# 環と体の基礎：加法と乗法が同居する構造を整域・体まで分類する

> 環の公理をアーベル群と乗法モノイドの分配則による接着として定義し、単元・零因子・整域・体の階層を証明付きで整理する。整数環、Z/nZ、多項式環、行列環、ガウス整数環を実際に分類してみせる。
> https://rikai.mugen-giken.com/mathematics/algebra/rings-and-fields

## 0. この記事の要点

- 環とは「加法についてアーベル群、乗法について結合的で単位元をもち、その二つが分配則で結びついた集合」です。ここまでの章で扱ってきた「演算が一つの世界」を、演算が二つの世界へ広げます。
- $0a = 0$ や $(-a)(-b) = ab$ は約束事ではなく、環の公理から導かれる定理です。証明は分配則と加法群の逆元だけで書けます。
- 可換環に「$1 \ne 0$」と「零因子がない」を課すと整域、さらに「$0$ でない元がすべて可逆」を課すと体になります。体はつねに整域ですが、逆は偽で $\mathbb{Z}$ が反例です。ただし**有限**なら逆も成り立ちます。
- この基準を使うと、$\mathbb{Z}/n\mathbb{Z}$ が体になるのは $n$ が素数のときに限られ、$R[x]$ が整域になるのは $R$ が整域のときに限られ、$M_2(\mathbb{R})$ は非可換で零因子をもつ、と代表的な環がすべて分類できます。
- 環準同型の核は、群における正規部分群にあたる「イデアル」という対象になります。次章で商環を作るための足場がここで揃います。

## 1. 動機

### 1.1. 演算が一つでは足りない

[群論入門](/mathematics/algebra/groups) から前章までで扱ってきたのは、演算を一つだけもつ集合でした。しかし私たちが最初に出会った数学的構造である整数 $\mathbb{Z}$ は、演算を二つもっています。足し算と掛け算です。

このうち足し算だけを見れば $(\mathbb{Z}, +)$ はアーベル群です。ところが掛け算だけを見ると $(\mathbb{Z}, \cdot)$ は群になりません。$2$ に掛けて $1$ になる整数が存在しないからです。実際、整数 $b$ が $2b = 1$ を満たすとすると、$b \ge 1$ なら $2b \ge 2$、$b \le 0$ なら $2b \le 0$ となり、どちらの場合も $2b = 1$ になりません。つまり乗法については逆元の存在を諦めざるをえません。

では乗法について何が残るかというと、結合律と単位元 $1$ です。この「群になり損ねた乗法」と「立派な加法群」とを結びつけているのが分配則

$$
a(b+c) = ab + ac, \qquad (a+b)c = ac + bc
$$

です。分配則がなければ、二つの演算はただ同じ集合の上に住んでいるだけで、互いに何の関係もありません。逆に分配則さえあれば、たとえば「$0$ を掛けると $0$ になる」という、小学校以来当たり前だと思ってきた事実が定理として証明できてしまいます（<Ref to="prop-ring-basics" />）。**環とは、この最小限の取り決めだけを取り出した構造**です。

### 1.2. 「割り算ができるか」を測る言葉

群では方程式 $ax = b$ がつねに一意に解けました（両辺に $a^{-1}$ を掛ければよい）。環ではそうはいきません。$\mathbb{Z}$ の中で $2x = 3$ は解をもちませんし、$\mathbb{Z}/6\mathbb{Z}$ の中では $\bar{2}x = \bar{0}$ が $x = \bar{0}$ 以外に $x = \bar{3}$ という解ももってしまいます。同じ「割り算ができない」でも、前者は $2$ が可逆でないという話、後者は $\bar 2$ が $\bar 3$ という道連れをもっている（零因子である）という話で、性質が違います。

この違いを言語化するのが**単元**・**零因子**・**整域**・**体**という一連の概念です。この記事の後半は、代表的な環をこの物差しで測っていく作業にあてます。

### 1.3. 歴史的な背景

環という概念は、19 世紀の整数論から生まれました。フェルマーの最終定理を $x^n + y^n = z^n$ から $\prod (x + \zeta^i y) = z^n$ と因数分解して攻めようとすると、$\mathbb{Z}[\zeta]$（$\zeta$ は $1$ の $n$ 乗根）の中で素因数分解の一意性が壊れることがあります。クンマーはこれを救うために「理想数」を導入し、デデキントがそれを集合として定式化して**イデアル**と名づけました。ヒルベルトが『数論報告』（1897）で使った Zahlring（数環）という語が短くなって Ring となり、日本語では環と訳されています。

抽象的な公理系として今日の形に整理されたのは 20 世紀初頭で、フレンケルの 1914 年の論文がその初期のものです。決定的だったのはエミー・ネーターの "Idealtheorie in Ringbereichen"（1921）で、環をイデアルの言葉で調べるという現在の可換環論の方針はここで確立されました。つまり環論は「数を一般化しよう」という抽象化の遊びから生まれたのではなく、**具体的な整数論の困難を解くために必要になった**のです。

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## 2. 準備

以下で使う前提と記号を確認します。

- $\mathbb{N} = \{1, 2, 3, \ldots\}$ とし、$0$ は含めません。$\mathbb{Z}, \mathbb{Q}, \mathbb{R}, \mathbb{C}$ は通常の整数・有理数・実数・複素数の全体を表します。
- **アーベル群**は可換な群のことです。加法的に書くとき、単位元は $0$、$a$ の逆元は $-a$、$a + (-b)$ は $a - b$ と書きます。
- **モノイド**とは、結合的な二項演算と単位元をもつ集合です（逆元は要求しません）。$(\mathbb{Z}, \cdot)$ はモノイドです。
- $n \in \mathbb{N}$ に対し $\mathbb{Z}/n\mathbb{Z}$ は $\mathbb{Z}$ を部分群 $n\mathbb{Z}$ で割った剰余群で、$a$ の属する類を $\bar{a}$ と書きます。$\bar{a} = \bar{b}$ と $n \mid a - b$ は同値です。商群の構成については [正規部分群と商群](/mathematics/algebra/quotient-groups) の <Ref to="mathematics/algebra/quotient-groups#thm-quotient-group" />、代表元の取り方によらずに加法と乗法が定まること（well-defined 性）については [関係と同値関係](/mathematics/foundations/equivalence-relations) の <Ref to="mathematics/foundations/equivalence-relations#thm-zmod-ops" /> を参照してください。
- 写像 $\varphi$ の核・像（<Ref to="mathematics/algebra/homomorphism-theorems#def-kernel-image" />）と、群の準同型定理（<Ref to="mathematics/algebra/homomorphism-theorems#thm-first-isomorphism" />）については [群の準同型定理](/mathematics/algebra/homomorphism-theorems) を前提とします。

<Aside type="note">
本記事では「環」といえばつねに**乗法の単位元 $1$ をもつ**ものとします。$1$ を要求しない流儀（擬環、英語では rng）もあり、たとえば偶数全体 $2\mathbb{Z}$ はその意味では環ですが、本記事の意味では環ではありません。文献を読むときは、その本がどちらの流儀かを最初に確認してください。
</Aside>

## 3. 環の公理

### 3.1. 定義と記号

<Definition id="def-ring" title="環">
集合 $R$ と二つの二項演算 $+ \colon R \times R \to R$、$\cdot \colon R \times R \to R$ の組 $(R, +, \cdot)$ が次の四条件を満たすとき、$R$ を**環**という。

(R1) $(R, +)$ はアーベル群である。その単位元を $0$（または $0_R$）と書き、$a$ の加法逆元を $-a$ と書く。

(R2) 乗法は結合的である。すなわち任意の $a, b, c \in R$ に対し $(a \cdot b) \cdot c = a \cdot (b \cdot c)$。

(R3) 乗法の単位元が存在する。すなわちある $1 \in R$（または $1_R$）が存在して、任意の $a \in R$ に対し $1 \cdot a = a \cdot 1 = a$。

(R4) 分配則が成り立つ。すなわち任意の $a, b, c \in R$ に対し
$$
a \cdot (b + c) = a\cdot b + a \cdot c, \qquad (a + b)\cdot c = a\cdot c + b\cdot c .
$$
</Definition>

以下、乗法の記号 $\cdot$ は省略して $ab$ と書き、乗法は加法より強く結合するものとします（$ab + c$ は $(ab) + c$ の意味）。

(R2) と (R3) をまとめれば「$(R, \cdot)$ はモノイドである」と言えます。つまり環とは、**同じ台集合の上のアーベル群とモノイドを、分配則で貼り合わせたもの**です。(R4) で二つの等式を要求しているのは、乗法の可換性を仮定していないためで、可換なら片方から他方が従います。

