem-no-small-transverse" title="Lie 環に横断的な小さい元は群に入らない">
$G$ を行列 Lie 群、$\mathfrak{d}$ を $M_n(\mathbb{C})=\mathfrak{g}\oplus\mathfrak{d}$ を満たす実部分空間とする。$Y_k\in\mathfrak{d}\setminus\lbrace0\rbrace$、$Y_k\to0$ である列で、すべての $k$ について $e^{Y_k}\in G$ となるものは存在しない。
</Lemma>

<Proof of="lem-no-small-transverse">
そのような列があったとします。$Y_k/\|Y_k\|$ は単位球面上にあるので、部分列をとって $Y_k/\|Y_k\|\to Y$ としてよく、$\mathfrak{d}$ は閉なので $Y\in\mathfrak{d}$、$\|Y\|=1$ です。$t\in\mathbb{R}$ を任意にとり、$n_k=\lfloor t/\|Y_k\|\rfloor$ とおくと $|n_k\|Y_k\|-t|\le\|Y_k\|\to0$ なので
$$
n_kY_k=n_k\|Y_k\|\cdot\frac{Y_k}{\|Y_k\|}\to tY
$$
です。$e^{n_kY_k}=(e^{Y_k})^{n_k}\in G$ であり、極限 $e^{tY}$ は $GL(n,\mathbb{C})$ の元なので、$G$ が閉であることから $e^{tY}\in G$ です。$t$ は任意なので $Y\in\mathfrak{g}$ となり、$Y\in\mathfrak{g}\cap\mathfrak{d}=\lbrace0\rbrace$ が $\|Y\|=1$ に矛盾します。
</Proof>

<Theorem id="thm-closed-subgroup" title="閉部分群定理（行列 Lie 群版）">
$G$ を行列 Lie 群、$\mathfrak{g}$ をその Lie 環とする。このとき $0\in M_n(\mathbb{C})$ の開近傍 $U$ と $I$ の開近傍 $V$ で、$\exp\colon U\to V$ が微分同相であり、かつ
$$
\exp(U\cap\mathfrak{g})=V\cap G
$$
となるものが存在する。したがって $G$ は $GL(n,\mathbb{C})$ の $\dim_{\mathbb{R}}\mathfrak{g}$ 次元の埋め込み部分多様体であり、相対位相と誘導される多様体構造について Lie 群で、$T_IG=\mathfrak{g}$ である。
</Theorem>

証明の方針は次のとおりです。まず $GL(n,\mathbb{C})$ の座標を、$\mathfrak{g}$ の方向と、それに横断する方向（補空間 $\mathfrak{d}$ の方向）に分けます。直前の補題は、$\mathfrak{d}$ の方向に小さくずれた元が $G$ に入らないことを言っています。したがって単位元の近くでは、$G$ は $\mathfrak{g}$ の方向だけに広がっていて、これが部分多様体の座標になります。

<Proof of="thm-closed-subgroup">
**局所座標。** 補空間 $\mathfrak{d}$ を 1 つ選び、$\Phi\colon\mathfrak{g}\oplus\mathfrak{d}\to GL(n,\mathbb{C})$、$\Phi(X+Y)=e^Xe^Y$ とおきます。$\Phi(tX)=I+tX+O(t^2)$、$\Phi(tY)=I+tY+O(t^2)$ なので $d\Phi_0$ は恒等写像で、逆関数定理（<Ref to="mathematics/manifolds/submanifolds-regular-values#thm-inverse-function" />）により、$0$ の近傍で $\Phi$ は微分同相です。同様に $\exp$ も $0$ の近傍で微分同相です（<Ref to="mathematics/manifolds/lie-groups#thm-exp-local-diffeo" />、あるいは $d\exp_0=\mathrm{id}$ から直接）。

**主張: 十分小さい $\varepsilon\gt0$ について、$\|X\|\lt\varepsilon$、$\|Y\|\lt\varepsilon$（$X\in\mathfrak{g}$、$Y\in\mathfrak{d}$）かつ $e^Xe^Y\in G$ ならば $Y=0$。** そうでなければ、$X_k\to0$、$Y_k\to0$、$Y_k\ne0$、$e^{X_k}e^{Y_k}\in G$ となる列があります。$e^{X_k}\in G$ なので $e^{Y_k}=e^{-X_k}(e^{X_k}e^{Y_k})\in G$ となり、<Ref to="lem-no-small-transverse" /> に矛盾します。

**スライスチャート。** $\varepsilon$ を、$B=\lbrace X+Y : \|X\|,\|Y\|\lt\varepsilon\rbrace$ 上で $\Phi$ が微分同相になるようにさらに小さくとり、$W=\Phi(B)$ とします。主張から
$$
W\cap G=\Phi(B\cap\mathfrak{g})=\lbrace e^X : X\in\mathfrak{g},\ \|X\|\lt\varepsilon\rbrace
$$
です（右辺が $G$ に含まれるのは $\mathfrak{g}$ の定義によります）。したがって $\Phi^{-1}$ を $\mathfrak{g}\oplus\mathfrak{d}\cong\mathbb{R}^k\times\mathbb{R}^{2n^2-k}$ への座標とみなすと、$I$ における $G$ のスライスチャートになります（<Ref to="mathematics/manifolds/submanifolds-regular-values#def-submanifold" />）。$g\in G$ では、左移動 $L_g(h)=gh$ が $GL(n,\mathbb{C})$ の微分同相で $G$ を $G$ に写すので、$\Phi^{-1}\circ L_g^{-1}$ が $g$ のスライスチャートです。よって $G$ は埋め込み部分多様体です（<Ref to="mathematics/manifolds/submanifolds-regular-values#prop-submanifold-structure" />）。

**Lie 群であること。** 積と逆元は $GL(n,\mathbb{C})$ 上の滑らかな写像の制限で、値は $G$ に入ります。スライスチャートで見ると、$G\times G$ のチャート表示は「$GL$ 上の滑らかな写像を $\mathbb{R}^k\times\lbrace0\rbrace$ に制限し、最初の $k$ 成分をとる」写像なので滑らかです。

**$\exp$ について。** $U=\lbrace\|Z\|\lt\varepsilon'\rbrace$ を、$\exp|_U$ が微分同相かつ $\exp(U)\subset W$ となるようにとり、$V=\exp(U)$ とします。$X\in U\cap\mathfrak{g}$ なら $e^X\in V\cap G$ です。逆に $g\in V\cap G$ なら、上の記述から $g=e^{X'}$（$X'\in\mathfrak{g}$、$\|X'\|\lt\varepsilon$）であり、一方 $g=e^Z$（$Z\in U$）とも書けます。$\varepsilon,\varepsilon'\lt\frac12\log2$ にとっておけば、<Ref to="lem-exp-log" /> の 2 により $X'=\log g=Z$ なので $Z\in\mathfrak{g}$ です。

**接空間。** $X\in\mathfrak{g}$ に対し曲線 $t\mapsto e^{tX}$ は $G$ 内にあり速度 $X$ をもつので $\mathfrak{g}\subset T_IG$ で、両者の次元は $k=\dim_{\mathbb{R}}\mathfrak{g}$ で等しいので一致します。
</Proof>

この定理により、[リー群とリー環](/mathematics/manifolds/lie-groups) の意味での Lie 環 $T_IG$ と、<Ref to="def-matrix-lie-group" /> の $\mathfrak{g}$ が同じものだとわかります。行列 Lie 群の指数写像が行列指数関数であることは <Ref to="mathematics/manifolds/lie-groups#thm-exp-matrix" /> のとおりです。

<Remark id="rem-closed-needed" title="閉性を落とすと何が壊れるか">
$\alpha$ を無理数として、トーラス $T^2=\lbrace\operatorname{diag}(e^{i\theta},e^{i\phi})\rbrace$ の部分群 $H=\lbrace\operatorname{diag}(e^{it},e^{i\alpha t}) : t\in\mathbb{R}\rbrace$ を考えます。$H$ は $T^2$ で稠密ですが $T^2$ 全体ではないので閉ではありません。定義どおり $\lbrace X : e^{tX}\in H\ \forall t\rbrace$ を計算すると $\mathbb{R}\,\operatorname{diag}(i,i\alpha)$ で 1 次元ですが、$H$ の $I$ の近くには、$t$ が大きいところから戻ってくる点が無数にあり、どんな近傍 $V$ でも $V\cap H$ は 1 本の曲線になりません。$H$ は相対位相では多様体ではありません（演習で確かめます）。
</Remark>

