# ゼロ距離相互作用：点相互作用の自己共役拡大と Krein の公式、TMS 形式、2+1 フェルミオン系の安定性

> 3 次元の点相互作用を原点で消える関数上の Laplacian の自己共役拡大として分類し、Krein のレゾルベント公式と束縛状態・散乱長を導く。3 体の TMS 2 次形式を定義し、2 個のフェルミオンと 1 個の粒子の系が質量比 8.78 未満で安定であることを証明する。
> https://rikai.mugen-giken.com/mathematics/coulomb-systems/zero-range-interactions

## 0. この記事の要点

2 つの粒子の間の力が届く範囲が、粒子の波の広がりよりずっと短いとき、力の細かい形は「どれだけ強く散乱されるか」を表す数 1 つにまとまります。この記事は、力の届く距離を 0 にした極限の模型（点相互作用）を数学的にきちんと定義し直し、その性質を調べます。読み終えると、2 体の場合に束縛状態と散乱の強さがどう決まるかと、2 個の同種フェルミオンと 1 個の別の粒子の 3 体系が壊れずに安定でいられる質量比の範囲が分かります。

- 3 次元では「$-\Delta+\alpha\delta$」は 2 次形式の摂動（KLMN）としても作用素の摂動としても定義できません。代わりに、原点で消える $H^2$ 関数上に制限した Laplacian $S$ の**自己共役拡大**（[自己共役作用素](/mathematics/functional-analysis/self-adjoint-extensions#def-self-adjoint)になるように定義域を広げたもの）として点相互作用を定義します。$S$ の不足指数は $(1,1)$ です。
- 自己共役拡大は自由な $H_\infty=-\Delta$ と、実数 $\alpha$ で添字付けられた $H_\alpha$ ですべてで、そのレゾルベントは **Krein の公式**
  $(H_\alpha-z)^{-1}=(-\Delta-z)^{-1}+\bigl(\alpha-\tfrac{i\sqrt z}{4\pi}\bigr)^{-1}|G_z\rangle\langle G_{\bar z}|$、$G_z(x)=\frac{e^{i\sqrt z|x|}}{4\pi|x|}$
  で与えられます。この分類をレゾルベント恒等式だけから証明します。
- $H_\alpha$ の定義域の関数は原点で $\psi\approx q\bigl(\frac{1}{4\pi|x|}+\alpha\bigr)$ と振る舞い（Bethe–Peierls 条件。原点の近くでの関数の形を決める条件）、散乱長（粒子どうしの散乱の強さを表す長さ）は $a=-1/(4\pi\alpha)$ です。$\alpha\lt0$ のときだけ負の固有値 $-(4\pi\alpha)^2$ を 1 個持ちます。
- 3 体以上では同じ考え方から **Ter-Martirosyan–Skornyakov（TMS）2 次形式**が得られ、その安定性は「電荷」と呼ばれる 3 次元の関数 $\xi$ 上の形式 $\Phi[\xi]$ の対角部分と非対角部分の比べ合いに帰着します。
- 2 個の同種フェルミオン（質量 $M$）と別の粒子（質量 $m$）の系では、非対角部分が電荷の奇部分でだけ負になることを Gauss 積分表示で示し、Schur 評価と積分 $\int_0^\infty\frac{\mathrm{d}u}{u}\ln\frac{(1+u^2)^2}{(1+u^2)^2-4\gamma^2u^2}=2\arcsin^2\gamma$ から、$M/m\lt8.78$ で TMS 形式が下に有界であることを証明します。最良の臨界値は $M/m\approx13.607$ です（主張として述べる）。

<Aside type="tip" title="この記事で使う事前知識">

- **自己共役拡大と不足指数**: 対称作用素の定義域を広げて自己共役にする方法と、その自由度の個数。→ [自己共役作用素](/mathematics/functional-analysis/self-adjoint-extensions#def-self-adjoint)
- **KLMN の定理**: ポテンシャルを 2 次形式として足して自己共役作用素を作る方法。→ [KLMN の定理](/mathematics/functional-analysis/self-adjointness-criteria#thm-klmn)
- **Fourier 変換**: 関数を波の重ね合わせに分解する変換。この記事では運動量空間で計算します。→ [Fourier 変換](/mathematics/fourier-analysis/fourier-transform#def-fourier-transform)
- **Sobolev 空間 $H^s$**: 関数とその微分（$s$ 階分）が 2 乗可積分であるような関数の空間。
- **特異 Weyl 列**: スペクトルの点に近づく近似的な固有関数の列で、その点がスペクトルに入ることを示す道具。→ [Weyl 列](/mathematics/functional-analysis/spectrum-classification#def-weyl-sequence)
- **Efimov 効果**: 3 体系で束縛状態が無限個現れる現象。前の章で扱いました。→ [束縛状態の個数](/mathematics/coulomb-systems/zhislin-efimov)

</Aside>

## 1. 動機

低温の原子気体や核物理では、粒子間の力の到達距離 $r_0$ が、波動関数の典型的な長さ（熱的ド・ブロイ波長や散乱長 $a$）よりはるかに短いことがよくあります。そのとき相互作用の詳細は散乱長 $a$ 1 つに集約され、$r_0\to0$ の極限の模型（ゼロ距離相互作用、点相互作用）が有効です。前章の [Efimov 効果](/mathematics/coulomb-systems/zhislin-efimov)も、本来は $r_0\ll|a|$ の普遍的な現象として理解されます。

1 次元では $\delta$ 関数ポテンシャルは $-\frac{\mathrm{d}^2}{\mathrm{d}x^2}$ に関して形式限界 $0$ で、KLMN の定理で定義できました（<Ref to="mathematics/functional-analysis/self-adjointness-criteria#ex-delta-potential" />）。3 次元では $H^1$ 関数は原点で値を持つとは限らない（<Ref to="exr-h1-unbounded" />）ので、この方法は使えません。一方、「原点以外では自由」という条件だけを課した作用素 $S$ は対称ですが自己共役ではなく、その自己共役拡大の自由度がちょうど相互作用の強さ（散乱長）になります。これが本章の出発点で、道具は [自己共役拡大](/mathematics/functional-analysis/self-adjoint-extensions) の不足指数の理論です。

多体系では事情がさらに微妙です。3 個のボソンにゼロ距離相互作用を入れると、エネルギーが下に有界でなくなる（Thomas 効果、Minlos–Faddeev 1962）ことが知られています。Pauli の原理は崩壊を防ぎうるので、フェルミオンを含む系の安定性が問題になります。本章の最後では、2 個のフェルミオンと 1 個の別の粒子の系の安定性を、質量比についての明示的な条件のもとで証明します。

（この章の続きは購入者向けです。）