乗法の単位元は一意です。$1$ と $1'$ がともに (R3) を満たすとすると、$1'$ が単位元であることから $1 = 1 \cdot 1'$、$1$ が単位元であることから $1 \cdot 1' = 1'$ なので $1 = 1'$ です。加法の単位元 $0$ の一意性は、群の単位元の一意性そのものです。

<Definition id="def-commutative-ring" title="可換環">
環 $R$ が任意の $a, b \in R$ に対し $ab = ba$ を満たすとき、$R$ を**可換環**という。
</Definition>

### 3.2. 公理から従う計算則

小学校で習った計算規則のうち、どこまでが公理でどこからが定理なのかを確定させておきます。次の命題は「環である」ということだけから従う事実の一覧で、以後の証明で繰り返し使います。

<Proposition id="prop-ring-basics" title="環の基本計算則">
$R$ を環とし、$a, b, c \in R$ とする。このとき次が成り立つ。

(1) $0a = a0 = 0$。

(2) $(-a)b = a(-b) = -(ab)$。

(3) $(-a)(-b) = ab$。特に $(-1)a = -a$。

(4) $a(b - c) = ab - ac$ および $(a-b)c = ac - bc$。ただし $x - y := x + (-y)$ とする。

(5) $1 = 0$ であることと $R = \{0\}$ であることは同値である。
</Proposition>

<Proof of="prop-ring-basics">
(1) $0 + 0 = 0$（(R1) の単位元の性質）と分配則 (R4) より
$$
0a = (0 + 0)a = 0a + 0a .
$$
$(R,+)$ は群だから $0a$ の加法逆元 $-(0a)$ が存在する。両辺にこれを加えると、左辺は $0a - (0a) = 0$、右辺は $(0a + 0a) - (0a) = 0a + (0a - 0a) = 0a$ となり（結合律を使った）、$0 = 0a$ を得る。$a0 = 0$ も、もう一方の分配則を使って同様に示せる。

(2) 分配則 (R4) と (1) より
$$
ab + (-a)b = (a + (-a))b = 0b = 0 .
$$
すなわち $(-a)b$ は $ab$ の加法逆元である。群における逆元は一意だから $(-a)b = -(ab)$。$a(-b) = -(ab)$ も同様。

(3) (2) を二回使うと $(-a)(-b) = -\bigl(a(-b)\bigr) = -\bigl(-(ab)\bigr) = ab$。最後の等号は群における $-(-x) = x$ による。$a = 1$ の場合として、(2) から $(-1)b = -(1b) = -b$ が従う。

(4) 定義と (R4)、(2) より $a(b-c) = a(b + (-c)) = ab + a(-c) = ab + (-(ac)) = ab - ac$。もう一方も同様。

(5) $R = \{0\}$ ならば $1 \in R$ より $1 = 0$。逆に $1 = 0$ とすると、任意の $a \in R$ に対して (R3) と (1) から
$$
a = 1a = 0a = 0
$$
となるので $R = \{0\}$。
</Proof>

ただ一つの元からなる環 $\{0\}$（このとき必然的に $1 = 0$）を**零環**といいます。零環は正真正銘の環ですが、面白いことは何も起こりません。<Ref to="prop-ring-basics" /> (5) が示すとおり、$1 = 0$ という一点だけで環全体が潰れてしまうからです。このあと整域や体を定義するときに $1 \ne 0$ という条件をわざわざ書くのは、この退化した場合を除外するためです。

### 3.3. まず思い出すべき例

<Example id="ex-number-rings" title="数の環と行列環">
次はいずれも <Ref to="def-ring" /> の意味の環である。

- $\mathbb{Z}, \mathbb{Q}, \mathbb{R}, \mathbb{C}$：通常の加法と乗法について可換環である。$1$ は数の $1$。
- $\mathbb{Z}[i] = \{a + bi : a, b \in \mathbb{Z}\}$（ガウス整数環）：$\mathbb{C}$ の部分集合で、和と積について閉じている。積について閉じることは $(a+bi)(c+di) = (ac - bd) + (ad + bc)i$ から確かめられる。
- $M_2(\mathbb{R})$：$2$ 次実正方行列の全体。行列の和と積について環をなし、$1$ は単位行列 $I$、$0$ は零行列である。ただし可換ではない（<Ref to="ex-matrix-ring" />）。
- $C([0,1])$：閉区間 $[0,1]$ 上の実数値連続関数の全体。$(f+g)(x) = f(x) + g(x)$、$(fg)(x) = f(x)g(x)$ と定めると可換環で、$1$ は定数関数 $1$ である。連続関数の和と積が連続であることから演算が閉じている。

一方、偶数全体 $2\mathbb{Z}$ は和と積について閉じているが $1 \notin 2\mathbb{Z}$ なので、(R3) を満たさず本記事の意味の環ではない。
</Example>

環の例として最も重要なのは、有限個の元しかもたない次の環です。剰余群 $\mathbb{Z}/n\mathbb{Z}$ に乗法を入れるだけですが、その乗法が代表元の取り方によらないことは確認が必要です。

<Example id="ex-zmodn" title="剰余環 Z/nZ">
$n \in \mathbb{N}$ とする。加法群 $\mathbb{Z}/n\mathbb{Z} = \{\bar{0}, \bar{1}, \ldots, \overline{n-1}\}$ に乗法を
$$
\bar{a} \cdot \bar{b} := \overline{ab}
$$
で定める。これが well-defined であること、すなわち $\bar a = \bar{a'}$ かつ $\bar b = \bar{b'}$ ならば $\overline{ab} = \overline{a'b'}$ であることを確かめる。仮定より $n \mid a - a'$ かつ $n \mid b - b'$ である。ここで
$$
ab - a'b' = ab - a'b + a'b - a'b' = (a - a')b + a'(b - b')
$$
と変形すると、右辺の各項は $n$ の倍数だから $n \mid ab - a'b'$、すなわち $\overline{ab} = \overline{a'b'}$ である。

結合律・分配律・可換律は $\mathbb{Z}$ での対応する法則から代表元を通して従い、$\bar 1$ が乗法単位元である。よって $\mathbb{Z}/n\mathbb{Z}$ は可換環である。$n = 1$ のときは $\bar 1 = \bar 0$ となり零環である。

$n = 6$ のとき、$\bar{2} \ne \bar{0}$ かつ $\bar{3} \ne \bar{0}$ であるにもかかわらず
$$
\bar{2}\cdot\bar{3} = \bar{6} = \bar{0}
$$
となる。「掛けて $0$ なら少なくとも一方が $0$」という $\mathbb{Z}$ でおなじみの性質は、一般の環では成り立たない。
</Example>

## 4. 単元・零因子・整域

<Ref to="ex-zmodn" /> で見た $\bar 2 \cdot \bar 3 = \bar 0$ のような現象と、「$2$ で割れない」という現象を、正確な用語で切り分けます。

<Definition id="def-unit-zero-divisor" title="単元と零因子">
$R$ を環とする。

(1) $a \in R$ に対し、$ab = ba = 1$ を満たす $b \in R$ が存在するとき、$a$ を $R$ の**単元**（または可逆元）という。$R$ の単元全体を $R^{\times}$ と書く。

(2) $a \in R$、$a \ne 0$ に対し、$ab = 0$ を満たす $b \ne 0$ が存在するとき $a$ を**左零因子**、$ba = 0$ を満たす $b \ne 0$ が存在するとき $a$ を**右零因子**という。可換環では両者は一致し、単に**零因子**という。
</Definition>

零因子の定義で $a \ne 0$ を課すかどうかは流儀が分かれます。本記事では課します（したがって $0$ は零因子ではありません）。

<Proposition id="prop-unit-group" title="単元群">
$R$ を環とする。

(1) $R^{\times}$ は $R$ の乗法について群をなす。特に単元 $a$ に対して $ab = ba = 1$ となる $b$ は一意に定まり、これを $a^{-1}$ と書く。

(2) $1 \ne 0$ とする。このとき単元は左零因子でも右零因子でもない。
</Proposition>

<Proof of="prop-unit-group">
(1) まず $1 \cdot 1 = 1$ より $1 \in R^{\times}$ なので $R^{\times} \ne \varnothing$ である。$a, b \in R^{\times}$ とし、$aa' = a'a = 1$、$bb' = b'b = 1$ とすると、(R2) の結合律より
$$
(ab)(b'a') = a(bb')a' = a\cdot 1 \cdot a' = aa' = 1,
$$
同様に $(b'a')(ab) = 1$ なので $ab \in R^{\times}$ であり、乗法は $R^\times$ 上の演算になる。結合律は $R$ のものをそのまま使える。単位元は $1$ である。$a \in R^\times$ の逆元 $a'$ も $a'a = aa' = 1$ より単元だから、$R^\times$ は群である。