閉部分群定理のもっとも重要な帰結は、連続性から滑らかさが出ることです。

<Lemma id="lem-one-parameter" title="連続な 1 径数部分群">
$A\colon\mathbb{R}\to GL(n,\mathbb{C})$ が連続な群準同型ならば、ただ 1 つの $Y\in M_n(\mathbb{C})$ があって $A(t)=e^{tY}$ である。
</Lemma>

<Proof of="lem-one-parameter">
$r=\frac14\log2$ とし、$\|e^Z-I\|\lt1$ かつ $\log$ が $\exp$ の逆になる範囲を使います。連続性から $t_0\gt0$ を、$|t|\le t_0$ で $\|A(t)-I\|$ が十分小さく $\|\log A(t)\|\lt r$ となるようにとります。$W=\log A(t_0/2)$ とおくと $e^{2W}=A(t_0/2)^2=A(t_0)$ で、$\|2W\|\lt2r\lt\log2$ なので <Ref to="lem-exp-log" /> の 2 から $2W=\log A(t_0)$ です。これを繰り返すと $\log A(t_0/2^k)=2^{-k}\log A(t_0)$ です。$Y=t_0^{-1}\log A(t_0)$ とおくと、整数 $m$ について $A(mt_0/2^k)=A(t_0/2^k)^m=e^{mt_0Y/2^k}$ となり、$A(t)=e^{tY}$ が 2 進有理数 $t/t_0$ で成り立ちます。両辺は連続なので、すべての $t$ で成り立ちます。$Y=A'(0)$ なので $Y$ は一意です。
</Proof>

## 5. 準同型と Lie 環の準同型

<Theorem id="thm-homomorphism-differential" title="連続準同型は Lie 環の準同型を誘導する">
$G,H$ を行列 Lie 群、$\Phi\colon G\to H$ を連続な群準同型とする。このとき実線形写像 $\varphi\colon\mathfrak{g}\to\mathfrak{h}$ がただ 1 つ存在して、すべての $X\in\mathfrak{g}$ について
$$
\Phi(e^X)=e^{\varphi(X)}
$$
が成り立つ。さらに
1. $\varphi([X,Y])=[\varphi(X),\varphi(Y)]$（Lie 環の準同型）、
2. $\varphi(gXg^{-1})=\Phi(g)\varphi(X)\Phi(g)^{-1}$（$g\in G$）、
3. $\Phi$ は滑らかで、$d\Phi_I=\varphi$

が成り立つ。$\varphi$ を $\Phi$ の**微分**と呼び、$d\Phi$ と書く。
</Theorem>

<Proof of="thm-homomorphism-differential">
**$\varphi$ の構成。** $X\in\mathfrak{g}$ に対し $t\mapsto\Phi(e^{tX})$ は $\mathbb{R}$ から $GL$ への連続準同型なので、<Ref to="lem-one-parameter" /> によりただ 1 つの $Y$ で $\Phi(e^{tX})=e^{tY}$ と書けます。$e^{tY}\in H$ なので $Y\in\mathfrak{h}$ です。$\varphi(X)=Y$ と定めます。一意性は $\varphi(X)=\frac{d}{dt}\big|_{t=0}\Phi(e^{tX})$ から明らかです。

**線形性。** $\varphi(sX)=s\varphi(X)$ は定義から従います。加法性は <Ref to="prop-trotter" /> と $\Phi$ の連続性から
$$
\Phi(e^{t(X+Y)})=\lim_m\Phi\bigl(e^{tX/m}e^{tY/m}\bigr)^m=\lim_m\bigl(e^{t\varphi(X)/m}e^{t\varphi(Y)/m}\bigr)^m=e^{t(\varphi(X)+\varphi(Y))}
$$
となり、一意性から $\varphi(X+Y)=\varphi(X)+\varphi(Y)$ です。

**2。** $\Phi(e^{t\,gXg^{-1}})=\Phi(ge^{tX}g^{-1})=\Phi(g)e^{t\varphi(X)}\Phi(g)^{-1}=e^{t\,\Phi(g)\varphi(X)\Phi(g)^{-1}}$ です。

**1。** 2 で $g=e^{sX}$ とおくと $\varphi(e^{sX}Ye^{-sX})=e^{s\varphi(X)}\varphi(Y)e^{-s\varphi(X)}$ です。$\varphi$ は有限次元空間の線形写像なので連続であり、両辺を $s=0$ で微分すると $\varphi([X,Y])=[\varphi(X),\varphi(Y)]$ を得ます。

**3。** $g\in G$ のまわりでは、<Ref to="thm-closed-subgroup" /> により $X\mapsto ge^X$（$X\in U\cap\mathfrak{g}$）が $G$ の局所座標を与え、このとき $\Phi(ge^X)=\Phi(g)e^{\varphi(X)}$ は $X$ の滑らかな関数です。$d\Phi_I=\varphi$ は $\varphi$ の定義そのものです。
</Proof>

<Corollary id="cor-connected-determined">
$G$ が連結ならば、連続準同型 $\Phi\colon G\to H$ は微分 $\varphi$ によって一意に決まる。
</Corollary>

<Proof of="cor-connected-determined">
連結 Lie 群は $\exp(\mathfrak{g})$ で生成されます（<Ref to="mathematics/manifolds/lie-groups#cor-generated" />）。$\Phi(e^{X_1}\cdots e^{X_k})=e^{\varphi(X_1)}\cdots e^{\varphi(X_k)}$ なので、$\Phi$ は $\varphi$ で決まります。
</Proof>

<Lemma id="lem-ad-differential" title="随伴表現の微分は ad">
行列 $X,Y$ について $\frac{d}{dt}\big|_{t=0}e^{tX}Ye^{-tX}=[X,Y]$ であり、$e^XYe^{-X}=e^{\operatorname{ad}X}Y=Y+[X,Y]+\frac1{2!}[X,[X,Y]]+\cdots$ が成り立つ。ここで $\operatorname{ad}X=[X,\cdot\,]$ である。
</Lemma>

<Proof of="lem-ad-differential">
$F(t)=e^{tX}Ye^{-tX}$ は $t$ について微分可能で、積の微分から $F'(t)=Xe^{tX}Ye^{-tX}-e^{tX}Ye^{-tX}X=[X,F(t)]=(\operatorname{ad}X)F(t)$ です。$t=0$ で $F'(0)=[X,Y]$ が第 1 式です。$F$ は行列空間上の線形な微分方程式 $F'=(\operatorname{ad}X)F$、$F(0)=Y$ の解で、この方程式の解は一意（$G(t)=e^{-t\operatorname{ad}X}F(t)$ とおくと $G'=0$）なので $F(t)=e^{t\operatorname{ad}X}Y$ です。$t=1$ とおけば第 2 式を得ます。
</Proof>

<Example id="ex-ad-differential" title="随伴表現の微分は ad">
$\operatorname{Ad}\colon G\to GL(\mathfrak{g})$、$\operatorname{Ad}(g)X=gXg^{-1}$ は連続準同型です。$\frac{d}{dt}\big|_{t=0}e^{tX}Ye^{-tX}=[X,Y]$ なので、その微分は $\operatorname{ad}X=[X,\cdot\,]$ です。<Ref to="thm-homomorphism-differential" /> の等式 $\Phi(e^X)=e^{\varphi(X)}$ は、この場合
$$
e^XYe^{-X}=e^{\operatorname{ad}X}Y=Y+[X,Y]+\frac1{2!}[X,[X,Y]]+\cdots
$$
となります。この式は以下で何度も使います。
</Example>

