# 超対称量子力学と Witten 指数：超電荷の同スペクトル性、指数の安定性、Nicolai 写像

> 奇の自己共役作用素（超電荷）Q と H=Q² の組として超対称量子力学を定義し、A*A と AA* の非零スペクトルの一致、Witten 指数の安定性と熱核表示を証明する。格子上では Nicolai 写像の写像度として Witten 指数を計算する。
> https://rikai.mugen-giken.com/mathematics/dirac-operators/supersymmetric-qm

## 0. この記事の要点

量子力学の系には、エネルギーの等しい状態が必ず 2 つ組になって現れるものがあります。この記事の「超対称量子力学」は、その仕組みを作用素 1 つ（超電荷）から取り出したものです。2 つ組にならずに余る状態（エネルギーが 0 の状態）がいくつあるかを数えると、系をなめらかに変形しても変わらない整数が得られます。読み終えると、この整数（Witten 指数）が変形で変わらない理由と、1 次元の具体例や格子上での計算で実際に値が出る様子が分かります。

- 次数付き [Hilbert 空間](/mathematics/functional-analysis/hilbert-spaces#def-hilbert-space) $\mathcal{H}=\mathcal{H}_+\oplus\mathcal{H}_-$ 上の奇の（次数を入れ替える）[自己共役作用素](/mathematics/functional-analysis/self-adjoint-extensions#def-self-adjoint) $Q$（**超電荷**）は、[閉作用素](/mathematics/functional-analysis/unbounded-operators#def-closed-operator) $A:\mathcal{H}_+\to\mathcal{H}_-$ によって $Q=\begin{pmatrix}0&A^*\\A&0\end{pmatrix}$ と書け、ハミルトニアンは $H=Q^2=A^*A\oplus AA^*\ge0$ です。とくに閉作用素 $A$ について $A^*A$ は自己共役です。
- **同スペクトル性**：$\mathrm{sgn}\,Q$ は奇のユニタリ（核の外で）で $H$ と可換なので、$A^*A$ と $AA^*$ は核の直交補空間の上でユニタリ同値です。正のエネルギー準位はボソン的・フェルミオン的な状態の対として現れ、対にならないのは $E=0$ の状態だけです。
- **Witten 指数** $\mathrm{ind}_W=\dim\mathrm{Ker}\,A-\dim\mathrm{Ker}\,A^*$ は $\mathrm{str}\,e^{-tH}=\mathrm{tr}(\Gamma e^{-tH})$ に等しく（$t$ によらない）、$A$ の Fredholm 指数なので、相対コンパクトな摂動や連続変形で変わりません。$\mathrm{ind}_W\ne0$ なら超対称性は破れません（$H$ に固有値 $0$ がある）。
- 1 次元では $A=\frac d{dx}+W'(x)$ で、零モードは $e^{\mp W}$ です。指数は $W$ の無限遠での符号だけで決まり、$W$ が偶数次の多項式なら $\pm1$、奇数次なら $0$ です。Dirac 作用素 $Q+m\tau$ では、指数は固有値 $+m$ と $-m$ の重複度の差になります。
- 格子化した超対称量子力学の分配関数は、**Nicolai 写像** $\xi_i=x_i-x_{i-1}+hf(x_i)$ による Gauss 積分の引き戻し $\int e^{-|\xi|^2/2}\det(\partial\xi/\partial x)\,dx$ で、Piola 恒等式によるホモトピー不変性から、格子間隔・格子点数によらず $1$ または $0$ です。格子上で超対称性の全体を保つことはできない（no-go。「できない」と示された結果のこと）ことは主張として述べます。

<Aside type="tip" title="この記事で使う事前知識">

- **自己共役作用素とスペクトル定理**: エネルギーのように実数の値だけを取る作用素と、それを関数に代入する計算。→ [スペクトル定理と関数計算](/mathematics/functional-analysis/spectral-theorem-unbounded#def-functional-calculus)
- **閉作用素の共役**: 定義域を持つ作用素に対し、内積で釣り合う作用素 $A^*$ を定義域ごと考えること。→ [閉作用素](/mathematics/functional-analysis/unbounded-operators#def-closed-operator)
- **Fredholm 指数**: 核の次元と余核の次元の差。小さな摂動で変わらない整数。→ [Fredholm 理論](/mathematics/functional-analysis/fredholm-theory)
- **部分等長作用素**: ある部分空間を内積を保ったまま別の空間に写し、残りを 0 に送る作用素。→ [部分等長作用素](/mathematics/functional-analysis/bounded-operators#def-partial-isometry)
- **相対コンパクト**: 元の作用素のグラフノルムで測ると、有界な集合をコンパクトな集合に写す摂動。→ [相対コンパクト](/mathematics/functional-analysis/spectrum-classification#def-relatively-compact)
- **自由 Dirac 作用素**: 質量項と運動項の和で書かれる、相対論的な自由粒子のハミルトニアン。→ [自由 Dirac 作用素](/mathematics/dirac-operators/free-dirac-operator#def-free-dirac)

</Aside>

## 1. 動機

前章までの Dirac 作用素は、質量項 $\beta m$ と、$\beta$ と反交換する運動項 $\boldsymbol\alpha\cdot\boldsymbol p$ の和でした。$\beta$ を「次数」とみると、運動項は次数を入れ替える奇の作用素で、その 2 乗 $-\Delta$ は次数を保ちます。この構造を抽象化したのが超対称量子力学で、Witten（1981）は場の理論で超対称性が自発的に破れるかを調べるための模型として導入しました。

超対称性が破れていないとは、ハミルトニアン $H=Q^2$ の基底エネルギーが $0$ であることです。これは非摂動的な性質で、摂動論の各次数では判定できません。Witten は、エネルギーが正の状態がボソンとフェルミオンの対として現れることに注目し、対にならない零エネルギー状態の数の差（Witten 指数）が連続変形で変わらない「位相的」な量であることを指摘しました。指数が $0$ でなければ、どんな変形をしても超対称性は破れません。数学的にはこれは Fredholm 指数で、Atiyah–Singer の指数定理の熱核による証明の出発点でもあります（[指数定理](/mathematics/differential-geometry/index-theorems)）。

本章では、超電荷の作用素論（§2）、Witten 指数の安定性と熱核表示（§3）、1 次元の例と Dirac 作用素への応用（§4）、そして格子上での Nicolai 写像による指数の計算（§5）を扱います。

（この章の続きは購入者向けです。）