逆元の一意性は群の一般論と同じ計算で出る。$ab = ba = 1$ かつ $ab' = b'a = 1$ とすると
$$
b = b1 = b(ab') = (ba)b' = 1b' = b' .
$$

(2) $a \in R^{\times}$ とし、$ab = 0$ とする。両辺に左から $a^{-1}$ を掛けると
$$
b = 1b = (a^{-1}a)b = a^{-1}(ab) = a^{-1}0 = 0
$$
となる（最後の等号は <Ref to="prop-ring-basics" /> (1)）。すなわち $ab = 0$ ならば $b = 0$ であり、$a$ は左零因子ではない。右からの計算も同様である。なお $1 \ne 0$ の仮定は、単元 $a$ 自身が $a \ne 0$ であることを保証するために使う。実際 $a = 0$ なら $1 = aa^{-1} = 0$ となって矛盾する。
</Proof>

<Definition id="def-integral-domain" title="整域">
可換環 $R$ が次の二条件を満たすとき、$R$ を**整域**という。

(D1) $1 \ne 0$。

(D2) 任意の $a, b \in R$ に対し、$ab = 0$ ならば $a = 0$ または $b = 0$。

条件 (D2) は「$R$ が零因子をもたない」と言い換えられる。
</Definition>

整域という条件は、次のとおり「両辺を $0$ でない元で割ってよい」という日常的な操作の言い換えです。方程式を解くときに使うのは、たいていこちらの形です。

<Proposition id="prop-cancellation" title="整域と消去律">
$R$ を $1 \ne 0$ である可換環とする。次は同値である。

(i) $R$ は整域である。

(ii) 任意の $a, b, c \in R$ について、$a \ne 0$ かつ $ab = ac$ ならば $b = c$（消去律）。
</Proposition>

<Proof of="prop-cancellation">
(i) $\Rightarrow$ (ii)：$a \ne 0$ かつ $ab = ac$ とする。<Ref to="prop-ring-basics" /> (4) より
$$
a(b - c) = ab - ac = 0 .
$$
$R$ は整域だから (D2) により $a = 0$ または $b - c = 0$ である。仮定 $a \ne 0$ より $b - c = 0$、すなわち $b = c$。

(ii) $\Rightarrow$ (i)：$ab = 0$ かつ $a \ne 0$ とする。<Ref to="prop-ring-basics" /> (1) より $a0 = 0$ なので $ab = a0$ と書ける。消去律 (ii) を $a \ne 0$ に適用して $b = 0$ を得る。よって (D2) が成り立ち、(D1) は仮定してあるので $R$ は整域である。
</Proof>

<Example id="ex-domain-or-not" title="整域である例・ない例">
$\mathbb{Z}$ は整域である。$1 \ne 0$ であり、整数 $a, b$ が $ab = 0$ かつ $a \ne 0$ を満たせば $b = 0$ だからである。同じ理由で $\mathbb{Q}, \mathbb{R}, \mathbb{C}$、およびそれらの部分環である $\mathbb{Z}[i]$ も整域である（一般に、整域の部分環で $1$ を共有するものは整域である。零因子がないという性質は部分集合に遺伝するからである）。

整域でない例を三つ挙げる。

- $\mathbb{Z}/6\mathbb{Z}$：<Ref to="ex-zmodn" /> のとおり $\bar 2 \bar 3 = \bar 0$。
- $C([0,1])$：$f(x) = \max\bigl(0, \tfrac12 - x\bigr)$、$g(x) = \max\bigl(0, x - \tfrac12\bigr)$ とおく。どちらも連続で、$f(0) = \tfrac12 \ne 0$、$g(1) = \tfrac12 \ne 0$ だから $f \ne 0$、$g \ne 0$ である。しかし $x \le \tfrac12$ では $g(x) = 0$、$x \ge \tfrac12$ では $f(x) = 0$ なので、すべての $x$ で $f(x)g(x) = 0$、すなわち $fg = 0$ である。
- $M_2(\mathbb{R})$：可換でないので整域ではない（整域は可換環と定めた）。零因子ももつ（<Ref to="ex-matrix-ring" />）。
</Example>

## 5. 体

### 5.1. 定義と最初の定理

<Definition id="def-field" title="体">
可換環 $K$ が次の二条件を満たすとき、$K$ を**体**という。

(F1) $1 \ne 0$。

(F2) $0$ でない任意の元は単元である。すなわち $K^{\times} = K \setminus \{0\}$。

可換性を要求しない場合、すなわち $1 \ne 0$ であり $0$ 以外のすべての元が単元であるような（可換とは限らない）環を**斜体**（可除環）という。
</Definition>

体では、$a \ne 0$ である限り $ax = b$ が $x = a^{-1}b$ と一意に解けます。四則演算が自由にできる世界、というのが体の直観です。

<Theorem id="thm-field-is-domain" title="体は整域">
$K$ を体とすると、$K$ は整域である。
</Theorem>

<Proof of="thm-field-is-domain">
$K$ は可換環であり、<Ref to="def-field" /> (F1) より $1 \ne 0$ なので (D1) は満たされる。(D2) を示す。$ab = 0$ かつ $a \ne 0$ とする。(F2) より $a$ は単元だから $a^{-1}$ が存在し、
$$
b = 1b = (a^{-1}a)b = a^{-1}(ab) = a^{-1}0 = 0
$$
となる（結合律 (R2) と <Ref to="prop-ring-basics" /> (1) を使った）。よって $ab = 0$ ならば $a = 0$ または $b = 0$ である。
</Proof>

逆は成り立ちません。$\mathbb{Z}$ は整域ですが体ではありません。$2 \in \mathbb{Z}$ は単元ではないからです（§1.1 で確かめたとおり $2b = 1$ となる整数 $b$ は存在しません）。ところが、有限性を仮定するとこの反例は消えてしまいます。

<Theorem id="thm-finite-domain-is-field" title="有限整域は体">
$R$ を有限個の元からなる整域とすると、$R$ は体である。
</Theorem>

<Proof of="thm-finite-domain-is-field">
$R$ は可換環で、整域の定義 (D1) より $1 \ne 0$ である。したがって (F2) だけを示せばよい。

$a \in R$、$a \ne 0$ とし、写像
$$
\lambda_a \colon R \to R, \qquad \lambda_a(x) = ax
$$
を考える。$\lambda_a(x) = \lambda_a(y)$ とすると $ax = ay$ であり、$a \ne 0$ と <Ref to="prop-cancellation" /> の消去律から $x = y$ を得る。よって $\lambda_a$ は単射である。

$R$ は有限集合だから、有限集合からそれ自身への単射は全射である（鳩の巣原理。像の元の個数は $|R|$ に等しく、それが $R$ の部分集合であることから像は $R$ 全体になる）。特に $1 \in R$ は $\lambda_a$ の像に入るので、$ab = 1$ となる $b \in R$ が存在する。$R$ は可換だから $ba = ab = 1$ でもあり、$a$ は単元である。

以上より $0$ でない元はすべて単元であり、$R$ は体である。
</Proof>

<Remark id="rem-wedderburn">
可換性を落としても同じ結論が成り立つことが知られています。「有限斜体は可換である」というウェダーバーンの小定理です。証明には円分多項式を使った類等式の評価が必要で、本記事の範囲を超えます。<Ref to="thm-finite-domain-is-field" /> と合わせると、**有限の世界では「零因子がない」と「割り算ができる」が完全に一致する**ことになります。
</Remark>

### 5.2. Z/nZ はいつ体か

<Corollary id="cor-zmodp-field" title="Z/nZ が体になる条件">
$n \ge 2$ を整数とする。次の三条件は同値である。

(i) $\mathbb{Z}/n\mathbb{Z}$ は体である。

(ii) $\mathbb{Z}/n\mathbb{Z}$ は整域である。

(iii) $n$ は素数である。
</Corollary>

<Proof of="cor-zmodp-field">
(i) $\Rightarrow$ (ii)：<Ref to="thm-field-is-domain" /> による。

(ii) $\Rightarrow$ (iii)：対偶を示す。$n$ が素数でないとすると、$n \ge 2$ より $n = ab$ かつ $1 < a < n$、$1 < b < n$ となる整数 $a, b$ が取れる。このとき $\bar a \bar b = \overline{ab} = \bar n = \bar 0$ である。一方 $0 < a < n$ より $n \nmid a$ すなわち $\bar a \ne \bar 0$、同様に $\bar b \ne \bar 0$ である。よって $\mathbb{Z}/n\mathbb{Z}$ は零因子をもち、整域ではない。