## 6. BCH 公式

$e^Xe^Y=e^Z$ となる $Z$ を、$X,Y$ の括弧だけで書くのがこの節の目標です。鍵は次の補題です。

<Lemma id="lem-dexp" title="指数写像の微分公式">
$X(t)$ を $M_n(\mathbb{C})$ に値をとる滑らかな曲線とすると
$$
e^{-X(t)}\frac{d}{dt}e^{X(t)}=\frac{I-e^{-\operatorname{ad}X(t)}}{\operatorname{ad}X(t)}\bigl(X'(t)\bigr):=\sum_{k\ge0}\frac{(-1)^k}{(k+1)!}\bigl(\operatorname{ad}X(t)\bigr)^k\bigl(X'(t)\bigr).
$$
</Lemma>

<Proof of="lem-dexp">
$t$ を固定し、$Y(s)=e^{-sX(t)}\,\partial_t\bigl(e^{sX(t)}\bigr)$ とおきます（$e^{sX(t)}$ は $(s,t)$ の滑らかな関数なので偏微分の順序は交換できます）。$\partial_t(Xe^{sX})=X'e^{sX}+X\partial_te^{sX}$ と、$X$ が $e^{\pm sX}$ と可換であることを使うと
$$
\partial_sY=-Xe^{-sX}\partial_te^{sX}+e^{-sX}\partial_t\bigl(Xe^{sX}\bigr)=-XY+e^{-sX}X'e^{sX}+XY=e^{-s\operatorname{ad}X}(X')
$$
です（最後に <Ref to="lem-ad-differential" /> を使いました）。$Y(0)=0$ なので
$$
Y(1)=\int_0^1e^{-s\operatorname{ad}X}(X')\,ds=\sum_{k\ge0}\frac{(-1)^k}{k!}\int_0^1s^k\,ds\,(\operatorname{ad}X)^k(X')
$$
で、これが主張の式です（級数は $\operatorname{ad}X$ について絶対収束するので項別積分できます）。
</Proof>

$\operatorname{ad}X$ は $M_n(\mathbb{C})$ 上の線形作用素で、$\|\operatorname{ad}X\|\le2\|X\|$ です（$\|XY-YX\|\le2\|X\|\|Y\|$）。関数

$$
\psi(w)=\frac{w\log w}{w-1}=1+\sum_{m\ge1}\frac{(-1)^{m+1}}{m(m+1)}(w-1)^m\qquad(|w-1|\lt1)
$$

を導入します。右辺は $w\log w=(1+u)\log(1+u)$（$u=w-1$）を展開して $u$ で割れば得られます。

<Theorem id="thm-bch" title="BCH 公式（積分表示と収束域）">
$X,Y\in M_n(\mathbb{C})$ が $\|X\|+\|Y\|\lt\frac14$ を満たすとき、$Z=\log(e^Xe^Y)$ が定義されて $e^Z=e^Xe^Y$ であり、
$$
Z=X+\int_0^1\psi\bigl(e^{\operatorname{ad}X}e^{t\operatorname{ad}Y}\bigr)(Y)\,dt
$$
が成り立つ。右辺の $\psi(\cdots)$ を冪級数で展開し、さらに $e^{\operatorname{ad}X}e^{t\operatorname{ad}Y}$ を展開して得られる $X,Y$ の反復交換子の級数は絶対収束し、その最初の項は
$$
Z=X+Y+\frac12[X,Y]+\frac1{12}[X,[X,Y]]-\frac1{12}[Y,[X,Y]]+(\text{4 次以上の反復交換子})
$$
である。特に $Z$ は $X,Y$ が生成する Lie 部分環に属する。
</Theorem>

<Proof of="thm-bch">
**定義域。** $r=\|X\|+\|Y\|\lt\frac14$ とおきます。$t\in[0,1]$ に対し $\|e^Xe^{tY}-I\|\le e^{r}-1\lt1$ なので、$Z(t)=\log(e^Xe^{tY})$ が定義され、<Ref to="lem-exp-log" /> の 1 により $e^{Z(t)}=e^Xe^{tY}$、$\|Z(t)\|\le-\log(2-e^r)$ です。$e^{1/4}\approx1.284\lt2-2^{-1/2}\approx1.293$ なので $\|Z(t)\|\lt\frac12\log2$、したがって $\|\operatorname{ad}Z(t)\|\lt\log2$ です。

**微分方程式。** $e^{Z(t)}=e^Xe^{tY}$ を微分すると $e^{-Z}\frac{d}{dt}e^{Z}=e^{-tY}e^{-X}e^Xe^{tY}Y=Y$ なので、<Ref to="lem-dexp" /> から
$$
\frac{I-e^{-\operatorname{ad}Z}}{\operatorname{ad}Z}\bigl(Z'(t)\bigr)=Y .
$$
一方、<Ref to="lem-ad-differential" /> の式を $\operatorname{Ad}$ に使うと $e^{\operatorname{ad}Z(t)}=\operatorname{Ad}(e^{Z(t)})=\operatorname{Ad}(e^X)\operatorname{Ad}(e^{tY})=e^{\operatorname{ad}X}e^{t\operatorname{ad}Y}=:w(t)$ です。$\|w(t)-I\|\le e^{2r}-1\lt1$ で、$\|\operatorname{ad}Z\|\lt\log2$ なので <Ref to="lem-exp-log" /> の 2 を $M_n(\mathbb{C})$ 上の作用素に適用して $\operatorname{ad}Z(t)=\log w(t)$ です。

**逆に解く。** 冪級数 $f(z)=(1-e^{-z})/z$ と $g(w)=w\log w/(w-1)$ は、$w=e^z$ のとき $f(z)\,g(e^z)=1$ を満たします（$e^z\cdot z\cdot(1-e^{-z})/((e^z-1)z)=1$）。<Ref to="lem-exp-log" /> の証明と同じ「絶対収束する級数の並べ替え（<Ref to="mathematics/calculus/series-and-convergence#thm-double-series" />）と冪級数の一意性」の議論により、作用素についても $f(\operatorname{ad}Z)\,\psi(e^{\operatorname{ad}Z})=I$ が成り立ちます。よって
$$
Z'(t)=\psi\bigl(e^{\operatorname{ad}Z(t)}\bigr)(Y)=\psi\bigl(e^{\operatorname{ad}X}e^{t\operatorname{ad}Y}\bigr)(Y)
$$
で、$Z(0)=\log e^X=X$ と合わせて積分すれば積分表示を得ます。

**級数の絶対収束。** $w(t)-I=\sum_{(p,q)\ne(0,0)}\frac{t^q}{p!q!}(\operatorname{ad}X)^p(\operatorname{ad}Y)^q$ で、この展開の各項のノルムの和は $e^{2r}-1\lt1$ 以下です。$\psi(w)=1+\sum_m c_m(w-1)^m$、$|c_m|\le1$ なので、全部を展開した級数のノルムの和は $\|Y\|\sum_m(e^{2r}-1)^m\lt\infty$ で抑えられます。展開した各項は $(\operatorname{ad}X)^{p_1}(\operatorname{ad}Y)^{q_1}\cdots(Y)$ の形の反復交換子です。有限次元空間の部分空間は閉なので、$Z$ は $X,Y$ が生成する Lie 部分環に入ります。

**低次の項。** $(\operatorname{ad}Y)(Y)=0$ に注意して、3 次までを拾います。$\psi(w)=1+\frac12(w-1)-\frac16(w-1)^2+\cdots$、$w-1=\operatorname{ad}X+t\operatorname{ad}Y+\frac12(\operatorname{ad}X)^2+t\operatorname{ad}X\operatorname{ad}Y+\frac{t^2}2(\operatorname{ad}Y)^2+\cdots$ です。
- 1 次: $\int_0^1Y\,dt=Y$。
- 2 次: $\frac12\int_0^1[X,Y]\,dt=\frac12[X,Y]$。
- 3 次: $\frac12\cdot\frac12[X,[X,Y]]-\frac16\int_0^1\bigl([X,[X,Y]]+t[Y,[X,Y]]\bigr)dt=\frac1{12}[X,[X,Y]]-\frac1{12}[Y,[X,Y]]$。

