# Haar 測度：局所コンパクト群の不変積分とモジュラー関数、U(1)・SU(2)・SO(3) の具体形

> 局所コンパクト群の左 Haar 測度を定義して一意性を証明し、モジュラー関数を導入して、コンパクト群では両側・反転不変な確率測度になることを示す。U(1)・SU(2)・SO(3) の Euler 角表示まで具体的に求める。
> https://rikai.mugen-giken.com/mathematics/compact-groups/haar-measure

## 0. この記事の要点

直線の上では、長さは「ずらしても変わらない」ものとして測れます。回転や行列のように非可換な掛け算をもつ集まり（群）の上でも、「動かしても変わらない大きさの測り方」はあるのでしょうか。この記事は、その測り方がほぼ一通りに決まることを示し、円周・$SU(2)$・$SO(3)$ では具体的な式で書けることを見ます。読み終えると、群の上で「平均を取る」とはどういう操作か、そしてなぜコンパクトな群でだけ自然にできるのかが分かります。

- [局所コンパクト](/mathematics/topology/local-compactness#def-lc) Hausdorff 群 $G$ の**左 Haar 測度**とは、左移動で不変な 0 でない [Radon 測度](/mathematics/real-analysis/riesz-markov#def-radon)（コンパクト集合で有限になる、正則な測度）のことです。存在し（Haar・Weil の定理）、正の定数倍を除いて一意です。この記事では一意性を証明し、存在は証明の筋道を示します。
- 右移動 $E\mapsto Eg$ は左 Haar 測度を定数倍 $\Delta(g)$ だけ変えます。$\Delta\colon G\to(0,\infty)$ は連続準同型で、これを**モジュラー関数**と呼びます。$\Delta\equiv1$ の群が**単模群**です。
- コンパクト群は単模群で、Haar 測度は全質量 1 に正規化できます。このとき $\int f(gh)\,dg=\int f(hg)\,dg=\int f(g^{-1})\,dg=\int f(g)\,dg$ がすべての $f\in L^1(G)$ で成り立ちます。格子ゲージ理論で使う「リンク変数の積分」はこの測度です。
- Lie 群では、左不変な最高次微分形式（Maurer–Cartan 形式、つまり群の各点での無限小の動きを Lie 環の成分で表す 1 次微分形式の外積）が Haar 測度を与えます。これで $U(1)$ の $d\theta/2\pi$、$SU(2)$ の $\frac{1}{16\pi^2}\sin\theta\,d\varphi\,d\theta\,d\psi$、$SO(3)$ の $\frac{1}{8\pi^2}\sin\theta\,d\varphi\,d\theta\,d\psi$ が出ます。
- コンパクト性を外すと、正規化（$\mathbb{R}$）も反転不変性（$ax+b$ 群）も、有限次元表現のユニタリ化も壊れます。

<Aside type="tip" title="この記事で使う事前知識">

- **局所コンパクト**: どの点も、コンパクトな近傍（閉包がコンパクトな開集合を含む集合）をもつ、という性質。→ [局所コンパクト](/mathematics/topology/local-compactness#def-lc)
- **Radon 測度**: コンパクト集合で有限、かつ開集合・Borel 集合が内側と外側から近似できる測度。→ [Radon 測度](/mathematics/real-analysis/riesz-markov#def-radon)
- **正の線形汎関数**: 関数に実数を対応させる線形な規則で、$f\ge0$ なら値も $0$ 以上になるもの。→ [正の線形汎関数](/mathematics/real-analysis/riesz-markov#def-positive-functional)
- **リー群**: 群であり、同時に滑らかな多様体で、積と逆元が滑らかなもの。→ [リー群](/mathematics/manifolds/lie-groups#def-lie-group)
- **随伴表現**: 群が自分の Lie 環に共役で作用するもの。この記事では $SU(2)$ から回転 $SO(3)$ への対応として現れます。→ [随伴表現](/mathematics/manifolds/lie-groups#def-adjoint)

</Aside>

## 1. 動機

格子ゲージ理論では、リンク変数 $U_\ell\in G$（格子の辺 $\ell$ ごとに割り当てた群の元）について積分した分配関数 $Z=\int e^{-S[U]}\prod_\ell dU_\ell$ を考えます。ここで $dU$ に要求されるのは「ゲージ変換 $U_\ell\mapsto h_xU_\ell h_y^{-1}$ で変わらない」ことで、これは測度が左右の移動で不変であることにほかなりません。ハミルトニアン形式でも、リンクの Hilbert 空間 $L^2(G,dU)$ 上で左右の移動がユニタリであることが、色電場を自己共役作用素として定義する出発点でした。

格子場の理論のテーマでは、この測度の存在と性質を <Ref to="physics/lattice-field-theory/lattice-gauge-fields#thm-haar-measure" /> として引用し、証明は筋道だけにとどめました。この章はその基礎づけです。具体的には次を示します。

1. 左不変な測度は定数倍を除いて一意である（証明する）。
2. 右移動に対する振る舞いはモジュラー関数 1 つで決まり、コンパクト群では自明になる（証明する）。
3. したがってコンパクト群の Haar 測度は確率測度に正規化でき、左右・反転のすべてで不変になる（証明する）。
4. $U(1)$・$SU(2)$・$SO(3)$ では具体的な密度で書ける（計算する）。

$\mathbb{R}^n$ の Lebesgue 測度は「平行移動不変で、単位立方体の体積が 1」という条件で特徴づけられます。Haar 測度はこの特徴づけを非可換群に持ち上げたものです。非可換になると左と右の区別が生じ、それを測るのがモジュラー関数です。

（この章の続きは購入者向けです。）