(iii) $\Rightarrow$ (i)：$n = p$ を素数とする。$\mathbb{Z}/p\mathbb{Z}$ は <Ref to="ex-zmodn" /> より可換環であり、$p \ge 2$ から $p \nmid 1$ なので $\bar 1 \ne \bar 0$、すなわち (D1) が成り立つ。次に $\bar a \bar b = \bar 0$、つまり $p \mid ab$ とする。ユークリッドの補題（証明は <Ref to="rem-euclid-and-inverse" />）より $p \mid a$ または $p \mid b$、すなわち $\bar a = \bar 0$ または $\bar b = \bar 0$ である。よって $\mathbb{Z}/p\mathbb{Z}$ は整域である。元の個数は $p$ 個で有限だから、<Ref to="thm-finite-domain-is-field" /> より体である。
</Proof>

<Remark id="rem-euclid-and-inverse">
証明で使ったユークリッドの補題（$p$ が素数で $p \mid ab$ ならば $p \mid a$ または $p \mid b$）は、ベズーの等式から次のように従います。$p \nmid a$ とすると $p$ が素数であることから $\gcd(a, p) = 1$ なので、整数 $x, y$ が存在して $ax + py = 1$ となります。両辺に $b$ を掛けると
$$
abx + pby = b
$$
であり、左辺の第 1 項は $p \mid ab$ より、第 2 項は明示的に $p$ の倍数なので、$p \mid b$ が従います。

同じベズーの等式は逆元の計算法も与えます。$p = 13$、$a = 5$ として拡張ユークリッドの互除法を実行すると
$$
13 = 2\cdot 5 + 3, \quad 5 = 1 \cdot 3 + 2, \quad 3 = 1\cdot 2 + 1
$$
なので、下から順に代入して
$$
1 = 3 - 2 = 3 - (5 - 3) = 2\cdot 3 - 5 = 2(13 - 2\cdot 5) - 5 = 2\cdot 13 - 5 \cdot 5 .
$$
両辺を $\bmod\ 13$ で見ると $-5 \cdot 5 \equiv 1$、すなわち $\bar 5^{-1} = \overline{-5} = \bar 8$ です。検算すると $5 \cdot 8 = 40 = 3\cdot 13 + 1$ で、確かに $\overline{40} = \bar 1$ になります。
</Remark>

素数 $p$ に対する体 $\mathbb{Z}/p\mathbb{Z}$ は $\mathbb{F}_p$ とも書かれ、有限体の最も基本的な例です。$\mathbb{F}_2$ は $\{\bar 0, \bar 1\}$ という 2 元だけの体で、計算機科学における 1 ビットの演算そのものです。

### 5.3. 標数

体や整域には、$\mathbb{Q}$ のような「$1$ を何度足しても $0$ にならない」ものと、$\mathbb{F}_p$ のような「$p$ 回足すと $0$ になる」ものがあります。この差は後の理論（特に体の拡大やガロア理論）で本質的に効いてきます。

<Definition id="def-characteristic" title="標数">
$R$ を環とする。$n \in \mathbb{N}$ と $a \in R$ に対し $n \cdot a := \underbrace{a + a + \cdots + a}_{n \text{ 個}}$ と書く。

$n \cdot 1_R = 0$ を満たす $n \in \mathbb{N}$ が存在するとき、そのような最小の $n$ を $R$ の**標数**といい $\operatorname{char} R$ と書く。存在しないときは $\operatorname{char} R = 0$ と定める。
</Definition>

<Proposition id="prop-characteristic" title="整域の標数">
$R$ を整域とすると、$\operatorname{char} R$ は $0$ であるか、または素数である。
</Proposition>

<Proof of="prop-characteristic">
$\operatorname{char} R = n \ne 0$ とする。まず、任意の $k, l \in \mathbb{N}$ に対して
$$
(k \cdot 1)(l \cdot 1) = (kl)\cdot 1
$$
が成り立つ。実際、分配則 (R4) を繰り返し適用すると左辺は $1 \cdot 1 = 1$ を $kl$ 個足したものになるからである。

$n = 1$ とすると $1 = 1\cdot 1 = 0$ となり、整域の条件 (D1) に反する。よって $n \ge 2$ である。

$n$ が素数でないと仮定すると、$n = kl$ かつ $1 < k < n$、$1 < l < n$ となる整数 $k, l$ が取れる。上の等式より
$$
(k\cdot 1)(l \cdot 1) = (kl)\cdot 1 = n \cdot 1 = 0
$$
であり、$R$ は整域だから (D2) より $k \cdot 1 = 0$ または $l \cdot 1 = 0$ である。しかし $1 < k < n$、$1 < l < n$ なので、これは $n$ が $n\cdot 1 = 0$ を満たす最小の自然数であることに反する。よって $n$ は素数である。
</Proof>

たとえば $\operatorname{char} \mathbb{Z} = \operatorname{char}\mathbb{Q} = \operatorname{char}\mathbb{R} = 0$、$\operatorname{char} \mathbb{F}_p = p$ です。標数 $p$ の可換環では $(a+b)^p = a^p + b^p$ という、初学者が犯しがちな誤りがそのまま定理になる現象（フロベニウス準同型）が起こります。二項係数 $\binom{p}{k}$ が $0 < k < p$ のとき $p$ で割り切れることから従います。

## 6. 代表的な環を分類する

ここまでの道具立てで、身の回りの環を実際に分類してみます。判定の手順は次の図のとおりです。

<Figure caption="与えられた環がどのクラスに属するかの判定手順">
<Mermaid code={`flowchart TD
  A["環 R が与えられた"] --> B&#123;"乗法は可換か"&#125;
  B -->|"いいえ"| N1["非可換環<br/>例: 2次正方行列環、四元数体"]
  B -->|"はい"| C&#123;"1 = 0 か"&#125;
  C -->|"はい"| Z["零環"]
  C -->|"いいえ"| D&#123;"零因子をもつか"&#125;
  D -->|"もつ"| E["可換環だが整域でない<br/>例: Z/6Z、連続関数環"]
  D -->|"もたない"| F&#123;"0 以外はすべて可逆か"&#125;
  F -->|"いいえ"| G["整域だが体でない<br/>例: 整数環 Z、多項式環"]
  F -->|"はい"| H["体<br/>例: Q、R、C、Z/5Z"]`} />
</Figure>

### 6.1. 多項式環

<Definition id="def-polynomial-ring" title="多項式環">
$R$ を可換環とする。$R$ の元の列 $(a_0, a_1, a_2, \ldots)$ で、有限個を除いてすべて $0$ であるもの全体に、
$$
(a_i) + (b_i) := (a_i + b_i), \qquad (a_i)\cdot(b_i) := (c_k), \quad c_k = \sum_{i+j=k} a_i b_j
$$
で演算を定めたものを $R$ 上の**多項式環**といい $R[x]$ と書く。$x := (0, 1, 0, 0, \ldots)$ とおくと、各元は
$$
f = a_0 + a_1 x + \cdots + a_m x^m
$$
と一意に書ける。$f \ne 0$ のとき $a_m \ne 0$ となる最大の $m$ を $f$ の**次数**といい $\deg f$ と書く（$\deg 0$ は定義しない）。
</Definition>

このように「係数の列」で定義するのは、多項式を**関数ではなく形式的な式**として扱うためです。この区別は有限係数のとき現実に効きます。たとえば $\mathbb{F}_2$ 上で $f = x^2 + x$ を考えると、$f(\bar 0) = \bar 0$、$f(\bar 1) = \bar 1 + \bar 1 = \bar 0$ なので $f$ が定める関数は零関数ですが、係数列は $(0,1,1,0,\ldots) \ne (0,0,\ldots)$ なので $\mathbb{F}_2[x]$ の元としては $f \ne 0$ です。

<Theorem id="thm-polynomial-domain" title="多項式環の次数・整域性・単元">
$R$ を整域とする。このとき次が成り立つ。

(1) $f, g \in R[x]$ がともに $0$ でなければ $fg \ne 0$ であり、$\deg(fg) = \deg f + \deg g$。

(2) $R[x]$ は整域である。

(3) $R[x]^{\times} = R^{\times}$。すなわち $R[x]$ の単元は $R$ の単元である定数多項式に限る。
</Theorem>

<Proof of="thm-polynomial-domain">
(1) $f = \sum_{i=0}^{m} a_i x^i$、$g = \sum_{j=0}^{n} b_j x^j$ とし、$m = \deg f$、$n = \deg g$、したがって $a_m \ne 0$、$b_n \ne 0$ とする。積の定義より $fg$ の $x^k$ の係数は $c_k = \sum_{i+j=k}a_ib_j$ である。