$X$ を足して主張の展開を得ます。
</Proof>

<Example id="ex-heisenberg-bch" title="Heisenberg 群では BCH 公式が 2 次で終わる">
$X=\begin{pmatrix}0&a&c\\0&0&b\\0&0&0\end{pmatrix}$ の形の行列全体 $\mathfrak{n}$ では、$[X,Y]$ は右上の成分だけをもち、$[X,[X,Y]]=[Y,[X,Y]]=0$ です。よって 3 次以上の反復交換子はすべて $0$ で、$e^Xe^Y=e^{X+Y+\frac12[X,Y]}$ がノルムの制限なしに成り立ちます（両辺は成分の多項式なので、小さい $X,Y$ で一致すればすべてで一致します）。量子力学の正準交換関係 $[\hat x,\hat p]=i\hbar$ から得られる Weyl 関係 $e^{i\alpha\hat x}e^{i\beta\hat p}=e^{i\alpha\hat x+i\beta\hat p}e^{-i\alpha\beta\hbar/2}$ は、この式の無限次元版です。
</Example>

## 7. Lie 環の準同型の持ち上げ

BCH 公式は「群の積が、単位元の近くでは Lie 環の括弧だけで決まる」ことを言っています。これを使うと、Lie 環の準同型から群の準同型を作れます。

<Theorem id="thm-lifting-homomorphism" title="単連結な群への持ち上げ（Lie の第 2 定理）">
$G,H$ を行列 Lie 群とし、$G$ は連結かつ単連結とする。任意の Lie 環準同型 $\varphi\colon\mathfrak{g}\to\mathfrak{h}$ に対し、$d\Phi=\varphi$ を満たす連続（したがって滑らかな）群準同型 $\Phi\colon G\to H$ がただ 1 つ存在する。
</Theorem>

証明の方針は次のとおりです。単位元の近くでは BCH 公式のおかげで、$\varphi$ から局所的な準同型 $f$ が作れます。$G$ 全体では、$I$ から $g$ への道を細かく区切り、各区間の変化に $f$ を当てて掛け合わせます。この値が道の選び方によらないことを示すところで、単連結性（道が互いに変形できること）を使います。

<Proof of="thm-lifting-homomorphism">
一意性は <Ref to="cor-connected-determined" /> です。存在を 4 段階で示します。

**(a) 局所準同型。** $\varphi$ は線形なので $\|\varphi(X)\|\le C\|X\|$ となる $C\ge1$ があります。$\delta\gt0$ を $4C\delta\lt\frac14$ かつ $\delta\lt\frac18$ ととり、さらに <Ref to="thm-closed-subgroup" /> の近傍に収まるように小さくします。$U_\delta=\lbrace X\in\mathfrak{g} : \|X\|\lt\delta\rbrace$、$V_\delta=\exp(U_\delta)$ とおき、$f\colon V_\delta\to H$ を $f(e^X)=e^{\varphi(X)}$ で定めます（<Ref to="lem-exp-log" /> により $X=\log g$ は一意）。$X,Y\in U_{\delta}$ で $e^Xe^Y\in V_\delta$ のとき、$Z=\log(e^Xe^Y)$ は <Ref to="thm-bch" /> の反復交換子の級数で与えられ、$\varphi$ は連続な Lie 環準同型なので項ごとに $\varphi$ をかけて $\varphi(Z)=\log(e^{\varphi(X)}e^{\varphi(Y)})$ を得ます（右辺も $\|\varphi X\|+\|\varphi Y\|\lt\frac14$ なので BCH 級数で与えられます）。よって
$$
f(ab)=f(a)f(b)\qquad(a,b\in V_\delta,\ ab\in V_\delta)
$$
です。$f(a^{-1})=f(a)^{-1}$ も $e^{-X}$ を考えればわかります。

**(b) 道に沿った定義。** 以下 $V=V_{\delta/2}$ とおきます。$G$ は連結な多様体なので弧状連結です。$g\in G$ と、$I$ から $g$ への道 $\gamma\colon[0,1]\to G$ をとります。$[0,1]$ はコンパクトなので、分割 $0=t_0\lt t_1\lt\cdots\lt t_m=1$ を、$|s-s'|\le\max_j(t_j-t_{j-1})$ ならば $\gamma(s)^{-1}\gamma(s')\in V$ となるようにとれます（$\gamma(s)^{-1}\gamma(s')$ の一様連続性）。このとき
$$
\Phi_\gamma(g)=f\bigl(\gamma(t_0)^{-1}\gamma(t_1)\bigr)f\bigl(\gamma(t_1)^{-1}\gamma(t_2)\bigr)\cdots f\bigl(\gamma(t_{m-1})^{-1}\gamma(t_m)\bigr)
$$
と定めます。分割に 1 点 $s\in(t_{j-1},t_j)$ を追加しても値は変わりません。$a=\gamma(t_{j-1})^{-1}\gamma(s)$、$b=\gamma(s)^{-1}\gamma(t_j)$ はともに $V$ に入り、$ab\in V$ なので (a) から $f(a)f(b)=f(ab)$ だからです。2 つの分割は共通の細分をもつので、$\Phi_\gamma(g)$ は分割によりません。

**(c) 道によらないこと。** $\gamma_0,\gamma_1$ を $I$ から $g$ への 2 本の道とすると、$G$ は単連結なので端点を固定したホモトピー $F\colon[0,1]^2\to G$、$F(\cdot,0)=\gamma_0$、$F(\cdot,1)=\gamma_1$ があります。一様連続性から $N$ を、辺の長さ $1/N$ の正方形の中の任意の 2 点 $p,q$ について $F(p)^{-1}F(q)\in V$ となるようにとります。$\gamma_0$ から出発し、格子の小正方形を 1 つずつ越えて道を変形していくと、各段階で道は「小正方形の 2 辺」を「残りの 2 辺」に置き換えるだけです。正方形の頂点を $p_0,p_1,p_2,p_3$ とすると、(a) により
$$
f\bigl(F(p_0)^{-1}F(p_1)\bigr)f\bigl(F(p_1)^{-1}F(p_2)\bigr)=f\bigl(F(p_0)^{-1}F(p_2)\bigr)=f\bigl(F(p_0)^{-1}F(p_3)\bigr)f\bigl(F(p_3)^{-1}F(p_2)\bigr)
$$
なので値は変わりません（現れる 3 つの元 $F(p_0)^{-1}F(p_1)$、$F(p_1)^{-1}F(p_2)$、$F(p_0)^{-1}F(p_2)$ はどれも $V\subset V_\delta$ に入るので、(a) が使えます）。正方形の辺 $s=0$、$s=1$ 上では $F$ は定数 $I$、$g$ で $f(I)=I$ なので寄与しません。$N^2$ 回で $\gamma_1$ に到達するので $\Phi_{\gamma_0}(g)=\Phi_{\gamma_1}(g)$ です。これを $\Phi(g)$ と書きます。

**(d) 準同型であること。** $\gamma$ を $I$ から $g$、$\eta$ を $I$ から $h$ への道とすると、$\gamma$ のあとに $g\eta$ をつないだ道は $I$ から $gh$ への道で、$(g\eta(s))^{-1}g\eta(s')=\eta(s)^{-1}\eta(s')$ なので $\Phi(gh)=\Phi(g)\Phi(h)$ です。$g\in V$ なら直線的な道 $s\mapsto e^{s\log g}$ を使って $\Phi(g)=f(g)$ なので、$\Phi$ は $I$ の近くで連続、したがって準同型であることから至るところ連続です。$\Phi(e^{tX})=e^{t\varphi(X)}$（$t$ が小さいとき）から $d\Phi=\varphi$ です。
</Proof>

<Remark id="rem-lie-first-third" title="Lie の第 1・第 3 定理について">
[リー群とリー環](/mathematics/manifolds/lie-groups) の <Ref to="mathematics/manifolds/lie-groups#rem-lie-correspondence" /> に挙げた 3 つの定理のうち、この記事で証明したのは第 2 定理（<Ref to="thm-lifting-homomorphism" />）です。第 1 定理（部分 Lie 環と連結 Lie 部分群の対応）は、左不変な分布に Frobenius の定理（<Ref to="mathematics/manifolds/flows-lie-derivative-frobenius#thm-frobenius" />）を適用し、極大積分多様体を構成して示します。第 3 定理は、有限次元 Lie 環が忠実な有限次元表現をもつこと（Ado の定理）に帰着します。このテーマの後続の章では、第 2 定理と閉部分群定理だけを使います。
</Remark>