$k = m + n$ のとき、和に現れる項 $a_ib_j$（$i + j = m+n$）を見ると、$i > m$ なら $a_i = 0$、$i < m$ なら $j = m + n - i > n$ より $b_j = 0$ である。したがって残るのは $i = m,\ j = n$ の項だけで
$$
c_{m+n} = a_m b_n .
$$
$R$ は整域で $a_m \ne 0$、$b_n \ne 0$ だから (D2) より $a_mb_n \ne 0$ である。よって $fg \ne 0$。

$k > m+n$ のときは、$i + j = k$ ならば $i > m$ または $j > n$ のいずれかが必ず成り立つ（両方とも $i \le m$、$j\le n$ なら $k \le m+n$ になってしまう）ので、すべての項が $0$ となり $c_k = 0$ である。以上より $\deg(fg) = m + n$。

(2) $R[x]$ が可換環であることは定義から確かめられる（乗法の可換性は $c_k = \sum_{i+j=k}a_ib_j$ の対称性による）。$R$ で $1 \ne 0$ だから定数多項式として $R[x]$ でも $1 \ne 0$ であり (D1) が成り立つ。(D2) は (1) の対偶そのものである。

(3) $f \in R[x]^{\times}$ とし、$fg = 1$ とする。$1 \ne 0$ より $f \ne 0$、$g \ne 0$ なので (1) が使えて
$$
\deg f + \deg g = \deg(fg) = \deg 1 = 0 .
$$
次数は非負整数だから $\deg f = \deg g = 0$、すなわち $f = a_0$、$g = b_0$ はともに定数で $a_0b_0 = 1$ である。よって $a_0 \in R^{\times}$。逆に $a \in R^\times$ ならば定数多項式として $R[x]$ でも可逆である。
</Proof>

仮定「$R$ が整域」がどれほど効いているかは、外してみるとよくわかります。

<Example id="ex-poly-over-z4" title="係数環が整域でないと次数公式が壊れる">
$R = \mathbb{Z}/4\mathbb{Z}$ とする。これは $\bar 2 \cdot \bar 2 = \bar 4 = \bar 0$ より整域ではない。$R[x]$ の中で
$$
(\bar 2 x)\cdot(\bar 2 x) = \bar 4 x^2 = \bar 0
$$
なので、次数 $1$ の元どうしの積が $0$ になり、<Ref to="thm-polynomial-domain" /> (1) は成り立たない。さらに
$$
(\bar 2x + \bar 1)^2 = \bar 4 x^2 + \bar 4 x + \bar 1 = \bar 1
$$
だから $\bar 2 x + \bar 1$ は $R[x]$ の単元であり、その逆元は自分自身である。定数でない単元が存在するので <Ref to="thm-polynomial-domain" /> (3) も破れている。
</Example>

### 6.2. 行列環

<Example id="ex-matrix-ring" title="2 次実正方行列環">
$M_2(\mathbb{R})$ を考える。

**非可換性**：
$$
\begin{pmatrix} 0 & 1 \\ 0 & 0\end{pmatrix}\begin{pmatrix} 0 & 0 \\ 1 & 0\end{pmatrix} = \begin{pmatrix} 1 & 0 \\ 0 & 0\end{pmatrix}, \qquad
\begin{pmatrix} 0 & 0 \\ 1 & 0\end{pmatrix}\begin{pmatrix} 0 & 1 \\ 0 & 0\end{pmatrix} = \begin{pmatrix} 0 & 0 \\ 0 & 1\end{pmatrix}
$$
であり、二つの積は異なる。よって $M_2(\mathbb{R})$ は可換環ではない。

**零因子**：
$$
\begin{pmatrix} 1 & 0 \\ 0 & 0\end{pmatrix}\begin{pmatrix} 0 & 0 \\ 0 & 1\end{pmatrix} = \begin{pmatrix} 0 & 0 \\ 0 & 0\end{pmatrix}
$$
であり、左右どちらの行列も零行列ではない。よってどちらも零因子である。

**単元**：$A \in M_2(\mathbb{R})$ が単元であることと $\det A \ne 0$ であることは同値である。実際 $AB = BA = I$ ならば行列式の乗法性（<Ref to="mathematics/linear-algebra/determinants#thm-product" />）より $\det A \det B = \det I = 1$ なので $\det A \ne 0$ である。逆に $A = \begin{pmatrix} a & b \\ c & d\end{pmatrix}$ で $\det A = ad - bc \ne 0$ ならば
$$
B = \frac{1}{ad-bc}\begin{pmatrix} d & -b \\ -c & a \end{pmatrix}
$$
が $AB = BA = I$ を満たす。したがって $M_2(\mathbb{R})^{\times} = GL_2(\mathbb{R})$ である。行列式の性質については [行列式とその性質](/mathematics/linear-algebra/determinants)、連立一次方程式との関係については [行列と連立一次方程式](/mathematics/linear-algebra/matrices-and-linear-systems) を参照してください。
</Example>

行列環は「非可換だが零因子をもつ」典型例です。一方、非可換でありながら $0$ 以外がすべて可逆な環も存在します。ハミルトンの四元数
$$
\mathbb{H} = \{a + bi + cj + dk : a,b,c,d\in\mathbb{R}\}, \quad i^2=j^2=k^2=ijk=-1
$$
がそれで、$\alpha = a+bi+cj+dk \ne 0$ に対して $\bar\alpha = a - bi-cj-dk$ とおくと $\alpha\bar\alpha = a^2+b^2+c^2+d^2 \ne 0$ となるので $\alpha^{-1} = \bar\alpha/(a^2+b^2+c^2+d^2)$ が取れます。$\mathbb{H}$ は斜体であって体ではありません（$ij = k \ne -k = ji$）。

### 6.3. ガウス整数環

<Example id="ex-gaussian-integers" title="ガウス整数環の単元をすべて求める">
$\mathbb{Z}[i] = \{a+bi : a, b \in \mathbb{Z}\}$ は $\mathbb{C}$ の部分環であり（<Ref to="ex-number-rings" />）、整域である。単元群を決定する。

$\alpha = a + bi$ に対し $N(\alpha) := a^2+b^2 = \alpha\bar\alpha = |\alpha|^2$ とおく。これは非負整数値をとり、$|\alpha\beta| = |\alpha||\beta|$ より
$$
N(\alpha\beta) = N(\alpha)N(\beta)
$$
が成り立つ。

$\alpha \in \mathbb{Z}[i]^{\times}$ とし $\alpha\beta = 1$ とすると、$N(\alpha)N(\beta) = N(1) = 1$ である。$N(\alpha), N(\beta)$ は非負整数だから $N(\alpha) = 1$ でなければならない。すなわち $a^2 + b^2 = 1$ であり、$a, b$ は整数だから $(a,b) = (\pm 1, 0)$ または $(0, \pm 1)$、つまり $\alpha \in \{1, -1, i, -i\}$ である。

逆にこの 4 個はすべて単元である。$1\cdot 1 = 1$、$(-1)(-1) = 1$、$i\cdot(-i) = -i^2 = 1$ だからである。よって
$$
\mathbb{Z}[i]^{\times} = \{1, -1, i, -i\}
$$
であり、これは位数 $4$ の巡回群（$i$ が生成元）である。
</Example>

### 6.4. 分類表

以上をまとめます。表の「零因子」は $0$ でない零因子が存在するかどうかを表します。

| 環 | 可換 | $1 \ne 0$ | 零因子 | 整域 | 体 | 単元群 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| $\mathbb{Z}$ | はい | はい | なし | はい | いいえ | $\{1, -1\}$ |
| $\mathbb{Q}, \mathbb{R}, \mathbb{C}$ | はい | はい | なし | はい | はい | $K \setminus \{0\}$ |
| $\mathbb{Z}/5\mathbb{Z}$ | はい | はい | なし | はい | はい | 位数 $4$ の巡回群 |
| $\mathbb{Z}/6\mathbb{Z}$ | はい | はい | $\bar2, \bar3, \bar4$ | いいえ | いいえ | $\{\bar1, \bar5\}$ |
| $\mathbb{Z}[i]$ | はい | はい | なし | はい | いいえ | $\{1,-1,i,-i\}$ |
| $\mathbb{R}[x]$ | はい | はい | なし | はい | いいえ | $\mathbb{R}\setminus\{0\}$ |
| $(\mathbb{Z}/4\mathbb{Z})[x]$ | はい | はい | $\bar2x$ など | いいえ | いいえ | $\bar2x+\bar1$ を含む |
| $C([0,1])$ | はい | はい | あり | いいえ | いいえ | 零点をもたない関数 |
| $M_2(\mathbb{R})$ | いいえ | はい | あり | いいえ | いいえ | $GL_2(\mathbb{R})$ |
| $\mathbb{H}$ | いいえ | はい | なし | いいえ（非可換） | いいえ（斜体） | $\mathbb{H}\setminus\{0\}$ |
| $\{0\}$ | はい | いいえ | なし | いいえ | いいえ | $\{0\}$ |