単連結性の仮定は外せません。次の節で見るように $SO(3)$ は単連結ではなく、Lie 環の同型 $\mathfrak{so}(3)\to\mathfrak{su}(2)$ は $SO(3)\to SU(2)$ の準同型には持ち上がりません（演習 3）。

## 8. 被覆準同型：SU(2)→SO(3) と Spin(n)→SO(n)

<Lemma id="lem-covering-homomorphism" title="微分が同型な全射準同型は被覆写像">
$p\colon G\to H$ を行列 Lie 群の連続な全射準同型とし、微分 $dp\colon\mathfrak{g}\to\mathfrak{h}$ が線形同型であるとする。このとき $K=\ker p$ は離散的な正規部分群であり、$p$ は被覆写像（<Ref to="mathematics/algebraic-topology/fundamental-group-coverings#def-covering" />）で、各点の逆像は $K$ の剰余類である。
</Lemma>

<Proof of="lem-covering-homomorphism">
$\varphi=dp$ とおきます。<Ref to="thm-closed-subgroup" /> の近傍を $G$ と $H$ の両方でとり、$U\subset\mathfrak{g}$ を十分小さい $0$ の開近傍として $V_G=\exp(U)$、$V_H=\exp(\varphi(U))$ とします。$\varphi(U)$ は $\mathfrak{h}$ の開集合なので $V_H$ は $H$ の開集合で、$p(e^X)=e^{\varphi(X)}$ により $p|_{V_G}\colon V_G\to V_H$ は全単射、逆写像 $e^Y\mapsto e^{\varphi^{-1}(Y)}$ も連続です。特に $K\cap V_G=\lbrace I\rbrace$ で、$K$ は離散です。

$I$ の開近傍 $W$ を、$W=W^{-1}$ かつ $WW\subset V_G$ となるようにとります。$h\in H$ に対し $p(g)=h$ となる $g$ をとると、$hp(W)$ は $h$ の開近傍で
$$
p^{-1}\bigl(hp(W)\bigr)=\bigsqcup_{k\in K}gkW
$$
です。実際、$p(x)=hp(w)$ なら $k:=g^{-1}xw^{-1}\in K$ で $x=gkw$ です。また $gkw=gk'w'$ なら $k'^{-1}k=w'w^{-1}\in WW\cap K=\lbrace I\rbrace$ なので和は互いに素です。各 $gkW$ 上で $p(x)=h\,p\bigl((gk)^{-1}x\bigr)$ は、同相写像 $p|_W\colon W\to p(W)$ を左移動ではさんだものなので、$gkW\to hp(W)$ は同相です。
</Proof>

$\mathfrak{su}(2)$ の基底 $E_k=-\frac{i}{2}\sigma_k$（$\sigma_k$ は Pauli 行列）をとると、$\sigma_1\sigma_2=i\sigma_3$ などから
$$
[E_1,E_2]=E_3,\qquad[E_2,E_3]=E_1,\qquad[E_3,E_1]=E_2,\qquad\operatorname{tr}(E_jE_k)=-\tfrac12\delta_{jk}
$$
です。内積 $\langle X,Y\rangle=-2\operatorname{tr}(XY)$ で $E_1,E_2,E_3$ は正規直交基底になり、$\mathfrak{su}(2)\cong\mathbb{R}^3$ と同一視できます。

<Theorem id="thm-su2-so3" title="SU(2) は SO(3) の普遍被覆">
$\operatorname{Ad}\colon SU(2)\to GL(\mathfrak{su}(2))\cong GL(3,\mathbb{R})$ は $SO(3)$ への連続な全射準同型で、核は $\lbrace\pm I\rbrace$、被覆写像である。$SU(2)$ は単連結なので、これは普遍被覆であり、$\pi_1(SO(3))\cong\mathbb{Z}/2$ である。
</Theorem>

<Proof of="thm-su2-so3">
**像は $SO(3)$。** $\langle gXg^{-1},gYg^{-1}\rangle=-2\operatorname{tr}(gXYg^{-1})=\langle X,Y\rangle$ なので $\operatorname{Ad}(g)\in O(3)$ です。$SU(2)=\Bigl\{\begin{pmatrix}a&-\bar b\\ b&\bar a\end{pmatrix}:|a|^2+|b|^2=1\Bigr\}$ は $(a,b)\in S^3\subset\mathbb{C}^2$ と同相で、$S^3$ は道連結なので連結です。したがって $\det\circ\operatorname{Ad}$ は連続で $\pm1$ に値をとり、$g=I$ で $1$ ですから、像は $SO(3)$ に入ります。

**微分は同型。** <Ref to="lem-ad-differential" /> より微分は $\operatorname{ad}\colon\mathfrak{su}(2)\to\mathfrak{so}(3)$ です。$\operatorname{ad}X=0$ なら $X$ はすべての $\sigma_k$ と可換で、$I,\sigma_1,\sigma_2,\sigma_3$ は $M_2(\mathbb{C})$ を張るので $X$ はスカラー行列、トレース $0$ から $X=0$ です。両辺とも 3 次元なので $\operatorname{ad}$ は同型です。

**全射。** $R\in SO(3)$ は固有値 $1$ をもちます（$\det(R-I)=\det(R^{\mathsf T})\det(I-R^{\mathsf T})\cdot\det R=-\det(R-I)$ より $\det(R-I)=0$）。回転軸 $\boldsymbol n$ とそれに直交する平面を基底にとると、$R$ はその平面内の角 $\theta$ の回転で、$R=e^{\theta A}$（$A\in\mathfrak{so}(3)$ はその平面の無限小回転）と書けます。$A=\operatorname{ad}X$ となる $X$ をとれば $\operatorname{Ad}(e^{\theta X})=e^{\theta\operatorname{ad}X}=R$ です。

**核。** $\operatorname{Ad}(g)=\mathrm{id}$ なら $g$ はすべての $E_k$ と可換なので、上と同じ理由でスカラー行列 $g=\lambda I$、$\det g=\lambda^2=1$ から $g=\pm I$ です。

**被覆と基本群。** <Ref to="lem-covering-homomorphism" /> により $\operatorname{Ad}$ は被覆写像です。$S^3$ は単連結（<Ref to="mathematics/algebraic-topology/fundamental-group-coverings#prop-sphere-simply-connected" />）なので普遍被覆です。$g\mapsto-g$ は被覆変換で、<Ref to="mathematics/algebraic-topology/fundamental-group-coverings#thm-deck-group" /> の 1 により被覆変換は $I$ の行き先（$\pm I$）で決まるので、被覆変換群は位数 $2$ です。同じ定理の 2 から $\pi_1(SO(3))\cong\mathbb{Z}/2$ です。
</Proof>

<Figure caption="2 重被覆 Spin(n)→SO(n) の模式図。上の閉路 θ↦cos θ+sin θ·c(e₁)c(e₂)（θ∈[0,2π]）は、下では 2θ の回転として SO(n) の閉路を 2 周する。θ∈[0,π] の半分だけで下の閉路は 1 周するが、上では 1 から −1 への道にしかならない。">
<svg viewBox="0 0 440 300" width="100%" role="img" aria-label="2 重被覆で上の円が下の円を 2 周する様子">
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  <text x="34" y="66" font-size="13" fill="currentColor">−1</text>
  <text x="196" y="22" font-size="13" fill="currentColor">Spin(n)</text>
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  <text x="230" y="152" font-size="13" fill="currentColor">ρ（2 対 1）</text>
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  <text x="340" y="228" font-size="13" fill="currentColor">I</text>
  <text x="200" y="290" font-size="13" fill="currentColor">SO(n)</text>
</svg>
</Figure>

一般の $n$ に対して同じことをするには、$\mathbb{R}^n$ の「平方根」をとる代数が必要です。外積代数 $\Lambda=\Lambda(\mathbb{R}^n)$（<Ref to="mathematics/linear-algebra/tensor-products#prop-wedge-product" />）の中で、それを具体的に作ります。$e_1,\dots,e_n$ を標準基底、$I=\lbrace i_1\lt\cdots\lt i_k\rbrace$ に対し $e_I=e_{i_1}\wedge\cdots\wedge e_{i_k}$（$e_\emptyset=1$）とし、$\lbrace e_I\rbrace$ が正規直交基底となる内積を $\Lambda$ に入れます。$v\in\mathbb{R}^n$ に対し、外積 $\varepsilon(v)\omega=v\wedge\omega$ と、その随伴作用素 $\iota(v)=\varepsilon(v)^{*}$（縮約）を考えます。

<Lemma id="lem-clifford-relation" title="Clifford 関係式">
$c(v)=\varepsilon(v)-\iota(v)\in\operatorname{End}(\Lambda)$ とおくと、$v,w\in\mathbb{R}^n$ について
$$
c(v)c(w)+c(w)c(v)=-2\langle v,w\rangle\,I
$$
が成り立つ。特に $|u|=1$ なら $c(u)^2=-I$ で、$c(u)$ は直交変換である。
</Lemma>

この補題のねらいは、$c(v)$ という作用素を、二乗すると $-|v|^2$ になるものとして作ることです。ベクトル $v$ を二乗して数 $-|v|^2$ にする、いわば「$\mathbb{R}^n$ の平方根」にあたり、これを使って鏡映を表します。証明は、$v,w$ が基底ベクトルの場合に符号を丁寧に数えるだけの計算です。

<Proof of="lem-clifford-relation">
$\varepsilon(v)^2=0$ は $v\wedge v=0$ から、$\iota(v)^2=(\varepsilon(v)^2)^*=0$ です。残るのは $\varepsilon(v)\iota(w)+\iota(w)\varepsilon(v)=\langle v,w\rangle I$ で、両辺は $v,w$ について双線形なので $v=e_j$、$w=e_l$ で確かめれば十分です。随伴の定義から $\iota(e_l)e_I$ は、$l=i_p\in I$ なら $(-1)^{p-1}e_{I\setminus\lbrace l\rbrace}$、$l\notin I$ なら $0$ です。$j=l$ のとき、$j\in I$ なら $\varepsilon\iota\,e_I=(-1)^{p-1}e_j\wedge e_{I\setminus\lbrace j\rbrace}=e_I$、$\iota\varepsilon\,e_I=0$ です。$j\notin I$ なら $e_j\wedge e_I=(-1)^qe_{I\cup\lbrace j\rbrace}$（$q$ は $I$ のうち $j$ より小さい元の個数）で、$j$ は $I\cup\lbrace j\rbrace$ の $q+1$ 番目なので $\iota\varepsilon\,e_I=e_I$、$\varepsilon\iota\,e_I=0$ です。$j\ne l$ のとき、2 つの項がともに $0$ でないのは $l\in I$、$j\notin I$ の場合だけで、どちらも $\pm e_{(I\setminus\lbrace l\rbrace)\cup\lbrace j\rbrace}$ になります。符号の指数を数えると、$\varepsilon\iota$ の項は（$l$ の $I$ での位置 $-1$）$+$（$I\setminus\lbrace l\rbrace$ のうち $j$ より小さい元の個数）、$\iota\varepsilon$ の項はそれに $[l\lt j]+[j\lt l]=1$ を加えたものなので、和は $0$ です。以上から関係式を得ます。

$|u|=1$ なら $c(u)^2=-I$ で、$c(u)^*=\iota(u)-\varepsilon(u)=-c(u)$ なので $c(u)^*c(u)=-c(u)^2=I$ です。
</Proof>

$c(e_j)$ たちが生成する $\operatorname{End}(\Lambda)$ の部分代数を **Clifford 代数** $C\ell_n$ と書きます。$c_I=c(e_{i_1})\cdots c(e_{i_k})$ とおくと、$c_I(1)=e_I$ なので $\lbrace c_I\rbrace$ は線形独立で、関係式から $C\ell_n$ を張ります。よって $\dim C\ell_n=2^n$ です。$|I|$ が偶数の $c_I$ が張る部分代数を $C\ell_n^0$ と書きます。

<Definition id="def-spin-group" title="Spin 群">
$n\ge2$ とする。単位ベクトル $u_1,\dots,u_{2k}\in S^{n-1}$（$k\ge0$）の積 $c(u_1)c(u_2)\cdots c(u_{2k})$ 全体を $\mathrm{Spin}(n)$ と書く。
</Definition>

$c(u)^{-1}=-c(u)$ なので $\mathrm{Spin}(n)$ は $GL(\Lambda)$ の部分群です。

<Lemma id="lem-cartan-dieudonne" title="直交変換は鏡映の積">
$O(n)$ の任意の元は、高々 $n$ 個の超平面鏡映 $R_u(x)=x-2\langle u,x\rangle u$（$|u|=1$）の積である。特に $SO(n)$ の元は偶数個の鏡映の積である。
</Lemma>

<Proof of="lem-cartan-dieudonne">
$n$ についての帰納法です。$A\in O(n)$ とします。$Ae_n\ne e_n$ なら $u=(Ae_n-e_n)/|Ae_n-e_n|$ とおくと、$|Ae_n|=|e_n|$ から $R_u(Ae_n)=e_n$ です。$Ae_n=e_n$ なら $R_u$ を省きます。いずれにしても $A'=R_uA$（または $A$）は $e_n$ を固定し、$e_n^\perp\cong\mathbb{R}^{n-1}$ を保つ直交変換なので、帰納法の仮定から $e_n^\perp$ 内の単位ベクトルによる高々 $n-1$ 個の鏡映の積です。それらは $\mathbb{R}^n$ の鏡映としても $e_n$ を固定するので、$A$ は高々 $n$ 個の鏡映の積です。$\det R_u=-1$ なので後半も従います。
</Proof>

<Theorem id="thm-spin-cover" title="Spin(n) は SO(n) の連結な 2 重被覆">
$n\ge2$ とする。$a\in\mathrm{Spin}(n)$ と $x\in\mathbb{R}^n$ に対し $a\,c(x)\,a^{-1}=c\bigl(\rho(a)x\bigr)$ で $\rho(a)\in SO(n)$ が定まり、$\rho\colon\mathrm{Spin}(n)\to SO(n)$ は連続な全射準同型で、核は $\lbrace\pm1\rbrace$ である。$\mathrm{Spin}(n)$ はコンパクトかつ連結な行列 Lie 群で、$\rho$ は被覆写像である。
</Theorem>

<Proof of="thm-spin-cover">
**鏡映との関係。** $|u|=1$ とすると、<Ref to="lem-clifford-relation" /> から $c(u)c(x)=-c(x)c(u)-2\langle u,x\rangle$ なので
$$
c(u)c(x)c(u)^{-1}=-c(u)c(x)c(u)=c(x)c(u)^2+2\langle u,x\rangle c(u)=-c\bigl(R_u(x)\bigr)
$$
です。偶数個の積では符号が打ち消し合い、$a=c(u_1)\cdots c(u_{2k})$ について $ac(x)a^{-1}=c(R_{u_1}\cdots R_{u_{2k}}x)$ です。$c$ は単射な線形写像なので $\rho(a)=R_{u_1}\cdots R_{u_{2k}}\in SO(n)$ が well-defined で、準同型かつ連続です。<Ref to="lem-cartan-dieudonne" /> により全射です。

**核。** $\rho(a)=I$ なら $a$ はすべての $c(e_j)$ と可換です。$a\in C\ell_n^0$ を $a=\sum_{|I|\text{ 偶}}a_Ic_I$ と展開します。$I\ne\emptyset$、$|I|$ 偶数で $j\in I$ なら、$c(e_j)$ は $c_I$ の中の自分以外の奇数個の因子と反可換なので $c(e_j)c_I=-c_Ic(e_j)$ です。$c(e_j)ac(e_j)^{-1}=a$ の $c_I$ の係数を比べて $a_I=-a_I=0$ です。よって $a=\lambda I$ で、$a$ は直交変換（<Ref to="lem-clifford-relation" />）の積なので $\lambda=\pm1$ です。逆に $-1=c(e_1)c(e_1)\in\mathrm{Spin}(n)$ です。