包含関係を図にすると次のようになります。内側ほど条件が強くなります。

<Figure caption="環・可換環・整域・体の包含関係と代表例">
<svg viewBox="0 0 660 340" width="100%" role="img" aria-label="環の中に可換環、その中に整域、その中に体が入れ子になっている図">
  <rect x="10" y="10" width="640" height="320" rx="16" fill="none" stroke="currentColor" stroke-width="1.5" opacity="0.7" />
  <text x="28" y="38" font-size="15" fill="currentColor">環</text>
  <text x="72" y="38" font-size="13" fill="currentColor" opacity="0.85">2 次正方行列環、四元数体、零環</text>
  <rect x="34" y="52" width="592" height="236" rx="14" fill="none" stroke="currentColor" stroke-width="1.5" opacity="0.7" />
  <text x="52" y="80" font-size="15" fill="currentColor">可換環</text>
  <text x="124" y="80" font-size="13" fill="currentColor" opacity="0.85">Z/6Z、連続関数環、Z/4Z 上の多項式環</text>
  <rect x="58" y="94" width="544" height="152" rx="12" fill="none" stroke="currentColor" stroke-width="1.5" opacity="0.7" />
  <text x="76" y="122" font-size="15" fill="currentColor">整域</text>
  <text x="130" y="122" font-size="13" fill="currentColor" opacity="0.85">Z、ガウス整数環、R 上の多項式環</text>
  <rect x="82" y="136" width="496" height="68" rx="10" fill="none" stroke="var(--sl-color-accent)" stroke-width="2" />
  <text x="100" y="164" font-size="15" fill="var(--sl-color-accent)">体</text>
  <text x="140" y="164" font-size="13" fill="var(--sl-color-accent)">Q、R、C、Z/5Z</text>
  <text x="100" y="188" font-size="12" fill="currentColor" opacity="0.75">有限な整域はここに落ちる</text>
  <text x="28" y="316" font-size="12" fill="currentColor" opacity="0.75">内側ほど条件が強く、逆向きの包含はいずれも反例をもつ（Z は整域だが体ではない）。</text>
</svg>
</Figure>

## 7. 環準同型と核

このテーマを通じての方針は「構造を保つ写像で対象を分類する」ことでした。環でも同じ道を進みます。

<Definition id="def-ring-hom" title="環準同型">
$R, S$ を環とする。写像 $\varphi \colon R \to S$ が次の三条件を満たすとき、$\varphi$ を**環準同型**という。

(H1) 任意の $a, b \in R$ に対し $\varphi(a+b) = \varphi(a) + \varphi(b)$。

(H2) 任意の $a, b \in R$ に対し $\varphi(ab) = \varphi(a)\varphi(b)$。

(H3) $\varphi(1_R) = 1_S$。

全単射な環準同型を**同型**といい、$R \cong S$ と書く。
</Definition>

(H3) は (H1)(H2) から自動的には出ません。たとえば $\varphi \colon \mathbb{R} \to M_2(\mathbb{R})$ を $\varphi(a) = \begin{pmatrix} a & 0 \\ 0 & 0\end{pmatrix}$ で定めると、
$$
\varphi(a)\varphi(b) = \begin{pmatrix} ab & 0 \\ 0 & 0\end{pmatrix} = \varphi(ab)
$$
となり (H1)(H2) は満たしますが、$\varphi(1) = \begin{pmatrix} 1 & 0 \\ 0 & 0 \end{pmatrix} \ne I$ なので (H3) は満たしません。単位元を保つことを別に要求する理由がここにあります。

<Proposition id="prop-kernel-ideal" title="環準同型の核">
$\varphi \colon R \to S$ を環準同型とし、$\ker\varphi := \{a \in R : \varphi(a) = 0_S\}$ とおく。このとき次が成り立つ。

(1) $\ker\varphi$ は加法群 $(R,+)$ の部分群である。

(2) 任意の $a \in \ker\varphi$ と $r \in R$ に対し $ra \in \ker\varphi$ かつ $ar \in \ker\varphi$。

(3) $\varphi$ が単射であることと $\ker\varphi = \{0\}$ であることは同値である。

(4) $\ker\varphi = R$ となるのは $S$ が零環のときに限る。
</Proposition>

<Proof of="prop-kernel-ideal">
(1) (H1) より $\varphi$ は加法群の準同型なので、まず $\varphi(0_R) = 0_S$ である。実際 $\varphi(0) = \varphi(0+0) = \varphi(0)+\varphi(0)$ の両辺に $-\varphi(0)$ を加えれば $0_S = \varphi(0)$ を得る。よって $0_R \in \ker\varphi$ で $\ker\varphi \ne \varnothing$。$a, b \in \ker\varphi$ なら $\varphi(a - b) = \varphi(a) - \varphi(b) = 0_S - 0_S = 0_S$ なので $a - b \in \ker\varphi$ であり、部分群の判定条件（<Ref to="mathematics/algebra/subgroups-and-lagrange#prop-subgroup-criterion" />）を満たす。

(2) (H2) と <Ref to="prop-ring-basics" /> (1) を $S$ の中で使うと
$$
\varphi(ra) = \varphi(r)\varphi(a) = \varphi(r)\cdot 0_S = 0_S
$$
なので $ra \in \ker\varphi$。$ar$ についても同様である。

(3) $\varphi$ が単射で $a \in \ker\varphi$ とすると、$\varphi(a) = 0_S = \varphi(0_R)$ より $a = 0_R$。逆に $\ker\varphi = \{0\}$ とし $\varphi(a) = \varphi(b)$ とすると、(H1) より $\varphi(a-b) = \varphi(a)-\varphi(b) = 0_S$ なので $a - b \in \ker\varphi = \{0\}$、すなわち $a = b$ である。

(4) $\ker\varphi = R$ とすると $1_R \in \ker\varphi$ なので (H3) より $1_S = \varphi(1_R) = 0_S$ であり、<Ref to="prop-ring-basics" /> (5) から $S = \{0\}$ は零環である。逆に $S$ が零環なら明らかにすべての元が $0_S$ に写るので $\ker\varphi = R$ である。
</Proof>

<Remark id="rem-ideal-preview">
<Ref to="prop-kernel-ideal" /> の (1) と (2) を満たす部分集合を $R$ の**イデアル**といいます（<Ref to="mathematics/algebra/ideals-and-quotient-rings#def-ideal" />）。群のとき、準同型の核がただの部分群ではなく正規部分群になったのと同じ現象です。正規部分群で群を割って商群を作ったように、イデアルで環を割って商環を作り、環の準同型定理（<Ref to="mathematics/algebra/ideals-and-quotient-rings#thm-first-isomorphism" />）を得ることができます。この道筋は次章 [イデアルと剰余環](/mathematics/algebra/ideals-and-quotient-rings) でたどります。
</Remark>

<Example id="ex-evaluation-map" title="代入写像とその核">
$c \in \mathbb{R}$ を固定し、$\operatorname{ev}_c \colon \mathbb{R}[x] \to \mathbb{R}$ を $\operatorname{ev}_c(f) = f(c)$ で定める。$(f+g)(c) = f(c)+g(c)$、$(fg)(c) = f(c)g(c)$（積の係数の定義から確かめられる）、$\operatorname{ev}_c(1) = 1$ より、これは環準同型である。

核を求める。$f \in \mathbb{R}[x]$ に対し、$x - c$ は最高次係数が $1$ だから割り算ができて、
$$
f = (x-c)q + r, \qquad q \in \mathbb{R}[x],\ \deg r < 1 \text{ または } r = 0
$$
と書ける。$r$ は定数である。ここに $x = c$ を代入すると $f(c) = 0\cdot q(c) + r = r$ を得る。したがって
$$
f \in \ker(\operatorname{ev}_c) \iff r = 0 \iff f = (x-c)q .
$$
すなわち $\ker(\operatorname{ev}_c)$ は $x - c$ の倍元全体である。これは <Ref to="prop-kernel-ideal" /> の意味でイデアルになっており、$(x-c)$ で生成されるイデアルと呼ばれる。
</Example>

体を定義域にすると、準同型はきわめて硬くなります。

<Theorem id="thm-field-hom-injective" title="体からの環準同型は単射">
$K$ を体、$S$ を $1_S \ne 0_S$ である環とし、$\varphi \colon K \to S$ を環準同型とする。このとき $\varphi$ は単射である。
</Theorem>