**コンパクト性と連結性。** $S_{2k}\subset\mathrm{Spin}(n)$ を、ちょうど $2k$ 個の単位ベクトルの積全体とします。$c(u)c(-u)=-c(u)^2=1$ なので $S_{2k}\subset S_{2k+2}$ です。$a\in\mathrm{Spin}(n)$ なら $\rho(a)$ は $2j\le n$ 個の鏡映の積なので、$a=\pm a'$（$a'\in S_{2j}$）であり、$-a'=c(e_1)c(e_1)a'\in S_{2j+2}$ です。よって $m=2\lfloor n/2\rfloor+2$ とおくと $\mathrm{Spin}(n)=S_m$ で、これはコンパクト連結な $(S^{n-1})^m$ の連続像なのでコンパクト（とくに $GL(\Lambda)$ で閉）かつ連結です。

**被覆。** $e^{\theta c(e_i)c(e_j)}=\cos\theta+\sin\theta\,c(e_i)c(e_j)=c(e_i)\,c(-\cos\theta\,e_i+\sin\theta\,e_j)\in\mathrm{Spin}(n)$（$i\ne j$、$(c(e_i)c(e_j))^2=-1$ を使う）なので、線形独立な $\frac{n(n-1)}2$ 個の $c(e_i)c(e_j)$（$i\lt j$）は $\mathrm{Spin}(n)$ の Lie 環に入ります。一方 $d\rho(X)=0$ なら $\rho(e^{tX})=I$、すなわち $e^{tX}\in\lbrace\pm1\rbrace$ がすべての $t$ で成り立ち、連続性から $e^{tX}=1$、よって $X=0$ です。$d\rho$ は単射で、$\dim\mathfrak{spin}(n)\ge\dim\mathfrak{so}(n)$ なので同型です。<Ref to="lem-covering-homomorphism" /> から $\rho$ は被覆写像です。
</Proof>

<Proposition id="prop-spin-simply-connected" title="Spin(n) の単連結性">
$n\ge3$ ならば $\pi_1(SO(n))\cong\mathbb{Z}/2$ であり、$\mathrm{Spin}(n)$ は単連結である。したがって $\rho\colon\mathrm{Spin}(n)\to SO(n)$ は普遍被覆である。
</Proposition>

この命題のねらいは、$SO(n)$ の輪っかの様子を、次元を 1 つ下げた $SO(n-1)$ に落として調べることです。$SO(n)$ の元 $A$ を、$e_n$ の行き先 $Ae_n$ という球面 $S^{n-1}$ の点と、その点を決めたうえでの残りの自由度（$SO(n-1)$）に分けて考えます。球面が十分高次元なら輪っかは縮むので、$\pi_1$ が次元を上げても変わらない、という流れです。

<Proof of="prop-spin-simply-connected">
**$\pi_1(SO(n))$。** $n\ge2$ について、$p\colon SO(n)\to S^{n-1}$、$p(A)=Ae_n$ を考えます。これは全射で、ファイバー $p^{-1}(e_n)$ は $e_n$ を固定する $SO(n)$ の元の全体、つまり $SO(n-1)$ です。ファイバー束であることは次のとおりです。$S^{n-1}\setminus\lbrace-e_n\rbrace$ 上で、$v$ を $e_n$ と $v$ の張る平面内の最短の回転で $e_n$ から $v$ に送る回転 $T(v)\in SO(n)$ が $v$ の連続関数として定まり（$v=e_n$ で $T=I$）、$(v,B)\mapsto T(v)B$ が $(S^{n-1}\setminus\lbrace-e_n\rbrace)\times SO(n-1)\to p^{-1}(S^{n-1}\setminus\lbrace-e_n\rbrace)$ の同相写像を与えます（逆は $A\mapsto(Ae_n,T(Ae_n)^{-1}A)$）。$-e_n$ のまわりも、$e_n$ を別の単位ベクトルに替えて同様です。したがって <Ref to="mathematics/algebraic-topology/homotopy-groups#prop-bundle-fibration" /> によりファイブレーションで、<Ref to="mathematics/algebraic-topology/homotopy-groups#thm-fibration-les" /> から
$$
\pi_2(S^{n-1})\to\pi_1(SO(n-1))\to\pi_1(SO(n))\to\pi_1(S^{n-1})
$$
が完全です。$n\ge4$ なら両端は $0$（<Ref to="mathematics/algebraic-topology/homotopy-groups#prop-sphere-low" />）なので $\pi_1(SO(n-1))\cong\pi_1(SO(n))$ です。$\pi_1(SO(3))\cong\mathbb{Z}/2$（<Ref to="thm-su2-so3" />）から、帰納的に $n\ge3$ で $\pi_1(SO(n))\cong\mathbb{Z}/2$ です。

**$\mathrm{Spin}(n)$。** $\mathrm{Spin}(n)$ は連結（<Ref to="thm-spin-cover" />）なので、$1$ から $-1$ への道 $\tilde\gamma$ があります。$\gamma=\rho\circ\tilde\gamma$ は $SO(n)$ の閉路で、$\tilde\gamma$ はその持ち上げであり終点が始点と異なるので、閉路として持ち上がりません。$\pi_1(SO(n))=\lbrace0,[\gamma]\rbrace$ です（$[\gamma]\ne0$ は、零ホモトピックなら持ち上げの終点が始点に戻るはずだからです。<Ref to="mathematics/algebraic-topology/fundamental-group-coverings#thm-homotopy-lifting" />）。$\rho_*\colon\pi_1(\mathrm{Spin}(n))\to\pi_1(SO(n))$ は単射（<Ref to="mathematics/algebraic-topology/fundamental-group-coverings#prop-p-injective" />）で、像は閉路として持ち上がる類からなるので $[\gamma]$ を含みません。よって像は $0$、$\pi_1(\mathrm{Spin}(n))=0$ です。
</Proof>

したがって $n\ge3$ では $\mathrm{Spin}(n)\to SO(n)$ は普遍被覆です。物理で「スピノル」と呼ばれるのは、$\rho$ を経由しない $\mathrm{Spin}(n)$ の表現、つまり $-1$ を $-I$ で表す表現です。$\Lambda$ 自身への作用はその例です。

## 9. 演習

<Exercise id="exr-irrational-line" difficulty="標準">
<Ref to="rem-closed-needed" /> の部分群 $H=\lbrace\operatorname{diag}(e^{it},e^{i\alpha t})\rbrace$（$\alpha$ は無理数）について、次を示してください。(1) $H$ の閉包は $T^2$ 全体である。(2) $H$ に $T^2$ からの相対位相を入れると、$I$ の十分小さい近傍はどれも弧状連結でない。したがって $H$ は相対位相で多様体ではない。（ヒント: (1) は $\lbrace n\alpha\bmod1\rbrace$ が $[0,1)$ で稠密であることを使ってよい。）
<Solution>
(1) $t=2\pi n$（$n\in\mathbb{Z}$）とおくと $\operatorname{diag}(1,e^{2\pi in\alpha})\in H$ で、$\lbrace n\alpha\bmod1\rbrace$ の稠密性から $\lbrace1\rbrace\times S^1\subset\overline H$ です。任意の $(e^{i\theta},e^{i\phi})$ は $\operatorname{diag}(e^{i\theta},e^{i\alpha\theta})\cdot\operatorname{diag}(1,e^{i(\phi-\alpha\theta)})$ と書けるので、$\overline H=T^2$ です。