<Proof of="thm-field-hom-injective">
$a \in \ker\varphi$ かつ $a \ne 0$ と仮定する。$K$ は体だから <Ref to="def-field" /> (F2) より $a$ は単元で、$a^{-1} \in K$ が存在する。すると (H3)、(H2)、および $S$ における <Ref to="prop-ring-basics" /> (1) より
$$
1_S = \varphi(1_K) = \varphi(a a^{-1}) = \varphi(a)\varphi(a^{-1}) = 0_S \cdot \varphi(a^{-1}) = 0_S
$$
となり、仮定 $1_S \ne 0_S$ に矛盾する。よって $\ker\varphi = \{0\}$ であり、<Ref to="prop-kernel-ideal" /> (3) より $\varphi$ は単射である。
</Proof>

言い換えると、体には自明でないイデアルが存在せず、非自明な商が作れません。したがって体を調べるときは「割る」代わりに「拡げる」ことになります。体 $K$ を含むより大きい体 $L$ を考え（<Ref to="mathematics/algebra/galois-theory#def-extension" />）、その間の構造を群で記述するのがガロア理論です（[ガロア理論への招待](/mathematics/algebra/galois-theory) の <Ref to="mathematics/algebra/galois-theory#thm-fundamental" />）。群では正規部分群と商群が主役だったのに、体では拡大が主役になる理由は、この定理にあります。

## 8. 演習

<Exercise id="exr-units-of-z12" difficulty="標準">
$\mathbb{Z}/12\mathbb{Z}$ の単元をすべて求め、残りの $0$ でない元がすべて零因子であることを示してください。また一般に、$n \ge 2$ と $0 \le a < n$ に対して「$\bar a$ が $\mathbb{Z}/n\mathbb{Z}$ の単元であること」と「$\gcd(a,n) = 1$」が同値であることを示してください。

<Solution>
まず一般の主張を示します。

$\gcd(a,n) = 1$ とすると、ベズーの等式より整数 $x, y$ が存在して $ax + ny = 1$ となります。両辺を $\bmod\ n$ で見ると $\bar a \bar x = \bar 1$ であり、$\mathbb{Z}/n\mathbb{Z}$ は可換なので $\bar a$ は単元です。

逆に $\bar a$ が単元で $\bar a\bar b = \bar 1$ とすると、ある整数 $k$ について $ab - 1 = kn$、すなわち $ab - kn = 1$ です。$d = \gcd(a,n)$ とおくと $d \mid a$ かつ $d \mid n$ なので $d \mid ab - kn = 1$、よって $d = 1$ です。

$n = 12$ の場合、$0 \le a < 12$ で $\gcd(a,12)=1$ となるのは $a = 1,5,7,11$ です。したがって
$$
(\mathbb{Z}/12\mathbb{Z})^{\times} = \{\bar 1, \bar 5, \bar 7, \bar{11}\}
$$
です。実際 $5\cdot 5 = 25 = 2\cdot 12 + 1$、$7\cdot 7 = 49 = 4\cdot 12+1$、$11\cdot 11 = 121 = 10\cdot 12 + 1$ なので、$\bar 1$ 以外の 3 元はすべて自分自身が逆元であり、この群は位数 $4$ でクラインの四元群と同型です。

残りの元 $\bar a$（$a = 2,3,4,6,8,9,10$）については $d = \gcd(a,12) > 1$ です。このとき $m := 12/d$ とおくと $1 \le m < 12$ より $\bar m \ne \bar 0$ であり、
$$
\bar a \bar m = \overline{a \cdot \frac{12}{d}} = \overline{12 \cdot \frac{a}{d}} = \bar 0
$$
です（$a/d$ は整数）。$\bar a \ne \bar 0$ なので $\bar a$ は零因子です。たとえば $a = 8$ なら $d = 4$、$m = 3$ で $\bar 8 \bar 3 = \overline{24} = \bar 0$ です。

この議論は一般の $n$ でも通用するので、$\mathbb{Z}/n\mathbb{Z}$ の $0$ でない元は単元か零因子のいずれかちょうど一方である、と言えます（両方であることは <Ref to="prop-unit-group" /> (2) が禁じます）。
</Solution>
</Exercise>

<Exercise id="exr-z-sqrt2" difficulty="標準">
$\mathbb{Z}[\sqrt2] := \{a + b\sqrt2 : a, b \in \mathbb{Z}\}$ が $\mathbb{R}$ の部分環であり整域であることを示し、$1+\sqrt2$ が単元であることを確かめてください。さらに $\mathbb{Z}[\sqrt2]^{\times}$ が無限群であることを示してください。

<Solution>
まず、$a,b,c,d \in \mathbb{Z}$ に対し
$$
(a+b\sqrt2) - (c+d\sqrt2) = (a-c) + (b-d)\sqrt2, \qquad (a+b\sqrt2)(c+d\sqrt2) = (ac+2bd) + (ad+bc)\sqrt2
$$
であり、いずれも $\mathbb{Z}[\sqrt2]$ に属します。$1 = 1 + 0\sqrt2 \in \mathbb{Z}[\sqrt2]$ でもあるので、$\mathbb{Z}[\sqrt2]$ は $\mathbb{R}$ の部分環です。$\mathbb{R}$ は整域（体なので <Ref to="thm-field-is-domain" />）であり、零因子がないという性質は部分環に遺伝し、$1 \ne 0$ も $\mathbb{R}$ から受け継ぐので、$\mathbb{Z}[\sqrt2]$ は整域です。

$N(a+b\sqrt2) := a^2 - 2b^2$ とおきます。上の積の公式を使って直接計算すると
$$
N\bigl((a+b\sqrt2)(c+d\sqrt2)\bigr) = (ac+2bd)^2 - 2(ad+bc)^2 = a^2c^2 + 4b^2d^2 - 2a^2d^2 - 2b^2c^2
$$
であり、一方
$$
N(a+b\sqrt2)N(c+d\sqrt2) = (a^2-2b^2)(c^2-2d^2) = a^2c^2 - 2a^2d^2 - 2b^2c^2 + 4b^2d^2
$$
なので両者は一致します。すなわち $N$ は乗法的です。

$\alpha = 1 + \sqrt2$ については $N(\alpha) = 1 - 2 = -1$ です。実際
$$
(1+\sqrt2)(\sqrt2 - 1) = \sqrt2 - 1 + 2 - \sqrt2 = 1
$$
なので、$\alpha^{-1} = \sqrt 2 - 1 \in \mathbb{Z}[\sqrt2]$ であり $\alpha$ は単元です。

$\alpha > 1$ なので $\alpha < \alpha^2 < \alpha^3 < \cdots$ となり、$\alpha^n$ はすべて相異なります。<Ref to="prop-unit-group" /> (1) より単元の積は単元なので、$\alpha^n \in \mathbb{Z}[\sqrt2]^{\times}$ が無限個存在します。よって $\mathbb{Z}[\sqrt2]^{\times}$ は無限群です。$\mathbb{Z}[i]^{\times}$ が 4 元しかなかった（<Ref to="ex-gaussian-integers" />）ことと対照的で、違いは $N(\alpha) = \pm 1$ を満たす $\alpha$ が有限個かどうか、すなわち $a^2+b^2$ がつねに非負であるのに対し $a^2-2b^2$ は符号を変えうる点にあります。
</Solution>
</Exercise>

<Exercise id="exr-nilpotent" difficulty="標準">
$R$ を可換環とし、$a \in R$ がある $n \in \mathbb{N}$ について $a^n = 0$ を満たすとします（このような $a$ を冪零元といいます）。

(1) $1 + a$ が単元であることを示してください。

(2) 整域には $0$ 以外の冪零元が存在しないことを示してください。

<Solution>
(1) $b := \sum_{k=0}^{n-1}(-1)^k a^k = 1 - a + a^2 - \cdots + (-1)^{n-1}a^{n-1}$ とおきます。分配則を使って展開すると
$$
(1+a)b = \sum_{k=0}^{n-1}(-1)^k a^k + \sum_{k=0}^{n-1}(-1)^k a^{k+1}
$$
です。第 2 の和で $k+1 = l$ と置き換えると $\sum_{l=1}^{n}(-1)^{l-1}a^{l}$ となり、第 1 の和の $k \ge 1$ の項とちょうど符号が逆で打ち消し合います。残るのは第 1 の和の $k=0$ の項 $1$ と、第 2 の和の $l = n$ の項 $(-1)^{n-1}a^n$ だけなので
$$
(1+a)b = 1 + (-1)^{n-1}a^n = 1 + 0 = 1
$$
です。$R$ は可換なので $b(1+a) = 1$ でもあり、$1+a$ は単元で $(1+a)^{-1} = b$ です。