(2) 被覆 $\mathbb{R}^2\to T^2$、$(\theta,\phi)\mapsto\operatorname{diag}(e^{i\theta},e^{i\phi})$ で $H$ の逆像は、互いに平行な可算個の直線 $L_{m,n}=\lbrace(t+2\pi m,\alpha t+2\pi n)\rbrace$ の和です。$H$ 内の道を $\mathbb{R}^2$ に持ち上げると（<Ref to="mathematics/algebraic-topology/fundamental-group-coverings#thm-homotopy-lifting" />）、その像は連結で、直線に垂直な方向の座標は可算集合に値をとるので定数、すなわち持ち上げは 1 本の直線に留まります。よって $H$ 内の道は $\operatorname{diag}(e^{it(\tau)},e^{i\alpha t(\tau)})$（$t(\tau)$ は連続）の形です。$\varepsilon\lt\pi$ として $N=\lbrace|\theta|\lt\varepsilon,|\phi|\lt\varepsilon\rbrace$（偏角で表す）の中の道では、$t(\tau)$ は $2\pi\mathbb{Z}$ の 1 つの元の $\varepsilon$ 近傍から出られません。ところが (1) の議論から、$I$ の任意の近傍は $t\in2\pi n+(-\varepsilon,\varepsilon)$（$n\ne0$）の形の点を含みます。したがって $N\cap H$ に含まれる $I$ の近傍は、$I$ と道で結べない点を含み、弧状連結ではありません。多様体は局所弧状連結なので、$H$ は相対位相で多様体ではありません。
</Solution>
</Exercise>

<Exercise id="exr-spin3-su2" difficulty="標準">
$n=3$ とし、$\mathrm{Spin}(3)\subset C\ell_3^0$ を考えます。$q_1=c(e_2)c(e_3)$、$q_2=c(e_3)c(e_1)$、$q_3=c(e_1)c(e_2)$ とおきます。(1) $q_k^2=-1$、$q_1q_2=-q_3$ などの関係を確かめ、$C\ell_3^0$ が四元数体 $\mathbb{H}$ と同型であることを示してください。(2) $\mathrm{Spin}(3)$ が単位四元数の群、したがって $SU(2)$ と同型であることを示してください。
<Solution>
(1) $c_j=c(e_j)$ とおくと $c_jc_k=-c_kc_j$（$j\ne k$）、$c_j^2=-1$ です。$q_1^2=c_2c_3c_2c_3=-c_2c_2c_3c_3=-1$ で、他も同様です。$q_1q_2=c_2(c_3c_3)c_1=-c_2c_1=c_1c_2=q_3$ で、同様に $q_2q_3=q_1$、$q_3q_1=q_2$ です。よって $i\mapsto q_1$、$j\mapsto q_2$、$k\mapsto q_3$ とすると $ij=k$ などの四元数の関係を満たし、$\lbrace1,q_1,q_2,q_3\rbrace$ は $C\ell_3^0$ の基底なので $C\ell_3^0\cong\mathbb{H}$ です。

(2) $a=a_0+\sum a_kq_k$ に対し $\bar a=a_0-\sum a_kq_k$ とすると $a\bar a=\sum a_\mu^2$ です。単位ベクトルの積 $c(u)c(w)=-\langle u,w\rangle+(u\times w\text{ の成分を係数とする }q_k\text{ の和})$ はノルム $|u||w|=1$ をもつので、$\mathrm{Spin}(3)$ は単位四元数に含まれます。両者とも連結な 3 次元の群で、単位四元数の群は $S^3$ でコンパクト連結、$\mathrm{Spin}(3)$ はその閉部分群で同じ次元なので開かつ閉、よって一致します。単位四元数の群が $SU(2)$ と同型であることは $a_0+a_1i+a_2j+a_3k\mapsto a_0I-i(a_1\sigma_1+a_2\sigma_2+a_3\sigma_3)$ で確かめられます（$-i\sigma_1,-i\sigma_2,-i\sigma_3$ は四元数の関係 $(-i\sigma_1)(-i\sigma_2)=-i\sigma_3$ を満たします）。
</Solution>
</Exercise>

<Exercise id="exr-no-lift-so3" difficulty="易">
Lie 環の同型 $\psi=\operatorname{ad}^{-1}\colon\mathfrak{so}(3)\to\mathfrak{su}(2)$ に対し、$d\Phi=\psi$ を満たす連続準同型 $\Phi\colon SO(3)\to SU(2)$ が存在しないことを示してください。
<Solution>
存在したとすると、$\operatorname{Ad}\circ\Phi\colon SO(3)\to SO(3)$ の微分は $\operatorname{ad}\circ\psi=\mathrm{id}$ なので、<Ref to="cor-connected-determined" /> により $\operatorname{Ad}\circ\Phi=\mathrm{id}$ です（$SO(3)$ は <Ref to="thm-su2-so3" /> により連結な $SU(2)$ の像なので連結）。$A\in\mathfrak{so}(3)$ を軸 $e_3$ まわりの無限小回転とすると $e^{2\pi A}=I$ なので $\Phi(I)=\Phi(e^{2\pi A})=e^{2\pi\psi(A)}$ です。$\psi(A)=E_3=-\frac i2\sigma_3$ なので $e^{2\pi E_3}=\operatorname{diag}(e^{-i\pi},e^{i\pi})=-I$ となり、$\Phi(I)=I$ に矛盾します。
</Solution>
</Exercise>

<Exercise id="exr-bch-fourth" difficulty="難">
<Ref to="thm-bch" /> の積分表示から、$Z$ の 4 次の項が $-\frac1{24}[Y,[X,[X,Y]]]$ であることを示してください。
<Solution>
$\operatorname{ad}Y(Y)=0$ を使いながら、$\psi(w)=1+\frac12u-\frac16u^2+\frac1{12}u^3-\cdots$（$u=w-1$）の各項から 4 次の寄与を拾います。$A=\operatorname{ad}X$、$B=\operatorname{ad}Y$ と書き、$u=A+tB+\frac12A^2+tAB+\frac{t^2}2B^2+\frac16A^3+\frac t2A^2B+\frac{t^2}2AB^2+\frac{t^3}6B^3+\cdots$ です。$Y$ に作用させたとき右端の $B$ は消えます。
- $\frac12u$ から: $\frac12\bigl(\frac16A^3+\frac t2A^2B+\frac{t^2}2AB^2\bigr)Y=\frac1{12}A^3Y$。
- $-\frac16u^2$ から 4 次: $-\frac16\bigl[(A+tB)(\frac12A^2+tAB)+(\frac12A^2+tAB+\frac{t^2}2B^2)(A+tB)\bigr]Y=-\frac16\bigl[\frac12A^3+\frac t2BA^2+\frac12A^3+tABA+\frac{t^2}2B^2A\bigr]Y$（$AB\,Y$、$A^2BY$ などは $0$）。
- $\frac1{12}u^3$ から: $\frac1{12}(A+tB)^3Y=\frac1{12}\bigl(A^3+tBA^2+tABA+t^2B^2A+tA^2B+\cdots\bigr)Y$ のうち $Y$ の右端が $A$ の項 $\frac1{12}(A^3+tBA^2+tABA+t^2BBA)Y$。

$t$ で積分すると、$A^3Y$ の係数は $\frac1{12}-\frac16+\frac1{12}=0$、$BA^2Y$ は $-\frac1{24}+\frac1{24}=0$、$ABAY$ は $-\frac1{12}+\frac1{24}=-\frac1{24}$、$B^2AY$ は $-\frac1{36}+\frac1{36}=0$ です。$ABAY=[X,[Y,[X,Y]]]$ で、Jacobi 恒等式と $[X,Y]$ の反対称性から $[X,[Y,[X,Y]]]=[Y,[X,[X,Y]]]$ なので、4 次の項は $-\frac1{24}[Y,[X,[X,Y]]]$ です。
</Solution>
</Exercise>

## 参考文献

- B. C. Hall, *Lie Groups, Lie Algebras, and Representations: An Elementary Introduction*, 2nd ed., Springer GTM 222, 2015 — 第 2〜5 章（行列 Lie 群、閉部分群定理、BCH 公式、準同型の持ち上げ）。
- W. Rossmann, *Lie Groups: An Introduction through Linear Groups*, Oxford University Press, 2002 — 第 1〜2 章。
- J. J. Duistermaat and J. A. C. Kolk, *Lie Groups*, Springer Universitext, 2000 — 第 1 章（BCH 公式と収束域）。
- H. B. Lawson and M.-L. Michelsohn, *Spin Geometry*, Princeton University Press, 1989 — 第 I 章（Clifford 代数と Spin 群）。
- 小林俊行・大島利雄『リー群と表現論』岩波書店、2005 — 第 1〜3 章。