(2) $R$ を整域とし、$a \in R$ が $a^n = 0$ を満たすとします。$a \ne 0$ と仮定して矛盾を導きます。$a^m = 0$ となる最小の $m \in \mathbb{N}$ を取ります。$m = 1$ なら $a = 0$ で仮定に反するので $m \ge 2$ です。$a\cdot a^{m-1} = a^m = 0$ で $a \ne 0$ なので、整域の条件 (D2) より $a^{m-1} = 0$ となりますが、$1 \le m - 1 < m$ なので $m$ の最小性に反します。よって $a = 0$ です。
</Solution>
</Exercise>

<Exercise id="exr-one-sided-inverse" difficulty="難">
環 $R$ の元 $a, b$ が $ab = 1$ を満たすとき、$ba = 1$ とは限りません。

(1) $R$ が有限環ならば $ab = 1 \Rightarrow ba = 1$ が成り立つことを示してください。

(2) $ab = 1$ かつ $ba \ne 1$ となる環と元の例を挙げてください。

<Solution>
(1) $ab = 1$ とし、写像 $f\colon R \to R$ を $f(x) = bx$ で定めます。$f(x) = f(y)$、すなわち $bx = by$ とすると、両辺に左から $a$ を掛けて
$$
x = 1x = (ab)x = a(bx) = a(by) = (ab)y = 1y = y
$$
なので $f$ は単射です（結合律 (R2) を使いました）。$R$ は有限なので単射 $f$ は全射であり、$bc = 1$ となる $c \in R$ が存在します。このとき
$$
a = a\cdot 1 = a(bc) = (ab)c = 1\cdot c = c
$$
なので $c = a$、したがって $ba = bc = 1$ です。

(2) $V$ を実数列全体 $\{(x_1, x_2, x_3, \ldots) : x_i \in \mathbb{R}\}$ とし、$R$ を $V$ から $V$ への $\mathbb{R}$ 線形写像全体とします。写像の和と合成について $R$ は環になり、単位元は恒等写像 $\operatorname{id}$ です（[ベクトル空間と線形変換](/mathematics/linear-algebra/vector-spaces) を参照）。

$$
S(x_1,x_2,x_3,\ldots) = (0, x_1, x_2, \ldots), \qquad T(x_1,x_2,x_3,\ldots) = (x_2,x_3,x_4,\ldots)
$$

と定めると、どちらも線形です。$T \circ S$ を計算すると
$$
(T\circ S)(x_1,x_2,\ldots) = T(0,x_1,x_2,\ldots) = (x_1,x_2,\ldots)
$$
なので $TS = \operatorname{id} = 1$ です。一方
$$
(S\circ T)(x_1,x_2,\ldots) = S(x_2,x_3,\ldots) = (0,x_2,x_3,\ldots)
$$
なので、$x = (1,0,0,\ldots)$ を代入すると $ST(x) = (0,0,\ldots) \ne x$ となり $ST \ne 1$ です。

なお $T$ は単元ではありません。もし両側逆元 $U$ が存在すれば、$TS = 1$ と結合律から
$$
U = U\cdot 1 = U(TS) = (UT)S = 1\cdot S = S
$$
となり $ST = 1$ が従いますが、これは上で否定した事実です。この例は、<Ref to="def-unit-zero-divisor" /> (1) で逆元を**両側**で要求したことに意味があることを示しています。
</Solution>
</Exercise>

## 参考文献

- 松坂和夫『代数系入門』岩波書店、1976 — 第 3 章「環と体」。環・整域・体の定義と基本例が、本記事と同じ順序で丁寧に扱われています。
- 雪江明彦『代数学 2 環と体とガロア理論』日本評論社、2010 — 第 1 章・第 2 章。多項式環と商体の構成が詳しく、次章のイデアル論にそのまま続きます。
- 桂利行『代数学 I 群と環』東京大学出版会、2004 — 環の章。日本語で書かれた標準的な入門書です。
- D. S. Dummit, R. M. Foote, *Abstract Algebra*, 3rd ed., Wiley, 2004 — Chapter 7（Introduction to Rings）。例の量が圧倒的で、演習の宝庫です。
- M. F. Atiyah, I. G. Macdonald, *Introduction to Commutative Algebra*, Addison-Wesley, 1969 — Chapter 1。可換環論へ進むときの標準的な出発点です。
- E. Noether, "Idealtheorie in Ringbereichen", *Mathematische Annalen* 83 (1921), 24–66. 環をイデアルの言葉で調べる方針を確立した原論文です。

## Appendix: 整域から体をつくる（商体）

**この付録の目的**。<Ref to="thm-field-is-domain" /> の「体ならば整域」の逆は偽でしたが、$\mathbb{Z}$ から $\mathbb{Q}$ を作る操作を一般化すると、次の形で部分的に回復できます。すなわち**任意の整域は、ある体の部分環と同一視できる**のです。この構成のどこで整域の仮定が使われるかを追ってください。

**構成**。$R$ を整域とし、集合 $X := R \times (R \setminus \{0\})$ の上に関係
$$
(a,b) \sim (c,d) \iff ad = bc
$$
を定めます。$(a,b)$ は分数 $a/b$ のつもりです。

**これが同値関係であること**。反射律は $ab = ba$（$R$ は可換）から、対称律は $ad = bc$ ならば $cb = da$ から従います。問題は推移律です。$(a,b)\sim(c,d)$ かつ $(c,d)\sim(e,f)$ とすると $ad = bc$、$cf = de$ です。第 1 式に $f$ を、第 2 式に $b$ を掛けると
$$
adf = bcf, \qquad bcf = bde
$$
なので $adf = bde$、すなわち $d(af) = d(be)$ です。ここで $d \ne 0$ であり $R$ は整域なので、<Ref to="prop-cancellation" /> の消去律から $af = be$、つまり $(a,b)\sim(e,f)$ を得ます。**整域の仮定はここで本質的に使われます**。

**演算**。$(a,b)$ の同値類を $\frac{a}{b}$ と書き、商集合を $\operatorname{Frac}(R)$ とおいて
$$
\frac{a}{b} + \frac{c}{d} := \frac{ad+bc}{bd}, \qquad \frac{a}{b}\cdot\frac{c}{d} := \frac{ac}{bd}
$$
と定めます。$b \ne 0$、$d \ne 0$ から $bd \ne 0$ が言えるのも整域だからで、ここでも仮定が効いています。well-defined 性のうち積について確かめておきます。$(a,b)\sim(a',b')$、すなわち $ab' = a'b$ とすると
$$
(ac)(b'd) = (ab')(cd) = (a'b)(cd) = (a'c)(bd)
$$
なので $(ac, bd) \sim (a'c, b'd)$ です。もう一方の因子 $(c,d)$ を取り替えた場合も同じ計算で確かめられ、和についても同様です。

**体になること**。$0 = \frac{0}{1}$、$1 = \frac{1}{1}$ とすると $\operatorname{Frac}(R)$ は可換環になり、$1 \ne 0$ です（$\frac11 = \frac01$ とすると $1\cdot 1 = 1\cdot 0$ より $1 = 0$ となり、整域の (D1) に反します）。また $\frac{a}{b} \ne 0$ であることは $a\cdot 1 \ne b \cdot 0$、すなわち $a \ne 0$ と同値で、このとき $\frac{b}{a}$ が定義でき
$$
\frac{a}{b}\cdot\frac{b}{a} = \frac{ab}{ba} = \frac{1}{1} = 1
$$
となります（$ab \cdot 1 = ba\cdot 1$ より $(ab, ba)\sim(1,1)$）。よって $\operatorname{Frac}(R)$ は体で、これを $R$ の**商体**（分数体）といいます。

**埋め込み**。$\iota\colon R \to \operatorname{Frac}(R)$、$\iota(a) = \frac{a}{1}$ は環準同型であり、$\frac{a}{1} = \frac{0}{1}$ が $a = 0$ と同値なので $\ker\iota = \{0\}$、<Ref to="prop-kernel-ideal" /> (3) より単射です。したがって $R$ は体 $\operatorname{Frac}(R)$ の部分環とみなせます。

**例**。$\operatorname{Frac}(\mathbb{Z}) = \mathbb{Q}$ であり、これは有理数を「整数の対の同値類」として構成する標準的なやり方そのものです（[数とは何か？](/mathematics/foundations/what-is-a-number)）。体 $K$ に対し $\operatorname{Frac}(K[x])$ は有理関数体 $K(x)$ と呼ばれ、$\frac{f(x)}{g(x)}$（$g \ne 0$）の形の元からなります。ここで <Ref to="thm-polynomial-domain" /> により $K[x]$ が整域であることが効いています。整域でない環に対してこの構成を真似ると、推移律の証明が破綻して分数が定義できなくなります。


</div>
